そして、神話になったりならなかったり。 作:週休七日
「このすば」見ながら「メモリアフレーゼ」やってたらいつのまにか書いてたやつを投下。
死んだらしいのだが、どうやら転生させてもらえるそうだ。ソースは目の前で椅子にふんぞりかえってお菓子食べながら缶ジュース飲んでる女神。
名をアクアというらしいが、ちょっと接した感じで明らかな地雷臭しかしないため、できれば金輪際出会いたくないものである。
「ちょっとー?まだー?早く特典選んで欲しいんですけどー!わたしだって暇じゃないんですからねー?」
バリボリとポテトチップスを食べながらそう言った女神に若干イラッとしながら、特典はもう決まったと返事を返す。
「ふむふむ、オッケー」
こちらが選んだ特典を確認して、勢いよく椅子から立ち上がる。同時に椅子の側の机がガタッと揺れてジュースの缶がカランコロンと床に転がった。残っていた中身が飲み口から溢れ出る。
「あー……」
それを見てめんどくさそう眉を潜めた女神アクアは小さな声で「まあ、後でいっか」と呟き、こちらへと歩み寄ってくる。
「コホン……汝に祝福あれ」
今更女神振らないでほしい。そうは思ったが当然口には出さない。どんな相手であっても自分から軋轢を作るような真似は控えるべきであるからして。
足下に魔方陣が現れて、ファンタジーだなぁと感心していると。拡がった魔方陣が先程の溢れたジュースにまでかかった。なんだか感動が一気に冷めてしまった。
体が徐々に光に包まれていく。
「よし!今日のお仕事終ーわりっと……アレ?」
なにやら不穏当に締め括られた女神アクアの台詞を最後にして、意識が光に呑まれた。
▽▽▽
「あれ?」と首を傾げる。女神アクアの説明だと転生場所は初心者の街であったはずなのだが。現在立っている場所はどこをどう見ても洞窟のような空間である。
そして、女神アクアの最後の台詞を思い出した。完全に不手際である。
ふぁっきんくそめがみ。
おっと、思わずスラングを吐いてしまった。どうやら女神アクアの相手で相当にストレスが溜まっていたようだ。
とにかく動いてみよう。迷う以前に既に迷っているも同然なのだから、現状が悪くなることはないだろう。
どこかに迷子センターとかないのだろうか。あってくれたらわりとうれしい。
少し進むと道が分岐していた。曲がり角があったのだ。どんなものかと顔を覗かせてみたら人が飛び出してきた。反射的に仰け反るように避けるとそのまま角を曲がって走り去って行く。
なにやら必死に走って行った白い髪の少年。手に短剣を握っていたし、軽装ながら武装もしていたことから、おそらくはあれが女神アクアの話にあった冒険者という存在なのだろう。
そうだ、しまった。道を訊けばよかった。今から追いかければ追いつけるだろうか。それにしてもなにをあんな必死に。まるでなにかから逃げるように……。逃げるように……。
……。そして、なにかを考えるよりも先に答えの方がやって来た。やって来てしまったのだ。
ドスンドスンという地響きとGrururu…と低く唸るような声。牛の頭を持った巨躯の怪物が通路の暗闇から現れたのだ。
「あっ(察し)」。ふぁっきんくそめがみ。現状が悪くなることはないって言ったやつ誰だよ挙手しろよ。
怪物の咆哮に両手を挙げた。やってられるか。
▽▽▽
逃げる逃げる逃げる。背後から迫る死から逃げる。学ランが動きを疎外して大変動きにくいが、残念ながら脱いでいる暇もない。
怪物の足は速くはないようだが、そもそも歩幅が違う。立ち止まれば刹那で詰められる。立ち止まれば即ち死ぬ。
走りながらも思考は止めない。こんな芸当ができるのも女神アクアが転生先に適応できるように精神的な面を強化してくれたからだろう。ふぁっきんくそめがみ。間違えた。さんきゅーだめがみ。
さて、どう打開するか。こちらの手札は転生特典だけである。でもなー……あれはなー……なんというかなー……。いや、使い渋ってるとかそういうことではない。
