ハリー・ポッターと呪われた瞳ーInnocent Red 作:轟th
もうじき鬱陶しい梅雨が始まり、それが終わったと思ったら茹だるような夏が始まってしまう。主は夏より冬派の人間なので、ぶっちゃけた話、溶けてしまいそうです。いや、暑いのが苦手なのもありますが、それ以上にノーパソの排熱がやばくなるのが面倒です。
過去に二代目のPC(現在は三代目)が暑さのあまり、二度落ちました。それ以降は起動しているとキュィィィィンンッ、ガガガッという音が聞こえてきます。動かす上では問題ないけどうるさいことこの上ない。
水着? 海……遠いです。
では、本編をどうぞ。
それはとんでもなく長い滑り台だった。
何か目安になる物がある訳でもないので不確かではあったが、滑っていた時間から鑑みてかなりの距離を落ちた筈だ。それでも続く孔に、実は終わりなんてないのではと疑い始めた頃、唐突に滑り台は途切れてノエルは何かの上に落とされた。
「あだっ!」
衝撃はともかく、何か硬い物が臀部に当たる。
孔の底には光源が一つとしてないので何も見えないが、どうやら今居る場所はそれほど広い空間ではないようだ。しかし足を動かす度に聞こえてくる、この妙にカラカラとした音の正体は何なのだろうか。
「ルーモス!」
杖を掲げ、光の呪文を唱える。
暗闇を切り裂く閃光に一瞬目が眩んだが、暫くすると光にも慣れて来たのでようやく今いる場所を確認することが出来た。やはり滑り台の出口はそれほど広い場所ではなかったが、問題は自分の立っている足元だった。
「うわぁ、これは流石に予想外」
足元に広がっていたのは無数の骨。
それも十や二十では済まず、おそらく数百はくだらないだろう。落ちている骨の形状や大きさからして餌食となっているのは、ネズミといった小動物の物と推測できる。牛のような大型の物はそれほど多くはない。
「これがクッションになっていたのか……複雑だ」
良かったと思う反面、やるせない気持ちになる。
兎も角、ノエルは思考を切り替えると奥へと続く水路へと進んでいく。
パイプを触ってみて分かるが、どうやらここは鍾乳洞を加工して作られた水路のようだ。その証拠に途中から水路は途切れているが、壁の質感は同じだった。おそらく元々ホグワーツの地下にあった鍾乳洞を加工し、この場所を造ったのだろう。
道なき道を進むこと一時間が過ぎた頃、ようやく奥へとたどり着いた。
最初は行き止まりかと思ったが、近付いて触ってみれば目の前の壁が今までの鍾乳洞とは材質が異なることに気が付いた。表面には二匹の蛇が絡み合った彫刻があり、蛇の目には輝く大粒のエメラルドがはめ込まれていた。
「“開け”」
低く幽かな音が響く。
絡み合っていた蛇はまるで生を宿したかのように分かれ、両側の壁にあった穴の中へとスルスルと滑るように見えなくなった。そうすると壁に真っ直ぐな亀裂が走り、観音開きの門となってノエルを誘うように奥への道を開く。首筋に冷や汗が伝わるのを感じ、ノエルは深く呼吸をして奥へと入っていった。
門の奥は、これまでと景色が一変していた。
床は磨き上げられた大理石が細長い通路を奥まで伸び、その両端には蛇が絡み合った彫刻が施された石の柱が上へとそびえ、アーチを平行に押し出した形状をした天井からは妖しい緑がかった照明が空間を照らしていた。
明かりが不要となったので杖先の光を消すも、直ぐに反応できるよう仕舞わず奥へと進む。
何処かで水が漏れているのか、あるいは地下水が流れ込んできているのか、大理石の床は所々が水浸しとなっていた。自分の歩く音だけが反響する中を前へと突き進み、やがてノエルは最奥へとたどり着いた。
「これは……顔か?」
そこにあったのは、巨大な人の顔をした石像が鎮座していた。
おそらくはこの部屋を設計したであろう人物をモデルにしているのだろうが、ノエルとしてはあまりセンスがいいとは思えなかった。この空間の彫刻品や壁の装飾からも分かる通り、かなりの純血主義者であったことは間違いないようだ。
「生前に会えたとしても、共感はできなかっただろうな」
生憎と、純血に何ら興味はない。
「さて……“スリザリンよ。ホグワーツ四強の中で最強の者よ。我に話したまへ”」
ごごごっ、と音を立てて石像の口が開いていく。
口が開ききれば、奥からズルズルと音を立てながら何かが這い出てきた。
「“我を目覚めさせし者よ”」
這い出たのは、巨大な大蛇だった。
