METAL GEAR NEXISーNew generation gearー   作:saver

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短めですが、今回からクラス対抗戦編です。
燃えよセカンド幼馴染。

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王大人の事を加筆しました。


クラス対抗戦編
第5話『Enter the Dragon(燃えよドラゴン) 1』


「あれだけ大見得切っておいてこの様か、馬鹿者め」

「……はい」

 

試合が終わり、俺はピットで正座させられていた。

ピットの床は滑り止めのためかゴツゴツしており、その上ISスーツのままなので膝がすごく痛い。

とても、痛い。

 

……本音を言うなら、あそこまで奮闘できた事を褒めてほしいものだが。

 

「先ずはお疲れ様です、といったところですか

織斑先生はこう言ってはいますが、セシリア相手にアレだけやれたのですから、まあ良いでしょう、頑張りましたね」

「おお……ありがとう棗……!」

 

天使だ、眼前に天使が舞い降りた。

結果的には負けてしまったが、うん、やはり俺は頑張った、よく踏ん張ったと思うのだ。

だから正座は勘弁してくれ、頼む。

 

「日野、こいつは甘やかすとロクな事にならんぞ」

「ええ、ですのでこの先はお小言を少々」

「……はい」

 

舞い降りた天使は死に、悪魔がダブル顕現した。

このままでは正座がレベルアップして石抱きの刑にでも処されかねない。

畜生、世も末だ。

 

「一次移行を終えたばかりでよくまああそこまで戦えたとは思いますが、彼女が途中まで遊んでいたの、分かりますよね?

本気モードで戦闘をしたならば、白式の硬さから考えると、耐えて2分といったところですか」

「そ、そんなにか……?」

「私との戦いで手の内を晒している以上、出し惜しみをする必要もありませんからね

ミサイルの使用頻度、射撃の精度、リロードやその他諸々を加味しても遊んでましたね、アレは」

 

棗曰く、火器の種類、リロードタイム、連射速度を把握して戦略を立てるのは対射撃戦機における鉄則なのだそうだ。

リロードタイムに関しては高速切替(ラピッドスイッチ)なる技術がある為あまりアテにならないらしいが、それでも知らないよりは断然お得との事である。

更に言うならば、相手の体裁きや射撃時の癖を把握し、銃口の向きを判断して相手の攻撃を回避する“見避け”とか、最小限の体捌きで回避する“ミリ避け(グレイズ)”なる技術もあるらしいが、そんな芸当ができるのはそうそういないのではなかろうか。

 

「それと足回りが致命的です、瞬時加速(イグニッション・ブースト)に代表される移動系技能が未熟故に致し方ない部分もあるとはいえ、一夏さんは移動する際に一瞬勢いを溜め込む癖があります

これは高速機動戦闘を旨とする対IS戦闘では致命打の切っ掛けになりかねません

それに、相手に判断の猶予を与えるだけでなく先読みをされることに繋がりますので、意識して直した方がよろしいかと……ですが、結果はどうあれ最後の瞬時加速による踏み込みからの一閃と、最後まで勝機を狙い、チャンスを見極めた根性は見事でした……“いいセンス”です」

 

指を突き出した独特なポージングで言い放った“いいセンス”という言葉……これは褒めていると受け取って良いのだろうか。

てゆうか、その精一杯のキメ顔みたいなのはなんなんだ。

 

「……ありがとう、ところでさ棗」

「はい、なんでしょう」

 

これは怒らせるかもしれない。

うん、てゆうか絶対に怒ると思うんだけど、わからないものは仕方ない。

 

「瞬時加速って、なんだ」

「……はい?」

 

この後、棗と箒による特訓メニューが増え、地獄を見る事になるのは余談である。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

セシリアは己を囲むファンを適当にあしらい、ISスーツの上からジャージを羽織ったまま自室へと足早に向かった。

普段では考えられない程、乱雑にジャージとISスーツを脱ぎ捨てるとシャワールームへ入る。

IS学園の設備は良く出来ていて、シャワーを捻った際にお湯かと思ったら水が出てきた、なんて事はない。

勢い良く噴射されたお湯が体を撫で、汗を流して行く。

 

「……」

 

だが、今のセシリアは水の方が良かったと思う。

冷たい水であったならば、勝利の余韻でもなく、敗北の悔しさでもない、心に渦巻くモヤモヤとした感情を打ち消してくれると思ったからだ。

 

「……勝ちは、しましたけど」

 

