ハリー・ポッターと呪われた瞳ーInnocent Red   作:轟th

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この場を借りて、御礼申し上げます。ありがとうございます。

では、本編をどうぞ。


死の呪いを持つ少年

 そこはイングランドの某所。

 シャーウッドの森の更に奥地、凡そ一般人が決して近付かぬ土地。表向きは国立自然保護区として国により管理された場所だが、それはあくまで“マグル界”における話。本当の姿は多種多様な魔法植物が自生し、多くの危険な魔法生物が暮らす立ち入り禁止区域。魔法使いですら用事があっても近付きたくはない区画。

 しかし奇妙なことに、そこには一軒の屋敷があった。

 それほど広くはない庭が一つある、西洋建築の一般的な建物。建っている場所さえ違っていれば何ら可笑しなことはないのだが、如何せん場所が場所なだけに違和感しか感じられない。おそらくは住んでいるのは危険と隣り合わせな仕事をしている魔法使いか、危険を危険と感じられない頭の螺子が三本ぐらいは軽く抜けている者だろう。

 とそこへ、屋敷の傍に空から何かが舞い降りた。

 頭部と前足に両翼は大鷲、胴体と後ろ脚に尻尾は馬というグリフォンと雌馬の間に生まれた半鳥半馬の生き物――ヒッポグリフだ。彼らはとても誇り高く、例え言葉が通じてなくとも自分たちを侮辱した者には容赦なく襲い掛かる。グリフォンほど気性が荒くなく、乗馬として用いれるので一部の魔法使いの中には所有している者もいる。因みに所有者には、マグルの目に付かないよう「目くらまし術」を毎日かけることが義務付けられている。

 野生のヒッポグリフがやってきたのかと云えばそうではないのは、その肩から特注の赤いポストマンバッグがぶら下がっていることから手紙か何かを運んできたことは容易に想像がつく。ヒッポグリフは器用にカバンを開けると、中から便箋を一つ取り出して目の前のポストに投函した。それから大きく嘶くと地を蹴り、羽を羽ばたかせて大空へと舞い上がっていく。

 少しして、屋敷から誰かが出てきた。

 出てきたのは研究者のような風貌の魔法使い――ではなく、白髪の男の子だった。まだあどけない顔立ちから年の頃は十代前半、肩に触れる程度で整えられた流れるような白髪。やや長めの前髪の隙間から覗く瞳は、知性に満ちた澄んだ青色をしている。

 男の子はポストから便箋を取り出すと、不思議そうに首を傾げた。

 

「手紙……珍しい」

 

 ここに何かが届くことは、先ずない。

 場所が場所なだけに魔法使いを含めて普通の方法では誰も近寄れないが、そもそも住所等を役所に登録すらしていない。だから広告やチラシといったものが投函されることがなく、少なくとも男の子が知る限りでは一度も使われていない。もはや飾りとすら思われていたポストが、今回初めて使用された。

 誰からだろうと差出人を見て、男の子は納得した。

 

「なんだ、ダンブルドアからか」

 

 相手が知己だと知り納得する。

 仮にも相手が数々の業績を築いた二十世紀で最も偉大な魔法使いだと知っていれば、彼から直接手紙が送られれば驚くなりするものだが、幼い頃から自分の面倒を観てきてくれた相手なので仕方がない。彼にとってダンブルドアとは、時折り手土産をもっては来ては居間で寛いで帰っていく人物なのだ。勝手知ったる他人の家といった感じで、居間のテーブルに常備されている飴やお菓子は彼のための物だったりする。

 封を切って中身を確認すれば、羊皮紙が一枚入っているだけ。

 

『親愛なる我が友、ノエルへ。

 先ずは和が校へ入学することへのお祝いの言葉を贈ろう。子供の居ない身からすれば、まるで孫が入学するような気分じゃ。ここでわしの長い話を書いても嫌がって飛ばすじゃろうから、簡潔に用件だけを伝えることとする。

