今回から戦闘中などにソードスキルをSSと表記する事があると思います。やり忘れていたら優しく教えて下さい……心は硝子なんです………
ロニエ達、傍付きにキリトからのアドバイスで蜂蜜パイを渡してみてから一週間。あれから普通に話すことができるようになった。
「せぇぇぇええい!!」
「まだまだ、脇の締めが甘いぞ。ロニエ」
「は、はい!」
そして今、ロニエ達に剣術の稽古を付けているところだ。
それで、キリトと俺、ユージオでアインクラッド流……ソードスキルを後輩達に教えるためにローテーションを組んで自分の傍付きと組手をしている。
「それにしても、相変わらずアルスは凄いね。ロニエの打ち込みを片手で……しかも利き手とは逆で受け止めてるよ」
「本当です!ロニエはずっと私と一緒に鍛錬してきたのに……」
「……キリトとアルスが村にいた頃に私とユージオに剣術を教えてくれたけど……本当に何処の剣術なのかしら?」
現在進行形で打ち合っているアルスとロニエ以外の視線がキリトに集まる。
「…………強いて言うならアインクラッドだ。あと憶えているのは、俺とアルスがコンビだったこと。あいつは他のアインクラッド流を使う奴らと比べて特別と言うことだけだ」
ユニークスキル《無型》の使い手という意味で。
「おいキリト!さっきから聞こえてるぞ!だいたい、俺が特別ならお前も特別だろうが!」
ユニークスキル《二刀流》の使い手という意味で。
そんな他愛の無い話をしている時だった。
空に二つの影が現れる。
その影は確実に、訓練をしているアルス達の元へ駆けてくる。
「キリト、ユージオ!2人を抱えて横へ跳べ!!」
「「ああ(うん)!!」」
キリト、ユージオ、俺の3人はそれぞれ自分の傍付き錬士を抱えて横に飛ぶ。
「くそっ!何なんだいったい!?」
「せ、先輩……?」
咄嗟に抱えてしまったので、ロニエが俺の胸に押し付けられる形になってしまい、恐らく窒息しそうになったのだろう。顔を赤くしている。……その割にまったく睨んでくるどころかむしろ恥ずかしそうなのが謎だが。
「お、おい……アルス……あれを見ろ」
「…………嘘だろ」
キリトに言われて視線を送った先にいたのは………白い馬と青い馬だった。
—黙示録の四騎士—
その物語はある意味で俺…アルスに影響をもたらしたと言えるだろう。何故なら、SAO時代、俺が振るった剣たち……それは《ホワイトライダー》と《ペイルライダー》の設定や名前が黙示録の四騎士から取られたものだったからだ。
「白い馬と青ざめた馬か……何処かで聞いたフレーズだな、アルス?」
「ああ……本当にな」
などと悠長に話していると、二頭の馬が輝き、光が重なり、光が晴れる。
「「「「「「ええ!?」」」」」」
光が晴れた先にいたのは二頭の馬ではなく……白の剣と黒に近い藍色の剣を持つ藍色の騎士だった。
(………おいおい、何で剣の形まで一緒なんだよ。)
その二振りの剣は何処からどう見てもアルスの振るっていた剣そのものだった……
「キリト。頼みがある……」
「ああ。ある程度は読めてたぜ、任せとけ!」
キリトは俺の考えを読むのが上手いからな、俺が何をしようとして何を要求するか分かっていたのだろう。
「みんなは安全な場所に行ってくれ!俺が時間を稼ぐ!」
ビリビリと伝わって来る敵意の様な物。それはこの場にいる全員が感じている事だろう。
「アルス!流石に無茶だ!」
「いや、ここはアルスに任せて行こう」
「「キリト(先輩)!?」」
「アルス先輩……?」
未だ俺の腕の中にいる、ロニエが不安そうな顔……と言うより、完全に怯えている。
「大丈夫だよ、ロニエ。必ず守るから……」
「でも………」
頭を撫でながら説得を試みるが、それでもロニエは渋る。
「ロニエ、行こう。大丈夫さ!アルスの強さはあいつの傍付き錬士の君が一番よく分かっているだろ?」
