ハリー・ポッターと呪われた瞳ーInnocent Red   作:轟th

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平成30年が始まって、早一ヶ月。
時間が経つのが年々早く感じるようになってきました。
同時に、毎年この時期になると寒さをより感じるようになった。
風邪、引きそう……。

では、本編をどうぞ。


滲み出す違和感

 魔法界における移動手段は幾つかある。

 例えば、魔法使いにとってお馴染みの箒や、ドラゴン等の魔法生物に乗って移動する方法。

 例えば、乗用車やバイク、果ては馬車や帆船に魔法をかけて空を移動する方法。

 例えば、定められた時間に、定められた場所に到着できる瞬間移動の魔法。

 例えば、ネットワーク化された魔法使いの暖炉を行き来する魔法薬。

 例えば、特定の場所から姿を消し、別の場所に出現する魔法。

 大体はこんなところだろう。

 さて、そんな中でホグワーツでは魔法使いにとって必須とも言うべき箒を使って空を飛ぶ方法を勉強する。習うといっても魔法使いにとって学ぶべきは他にも沢山あるので、勉強するのは一年次のみとされている。マグルで例えるのなら自転車の乗り方を教わるようなものなので、そこまで授業する必要性がないのだ。

 だからか、それほど不安そうな生徒はいない。

 ………いや、一人だけいた。

 

「……………」

 

 表情は相変わらずの無表情。

 しかし額には薄らと冷や汗が伝い、よく見れば顔色も何処となく悪い。

 

「マリア、大丈夫か?」

「………何が?」

「いや、顔色が悪いぞ?」

「………気のせい」

 

 と本人は否定するが、いつも以上に不健康そうだ。

 何処となく、不機嫌そうにも見える。

 

「もしかして……怖いのか?」

「怖い? ノエル、一体ボクが何を恐れているっていうのさ。何の確証もないのに、勝手に決め付けないで欲しいな。そもそもさ、魔法使いは箒で空を飛ぶものだなんて今時マグルですら信じちゃいないよ。ボクからしたら箒で空を飛ぶなんて正気の沙汰じゃないね。何でって? あんな安全ベルトも何もつけずに空を飛ぶなんて、落ちたらどうするのさ? なに? 万が一に落ちたとしても冷静に対処すれば怪我をすることなく地面に着地できる? ありえないよ。普通はそんな高い場所から落ちたら恐怖心で一杯になって、頭の中が真っ白になって地面に叩きつけられちゃうよ。知ってる? 300メートルの高さから空抵抗を有するボクたちぐらいの重さの物体が自由落下する場合に掛かる時間は、僅か十秒ほどなんだよ? たったそれだけの時間しかないのに、落ちてる人間が対処できると本気で思ってるの?」

「……………」

 

 早口で捲し立てられる。

 普段見ないマリアの様子に、思わずノエルも呆気にとられる。

 

「つまり、ボクは箒に乗ることに何ら意味を見いだせない」

「あー……うん、解った」

 

 どうやら、相当怖いようだ。

 確かに、何の訓練もなく生身の状態で宙に浮けば恐怖心を抱くのも無理はない。

 

「まぁ、考えすぎるなよ」

「………」

 

 そうこうしている間にも、二人を含めたスリザリン生たちは中庭に到着した。

 見上げた空は何処までも続く青が広がっており、時折吹く心地よい風が頬を撫ぜる。こんな天気に飛んだのなら、何処までも飛んでいけそうなくらい気持ちの良い日だった。飛行訓練するには申し分ない天候なことに、マリアは内心悪天候でなかったことを嘆いていた。雨でも降っていれば中止になっていただろうに。

 今日の授業はグリフィンドール生との合同であったが、中庭に先に着いたのはスリザリンが先だった。中庭には既に二十本もの箒が芝生の上に向かい合うように並べられている。棒は所々変色していて先端の方も少しボサボサとした感じが否めないが、それだけ多くの生徒たちに大切に使われてきた証拠だろう。マリアには箒の善し悪しは分からないが、そのことだけは分かった。

 スリザリン生たちは並べられた箒の片側に立って待っていると、少ししてグリフィンドール生たちが姿を現して残っていた箒の列の側に立った。

 そうして待つこと数分後、フーチ先生が現れた。

 

「全員揃っていますね。では、右手を箒の上につき出して、“上がれ”と言ってください」

 

 言われるがまま、全員が一斉に叫ぶ。

 マリアは小さいながらも上がれと言うと、直ぐに箒は飛び上がって彼女の右手に収まった。両サイドにいるノエルとマルフォイも同様らしく、箒を手にしていた。よく見れば一度で箒を手にできた生徒は少なく、大半の生徒の足元で箒は右へ左へとコロコロしていた。やがて全員が箒を上げることに成功すると、今度は跨ぐように指示してきた。スカートがめくれないように注意して跨ぎながら、マリアはこうしているとおとぎ話に出てくる魔法使いのようだと思った。実際、彼女は魔女なのだが。

 

「私が笛を吹いたら地面を蹴ってください。箒を左右にぐらつかないように押さえながら二メートルぐらい浮上し、それから少し前かがみになって直ぐに降りてきてください。いいですね、笛を吹いたらですよ。一、二、さ――」

 

 三の合図で笛を吹こうとした間際。

 極度の緊張感からか、あるいは無事に飛び上がれることへの不安からか、あるいはその両方だったのか。笛の音よりも早く、ネビルが地面を蹴って飛び上がってしまう。紐で引っ張られるように昇っていく。

 

「こら、戻ってきなさい!」

 