最後の攻撃でインターセプターが削り取った僅かなシールドエネルギー。

己の攻撃、そして何より零落白夜の使用によって、[白式]のエネルギーがギリギリまで減っていたからこそ、勝ち取れた勝利だ。

その差は0.46秒、コンマ1秒を争った果ての勝利、相手がブリュンヒルデの弟とはいえ、初心者に対して出して良い結果ではない、これは実質的には負けだ。

私は、織斑一夏に負けたのだ。

 

「強かった……」

 

織斑一夏は、今まで出会ってきた男性の誰よりも強かった。

ISが使えるからではない、彼が特別だからではない、ブリュンヒルデの弟だからではない、あの強さは彼本人が心に秘める強さだと思う。

 

「……まったく、絶滅したのかと思いましたが」

 

他者に媚びず、己を貫く芯を持った男。

まだ16年ではあるが、その短い人生を振り返ってみても、片手で数えられる程度にしかいなかったタイプの人間。

 

母も気が強い人であったし、婿入りした手前もあったのだろうが、母親の顔色を常に伺ってヘコヘコと頭を下げるばかりだった父親とは違う、アレが真の男なのだ。

 

「……そういえば、叔父様も」

 

数百人を巻き込んだ列車の横転事故により両親が死に、己の体や財産を狙う強盗紛いの俗物を掻い潜らなければという時、後見人として現れたロイ・キャンベルというアメリカ人の老紳士もそうだった。

遠い親戚だと言うその男は心から己を気遣い、何から何まで親身に世話をしてくれた。

最初はそうやって浸け入り、合法的に全てを手に入れるつもりだろうと疑っていた自分が恥ずかしい程に。

ISの適性試験を受けたのも、[ブルー・ティアーズ]の計画に参加できたのも、彼の進めと計らいがあってこその事である。

……無論、IS適正Aという己の才覚もあるだろうが。

 

最初こそ父の影響からか男など、と思っていたが、今ではロイ叔父様と呼ぶ程度には親しい間柄である。

それでも世にいる男、その大凡は軟弱で、芯など持たない、父の様な人間だと思っていたのだ。

 

だが、一週間前のあの日、出会ってしまった。

 

私が理想とする、強い心と瞳を持った男ーー織斑一夏と。

 

「織斑、一夏……」

 

その名前を口にしてみれば、カァッと心が熱くなるのが分かる。

瞳を閉じれば、織斑一夏が己に向かって絶対に勝つと宣言した時の目つきが、顔が、声が浮かぶ。

脳裏に焼き付いたそれが浮かんでは消えるその都度心臓の動悸が早くなり、体が熱くなる。

これは降りかかるお湯の熱ではない、まるで体が沸騰しているかのようだ。

 

「ふふ、これではまるで……」

 

これでは、落とされかけたという棗の事を笑えない。

気をつけろと言われた側からーーいや、出会ったその日には、既に惚れていたのかもしれない。

 

「……そう、これが、恋というものなのですね」

 

そう自覚するが早いか、心に渦巻いていたモヤは晴れ、代わりに欲望が渦巻いた。

 

織斑一夏の事をもっと知りたい。

 

織斑一夏ともっと触れあいたい。

 

織斑一夏の心、その奥底にあるものに触れてみたい。

 

織斑一夏の心を私で埋め尽くしてみたい。

 

織斑一夏を、独占したい。

 

そんな淡く儚く、陳腐な恋愛小説のような感情が己を埋め尽くす。

 

「……なるほど、恋は戦争、命短かし恋せよ乙女とは、言ったものですね」

 

きっと、ライバルは多い。

篠ノ之箒に日野棗、他にもいっぱいいるだろう。

もしかしたら、彼の実姉ですら恋敵かもしれない。

 

「私は一途でしつこくってよ、織斑一夏」

 

その独白は誰が聞くでもない。

だが、新しい決意を胸に固め、新たに生まれた恋心を宿したセシリアは、いつになく笑っていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

翌日、代表決定戦の話題で持ちきりとなっていた。

 

曰く、セシリア・オルコットが勝つのは当然である。

 

曰く、織斑一夏の奮闘は評価に値する。

 

曰く、セシリアお姉様に踏んでほしい。

 

曰く、負けて傷心の織斑一夏を慰めてあわよくば云々。

 

曰くーーと、欲望に塗れた者もいるが、概ねセシリアと一夏の戦いを讃え、セシリアによるクラス統治がどうなるか、といったものであった。

 