「………はい。ただ、約束してください。必ず生き残って下さい」
「分かった。約束する、指切りしよう」
ロニエと指切りしてキリトとユージオにロニエ達を任せて騎士と向かい合う。
「……随分とお優しいんだな?」
「…………」
「黙りか………まあいい。始めようか!」
幸いこの場にはさっきまで訓練で使っていた白金樫の木剣が人数分……6本ある訳だ。
(……さて、何分持つか)
白金樫の木剣の優先度が15。少なくともあの騎士の剣と打ち合ったら長くは持たないだろう。
「うおぉぉぉお!!」
「………」
考えても仕方ないので、片手剣用SSスキル《ソニックリープ》を発動し、斬りかかる。
だが、キーンと白金樫の木剣が音を鳴らしながらへし折れた。
「嘘だろ!?一発かよ……」
「………」
それでも無言で剣を振るう騎士の剣を間一髪で避けて無事な木剣を拾う。
「………」
「くっ!?」
だが、間髪入れずに追撃される。
その剣を正面からではなく、剣の腹に向かって木剣を振るう。
こんどは折れる事なく、弾く事に成功したが、木剣に罅が入る。どうやらこの方法でも長くは持ちそうにない。
それに2度、奴の剣を受けて違和感を感じた。まるで
「くそ!」
ひとまず距離を取って体勢を立て直そうとする。
距離を取る事は出来たが、
「………」
騎士は数十メルは離れている俺に向かって剣を振るった。
「………なにっ!?」
そしてその刹那、斬撃が確かに俺の右肩から左脇腹を斬った。
まるで噴き出すように血が出ている。何よりも穿つような、身を焦がすような痛みが俺を襲う。
「あっ……がっ……」
(出血を止めないとまずいよな………)
「システム……コール。ジェネレート……ルミナス・エレメント……」
膝をつきながらなら切れ切れに治癒術式を発動させる。
そして今の事象について考える。
そして一つの可能性に行き着く。
(まさか、あの騎士……一度に二つの斬撃を繰り出している!?)
恐らく一つ目の斬撃は剣を振るった時に剣が通った場所……つまりは普通の斬撃。だが、二つ目は剣を振るった時に斬撃を飛ばしている。それならあの違和感の正体も納得がいく!
「………」
「まずい!!」
騎士が再び剣を振るったので、咄嗟に片手剣用SS《ホリゾンタル》を発動させ、木剣を水平に振ると、何かに弾かれたような感覚と共に木剣が折れた。
「くそっ……このままじゃジリ貧だ」
——
「先輩……!」
今、僕らはアルスに言われたように安全な場所……専用寮の窓から騎士とアルスの戦いを見守っている。
キリトはやる事があると言って僕らの部屋に向かった。
そして今、アインクラッド流 奥義 ソニックリープを騎士に向かって放ったアルスの木剣が折れた。その音はここにいても聞こえるほどだった。
「そんな……木剣としては最高級の素材を使っているのに!?」
ティーゼの驚く声が聞こえる。
セルカは息を飲み、
ロニエはただひたすらに「先輩……」と心配そうにアルスを見つめている。
その間にも騎士とアルスの攻防は続く。
僕は驚いていた。僕とセルカに剣を教えてくれた師の1人であるアルスが木剣を使っているとはいえ、押されている事に。
「っ!?」
騎士の剣を無手のアルスが間一髪で避けて無事な木剣を拾って、騎士の追撃を弾いた。
そしてアルスが距離を取った時、
「え……?」
騎士が何もない虚空に向かって……強いて言うのなら数十メルは先にいるであろうアルスに向かって剣を振るった。
誰がその行動に声を上げたが、直後、それは起こった。
「いやぁぁぁぁ!!」
ロニエが悲鳴をあげる。
無理もない。何故なら突如としてアルスの肩から脇腹にかけて血が噴き出したのだから………きっと僕が冷静でいられるのは僕よりも後輩の子達が怯えているからだろう。
「アルスはどうなっている!?」
「キリト!?それからアズリカ先生まで!?」