 フーチ先生の大声をよそに、ネビルの箒はどんどん上昇していく。どうやら箒を上手く制御できていないのか、彼は今までに感じたことのない高さに顔を真っ青に染め、声にならない悲鳴を上げていた。高度が五メートルに差し掛かった頃、遂にバランスを崩してしまい、箒から放り出されて真っ逆さまに地面へと落ちていく。そうして大きな音を立ててネビルは芝生の上に落ちてしまい、誰もが言葉を無くし辺りは静まり返った。

 やがて呻き声が聞こえてきたところで、顔を真っ青にしていたフーチ先生が駆け寄って容態を確認した。

 

「良かった。手首が折れただけですね」

 

 その言葉に、誰もがホッとした。

 フーチ先生は痛がるネビルを立たせると、医務室へと連れて行く事を告げる。

 

「それと、誰も動いてはいけません。もし勝手に箒を使って飛ぼうものなら、冬休みを迎える前にホグワーツから出て行ってもらいますからね」

 

 そう言い残し、医務室へと向かった。

 ふたりの姿が完全に見えなくなったところで、マルフォイが笑いだした。

 

「アイツの顔、見たか? あの大マヌケ」

「止めておけ、マルフォイ」

「何だ、ルカニア。アイツの肩を持つのか?」

「そうは言ってないが、陰口を叩くものじゃないと言っているんだ……ん?」

 

 と、そこでノエルが何かを見付けた。

 拾ってみれば、それは白い煙のようなものが詰まった――テニスボールほどの大きさをした硝子玉だった。それはネビルが今朝、祖母からふくろう便にて受け取っていた「思い出し玉」と呼ばれる代物だ。これを持っていると何かを忘れていた場合、中の煙が赤色になって教えてくれる。ただし忘れているのを教えてくれるだけで、具体的に何を忘れたかは不明なままだ。役に立つかどうかは定かではないので持っている人は多くはいない。

 ジッと眺めていると、煙が白から赤へと変化していく。

 

「ルカニア! それを返せ!」

「ポッター……これは、お前のものか?」

「違う。それは……ネビルのものだ」

「そうか。解っ――マルフォイ」

 

 放ろうとしたノエルのてから、マルフォイが横取りする。

 いつも通りの意地悪な笑みを浮かべながら、マルフォイは手にした思い出し玉を高々に持ち上げて観察する。赤色だった煙が元の白色へと戻っていく様が見える。

 

「マルフォイ、それをこっちに渡せ」

「ふんっ………それじゃあ、後でロングボトムが取れる場所に置いておくよ。そうだな、木の上なんてどうだ?」

「それを渡せったら!」

 

 ハリーが飛びかかるも、ヒラリと避けてマルフォイは箒に跨った。

 そうして慣れた様子で飛び上がると、姿勢を維持したまま高度を上げて先ほどのネビルと同じぐらいの高さにて止まった。

 

「ポッター、ここまで取りに来いよ」

 

 それは明らかな挑発であったが、ハリーはそれに乗った。

 マルフォイと同じように箒に跨ると、周囲の制止を無視して地面を強くけって飛び上がる。初心者らしく不安定であったものの、きちんと体制を維持したまま高度を上げる。

 

「マルフォイは兎も角、ポッターも素質があったのか」

「どうかしたの、ノエル」

 

 隙を見てハーマイオニーと話していたマリアが近付いて来る。

 どうやら騒ぎを聞きつけ、こちらに来たようだ。

 

「ああ、あそこを見てみろ」

「………何してるの、あの二人は?」

 

 見上げたマリアは眉をひそめる。

 

「んー、ネビルが落とした物の争奪戦……と言ったところか?」

「くだらない。先生に見付かったら怒られるのに」

 

 呆れた様子で呟く。

 面倒を起こすのは構わないが、自分を巻き込まないでくれ。

 そう言っているように聞き取れるが――。

 

「マリアはどうする?」

「……放っておけば、いいと思う」

「そうか。なら――何で“箒に跨って”いるんだ?」

「え―――」

 

 言われて、マリアは初めて気が付いた。

 いつの間にか手にしていた箒に跨っており、いつでも飛び上がる準備をしていた。

 おそらくノエルに止められなければ、自分は今頃地を蹴って飛び上がっていたことだろう。

 

「な、んで……」

 

 分からない。理解不能だ。

 

「一先ず、箒から手を放しておけ」

 

 言われるがまま、箒を掴んでいた手を放す。

 トサッと軽い音を立て、箒は芝生の上に落ちた。

 

「どう、して……ボクは」

 

 しばらくの間、マリアは呆然としていた。

 その後、マルフォイが投げ捨てた硝子玉を曲芸じみた動きでもって回収したハリーは中庭に現れたマクゴナガル先生により連れて行かれ、戻ってきたフーチ先生は既に事情を聴いていたのか特にハリーが不在なことを気にした様子もなく授業を再開した。最初は簡単な上昇と下降の基礎を繰り返したが、残り十分ほどを自由に飛行することを許された。とは言っても十五メートルほどの高さまで昇ったりしていた。

 

 




マリアは別に高所恐怖症ではありません。
誰だって幾ら下が河だとしても、紐無しでバンジーなんてやりたくないのと同じです。下手したら水面に身体を叩きつける羽目になります。
突然ですが、来月は仕事の関係で投稿ができないかもしれません。出来れば一回は投稿したいですが、わかりません。
ちょっと時間が足らないので、後書きも急ぎ足です。
すみません

クリック? クラック! また今度。
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