クラス代表、と一言に言っても様々な役割が存在する。

催し物の際した他クラスとの調整や、クラス内の会議における纏め役としての仕事ーー要は学級委員長のようなものである。

だが、ことこのIS学園においては"そのクラスで一番強い奴"、といった物騒な意味合いが強い。

 

IS学園は傍目から見れば女の子がキャッキャウフフワイワイガヤガヤと賑やかに姦しく過ごしているようにしか見えないが、その本質はISという兵器の扱いを学ぶ軍学校であり、各国が最新型ISの試験を行う試験場であり、腹の探り合いもする非常にシリアスな場所である為、強さというステータスは非常に重要視されるのだ。

 

なので、そのクラスの代表であるという事は、そのクラスで最強である事の証左に他ならない。

 

「はい、それでは1-1代表は織斑一夏君に決定しました!あ、1繋がりでいい感じですね!」

 

よって、山田麻耶のその発言により1-1は朝から衝撃に包まれた。

 

「は?……え?」

「なに惚けたツラをしている、眠いのか織斑」

「いや、頭はスッキリしてるんですけど、意味がわからないです先生」

 

当然の疑問である。

昨日行われたクラス代表決定戦、それに自分は負け、セシリアは勝った。

そうすれば、必然的にセシリアがクラス代表の筈である。

なのに何故、自分がクラス 代表になっているのか。

 

「えっと、それはーー」

「それは、私が代表を辞退したからですわ!」

「セシリアさんがーーあれ?」

 

山田先生の声を遮り、立ち上がって声をあげたのは案の定セシリアである。

毎度思うのだが、あの"優雅でカッコいい貴族のポーズ"みたいなのは素でやっているのだろうか。

 

「ふふん、僅差とはいえ勝負は私の勝ちでした

ですがそれは私の油断が招いた事……お分かりでしょうが最初から全力であれば数分と持たなかったでしょうね」

「ぐう」

 

確かな事実であるだけにぐうの音も出ない、ぐうって言ったけど。

しかしあの時、途中まで遊んでさえいなければ圧倒され、完敗していたのは明らかなので反論する余地などない。

 

「ですが、私も初日での一件やその他諸々の大人気ない発言を反省していまして……その謝罪も含めて、クラス代表の座を"一夏さん"へ譲ることにしましたの

クラス代表ともなれば戦いの場には事欠きませんし、経験も積めましょう」

 

なんとありがた迷惑な気遣いだろう。

経験が積めるのは良い事だが、それにクラス代表の責務がオマケで付いてくるのは個人的にいただけない。

 

元より勝つつもりではいたが、アレはセシリアとの個人的な喧嘩でもあり、正直クラス代表とかどうでもよかったーーとは口が裂けても言えないのだが。

 

……ん?セシリアの奴、俺のこと名前で呼んだか?

 

「それに、私のように優雅でエレガント、華麗にしてパーフェクトな人間が一夏さんにISの手解きをしてさしあげればクラス代表はおろか学園一ですらもーー「その必要はない!」ーーなんですって?」

 

その時、バンと大きな音と共に誰かが立ち上がった。

音の方向に目を向けると、立っていたのは箒だ。

 

「生憎だが、一夏へISの手解きをするのは私と決まっている。

なにせ、一夏から直接頼まれたのだからな!」

「……私の事もお忘れなく」

 

箒はいつも以上に殺気立っている。

棗も座ったまま、いつものニコニコ笑顔であるがなんだか目が笑ってない。

 

「あら、適正ランクCの篠ノ之箒さんに、整備不良とかいう不手際をやらかして棄権した適正Bランクの日野棗さんではないですか、ランクAの私に何かご用で?」

「ら、ランクは関係ないだろう!

それにこれは一夏がどうしてもと頼んできたからだ!」

 

頼んでねえ、というのは禁句なのだろうか。

てゆうか……

 

「箒ってランクCなのか……?」

「だからランクは関係ないだろう!」

 

これも地雷だったのか、怒鳴られてしまった。

因みに俺はランクBであるらしいが、これは訓練用の[打鉄]で出したランクな上に[白式]ではまだ計測をしていない為、あまりあてにはならない。

そもそも、このランクはあくまでも目安程度にしかならないから意味はないと授業で言っていた気がする。

 

「ふふふ、そうですねー、その整備不良をやらかした&ランクが下の私に負けたのはどこの誰でーー「いい加減にしないか馬鹿者共」ーー「「「あいたぁ!」」」

 

その言い争いも痺れを切らした千冬姉が指で百円玉を飛ばし、それぞれの額にぶつけた事で幕を下ろした。

どうなってんだ、どう考えても百円玉が当たった音じゃなかったぞアレ。

 