「アルス上級修剣士の様子はどうですか!?」
声のする方を見ると、《黒い奴》を持ったキリトと焦っている様子のアズリカ初等錬士寮のアズリカ先生の姿まであった。
「あ、アルス先輩が今、斬られました……」
「アルス……!」
キリトが窓まで駆け寄ると、恐らくアルスが治癒術式を唱えて回復しているところだった。
「アルス……大丈夫よね?」
そんなセルカの声をあざ笑うかのように騎士が剣を振るう。
だが、同じことを繰り返すアルスではない。騎士が剣を振るうと同時にアインクラッド流 奥義 ホリゾンタルを放ち、まるで何かを弾いた様な音と共に木剣がふたたび折れた。
「いま折れた木剣で……2本目です……」
ロニエの声を聞いたキリトはまるで全てを理解した様な表情をして、窓を開け放ち、
「アルスっ!こいつを使え!」
と黒い奴をアルス目掛けて投げた。
——
もうダメなのか……ジリ貧で殺されるのか?俺はSAOの中じゃなきゃ何もできないのか……?
「アルスっ!こいつを使え!」
ほぼ諦めている時、キリトの声が聞こえた。
そしてキリトの愛剣通称 黒い奴が飛んで来た。
飛んで来た方を見ると。キリト、ユージオ、ロニエ、セルカ、ティーゼ、そして何故かアズリカ先生がいた。
「アルス上級修剣士!信じなさい!あなたの剣が届かぬ物などないと!今!あなたが屈したらこの場の者たち全てが殺されてしまう可能性もあるのです!!」
……アズリカ先生が震える声で叫けぶ。
恐らく、この場面で何もできない事が歯痒くてしょうがないのだろう。
「アルス!お前は剣に何を込める!自分を信じろ!この世界は!お前の剣戟はお前の意思に応えてくれるはずだ!!」
「俺の意思……」
(そうだな。この世界だけじゃない。前にユージオに向かって俺が言ったじゃないか……意思の力は……意思は力を持つと)
キリトが剣を貸してくれた。
アズリカ先生と共に挫けかけた俺を励ましてくれた。
「それに……ロニエと約束したもんな。危うく嘘つきになる所だった」
——俺は……諦めない!!——
俺は黒い奴を鞘から引き抜き、柄を力強く握った。
——
「あの目は……」
「うん。アルスの雰囲気が変わった」
先輩達の言葉が私の耳にも入って来る。きっとアルス先輩の雰囲気の変化はこの場の全員が気付いただろう。
「アルス先輩……」
「大丈夫だ、ロニエ。今のあいつは誰にも負けない……」
私の呟きに反応したキリト先輩が言う。
「どういうことだい、キリト?」
「いいか、皆んな。よく見てろ……」
ユージオ先輩の問いに答える様にキリト先輩が語り出す。
「今のあいつは上級修剣士 アルスとしてでは無く………きっと、俺の……俺達の英雄」
きっと私達の知らない、アルス先輩の姿を………
「"無型の剣聖"の戦いを……!!」
——
「さあ、反撃開始だ!!」
「………」
騎士が剣を振るう。
きっと、不可視の斬撃が俺に迫っているのだろう。
(弾け!!)
以前、キリトの畑で育てていたゼフィリアの花が荒らされたという時、キリトから聞いた話だが、この気候では本来ならゼフィリアは育つはずがなかったらしい。だが、キリトはそれを"意思の力"で育てた。ライオス達に荒らされた畑も意思の力で復活させることができたらしい。
それらが可能なら、意思の力で剣を弾く事も出来るはずだ。
弾けと言う思いに集中する。
……そして俺の意思に反応する様に、光が集まり、固まり、何も無い虚空に剣戟が見えた。剣を弾く音が聞こえた。
「そうか…こうやればいいのか!」
コツは掴んだ。きっと、この要領ならいろんな事が出来る筈だ。
「せぇあぁぁぁぁぁぁ!!」
一気に助走し、ソードスキルを発動させる。……
「………!?」
ここ来て初めて騎士が反応する。
初めて防御姿勢を取った。
奴は剣を前で交差して防御しているので、後ろがガラ空きだ。
(来い!!)
