SAO 〜無型の剣聖〜   作:mogami

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12話 上級修剣士生活 その7

とある日の夕方、俺とユージオは木剣片手に専用修練場に向かっている。

 

「なあ、ユージオ君」

 

「なんだい?アルス君」

 

「……キリト上級修剣士殿はたしか私めの記憶が正しければ4位でしたな?」

 

「そうですな……そろそろこの口調止めない?」

 

うん。俺も面倒だと思ってたところだ。

 

「まったく……テスト前に一夜漬けとか、受験前日の受験生かよ」

 

「……そういえば筆記試験ではアルスが4位だったんだよね」

 

「そうなんだよな〜……まさか型で落とすなんて思わなかったぞ」

 

いま思い出しても悔しくなるな……でも、俺が4位だったら俺が傍付きに選んだのはセルカだった筈だし、そうなればいまのロニエとの関係は無かったと言えるし、まあ。よかったのかな?

 

「アリス……」

 

ユージオが何やら呟いている。

そして色々考えたりしているうちに修練場に着いたので、着替えて修練場に入ると、男子生徒3人組がいた。

 

俺とユージオを見るなり動きを停止させた。

 

お前らの技なんて盗むどころかその価値すらねぇーよ

 

と小声で呟きながら一応会釈して隅っこの方に移動しようとした時、

 

「おや、ユージオ……修剣士とアルス……修剣士殿、今夜は二人なのかな?」

 

ライオスが声をかけてきた。

名前と修剣士の間に間があるのは……差別的なアレだ。全くもって面倒くさい事この上ない。

 

「こんばんは。アンティノス修剣士。ええ、同室の者は……」

 

ユージオは無視すれば良いものに律儀に答えた。

 

「無礼ではないか!ライオス殿の名を口にするのなら《主席修剣士殿》を付けるべきであろう!」

 

うわーメンドクセー

 

「これは申し訳ありません、ジーゼック修剣士」

 

さすがにうんざりした様子でユージオが言う。

 

「重ねがさね無礼な!ウンベール殿にも《次席》を付けるべきであろう!」

 

「はぁ…これはこれは申し訳ありませんでした、クラース修剣士(・・・)

 

面倒になったので、クラース相手に修剣士を強調して言う。

 

「このっ……!」

 

「まあ良いではないか、ウンベール。クラース。我らは同じく修剣士なのだから」

 

これまた寛大なこって……殿様か何かか?お前等。

 

「シッ!」

 

そんなこんなで寛大(笑)なライオス殿の発言により、後は何も言われる事もなく、ユージオと木剣を振るった。

 

——

 

—この世界では何を剣に込めるかが重要なんだ—

 

とキリトは僕に剣術を教える時によく口にする。

 

—ここでの型……奥義とかは自分の思いによって力が変わるんだ。まあ、心意だ。心意—

 

と隣で木剣を振るうアルスがよく口にする。

 

僕はよく、アインクラッド流をキリトやアルスの生き様の様だと思う。

 

「よし、そろそろ戻ろうか」

 

「うん、そうだね」

 

毎日振るうと決めている回数振って、食堂へ向かおうと思ったその時、

 

「おや、ユージオ修剣士達は丸太を叩いただけで、型の稽古はしないようだぞ」

 

(いつもながらキリトがいない時は元気だね、ライオス君)

 

などと考えながら隣にいるもう一人の相棒を見ると……

 

「(−_−#)」

 

うん、なにやら怒っている事だけは伝わった。……その顔なに?

 

「ライオス殿、聞けばユージオ殿とアルス殿は、どこぞの田舎で木こりをしていたそうな。丸太相手の技しかご存知ないのかもしれませんな」

 

「これはしたり。そのような事情があるのなら、同じ寮で修練する者として、せめて型のひとつなりとも教示差し上げるべきだったかな」

 

「おお、ライオス殿の雅量たるや、まさしく爵士の鏡というものですなあ!」

 

示し合わせたような芝居がかった口調で何かを言っている。思わずため息をつきそうに……「はぁ…」……アルスがため息をついた。

 

「どうかな、ユージオ殿。ライオス殿のお言葉に甘えて、指導をうけていっては?このような機会、2度とはないぞ」

 

話しかけられた。

この状況で意図的に無視しては逸礼行為に該当してしまう。上級修剣士の懲罰権が上級修剣士にも該当するかどうかはわからないが、こういう人達はなにをするか分からない。

 

「(♯`∧´)」

 

ああ……アルスの顔が真顔に青筋を浮かべていた様子から口をへの字に曲げている。

 

でも、流石に僕でもカチンときていた。

 

——

 

ユージオと鍛錬した後、戻ろうとして声をかけられて無いようにイラついていると、

 

「……確かに、2度とはない機会かもしれませんね。それではお言葉に甘えて、一手ご教示願えますでしょうか」

 

ユージオが何かを閃いたような事を言ってた。

 

「ハハッ、もちろん構わんとも!それでは早速、そこで型を披露してみたまえ。そうだな、まずは簡単なところから、《猛炎の型・三番》あたりを……」

 

ユージオの発言に明らかに気持ち悪い笑みを浮かべた3人。まず、ウンベールのほうが大きく両手を広げると、きんきん響く声を発した。

 

「いえ、ジーゼック次席修剣士殿」

 

右手を小さく上げ、ユージオは言葉を選ぶような素振りを見せて言った。

 

「せっかくのお申し出ですから、型の講評よりも、次席たるジーゼック殿の高貴なる剣を、我が身に直接ご指導頂ければと」

 

「…………なんだと?」

 

