METAL GEAR NEXISーNew generation gearー   作:saver

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もう少し長くしようと思ったんですけど、キリが良いのでここで止めました。


第7話『Mission impossible(スパイ大作戦)

「今日はウチのスタッフ共々、よろしくお願いしますね」

「いえいえ!あのIAT社が作ったISの生整備を見れるってだけでも価値があるってもんですよ!どうぞこちらへ!」

 

ある日の放課後、私は本社より送られてきた専属スタッフを引き連れて整備課へと足を運んでいた。

セシリアさんとの戦闘により、戦闘不能とはいかずとも万全とは言い難い状態である[ヴァイパー]を整備する為だ。

 

四月も下旬に差し掛かる時にやっているのは、本来ならば試合から5日後には完成する予定だった整備部品の完成と到着が大幅に遅れた結果だ。

詳しく言うならば、上層部はクラス代表しか出場しないクラス対抗戦を私も出れるものだと勘違いしていたようで、その勘違いが正された結果としてパーツの状態に万全を期す為に遅れたのだが。

 

「では、ISを整備ハンガーに置いてください

待機状態のまま台に置いてくれれば、あとは勝手に展開されますので」

 

指示に従い、台座の上に待機状態の[ヴァイパー]を置くと瞬く間にISのパーツがハンガーに展開される。

通常のISとはだいぶ異なる仕様のなので少し不安だったが、無事に収まって良かったと安堵する。

 

「わぁ〜〜っっ!」

「これがあの!」

「この感情、まさしく愛ね!」

「……ではみなさん、よろしくお願いしますね」

「了解、それじゃあ仕事だ!かかれかかれ!」

 

そう言ってスタッフに指示を出したのは主任こと伊野部進だ、サイボーグ部品の多い[ヴァイパー]の整備に彼は欠かせないのと同時に、私の様子見も兼ねて来日したらしい。

 

「それと棗君、君の整備もやるから」

 

そう言って、ポンポンと肩を叩く仕草をする、仕事の合図だ。

 

「分かりました、お願いします」

「え!?ISのみならずIAT社製サイボーグも見せてくれると!?」

 

私がサイボーグであるというのは既に周知の事実だ。

そりゃあれだけ盛り上がっていたセシリアさんとの戦いでネイキッドモードを晒したのだから当然なのだが。

 

「そいじゃ、いつも通りお願いね」

「はい、主任」

 

制服を脱ぎ、ISスーツを着込んだのみの体を晒す。

整備課の面々はそれを見て目を輝かせていた。

 

「これが最新軍事医学の結晶……写真集以外で見るの初めて!」

「なんて美しい曲面加工……ウッ」

「写真!写真撮っていいですか!?」

「だーめ♡」

「ああんイケズゥ!」

「でも触るだけならいいよ」

「やったー!」

 

人の手足をオモチャにしないで欲しいのだが、今の私では文字通り手も足も出ないのでささやかな抵抗しかできない。

てゆうかサイボーグの写真集ってなんだ、需要なんて……ありそうだな、一部のマニアが大喜びしそうだ。

だが、この注目も必要なものだから我慢せねばならない。

 

スタッフが持ち込んだNCMS適合者専用の整備台にもたれかかると、主任が手早く端末を操作し、各所のメンテナンス用ハッチが開く。

ハッチの中にあるのは人工骨や人工筋肉を繋いでいる接合具である、それを外して引っ張れば私の手足が分離する仕組みだ。

普段は義肢をつけたままスキャンするだけなのだが、今回はパーツひとつひとつをじっくりメンテナンスする為に義肢を外すのである。

 

「はい、じゃあ外すよー……せーーーーのッ!」

「うっ」

 

手足が無くなる感覚というものにはだいぶ慣れたつもりだが、気持ち悪いものは気持ち悪いので少し苦手な瞬間だ。

接合部の断面に取り付けられたカバーにプラグが次々に差し込まれ、その都度なんとも言えない感触が走る。

 

「んっ……すいません、もう少し優しくお願いします」

「相変わらず苦手だねえ、いい加減慣れたら?」

「なら主任もサイボーグになりましょうよ、メンテナンスやってあげますから」

「僕はサイボーグで食ってるけど、サイボーグになる気は無いんだよねぇ……ほら、次は首と背中行くよ」

「はーい」

 