特典『武具複製』。視認した武具を複製する。簡潔に言えばそういう能力だ。いや、無論それだけの能力ではないが、状況が状況だけに今は置いておく。
誰がエミヤやねん。じゃなくて、特典カタログのスペックのとおりであるなら『無限の剣製』とかいうロマンスキルより使い勝手はかなり良いはずだ。
この能力には問題がある。「複製」の第一条件は「視認」。つまり、武具をこの目で見なければ始まらないのだ。
手元にある鋭利なものといえば何故か一緒に転生してきた筆箱に入っているカッターくらいである。刃が薄い。
勢い任せに角を曲がった。行き止まりだ。詰んだ……と普通ならここは諦めるところだが。ピンチはチャンスとはまったくよく言ったものである。これはむしろラッキーだ。ラッキーチャンスだ。
急ブレーキ。からの方向転換。スニーカーが土を抉り、蹴り出す。今まで走っていた方向とは逆走するように駆け出した。
あの怪物の体の大きさでは急には止まれまい。馬鹿のようにスピードを落とさずカーブしてきた怪物の足下をすり抜ける。目論見通り怪物は壁に頭から衝突した。
ドーンという鈍い音とともに土埃が宙を舞う。
「やったか(フラグ)」。あっ。
多少のふらつきはあるものの体幹はしっかりしている。あれだけ勢いよく壁に突っ込んでおいて脳震盪もおこさないのか。いや、脳があるのかは知らないけど。ゆっくりと立ち上がっている怪物に今度こそ絶望した。
まだ逃げられるか。体力的に厳しいか。だとしたら特典で……もうカッターでもなんでもいいから投げつけて…………。
「ッ!?」。これは天啓か。いや、忘れていたことを思い出しただけだ。そうだ。そうだった。「武具」なら見たんだった。あの白い少年が持っていたではないか。短剣を。
「武具複製」。能力を行使する。展開先は怪物の頭上だ。短剣一個では足りない。複数、たくさん、もっと、無数に……。
「落ちろ」。数えきれないほどの短剣の切っ先が下を向き、怪物へと降り注ぐ。まるで雨のように。
Guooooo!!!!
怪物の断末魔が空間に響いた。怪物に刺さった短剣は半分もない。大半は弾かれて地面に転がっている。まったくどんな硬い皮膚をしているのか。
致命となったのは理性のない瞳に突き刺さった短剣だったようだ。なにはともあれ無事に倒せたか。
よくもまあ生き残れたものだと苦く笑う。同時に体から力が抜けて……。
背後から誰かに支えられた。そこで何故か安心して意識を手放した。
▽▽▽
「すごい……」
アイズ・ヴァレンシュタインが目撃したのは、見慣れない不思議な格好をした少年が、おそらくは魔法かなにかで大量の短剣を雨のように降らせてミノタウロスを殺した場面であった。
元々は自分たちが取り逃がした三体のミノタウロスを追っていたところだった。一体は他の仲間が倒し、アイズ自身もさきほど新米の冒険者をミノタウロスから助けたばかりである。
手分けして三体目を探していたところでドーンという大きな音を聞きつけ第一級冒険者としての能力を駆使して急行したのだ。
そして、目撃した上記の場面。一瞬だけ呆然としてしまったアイズであったが。黒い背の少年が今にも倒れそうにふらついたので、慌てて駆け寄って背中を支えた。
「大丈夫?」
しかし、返事はない。どうやら気を失ってしまっているようだ。
「……」
仕方ないとアイズは少年を軽々と持ち上げる。横抱き……所謂、お姫さま抱っこというやつで。後に黒歴史である。
ふぁっきんくそめがみ。さんきゅーだめがみ。これは英雄でもなければなんでもない少年が、残念で頭のおかしい女神のせいで神話になったりならなかったりするお話し。
カクノ……タノシイ……_〆(。。)
タイフウ……クル……(ノдヽ)
ちなみに兎くんは主人公のおかげで逃げ切れるも、即座に別個体に見つかって襲われてた模様。不運。牛を三体も逃がすって……書いててあれだなと思ったけどご都合主義のためとはいえロキファミリアには大きなミスをさせてしまったなぁ……。