ユージオの発言にウンベールが驚いたような声を出す。

………なんと言うか、ギガスシダーの下で出会った頃のいたいけなユージオがどんどんキリト色に染まって来てる。

そう言えば、セルカも初めて会った頃と比べてかなり性格が変わったような……あはは、キリトの影響って怖いな。

 

などと考えていると試合が既に始まっていた。

 

「卑劣な騙し討ちで、俺の剣を破れると思ったか」

 

「ひ……卑劣………?」

 

ウンベールの言葉に呆気にとられるユージオ。なお、試合内容は見てなかったから知らん。

 

「そうだろうが。打たれるがままと見せかけて、そんな型も何もない技を出してくるのが卑怯でなくて何だ」

 

「ち……違う!これは僕の流派……《アインクラッド流》の戦い方だ!」

 

アインクラッド流の戦い方を理解したと取れるユージオの発言に少し嬉しくなりつつ。ウンベールの言葉に呆れ……と言うか、高く評価していた訳では無かったが、失望していた。

ウンベールの言うことは的外れもいいところだ。所詮は貴族の坊ちゃんでしかないという事だろう。

 

鍔迫り合いでやや押されぎみなユージオをウンベールがニタリと嗤うと、妙に癪に触る声で言った。

 

「その無様な姿に、流派の卑しさが滲み出ているぞ」

 

うん。ムカつく。

 

だが、ユージオは覚悟を決めた顔をして、

 

「うおっ!」

 

珍しく気合を放ちながら、ユージオはウンベールの剣を刀身の右側面で受け、その瞬間、今まで発動していたスラントを中断する。

ユージオは、その勢いに逆らわず、木剣を肩に担ぐように構え、アインクラッド流秘奥義《バーチカル》を発動。

 

「ぬっ!?」

 

ウンベールが面食らったような反応をする。ユージオに弾かれたウンベールの雷閃斬は呆気なくその光を消し、ウンベールを後退させる。あと一撃、ユージオが追撃すれば決着が付く。その時、

 

「そこまで。この立ち合いは引き分けとする」

 

とライオスが宣言した。

……逃げたな。

 

「ら、ライオス殿!俺……いえ、私がこのような田舎剣士ごときと引き分けるなど—」

 

「ウンベール」

 

何かを喚こうとするウンベールをライオスが穏やかな声でたしなめる。その言葉にウンベールは一応の騎士礼をして、ユージオが礼を返す前に踵を返し、ライオスの背後にクラースと並ぶ。

 

「いや、見事な技だ。ユージオ殿いや、アルス殿もその珍妙なる技、学院卒業後は帝立曲芸団あたりに天職を求めてはいかがかな?」

 

「……お気遣い痛み入ります、アンティノス修剣士」

 

ユージオがせめてもの反撃に《修剣士》と《殿》を抜いていた。が、

 

「あまり調子に乗らないことだな、ユージオ修剣士。偶然の引き分けがそこまで嬉しいか」

 

とクラースが言った。

……こいつら相手だとずっとキレている気がするが、またイラっとした。

 

「それではクラース殿。私にも剣のご教授お願いできますか?」

 

と心意の太刀を放ってクラースの前の床に切れ目を入れながら言ってみた。

 

その場の全員……俺と少し慌て気味なユージオ以外は状況を飲み込めていない。

それにこればっかりはさしものライオス達ですら俺に追求はできない。当然だ、何故なら心意技自体、整合騎士に伝わる技なのだ。普通はたかが学院生程度が知るわけがない。

 

……大丈夫。禁忌目録違反にはならない。《心意で物を傷付けるべからず》的な規則があったら「何それ?」となって終わりだろうしな?

 

 

「い、いや。次の検定試合まで取っておこう」

 

とビクつきながら返事を返して、そそくさと修練場から出て行った。

 

「……ユージオもお疲れ」

 

「まったく、心意技まで使うことないだろ?」

 

あいつらが出てったことを確認して、ユージオに労いの言葉をかけると、心意技を使ったことにかんして突っ込まれてしまった。だが、ユージオの顔はしてやったり。みたいな顔だ。

 

「……」

 

そしてユージオは無言で木剣の刀身を撫でていた。

 

「……大丈夫さ。お前ならすぐに《剣に何を込めるか》を見つけられる筈だ」

 

「なんで僕の考えてたことが分かったんだい?」

 

「まあ、なんと言ってもお前の師匠のうちの一人だぜ?」

 

「ははっ!そうだね………今日はありがとう。次も頼むね」

 

俺とユージオは言葉を交わし、ユージオは木剣に一声かけて鞘に剣をしまったのを確認して、食堂へ向かった。

 

「えっと、今日の主菜は……」

 

「えーと……羊肉の炙り焼きと白身魚の揚げ物、鶏肉団子の煮込みがあるみたいだね」

 

うーん。今日は炙り焼きの気分だな。

 

「キリトは………」

 

「…あいつなら主菜は煮込みで、あとはチーズ入りの生野菜たっぷりと、オリの実の酢漬けと、飲み物は冷たいシラル水かな?」

 

ユージオにキリトが食いそうなものを確認しようとしてユージオが口にした内容に驚いた。ドンピシャまるっきり俺が考えた内容と同じだった。

………と言うか、

 

「なあユージオ。俺達、キリトの好みやら行動パターンを把握しすぎじゃないか?」

 

「……だね。僕もそれを考えてた」

 

はぁ…とため息を吐きつつ、3人分の食事を持って部屋へ戻るのであった。




ここで少し説明をしますと……
アルスがライオスと不愉快な仲間達に対して態度がアレなのはそれだけ彼らをよく思ってないということです。……けっして「ディルディル」フラグでは……ある気がしますね。

それでは閲覧ありがとうございました!
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