……さて。

 

首の付け根から尾骶骨にかけて繋がれた幾つものケーブル、殆どはシステムチェック用のものだが、頚椎に繋がれたものは外見を偽装した有線LANケーブルだ。

ケーブルはメンテナンスに用いるパソコンから[ヴァイパー]のハンガーを経由して整備課のサーバーに接続されている。

目的はただ一つ、そこから[ブルー・ティアーズ]と[白式]、運が良ければ[甲龍]のデータをコピーする為だ。

この学園にやってきた目的の一つ、産業スパイ活動である。

 

現状、NG2計画で開発が進んでいるメタルギア・ネクシス三号機、[スフィアード・ルーラー]のコンセプトは[ブルー・ティアーズ]と酷似した複数の大型遠隔操作式の子機を利用したオールレンジ攻撃を主体とした機体であるからして、開発部が[ブルー・ティアーズ]の情報を喉から手が出る程欲しがっているからだ。

 

[白式]に関しては世界唯一の男性パイロットに与えられた機体、それが例えポンコツだろうとも、その中身次第ではIAT社製ISの性能を向上できるかもしれない。

更に言うならば、近接特化型ISである[白式]のデータを用いて[ヴァイパー]の強化を出来れば最上である。

 

「(セシリアさんが整備課で装甲の換装やビットの諸設定を済ませたのは確認済み、[白式]だって少なくない傷を負っているのだから、メンテナンスの為にここを使っている筈だ……ならば、整備履歴から情報を辿れる筈)」

 

[甲龍]に関しては殆どデータがないので興味本位、良ければ開発の参考にする程度であるが、中国の代表候補生に与えられる機体……ハイエンドモデルでない筈がない。

 

「(正直一か八かだけど、鈴さんが編入してから既に3日、訓練は欠かさずやっているようだし、一度はここで整備を受けているはず……たぶん、きっと、おそらく)」

 

確実なのはクラス対抗戦の後なのだが、なにぶん鈴さんが編入してきたのが急なだけあって、日程の調整が上手くいかなかったのだ。

そもそも編入自体が寝耳に水であり、上も大慌てな様である。

 

「(まあ無い物ねだりをしてもしょうがないですし、盗れるものだけ盗っちゃいましょう)」

「それじゃあシステムチェックから始めるから、”お願いね”」

「はいはい、分かってますよ」

 

拘束バンドが身体に巻き付けられ、義眼メンテナンス用機器に偽装された脳波コントロール可能なヘッドギアが取り付けられる。

それじゃあ、電脳空間へとダイブするとしよう。

 

「(整備課のメインサーバーへアクセス……やはりシステムがアクティブなだけあって日替わりのパスワード認証だけか、運がいい)」

 

本来ならば虹彩、声紋、指紋、パスワード、IDカードからなる五重認証が必要なサーバーへのアクセスはその殆どをスルー、順調な出だしだ。

日替わり且つ12桁もあるパスワードも、先程整備課スタッフからパスワードをメモした紙切れは拝借済みである。

決して盗んだわけではない、後で返すから借りただけだ。

 

「(整備履歴は……ビンゴ!

[ブルー・ティアーズ]と[白式]のデータ発見、[甲龍]はやっぱりないか……セルフメンテの範疇でしか使ってないって事かな)」

 

[ブルー・ティアーズ]は全体の装甲換装と予備ビットの登録とシステムチェック、[白式]は装甲修復と全体のシステムチェックをやっているようだ。

 

「(さてさて、丸裸にしちゃいましょうねっと)」

 

調べてみたところ、[ブルー・ティアーズ]のビット、その核はフッ化重水素レーザー投射機であるようで、使用される莫大な電力はクレイドルに搭載された高密度水素吸着合金を用いた大容量バッテリー。

フル充電したならば五時間の連続稼働が可能。

クレイドルに搭載されたAISミサイルは拡張領域から随時転送を行なって発射……概ね開発部の予想通りか。

 

スターライトもほぼ同様の構造だが、バッテリー稼働ではないぶん出力がダンチだ。

だが、可変銃身の変形機構に関してはどうやったらこんなヘンテコなものがあんな火力を発揮出来るのか不思議で仕方がない。

 

