ハリー・ポッターと呪われた瞳ーInnocent Red 作:轟th
まぁ、中国地方に行けたのは良かったけど、休日返上での半月以上の連勤はやはり精神的に宜しくないですね。肉体的に動かせるけど、気持ち的にだるくなってきますね。獺祭、美味しかったなぁ……。
閑話休題。
気が付いたら梅雨が明け、もう夏が目の前まで着ている。
夏、暑い、アイス、両涼み、水着……はっ、水着!
いや、駄目だ……
もっと成長してからでないと……成長?
では、本編をどうぞ。
学期末試験まで残り一週間となった日の夜。
いや、もはや日付も跨いだので深夜と呼んだ方が正しいだろう。当然そんな時間帯となれば夜更かしでもしてない限り、生徒たちは自分の部屋にて寝床に横たわって夢の中を揺蕩っていることだろう。
ノエルとて、それは例外ではない。
彼もまた他の生徒と同様に、眠りの底へ沈んでいた。
のだが。
「―――、―――!」
無粋にもそれを遮る者がいた。
何かを叫びながら、ゆさゆさとノエルの身体を揺する。
そんな状況下でも寝続けられる程、無神経ではなかった為、ノエルの意識は急速に浮上していく。
「起きてくれ、頼むから!」
「……う、あ……何だ?」
重たい瞼を持ち上げれば、目の前にいたのはマルフォイだった。
薄暗いのと寝起きだったので確証はなかったが、自分を起こそうとしているマルフォイの表情は随分と焦っているように見える。普段のマルフォイしか知らなければ驚くだろうが、本来の彼は厚顔不遜な臆病者だ。
おそらく、何か怖い思いでもしたのだろう。
「何だマルフォイ。人を叩き起こして」
「も、森に、化け物がいたんだ!」
「森? 化け物?」
はて何だったか、と頭を掻く。
やはり寝起きだった為か、ノエルはそれを思い出すのに暫しかかった。
「………ああ、森に行ったのか」
今夜、マルフォイは先日の罰則を受けに行った。
夜の二十三時に玄関ホールに来るように呼ばれていたのだが、どうやら向かった先はホグワーツの裏にある広大な森だったようだ。しかし、そこが決して只の森ではないことは今年入学した一年生ですらよく知っていた。
そこは『禁じられた森』、ユニコーンやケンタウロスといった多種多様な魔法生物が生息している場所だ。当然、独自の生態系を形成しているのでホグワーツの教員ですら生息している個体を把握しきれていないので、基本的に生徒の立ち入りは禁止されている。
「何で森に入ったんだ?」
「あ、ああ。実は……」
マルフォイはゆっくりと事情を説明し始めた。
ここ最近、森に生息するユニコーンが何者かにより襲われる事件が発生しているらしい。なのでマルフォイたちに科せられた罰則は傷付けられたユニコーンを見つけ出して保護、場合によっては犯人を見つけ出して捕まえることだった。
そして捜索を初めて一時間が経った頃、ユニコーンを見つけることができた。
ただし、状況は最悪だった。
発見したユニコーンは既に息絶え、その血を啜る化物だった。
マルフォイは即座に方向転換して逃げ出したので、それ以上のことは何も知らない。ただ一緒にいたポッターは、偶然にも通りかかったケンタウロスにより命拾いをしたようだ。しかしこれ以上は危険と判断し、夜の探索は終わりとなった。
「あ、あれは吸血鬼にちがいない!」
「吸血鬼に襲われ、殺られるほどユニコーンはやわじゃないぞ」
何より、吸血鬼は一角獣の血など飲まない。
そんな“罪深いこと”など、如何に血を欲する鬼とて決して行わないのだ。
「じゃあ、あれは何だったんだ!?」
「落ち着け。今夜見たことは忘れるんだ。そして寝ろ」
「……わ、解った」
マルフォイは素直に布団に入ると、心身の疲労からかあっと言う間に眠りに就いた。
それを見届けたノエルはため息をこぼすと、頭を掻いた。
「ユニコーンの血? そんなの誰が飲むってんだ」
まともな神経をしていれば、誰もしない凶行だ。
ユニコーンはこの世界において、最も純粋で、最も無垢な生物だ。その角や血液、果ては鬣の一本一本にさえ強力な魔法特性を有している。なので何らかの魔法薬の材料や杖の芯として用いられるが、その血を口にする者は誰もいない。
その血は死の眼前に控えた者さえ、一時的に生き存えらせる。しかしそれはユニコーンを殺すという無常を行わなければならず、口にした者はその瞬間から呪われ、生きながらにして死に瀕することとなるのだ。故にユニコーンの血とは奇跡の妙薬ではなく、飲んだ者を死へと追いやる劇薬でしかない。
そんなものを、誰が好き好んで口にする?
例え一時的に生き存えて、その先に何を求める?
