なんと言うか、あれから数日が経った。
ライオス達の明らかな挑発、それに対しての脅し的なことをしたので、嫌がらせが来ると思っていたのでいざ何もこないとならると少し拍子抜けする。
「なんと言うか……拍子抜けだね」
「ユージオもそう思った?」
やはり当事者の俺とユージオとしてはそう考えてしまう。
「うん。立ち合いで引き分けたくらいで大人しくなるような連中じゃないしね、ついでに嫌がらせの予告的なこともされたし……」
だよなと同意しながらキリト、ユージオと俺たちの部屋の共用の居間で話している。
「俺も、あいつらが根性を入れ替えるとは思えないな」
「だな」
この1週間はこのようにお茶会をするのが日課になりつつある。
「そういえば、ユージオは子供の頃はどんな悪戯をしてたんだ?」
「ふっ…あまいなキリト。ユージオは悪戯する側じゃなくてされる側だと思うぜ?…………ほら、あの衛士のジンクだっけ?あいつ辺りに」
「凄いなアルス……本当にその通りだよ。靴を隠されたり、袋の中に虫を入れられたり………」
「む、虫ぃ!?」
虫……虫……虫……虫を鞄に入れるとは何とも卑劣な!!
「ユージオ。安心しろ、次会ったらジンクの口に芋虫を大量にぶち込んでやる……」
「あ、アルス?目が死んでるよ……」
「ユージオ。世の中には知らない方が幸せなこともあるんだぜ?……あれはアルスじゃなくてもトラウマになる……」
SAOで巨大で大量な虫に追われた事があり、それ以来、虫が無理になってしまった。
「そこまで言われると逆に気になるけど……まあ、分かったよ」
「……思えばこの寮ないで本格的な嫌がらせって不可能だよな」
物を屋外に放置すると天命が減り始めるので《他者の所有物の損壊》で禁忌。殴ったりしたら《他者の天命を故意に減らしてはならない》で禁忌……それプラス、山のような量の学院の規則がある。
「あと考えられるのは……立ち合いで俺達に一撃いれるとか……俺やアルスを金品で懐柔して、ユージオ君と離反させることくらいかな」
「え………」
ユージオが心細そうな声を出したので、キリトと目を合わせてニヤリと笑う。
「心配するな、少年よ。お兄さん達は君を見捨てはしないぞ」
「そうだぞ、少年よ。お兄さん達はいたいけなユージオ君を見捨てはしないぞ」
と偉ぶりながら言ってもみた。
「べ、別に心配なんてしてないよ!何だよ、二人して……それに高級な肉とかを積まれたらあっさり頷きそうじゃない?」
「「ああ。それはあるな」」
と必死に否定した後の現実的な指摘をするユージオの言葉に俺とキリトは声を揃えて頷いてしまった。
「まあ、今後は平常心を忘れないように、ステイ・クールでいこうぜ」
取り敢えず今日のお茶会の議題について簡単にまとめたキリトに頷きながらカップを空にする。
「何だって?す………すて………?」
ああ。ユージオには意味は伝わらないか。
「ステイ・クール。アインクラッド流の極意その1だよ。落ち着いていこうぜとか、お別れの挨拶に使う言葉だ……じゃあまたな、みたいな感じで」
キリト……また適当な……いや、そうでもないか?
「へえ。解った、覚えておくよ。す……ステイ・クール」
しかもユージオも納得しちゃったしな。
「さて、ユージオ君にアルス君。明日の事なのだが、実は俺、用事が……「駄目だよキリト。逃がさないぞ?」……さいですか」
キリトが明日の約束……ピクニック的なことをロニエ達と約束したことから逃げようとしている。
「と言うか、僕やアルスはともかく、お前の傍付きはセルカじゃないか!村の頃からの知り合いだろ?だいたい、ティーゼ達の指導生になってから1ヶ月はたったんだぞ?なんで未だに逃げようとするんだい?」
「しょーがないじゃないか!先輩後輩の関係がむず痒いんだよ!」
あーあ。またユージオとキリトが言い合ってるよ……
まあ、こっちに火花が飛んでこないことを祈る……
「だいたい!アルスも俺と一緒に逃げる側だったじゃないか!?なんでそれがいつの間にか休日にロニエと2人で出かける仲になってるんだよ!?」
「それもそうだね、いつの間にか僕らのうちの誰よりも傍付きと仲良くなってるし……アルス、一体なにをしたんだい?」
うわー……とんでもないキラーパスが来たよ。
「……そう言えばいつの間にかロニエが歩みよってくれてたな……まあ、どっかの誰かさんの入れ知恵もあると思うなー」
とキリトにパスを投げ返す。
……そんなこんなで俺たちの言い合いは夜明け前まで続き………
「「「Zzz………」」」
結局、部屋の居間で取っ組みあったままの姿勢で倒れるように3人仲良く寝てましたとさ。