しかしまあ、英国が有するレーザー兵器技術のオンパレードである。

英国は当初アメリカとイスラエルに追随する形だったが今では独自の発展を遂げて二国を追い越し、売上高はレーザー兵器市場の3割を占める大御所。

最近では対大陸間弾道ミサイルや対ISの防衛装置として衛星軌道上に大型レーザー砲台[エクスカリバー]を秘密裏に建造中であると本社情報部の人から聞いた事がある。

 

そして、当の[ブルー・ティアーズ]は設計だけ見るならばビットのテストベッド的な意味合いが強い機体である事が分かるが、どうやらセシリアが色々カスタマイズしているようで元の形とはだいぶかけ離れているのが分かる。

特にスターライトなんかは顕著で、元の設計だと砲身の変形による銃種の変更機能など存在せず、ただのフッ化重水素レーザー投射機だったのを魔改造したようだ。

ビット自体もだいぶ頭のおかしい設計だ……流石は英国、パンジャンドラムの頃から何も変わってない。

 

「(なんとまあ、よくもこんなピーキーな機体をあそこまで使いこなせるものです……さて、次は[白式]ですね……って、うわあ)」

 

[白式]のデータを閲覧すると、絶句した。

ISの開発理論や設計に関する知識は、出来ないながらもある程度理解している。

だからこそ分かる、この機体のヤバさを。

 

「(装甲素材は多重ナノハイブリット・ハニカム装甲……倉持なら耐貫通性スライド・レイヤー装甲か、衝撃吸収性サード・グリッド装甲辺りを採用してくるかと思ったけど全然違う……てゆうかなんだこれ……知らない……)」

 

設計図やらを見るに、どうやら一度完成したものを何者かが手を加えている、というところまでは分かる。

だが、その加わった手がわけのわからない構造をしている。

 

装甲素材である多重ナノハイブリット・ハニカム装甲もそうだが、スペックが本当に第3世代機かと疑いたくなるレベルだ、なんかプログラムも気色悪い曼荼羅みたいになってるし。

あと雪片二型……これはもしかしなくても最近発表されたばかりの第四世代技術の展開装甲じゃないのかこれ……ならば[白式]は第4世代型?いや、展開装甲が使用されているのは雪片二型のみだし、3.5世代?

武器が一つしかないのも、唯一仕様特殊能力を第一形態から使ってるもんだから拡張領域が埋まってて量子変換出来ないからか。

てゆうか[暮桜]の唯一仕様特殊能力である零落白夜を[白式]が使えるのってまさか……いや、仮にそうだとしてもこんなのが作れる技術者って……あっ。

 

「(天災かあ……なんか納得しちゃったなあ、考えるのが馬鹿みたいだ、やめよう)」

 

最後の最後で締まらないなあと思いつつ、システムに介入して閲覧履歴を削除し、私が侵入した痕跡を消す。

国家間、企業間の諜報活動が暗黙の了解と化しているIS学園とはいえ、流石に足がつけば処罰の対象となってし、これがバレてセシリアさんや一夏さんとの関係を壊すのは公私共に悪手に他ならない。

 

悪く思わないで欲しい、これも仕事だから仕方なくやった事なのだ。

うん、仕方がない。

 

「主任、首尾はどうです?」

「うん、今終わるところだよ」

 

仕事は済んだと合図を送り、メンテナンス兼情報収集を終える。

ヘッドギアが取り外され、チェックを終えた義肢が運ばれてくる。

汚れも落としてくれたのかピカピカだ、ありがたい……だが。

 

「さて棗君、いつもの事だが我慢してくれよ」

「……はい」

「一体なにが始まるんです?」

「うん、まあこの義肢が特別製だってのもそうだし、本来サイボーグは切除したり切断することはあっても取り外す事は考えていないからねえ」

「と、言いますと?」

「神経回路やバイパスを接続する時、痛いやら気持ち悪いやらで気分が最悪なんですよ、リバースしかねない程に」

 

外す時もそれなりに気持ち悪いが、つける時は気持ち悪さに加えて痛みーーそれも激痛が伴うのだからもう最悪である。

一瞬とはいえ、フェイススケールで表すなら最上級である"Hurts as much as possible(死ぬほど痛い)" を迷いなく指差す程度には痛い。

因みに体の拘束具も、痛みで暴れてもメンテナンス台から落ちないようにする為の予防措置だ。

 

