ハリー・ポッターと呪われた瞳ーInnocent Red 作:轟th
時間がある内に執筆しており、出来れば一章を終わらせます。
ああ、時間が足らないしパソコンが排熱でやばい。
閑話休題。FGO、水着ジャンヌが当たりました。
では、本編をどうぞ。
「これは、どういう状況なんだろうな?」
最深部へとたどり着いたノエルは目の前の光景に首をかしげた。
天井が高いだけのそれほど広くない部屋は壁そのものが発光しているのか、光源がないにも関わらず空間は見渡せる程に明るかった。そんな部屋の中央には金の装飾豊かな枠にはめ込まれた背の高い見事な鏡と、その前に立つボロボロなポッターと彼の腕を掴んで鏡に押し付けているクィレルの二人だけ。聞かされていたスネイプ先生の姿は部屋を見回しても何処にも見当たらない。
「これはこれはミスター・ルカニアじゃないか。どうしたんですか、こんな場所まで」
「ああ、クィレル先生。実はうちの寮のマリアがまだ帰ってきてなくてね。知りませんか?」
「ミス・エバンズですか。彼女なら私の教室にいますよ。運の悪いことに私とあの方の会話を聞いてしまったのでね、邪魔されないように眠ってもらっているよ」
「そうですか。なら良かった」
「さあ、早く戻りなさい。今は見逃しますが、次は罰則を与えますよ」
「それは怖い。では先生、また明日」
「ええ、よい夢を」
そう言って踵を返すノエル。
その後ろ姿に呆然としたポッターだったが、直ぐにハッとして声をあげた。
「ま、待ってくれ! お前、僕たちを助けに来てくれたんじゃないのか!?」
「いいや、別に。言ったように俺はマリアを探していただけだ。ここまで来たのは規則を破って禁じられた部屋に入っていくお前たちを見かけたから、連れ戻そうと思ったが……こうして先生と一緒にいるんだから必要あるまい?」
「こいつは! 賢者の石を奪おうとしてるんだぞ!」
「それが?」
「それがって……状況が分かっているのか!?」
声を荒げるポッターに対し、ノエルはため息をこぼした。
「別にクィレル先生が石を使って不死身になろうと興味はない。
「そうじゃない! こいつは、賢者の石をヴォルデモートに渡す気なんだ!」
「彼は十年前にお前が倒したじゃないか。死人に石をどう扱えと?」
「ああ、それは違うよミスター・ルカニア。あの方はここにいる。私の傍に常におられる」
「……先生。疲労のあまり幻覚でも見えましたか?」
「クックク。ならば見るがいい!」
クィレルはポッターの腕を離すと、ターバンを解き始めた。
しゅるしゅるとターバンは外されていき床に落ちると、顕になったクィレルの頭は随分と小さく思えた。そしてクィレルはその場でゆっくりと体を後ろ向きにした。
現れたそれを目の当たりにしたポッターは悲鳴を上げかけ、ノエルは目を細めた。
クィレルの後頭部にはもう一つの顔があった。顔のシワなどから、かなりの高齢だ。
「ハリー・ポッター………そして、ノエルよ」
嗄れた声が、囁くように言葉を発する。
竦み上がっているポッターは恐怖で縛られた足を何とか動かそうとしている。
「クィレル先生、随分と悲惨な状態ですね。聖マンゴ魔法疾患傷害病院に入院してはどうです?」
「相変わらず口が回るな。このヴォルデモート卿を前にしていると言うのに」
「貴方が彼の有名な闇の魔法使いですか。それにしては随分と惨めな姿をしてますね?」
「忌々しいが……貴様の、言うとおりだ。この身は……もはや影と霞に過ぎず、こうして誰かの体を借りて……初めて形になることができる。この数週間は、忠実なクィレルが森の中で、わしのためにユニコーンの血を飲んでくれた……おかげで、わしは強くなれた」
ああ、だから先生は体調が悪そうだったのかと今更ながら気付く。
「そして、命の水さえあれば……わしは自身の体を創造することができる! だから――」
そこでヴォルデモートはポッターの方を向いた。
ポッターは咄嗟に、ポケットの中に入っているものをズボンの上から押さえた。
「その賢者の石を、寄越すのだ」
「い、嫌だ……」
じりじりと後ろに下がる。
「無駄なことはよせ。命を粗末にするでない」
「あれだけ虐殺してきた帝王のセリフとは到底思えないな」
「あれは、愚かにもわしに歯向かったからだ。わしに従えば、安息を与えてやると言うのに」