今度はそこら中に落ちている白金樫の木剣にこちらへ来いと言う意思を中させる。
「………ッ!?」
結果は成功だ。
まるで見えない腕か、糸で引っ張られるかの様に木剣が騎士の背中目掛けて飛びかかる。
「まあ、鎧相手に木剣で奇襲は意味ないか……」
木剣というカテゴリー的にはこの黒い奴も木剣だけど………
「ーーーー!!」
騎士が二振りの剣で連撃を繰り出してくるが、さっきと同じ様に弾けと言う意思で全てを弾く。
「はあぁぁぁぁぁ!!!」
黒い奴を鞘に収め、
……居合斬りのソードスキルだ。
「例え、斬撃が何個同時だろうと、弾けば同じだ!!」
そして騎士の剣……白い方を弾く事に成功したので、さらに追撃をかける。
「あぁぁぁぁぁああ!!」
「〜〜〜ーーーッ!!!!」
ノヴァ・アセンションをまともに受けた騎士がよろけながらも反撃してくるが、今度は剣で受け止める。
「っ!?まだだ!!」
剣を合わせてみて分かった。あの剣の優先度はこの黒い奴と同等かそれ以上だ。何度も打ち合ってはパラメーター的に低い俺の問題で長くは持たないだろう。
「くらえぇぇぇえ!!」
騎士の剣目掛けてSS ホリゾンタル・スクエアを発動させる。
四連続の水平斬りが全て剣に衝突する。流石に騎士もバランスを崩したのでその隙を見逃さない。
SS バーチカル・スクエアを剣に向かって叩き込む!
ギン!という音と共に騎士の最後の剣が弾かれる。
「これで終わりだぁぁぁぁあ!!」
俺は無防備になった騎士の胸目掛けて SSヴォーパルストライクを発動させる。
そして、俺のヴォーパルストライクは騎士の胸を穿つ事に成功した。
——
「やった!」
アルスがアインクラッド流 ヴォーパルストライクを決めた時、キリトたちはそれぞれの思いで一杯だった。
(流石、俺の相棒だ!……けど、あれが意思の力なのか?)
と思うキリト。
(何だろう……見た事ない技が何個かあった。アインクラッド流にはまだ先があるのかな?)
とユージオ。
(凄い!これがアルス先輩の力……もしかしてユージオ先輩達も同じくらい強いのかな?)
とティーゼ。
(……次元が違うわ)
と諦め気味なセルカ。
(さっきのはまさか……"心意の腕"!?それに何もないところで剣戟があった……まさか"心意の太刀"まで!?心意の技を使える学生なんて……彼は一体……)
と何かと驚愕しているアズリカ女史。
(よかった……先輩、無事で……)
と心底安堵したロニエ。
(まさか心意の技まで使えるとは……このアルスと言うユニットもマスターやかの者に並ぶ存在になり得るという事か?)
と、ますます興味が湧いたとある蜘蛛。
——
「ああ……終わった 」
黒い奴を鞘に収めると同時にヴォーパルストライクの直撃を受けた騎士の体が強い光に包まれる。
「ん………なんだ?」
薄れ行く意思の中で、その光が俺の手に収まり、丸い形をした何か2つへと姿を確認した。
(まあ……一件落着か?)
それが意識を失う前の記憶だ。
ああ……戦闘描写がお粗末過ぎる気が……
今回はアルスのチートっぷりというか、能力を戦闘で見てもらおうと言うコンセプトで書いたのですが、帰って分かりづらくなってしまったかもしれません。申し訳ございません。これから腕を上げいけるように頑張ります!