空は清々しい程に晴れている。
「いやーいい天気だなぁ!」
「ふふっ…そうですね。ところで先輩?」
「ん?なんだね、ロニエ君」
「今日って、キリト先輩風に言うとピクニック?ということをしてるんですよね?」
「そうだね、今日が楽しみだったよ」
「はい。私もですけど………」
俺達の前を歩いてるキリト、セルカのペアとユージオ、ティーゼのペアを見ながら俺とロニエも歩いていると、ロニエが俺やキリト、ユージオを見回して俺に目を戻す。
「先輩方は何故、剣を持って来たのですか?」
「ああ……そうだな……ロニエ、この剣持ってみ?」
「は、はい……きゃっ!?」
理由説明のために腰に帯びていた黒藍の死剣を渡してみると、軽く悲鳴をあげて転けそうになったので、急いで支えた。
「大丈夫か?」
「は、はい……ところでこの剣、なんでこんなに重いんですか?」
「………実はこの剣の優先度……50なんだ」
「50ですか!?」
ロニエが驚くのも無理ない。俺も驚いたし、アズリカ先生も驚いてた。同様にキリト、ユージオも驚いてた。
「そう。いつだったかユージオが物に愛情を注げば答えてくれるって言ってたろ?だからかな」
……それにアズリカ先生の言ってた剣の記憶やら武装完全支配術を使う為に出来るだけ剣を理解しなきゃいけないしな。
「………先輩。わたしもいつか強くなれますか?」
とロニエが俯きながら言った。
「なれるさ、なんて無責任なことは言わない」
「そう、ですよね……「でも」……」
ロニエが自信なさげに何かを言おうとしたのでそれを遮る。
「諦めなければいつかなれるさ、俺達だって元から強かった訳じゃない」
「そう、なんですか?」
どこか信じられなそうな表情をするロニエ。
「当たり前だろ?俺達、修剣士になる前は樵してたんだぜ?」
「想像できません……」
あ、今度こそ完全に驚いたな。
「それに、ロニエは分かってないね」
「な、なにをですか?」
今度は小首を傾げてこっちを見て来るので、頭を撫でながら言う。
「アインクラッド流は俺とキリトがユージオとセルカに教えた。それにロニエもティーゼも少しずつ奥義を使えるようになって来てるだろ?」
「はい……」
「アインクラッド流の使用者は今の所は6人だけ。ロニエはそのうちの1人なんだぜ?人数が少ないということは逆に言うとそれだけ師範と言える奴が弟子達を育てる事が出来るということ。この時点で君が弱い!なんて言われる筈もないし、何より……」
「何より……?」
ロニエは俺に頭を撫でながら言葉を紡ごうとするが、流石にキザすぎるかなと今更考えて恥ずかしくなる。
その間にもロニエの目は控え目に続きを促してくる。
……覚悟を決めるか。
「ロニエ、君は俺の人生初の後輩で、可愛い後輩。何より俺の愛弟子だ。その、なんだ……君を弱いとか言う奴がいたなら俺がそいつを許さない」
やべえー!かなり小っ恥ずかしいー!
「〜〜〜!」
ロニエが完全に顔を赤くしている。
……もしかして怒らせちまったかな?
なにはともあれ、俺もロニエも顔が真っ赤だろう。
でも、恥ずかしさのあまり頭を撫でる手を離すこともできず、頭を撫でたまま固まってしまう。
「おーい、アルス、ロニエー!このほとりで飯にするから早く来いよー!」
と、空気を読んでかキリトが声をかけてきた。
「い、行こうか」
キリトの声で漸く動けるようになったので一声かけて歩き出そうとすると、袖を引かれる感じがして振り返ると、
「〜〜〜!」
未だに顔を赤くしたロニエが袖を引いていた。
「せ、先輩……」
「な、何でしょうか!?」
駄目だ……緊張というか、まだ顔が熱くて咄嗟に敬語を使ってしまった。
「わ、私が強くなるまで……一緒に……私のそばにいてくれませんか……?」
と袖をクイっと引き、上目遣いで言ってくる。
……可愛い。
「うん……任せろ。君が強くなれたと思えるようになるまで君のそばで君を守るよ」
と我ながらキザなセリフを吐いたと思いつつ。もう一度、ロニエの頭を撫でた。
「先輩……頭を撫でるの上手いですよね…先輩に撫でられると安心できます……」
「そうか?俺的にはロニエの髪、サラサラしてて気持ち良いからな、撫でて欲しければいつでも撫でてやるよ」
笑いながら言うロニエに俺も笑いながら言い返す。
きっと、これから先も順調に物事が進んで、整合騎士になり、ユージオとアリスを再会させて、キリトを無事に現実世界に帰す。そしてきっと大団円を迎える事が出来る。
——
そう、信じていた。
だが、現実は違った。俺はロニエとの約束も守る事が出来ない………それを近いうちに思い知ることになる。