「返せ」

「「「……はい」」」

 

千冬姉は三人から百円玉を回収して懐にしまうと、何をどうしたらあんな風にコインを飛ばせるのか不思議で仕方がないといった風の生徒に向かって言った。

 

「お前らのランクなどゴミだ、どいつもこいつも平等にヒヨッコだ、故に等しく価値などない

私は差別が嫌いだから、今この段階で腕の差がどうであろうと差別しないし見下さん

私はお前達が自分の尻を拭けるようになるその時まで、じっくりと念入りに指導してやる、喜べ」

 

わーい嬉しくない。

なんだ、今の千冬姉にはハートマン軍曹の霊でも降りているのかアレは。

てゆうかそりゃ千冬姉からしたらランクなんてあってないようなもんだろうよ、Sランクだもんな。

 

「くだらん諍いは十代の特権だが、生憎今は私が管轄する時間だ、自重しろ三馬鹿共め」

「「「はい……」」」

「脱線したが、織斑一夏がクラス代表で異論はないな?ある者は発言を許可する」

 

ないでーす……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

時は過ぎ四月下旬、春とは言えども未だ肌寒さが残る時期である。

夜ともなればそれは顕著で頬を撫でる風は冷たい、IS学園が東京湾上に建造されたメガフロートである故に、海風が吹き付けているのもあるのだろう。

 

「フッーーハァッ!」

 

そんな中、虚空に浮かべた仮想敵に拳を撃ち、蹴りを放つ。

ウインドブレーカーのフードを被り、走りながらシャドーをする様は宛らスタローンで、イヤホンから流している音楽も例の曲である。

 

「せぃッ……てャアッ!」

 

思い浮かべるのは嘗て己を負かした男ーー"雷電"と名乗るサイボーグ兵士。

たった一刀の元に、ISの装甲はおろかスキンバリアーさえも切り捨てた一閃は今でも脳裏に焼き付いている。

 

認識の相違によるものであるとはいえ、命の取り合いをしたあの時間は濃厚だった。

あの戦いは、私が有していた今までの認識をすり潰した良い契機だったと思う。

兵器の性能差は大局を左右するものではない、戦場に立つ兵士の、パイロットの、指揮官のセンスが全てを左右するのだと認識を改めた。

 

そんな風に昔を思い出していると、スマートフォンに繋げたイヤホンから1時間が経過した事を告げられ、徐々に速度を落とす。

 

暫く歩いて呼吸を整え、整理体操をしていると、1人の少女と目が合った。

 

「あの」

「なにか?」

「今日初めてここに着たんですけど、総合受付ってどこか分かりますか?」

 

明るめの茶髪をツインテールにし、肩と腋が露出する独特な改造制服を纏う少女。

身長はセシリアさんより少し小さい程度だろう。

それと日本語を話しているが、僅かながらに中国訛りを感じる辺り中国人であろうか。

 

「這更容易談論嗎?(こっちの方が話しやすいですか?)」

「我在日語很好(日本語で大丈夫ですよ)……驚いた、上手ね」

「仕事柄マルチリンガルなもので、最近だとトライくらいまでは珍しくないですけど」

 

ここ最近ではモノリンガルのバーゲンセールであった日本も、IS学園設立の影響からか外国人の流入が増えて急速にグローバル化が進み、バイリンガルは当たり前、トライリンガルも珍しくない。

どんな馬鹿でも簡単な英会話は出来る程度に教育が進んでおり、アイムノットスピークイングリッシュはもう通じないのである。

 

IS学園では生徒の殆どは日本人であるが、セシリアさんのように外国人がいないわけではない、寧ろそこいらの大学よりも多いのでクラスによっては英語の方が多く使われているくらいだ。

 

「そうね、私も日本語と英語は喋れるわ」

「僅かに広東訛りがあったので分かりましたが、普通なら気がつかないくらいに上手でしたよ」

「昔は日本に住んでたのよ、ワケあって帰国してたんだけど、最近ちょっと気になることがあって、無理言って入学しちゃった

王大人には今度お礼をしないとね……あ、王大人ってのは私の恩師ね」

 

王大人……王尚真(ワン・ショーシン)か、確か元中共の幹部で現在は国家代表候補生選抜チームの役員だったはず。

そんな人物に無理が言える立場……相当親しい?