「え、ちょっとやめてくださいよ!?」

「安心してください、トイレは済ませていますし、夕飯まだなんですよ」

「なんも安心できないんですけど!?てゆうか上のみならず下からもなの!?」

「よーし行くよー息合わせろー」

「「「ウース」」」

「待って!ビニール袋!あとなんか拭くものー!」

「「「「せーーーーのッ!」」」」

「痛ぅッッッ!!!」

「あっーーー……あ、大丈夫だった」

「そりゃそうですよ、今まで何回やってきたと思ってるんですか」

 

いちいち騒がれては堪らないと、30秒に一回神経接続を繰り返す訓練(拷問)をやらされたのは良い思い出だ。

それのお陰でちょっと気持ち悪い&メチャクチャ痛いと思うだけで済むようになったのである、痛みによる反射ばっかりはどうしようもないので拘束具はつけているが。

てゆうか、ウチのスタッフが袋もオムツも用意していない時点で察して欲しいものだが。

 

「まあ最初の頃は上も下も大洪水だったので大変でしたけどね、今では苦手なだけで慣れたもんです」

「ははは、あの頃は大変だったなあ」

「へ、へぇ……」

 

軽くシャドーボクシングをし、接続された手足の感触を確かめ、普段と変わらない事を確認する。

長年世話になっているこの人達に限って無い話だが、万が一ということもあるからだ。

 

「何か問題はあるかな?」

「いえ、いつも通りの良い仕事で」

「そりゃ良かったーーと、そうだ

今後の事も考えて義肢に搭載した小道具は最小限に抑えたから、確認してくれ」

「了解です」

 

端末に表示された道具は……右手の各形ドライバーやピン等の小道具、両手首の仕込みナイフ、左手の各形接続端子か、まあこんな所だろう。

 

「確認しました、だいぶ減りましたね」

「流石にISの拡張領域を流用した機能はオミットしとかないとメンドくさそうだったからねえ、本当なら行く前に取れれば良かったんだけど……てゆうか反応が紛らわしいからやめろって文句来たし

だから実質腕に関しては丸ごと交換した形になる、元の腕はこっち(本社)で保管しておくから」

 

一部の機能は流石に義肢の内部に収納出来なかったので、ISコアを経由して拡張領域にスペースを間借りしていたのだが、やはりマズかったようだ。

いざって時に便利だったんだけどなあ、膝のレーザーカッターと掌のショットガン。

 

「仕方ないですよ、急な話でしたしーーで、[ヴァイパー]の方はどうですか?」

「そうだねえ、RCSの出力と燃費向上、関節はメンテフリーとは行かずとも破壊されない限りは半永久的に交換不要、あと全体的にパワーが上がってるから」

「具体的には?」

「REXが相手でも殴った場所がスクラップになるよ」

「そりゃ怖い」

 

それなら月光くらいなら片手でブン回せるなぁとか思いながら制服を着て、整備が完了した[ヴァイパー]を受け取る。

心なしか待機状態のネックレスも綺麗になっているようだ。

 

「それでは、私はこれで」

「うん、僕達は片付けがてらここの子達と遊んでくから」

「程々にしてくださいね、やり過ぎると怒られますよ」

 

そう言って、整備課の面々とウチのスタッフに軽く挨拶をして整備課練を後にする。

収集した情報はあちらで処理してくれる手筈になっているので、私は楽なものだ。

 

「(しかし、一夏さんもあんなのが自機だと今後は大変ですね)」

 

元は倉持かどこかが作ったであろうが、実質的に篠ノ之束謹製と思われる[白式]。

今の所、"初の男性パイロットに与えられた機体"程度にしか情報が出回っていないし今後暫く騒がれる事はないだろう。

だが機体スペックは相当なものだし、コアも既存機からの流用……しかも[暮桜]からとなればどんな成長をするのか、楽しみやら怖いやら。

 

「(どうあれ、明後日のクラス対抗戦が楽しみですね)」

 




パーツ外してメンテ受けてるメカ女子可愛い……可愛くない?
どうも、せいばーです。

産業スパイ活動ですが、棗は仕事とプライベートはキッチリ分けて考える子なので、こういう事もバレなければ良かろうなのだとか思ってます。

感想や評価等、お待ちしております。
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