マルフォイの話では、事件はこれが初めてではなかったとのこと。
「死に瀕しながら、ここに留まっている?」
何故か―――何かを求めているから。
何を―――死すら覆す妙薬を。
「あー……駄目だ。情報が足りない」
謎を解く為のピースが不足している。
おそらく、それは重要なパズルの一角の筈だ。
「……仕方ない。タイミングを見てダンブルドアに訊ねてみるか」
今は目の前に迫った試験に集中しなければ。
そう思いながら、ノエルはベッドの上に寝転がって目を閉じた。
瞬く間に日は過ぎ、学期末試験は始まった。
夏が眼前に迫っていることを誇示するかのように茹だるような暑さの中、大教室にてカンニング防止の魔法がかけられた特別な羽ペンを手にして生徒たちは汗を流しながら問題用紙と向き合って必死に解いていた。
実技も然り、生徒たちは暑さと緊張に板挟みになりながら試験をこなしていく。
妖精の魔法の試験では、パイナップルを机の端から端までタップダンスをさせられるかを一人一人見られ。
変身魔法の試験では、ねずみを「嗅ぎたばこ入れ」へと如何に美しく変えられるかを判定され。
魔法薬学の試験では、「忘れ薬」を作る内容では必死に思い出そうとする生徒をスネイプ先生が後ろから監視していた。
「あー……ようやく、終わった」
最後の試験を無事におえ、マリアは一人廊下を歩いていた。
「鍋が勝手に中身をかき混ぜる大鍋」を発明した風変わりな老魔法使いたちに関する論文を書く内容だったが、ハーマイオニーと一緒になって想像していた狼人間の行動綱領や熱血漢の反乱などの内容が出なかったのは幸いだった。他の生徒は知らないが、少なくともハーマイオニーとマリアの二人は特に苦労することなく書き終えることができた。
試験から解放された生徒たちは思い思いに休息していた。
「ノエル、どうしたのかな?」
隣にいない友人を思い、マリアはため息をこぼした。
試験が終わるなり、彼は確認したいことがあるといって何処かに行ってしまった。ハーマイオニーもポッターたちに連れて行かれてしまったので、夕食までの残り時間を何処かで潰そうと考えて宛もなく歩いていると。
『我が忠実な下僕よ。首尾はどうだ?』
「万事、問題ありません。ご主人様」
曲がり角の向こうから、声が聞こえてきた。
片方は聞き覚えがあるが、もう片方は嗄れていて聞き取りづらい老人のものだった。
誰だろうと思いながら角を曲がるも人影はなく、何処だろうと周囲を見渡せば直ぐ近くの部屋の扉が僅かに空いているのが見える。普段なら無視するが、何故かマリアは気になってしまい扉の隙間から中を覗き込む。
(あれは……クィレル先生?)
あのターバンは間違いなくクィレル先生だ。
しかし居るであろう相手の姿は、どういうわけか見当たらない。
『最大の障害であるダンブルドアは魔法省に呼ばれて行った、そうだな?』
「ええ、その通りで御座います。どうやら“アレ”の安全を確認の為のようです」
『クックク、天は俺様に味方したようだ。今夜、ダンブルドアはホグワーツにいない!』
謎の声の主の高笑いが響く。
どうやらクィレル先生たちは何かを画策し、それを今夜実行するつもりのようだ。
(これは……拙いな)
何を企んでいるかは分からない。
しかし、総じてそうした者は計画がバレて失敗しないように動くだろう。となれば秘密を知ってしまった者を見つけたらどうするか? 口封じに殺すか、あるいは捕まえて何処かに隔離しておくかの二択だ。
後始末が楽なのは後者だが、後々を考えれば楽なのは前者だ。
クィレル先生が生徒を手に掛けるとは思わないが、この謎の声の主は分からない。
ならば気づかれぬ内に逃げるが吉と、そう思い一歩を踏み出した――。
『ようやく、このヴォルデモート卿が蘇るのだ!』
その、寸前で。
耳を打った言葉に、己の意思とは無関係に足は止まった。
(今のって、どういう……)
思わず足を止めたのが悪かったのか。
魔法によりピカピカに磨き上げられた床の上を靴底がキュッと音を立てた。
「誰だ!」
物音に気付いたのか、クィレル先生が扉へと飛んでくる。
教室の扉の前では隠れる場所も逃げる時間もなく、マリアの目の前で扉が開かれた。
「ミス・エバンズ!?」
「ど、どうも、こんにちわ……いい天気ですね、先生」
何とか話を反らそうと試みる。
クィレル先生も、目の前のマリアに戸惑っている様子だった。
これなら、あるいは逃げ出すことも――。
『何をしている、捕らえるのだ』
「っ、………御意、我が主」
クィレル先生の手が伸びてくる。
ああ、これは今日の晩御飯はお預けかなとぼんやり思いながらマリアの意識は闇に沈んだ。
という訳で、マリアちゃんは捕まりました。
一巻にてダンブルドアが都合よくホグワーツから離れた理由ですが、尤もらしいのが上役が賢者の石が盗まれることを心配して呼び出したのではないかと考えたからです。てか無用心すぎるんじゃないかと思いますね。
あんな、子供でも解けてしまう障壁で何が防げるというのか。
クリック? クラック! また今度!