「代わりに下僕となれと? 毎日を死んだように生きるのが幸福だと?」
すっと杖をヴォルデモートへと向ける。
「………わしに、歯向かうと?」
「少なくとも、そこにいるポッターは同意見みたいだぞ」
見ればポッターも敵意丸出しの目をしていた。
数的に見れば二対一とこちらが有利に思えるが、子供と大人では同等とは云えない。
「……そうして貴様は、またしてもわしに逆らうのか?」
「生憎と俺の意志は俺が決める」
「よかろう。ならば二人まとめて死ぬがいい! クィレル!」
主の命に、下僕が飛びかかってくる。
どうやら対して魔法も使えないポッターを後回しにしても問題ないと判断したのか一直線にノエルに向かって飛び掛ってくるが、ただ杖を構えることもなく真っ直ぐに突っ込んでくる相手に遅れるノエルではない。
「
「――!」
だがクィレルは杖なしで魔法を放ってきた。
声を封じられては呪文を唱えることはできず、その隙に組み付いたクィレルにより手から杖を弾かれてしまう。ノエルの上に馬乗りになると、クィレルはノエルの顔を殴りつけ始めた。子供と大人では体格も力も劣っているのでノエルではクィレルを押し退けることはできず、ただ防御に徹するしか出来ずにいた。
「や、やめろ――っ!」
それを止めようと、クィレルにポッターがタックルをする。
横合いからの衝撃にノエルの上から転げ落ちたクィレルは、血走った目でポッターを睨むとその頬を殴り付けた。そして尻餅をついたポッターにのしかかると、両手を首にかけた。何とか逃れようと首を締めてくる右手を掴むと――。
「ぎゃあああああああっ!」
クィレルが絶叫を上げて飛び退いた。
ポッターが咳き込みながら見上げれば、クィレルの左手は赤く焼けただれ、右手に至っては手首から先はまるで石化したように砕けていく。両腕に走る痛みと激痛に、クィレルは目の前の見たこともない魔法に混乱しながら悲鳴を上げた。
「私の手が! なんだ、この魔法は!?」
「愚か者め! 魔法でさっさと殺すのだ!」
「させるか!」
呪いを放つ直前、倒れていたノエルがクィレルの足を払った。
そのまま前のめりに転ぶクィレルの顔面へと、待ち受けていたポッターの両手が触れた。
「ああああああっ!!!」
ポッターに触れられた箇所は右手と同じように土気色となり、ドサッと床に倒れた衝撃により全身が跡形もなく砕けてしまう。その場にはクィレルが身に纏っていたローブと、小山となった灰のみがその場に残された。
ドサッと音を立ててポッターが倒れる。
痛む身体を引きずって確認してみれば、どうやら気を失っているようだ。呼吸は正常なので一先ず命に別条はないようだが、見た目に酷い傷がないならば気絶した理由としては疲労か緊張の糸が切れたかのどちらかだ。
「結局……取り越し苦労だったのか?」
思わずため息をこぼし、その場に座り込んだ。
当初の目的であるマリアの居場所が解っただけ良かったと思うべきなのだろうか。
そんなことを考えていると、ポッターの直ぐ傍に何やら血のように赤い石が転がっているのが目に入った。何気なく手に取って眺めてみる。手にしてみると分かるのだが、触れているだけで心地よい温もりが石から伝わってくる。
「これは……」
「それが、賢者の石じゃよ」
扉の方から聞き慣れた声が聞こえてきた。
振り返ってみれば、そこにいたのは想像通りダンブルドア校長だった。彼はノエルの直ぐ傍まで歩んでくるとその隣に腰を落とした。
「これが噂に名高い賢者の石か……随分と小さいんだな」
「真実とは大抵、そんなものじゃよ。人は自然とそれへのイメージを捏造する。例えば不老不死を与えてくれる聖杯の話を聞かされた者は、その殆どが聖杯を美しい装飾が施されている荘厳な形をイメージするじゃろう。しかしそれは仕方のない話なんじゃ。大抵の物語や伝承などは筆者により大なり小なりの改変が施されているからの」
「本当の姿は、実際に目にしないと分からない」
「そういうことじゃ」
手の中で石を転がしながら、ノエルは口を開く。
「随分とボロボロじゃのう?」
「ちっ……クィレルに殴られたんだ。おかげで口の中も切れた」
「ほっほほ、災難じゃったのう」
「災難なのは死んだクィレルの方だろう」
チラッとクィレルだったものを見る。
これではまともな葬儀など執り行うことは出来ないし、親族がいたとしても二度と彼の顔を見ることは叶わない。