 実は今年度ホグワーツに入学することになった女の子を一人、ダイアゴン横丁へと案内してほしいのじゃ。その娘は訳あってマグルの中で魔法とは無縁に暮らしており、普段なら手空きの教員を派遣するところだが諸事情からそれも出来ぬ。どうしたものかとワシも頭を悩ませたが、そこで頼りになる君のことを思い出したわけなのだ。君には彼女と一緒に横丁を回って入学するに必要な物を買うのを手伝ってほしい。』

 

「諸事情ねぇ……まぁ、人のことは言えないか」

 

 自虐的な笑みを浮かべる。

 そこへバキッと音を立てて、森の中から一匹の魔法生物が姿を現した。それは鼻の上に大きな角と長い尻尾を持ったサイにも似た大型の灰色の生物――エルンペント。この魔法生物は大概の呪文を撥ね付ける分厚く硬い皮膚を持ち、魔法使いからも忌避される存在である。本来はアフリカ等の熱帯地帯に生息するのだが、この森にはこうした魔法生物も数多くいる。この個体もまたその内の一体ということだ。

 

「払いの結界を張っていたが……迷い込んだか」

 

 この屋敷の周囲には動物よけが張られている。

 結界は許可のあるモノ以外の立ち入りを禁止するものだが、エルンペントが迷い込んできていると云うことは結界に穴が空いていることになる。後で確認しなければと、危険な魔法生物を前にして男の子は考えていた。

 

「人の言葉が通じるか分からないが、警告はしておく。今すぐに向きを変えて俺の前から去らなければ命を落とすことになる。と言ったはいいが、まぁサイもどきを相手に意思疎通が出来るわけもないか」

 

 やれやれと肩をすくめる。

 その行動を馬鹿にしていると取ったのか、エルンペントは前足で地を削る。明らかに突進体勢だと云うのに、やはり男の子は動じる気配はない。ただ静かに、手紙を持っていた手を下ろしてエルンペントを凝視する。

 

「“死ね”」

 

 ただ一言。

 告げられたのは、終わりを意味する言葉。

 “金色の瞳”に見詰められたエルンペントは、音を立てて地面に横たわった。

 あらゆるものを貫き通す角も、あらゆるものを破裂させる毒液も彼の前では意味を成さない。

 

「だから言ったのに」

 

 そう口にする彼の表情は、悲しげであった。

 この“呪い”こそが、男の子をこんな辺鄙な場所へと縛る理由。街中で暴走しようものなら呪いは有象無象の区別なく、立ちどころに付近の命を全て刈り取ってしまう。たちどころに、傍にいる命ある者全てを殺してしまうことだろう。こんなはた迷惑な怪物を野放しにできる訳がない。

 

『君のことだから、ワシの頼みを聞いてくれると信じておる。ついては下記の住所に暮らすマリア・エバンズの面倒をお願いする。彼女には事前に案内人の話はしておるから、安心して八月三日に向かってほしい。それと彼女の金庫の鍵も同封しておくので、その辺りの説明もしておいてくれると助かる』

 

「いや、承認してないよ……八月三日?」

 

 はて、と首を傾げる。

 彼の記憶が間違いでなければ、自分が入学案内の手紙を貰ったのが七月の末だったはず。そこから今日までの経過した日数を考えると、本日の日付は……。

 

「って、今日じゃねぇか!」

 

 慌てて屋敷の中へと戻る。

 手紙の通りなら、相手の少女は自分のことを待っていることになる。

 

「クラウス、クラウスは何処だ!?」

「はい、こちらに」

 

 彼に呼び出しに応じ、従者が姿を現した。

 まるで魔法のように現れたのは、茶色い顔にテニスボールくらいの大きな目をした顔が割れて見えるほどに大きな口とコウモリのような長い耳を持つ、細く短い手足に長い指が特徴的な小さく醜い人型の魔法生物――屋敷しもべ妖精だ。