人を丸呑み出来てしまいそうな程の巨体、その長い胴体で蜷局を巻きながらこちらを見下ろす。
「“我は毒蛇の王、バジリスク。サラザール・スリザリンの残せし遺産なり”」
常人には聞こえない音が響いてくる。
重みのある荘厳な声となって、ノエルの鼓膜を打ってくる。
「“新たな継承者よ、命じるがよい。我は汝の命に従う”」
「“いや、特にはないかな”」
「“何? ならば何故、我を目覚めさせたのだ?”」
「“目的としては確かめたいことがあったからだ”」
そう答えると、ノエルは頭の後ろに手を回した。
バジリスクが見詰めていると、しゅるっと眼帯を外してみせた。
「“何を! 我の眼には貫いた者を即死させる死の呪いが!”」
「“心配ない。俺も、同じものを持っている”」
そう言って見返す瞳は、金色の輝きを放っていた。
バジリスクの瞳を直視しても、ノエルが命を落とすことは決してない。
何故なら、彼もまた――。
「“我と同じ、直死の魔眼!”」
「“そう。これが、俺に掛けられた呪い”」
ノエルもまた、見た者を殺す瞳を持っていた。
これが生まれつきなのか、それとも後天的な理由かは定かではない。これはホグワーツにおいても極秘に数えられ、知っているのは校長であるダンブルドアと寮監のスネイプの両名だけに限られている。
「“さて、これで俺の目的も果たされた。バジリスク、お前に一つ問いたい”」
「“何をだ、継承者”」
「“おそらく、お前は生まれた時からここに閉じ込められていた筈だ。ならば外へ出たいと思ったことはないか? 誰に憚ることもなく、外を歩いてみたいと願ったことはないか?”」
「“我はここで生まれた。そしてここで死ぬであろう”」
バジリスクの瞳には諦めの感情があった。
たが、それと同じで憧れの色も混じっているのにノエルは気が付いた。
「“今すぐには無理だが、お前を外に連れていけると言ったらどうする?”」
「“不可能だ。これまで誰一人として、それを成し遂げた者はいない。ここで朽ちるのが定めなのだ”」
誰一人成功者がいないのは、当然のことだった。
この秘密の部屋を創設したサラザール・スリザリンを始め、ここを訪れた継承者たちは軒並みバジリスクを偉大なる創始者よりもたらされた、純血以外の魔法使いをホグワーツから排斥する道具としか見ていなかったからだ。
「“俺ならば出来る。いや、俺にしか出来ない”」
「“何故……そこまで我に拘る?”」
「“同じだと思ったからだ。だから俺はお前に手を差し伸べる”」
後はお前次第だ、と。
ノエルは手にしていたアイマスクをまた付け直す。
「“やはり我はこの城から出るべきではないと考える。しかし――もし、外に出ることが許されるのなら創造主が生きた世界を見てみたい。あの方が仰るように、本当にマグル生まれの魔法使いは淘汰されるべき存在なのか見定めたい”」
バジリスクの言葉を聞き、ノエルは微笑う。
来た道を真っ直ぐに辿っていき、あの長い長い坂道を
『アンタ、戻ってきたのね』
振り向けば、あのゴーストが見下ろしていた。
「ああ。何とか死ぬことはなかったよ」
『ふーん。それで? 孔の底には何があったのよ?』
「単に何処までの深い下り坂があって、そこの奥には大昔の爺さんが残した自画像があった」
『何それ? じゃあそこはナルシストが隠したプライベートルームだった訳?』
嘘は言っていない。
ただ単に、
「そういうことだ」
開いていた孔が閉じ、元の洗面台へと戻っていく。
「これは秘密にしておいてくれ。偉人の名誉の為にも」
『別に言い触らす気はないわ。そんなくだらないものなら』
つまらないの、と言い残してマートルは去っていく。
「さて、あいつの為にも頑張りますかね」
新たな目標を得たノエルは、心機一転して前を向く。
因みに完全な余談であるが、スリザリン寮へと戻ったノエルは出迎えてくれたマリアより「何か下水道みたいに臭い」と言われたのが思いのほかショックだったらしく、着ていた服は即効で洗濯した上で魔法で臭いを消滅させた。そして全身は擦りすぎたせいで真っ赤になってしまった。
そんなやり取りもありつつ、クリスマスの夜は過ぎていった。
今回は前作で書かなかったバジリスクとのやり取りを上げました。
バジリスクとノエルの初めての出会い、そして隠されていたノエルの瞳の正体が明かされました。前作では言ったと思いますが、ノエルは瞳をある程度は制御できるのでハロウィーンに出てきたトロールを痺れさせる程度で済ませています。
クリック? クラック! また今度!