「ああ……とても残念なことじゃ。一年ほど前から様子がおかしいとは思っておったが、よもや頭部にヴォルデモートを寄生させておったとは思わなんだ。闇の魔術に関心を持っておったのが仇となってしまったのかもしれん」
「もう真実は闇の中か……それで、石は今後どうするんだ?」
「破壊することにしたよ。フラメルとも話し合ったが、それがより良いと思ったのじゃ」
ヴォルデモートの企みは失敗した。
しかし賢者の石が今後も存在する以上、また狙ってくる可能性は高い。今回は運良く守りきることができたが、ヴォルデモートが次に準備を整えた上で襲撃してきたら奪われない保証は何処にもない。であるならばいっその事、石を破壊してしまった方が確実ではある。
「成る程………
ポイッと頭上に放り投げ、呪文を唱える。
それだけで錬金術の集大成と云うべき奇跡の結晶体はいとも容易く砕かれ、さながら東の国で有名な空に咲く火の華のような、何処か幻想的な光景となって石は細かい欠片となって弾けるように周囲へと散る。
「……さて、そろそろ地上に戻るとするか。ハリーはわしが連れて行こう」
ダンブルドアが杖を一振りすると、ポッターの身体は独りでに浮かび上がる。
そうして出口へと向かうダンブルドアの背中を見ながら、ノエルはある疑問を口にした。
「ダンブルドア……あんた、全部知ってたな?」
「………」
「今日、クィレルが賢者の石を奪いにここに来ることを。そしてそれを阻止するべく無謀にもポッターたちが禁じられた部屋に入ることも、全て」
「ほぅ……どうして、そう思うのかね?」
ダンブルドアの声色はひどく落ち着いていた。
「ここまで来るときに設置された守りは全部で七つ」
第一の門、三つ首の番犬フラッフィー。
第二の門、スプラウト先生の悪魔の罠。
第三の門、フリットウィック先生の空飛ぶ鍵。
第四の門、マクゴナガル先生の巨大チェス盤。
第五の門、クィレル先生の門番トロール。
第六の門、スネイプ先生の魔法薬による論理パズル。
第七の門、ダンブルドア校長のみぞの鏡。
「この内、二から五までは一年生でも突破できるレベル。そしてポッターたちはハグリッドと交友があるから、フラッフィーについて聞き出せる。魔法薬もハーマイオニーのように頭の回る人間なら解くことができる。そして最後の一つ………みぞの鏡については、おそらくポッターはあの鏡について事前に知っていたんじゃないか?」
「素晴らしい。九十点といったところじゃな」
ほぼ満点だと、ダンブルドア校長は微笑んだ。
「クィレルの様子がおかしいのは気付いておったが、よもやヴォルデモートに憑かれているとは予想外ではあった。あの鏡から石を取り出すのは、心から石を見つけることを望んだ者だけなんじゃ。それを使用することを考えた者には、命の水を飲んで不老不死を得ている姿や石ころを黄金に変えて巨万の富を得ている姿だけしか見えない」
「ポッターは純粋に石を見つけることを望んだか」
「そういうことじゃ。さて、ここまで推測した君はわしが何を望んでいると思うかね?」
「………ポッターの成長か」
普通の学校生活では経験しないことを体験させる。
それが死と隣り合わせのような状況から生き延びたときの精神は以前よりも高くなる。
「ダンブルドア、一体ポッターに何をさせる気なんだ?」
「今はまだ……わしの口からは何も言えぬ」
「そうか……最後に一つ、ヴォルデモートと俺は接点があるのか?」
闇の帝王が死んだのは十年も前。
つまり会っていたとしても、その時ノエルはまだ一歳の赤子だ。
しかし、あのヴォルデモートの発言は違っていた気がする。
「それも、答えられぬ」
「………はぁ、秘密主義なじいさんだ。だから腹黒いって言われるんだ」
「ほっほほ」
「ハゲロ(ボソッ)」
小さく悪態をつき、ノエルもまた出口へと向かう。
途中、待っていたハーマイオニーとウィーズリーを回収して一行は地上へと戻った。
今更なんですが、これハリーたちが失敗したらどうするんでしょうね?
試練のつもりが失敗して死亡、あるいは恐怖と責任感に耐え切れず何もかも投げ出して逃げ出してしまったらダンブルドアはどうしたんでしょうね? まぁ、前者の場合は監視しているでしょうから死ぬ前に救出するでしょうが。
メタい話、そんなことはないでしょうけど。
クリック? クラック! また今度!