 彼らは特定の魔法使いを自身の「主人」とし、その主人や家族に生涯仕えて日常の家事や雑用などの労働奉仕を行うことを生きがいとする。また隷従の証として衣服の代わりに枕カバーやキッチンタオルを身に付けており、妖精にとって服を与えられることは「解雇」を意味するが、クラウスは例外的にも燕尾服を着ている。これは男の子からの命令であり、不本意であっても従わなければならない義務がある。

 

「どうなされました、若様。そのように声を荒げて」

「今すぐに、ここに書かれた住所に飛んでくれ!」

 

 妖精は魔法使いとは別に、独自の魔法を有している。

 基本的には家事などに用いたりするが、特定の場所への転移(とぶ)もできる。

 

「畏まりました」

 

 男の子の手を取り、妖精は屋敷から姿を消した。

 

 

 

--マリア・エバンズ--

 

「もう八月か……」

 

 あれから数日が過ぎた。

 既に誕生日の三十一日を超えて、既に八月の三日になっている。別に彼女――マリア・エバンズには予定などないので、案内人も急に来られたとしても問題はない。ただいつ来るとも分からない相手を待ち続けると云うのは、意外にも精神的に疲れるのだ。相手が誰かは知らないが、来るなら早く来て欲しいと考えるのが人間だ。

 手持ち無沙汰から、先日貰った教材リストを何回目かになる確認をする。

 

「普段着用のローブが三着、三角帽に安全手袋と冬用ローブが一つずつ。教科書は各教科の物が計八冊必要で、その他のものが杖や大鍋に薬瓶等が色々と……これ、ロンドンのどこで揃えられるんだろう?」

 

 ロンドンには、これらを売る怪しげな店があるのだろうか。

 いや、もしかしたら自分が知らないだけで、ロンドンには魔法使いの店があるのではないか。

 今でもあのスネイプという人物が自分を謀っているのではと疑っているが、こんな孤児一人を騙して何の意味があるのかと思うようになり、深く考えないようになっていた。嘘だったら嘘で別に構わないからだ。

 そんなことを考えていると。

 

「ドール、お客さん」

 

 孤児の一人が声をかけてきた。

 それだけ伝えると孤児の子供は自分の作業へと戻っていく。

 

「お前がマリアか」

 

 果たして玄関に居たのは、一人の男の子だった。

 自分とは正反対の真っ白な髪と青い瞳をした、自分と同じぐらいの年頃の男の子だ。ただ服装はスネイプ教授とは違ってジーンズにパーカーと、予想していたものとは違ったのでマリアは意外と普通なことに驚いた。

 

「違うのか?」

 

 無言のマリアを訝しみ、男の子は首を傾げる。

 

「違うのか? さっきの子供には、マリアを連れてくるよう頼んだが?」

「……合ってる。ボクが、マリア」

「そうか。俺はノエル、お前と同じで今年ホグワーツに入学する」

 

 宜しく、と手を差し出してくる。

 その手を握り返しながら、マリアはこれが初めての握手だと気が付いた。

 

(他人との繋がり……変な感じ)

 

 手から伝わる温もりに、違和感を覚える。

 けれども、決して気持ちが悪いとは不思議と感じなかった。

 

「遅れてすまなかったな。実を言うと、俺もついさっき知ってな。これでも急いで来たんだ」

「ううん、大丈夫」

「そうか。ならお詫びに、いろいろと教えるよ」

 

 行こうか、と二人は出発する。

 繋がれた手を引っ張られるようにして、少女は少年の後を追う。

 

 これが、これから始まる物語の主役たちの出会いである。

 

 それは決して街角でぶつかるような運命的なものではなく、とても落ち着いたものだった。

 

 しかし、二人の知らないところで、物語は静かに幕を開けた。

 

 さぁ、準備は宜しいか。

 

 全ては神のみぞ知る(Deus Ex Machina)

 

 

 




今更ながら、最後の一文はないな。
中二病を未だに患っている自分にあきれて何も言えない。

閑話休題。
最近、仕事中でも執筆の内容を考えている自分がいます。本当は危ないから辞めるべきなのですが、こう、思考する時間があるとどうしても考えてしまう。妄想が捗って仕方がありません。

クリック? クラック! また今度!
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