しかしそんな人物ならば多少なりとも名前を聞くはず……だとすれば秘蔵っ子か、最近まで陽の目を見なかったか、はたまた……いや、待てよ。

 

「……気になることって織斑一夏って男性の方だったりします?」

「なに、あなたエスパー?その通りよ!」

 

王大人との関係性はさておき、嫌な予感がしたので聞いてみたが予感的中である、正直言って頭を抱えた。

昔は日本にいたというし、気になるってだけで中共の幹部に話を押し通すだけの根性……間違いない、これは厄ネタだ。

 

「どうしたの?」

「……いえ、なんでもありませんよ、ええ、なんでもないのです」

「……?まあいいけど、それよりアイツ、一夏とさっきすれ違ったんだけど私の知らない女とよろしくやってたわ、なんか知らない?」

 

頭痛がしてきた。

なんだ、なんなんだ、一夏さんは女を泣かせる星の元にでも産まれているのか、どれだけ女性関係で厄ネタを持ち込めば気が済むのだ。

 

最近では箒さんとセシリアさんが睨み合ってばかりで、その間に挟まれて胃を痛めているというのに、またそこに女を連れ込むのかあの男は。

 

「この時間ならISの訓練ですかね、箒さんという幼馴染の方が面倒を見ています

正直なところ彼、ヘッポコですので」

「なるほど……って、幼馴染?……あー、私が引っ越してくる前の話かしらね」

 

どうやらこの子は一夏さんの幼馴染ーーその2号であるらしい。

箒さんがIS発表後の要人保護プログラムで引っ越しを余儀なくされた後、入れ替わるようにやってきたようである、セカンド幼馴染とでも言うべきか。

 

まあ良い、一夏さんの女性関係は百歩譲って良いとする。

今はそんなことよりもやるべき事があるのだ。

 

「それより挨拶が遅れましたね、1年1組、日野棗と申します

日本の国家代表候補生です」

「ああ、そういえばそうね……私は凰鈴音、中国の国家代表候補生よ、予定だと2組に編入するわ」

「では隣ですね、国家代表候補生同士、今後ともよろしくお願いします」

「敬語なのは素なの?」

「性分です」

「そ、ならいいわ……あ、そうだ

口ぶりから察するに一夏の事は知ってるんでしょ、あいつ何組?」

「私と同じ1組ですね」

「クラス代表になったって聞いたんだけど、本当?」

「はい、英国の国家代表候補生と決闘まがいの試合をした結果……まあ紆余曲折あってクラス代表になっています」

「……2組の代表ってもう決まってるの?」

「ウチのように荒れたとは聞いていませんし、おそらく決まっているのではないでしょうか……ところで、なにが目的です?」

 

鈴音の目つき、それが意味するものを私は知っている。

これは獲物を狙い定めた猛獣の目つきだ。

 

「うん、私情マシマシなのは十分承知なんだけど、ちょっと一発キメてやらないと気が済まなくて」

「……罪な人ですね、一夏さんは」

 

本当に、あの人は産まれてくる国を間違えているのではなかろうか。

いや、仮に一夫多妻制が認められている国であっても敵を作りすぎて後ろから刺されそうである。

その内、箒さん辺りが一夫多妻去勢剣とか繰り出しそうだ。

 

そんな彼と彼女達の未来を案じつつ雑談に花を咲かせていると、目的地である総合受付へ辿り着く。

 

「それじゃ、私はここで手続きがあるから」

「はい、ではまた明日お会いしましょう」

 

また一波乱ありそうだなあと明日の平穏に危機を感じつつ、自室へと戻るべく歩みを進める。

 

そして、口は災いの元という言葉があるように、この時感じた事を口にさえしなければ、もう少し私の学園生活は平穏だったかもしれない。

 

「二度あることは三度ある、か……まさかこれ以上増えるなんてことは……ないですよね」

 

そしてこれは杞憂で終わることなどなく、一夏を取り巻く女事情が何事もなく済んだことなどありはしないのだと、この時の私は予想だにしなかったのである。




ロイ叔父様ことキャンベル大佐と雷電が少しだけ登場、4の時点でもう大佐じゃないですけど、スネーク同様どうしても大佐って感じが抜けません。
そして書いといてアレですけどセシリアに叔父様って呼ばれる大佐が羨ましくて仕方がない。
余談ですがセシリアの後見人になった事で昔を思い出したのか、メリルの機嫌が少し悪くなってジョニーがとばっちりを受けたとか受けてないとか。

雷電と棗に関しては追々エピソードを追加する予定です.

それと、なんの勘違いからかずっと一夏のクラスを1-Aだと思っていたのですが、原作読み直してたら1-1でした。

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