心底不快になる展開ですので苦手な方はご遠慮ください。
雨が降る暗い道に俺の足音と乱れた呼吸が響く。
「はっ………はっ………」
事の始まりは少し前に、ロニエ達が来ないのを心配しつつ各々の武器を磨いていた時にフレニーカと言うウンベールの傍付き錬士が訪れたことに始まる。
俺達はこの前のピクニックでロニエ達からウンベールの傍付き錬士 フレニーカが女子として耐え難い命令を受けているので助ける為に力を貸して欲しいとのことだった。
もちろん、俺達はすぐにウンベールに抗議しに行った。
そこまでは良かった……だが、ロニエ達も勇気を振り絞って上級修剣士であるウンベールに抗議しに行ったらしいのだ。それが今日の午後3時頃の出来事だとフレニーカは語った。
そしてフレニーカにその場に残るように伝え、キリトとユージオはウンベールやライオス、クラースの自室へ出向き、俺は初等錬士寮にロニエ達が戻ってないかを確認しに行った。
「アズリカ先生……!」
「アルス修剣士?どうしたのですか、そんなに慌てて。それに何故、剣を帯びているのです」
初等錬士寮の扉をかなり乱暴に開けて入って来た俺を見て周囲の初等錬士達やアズリカ先生も驚いている。
「ろ、ロニエ・アラベル初等錬士ならびに、ティーゼ初等錬士、セルカ初等錬士は戻って来てますか!?」
「い、いえ。あの子達はまだ戻って来てませんが……」
アラベル先生のその言葉を聞いて踵を返し、もと来た道を走り出した。
「アルス修剣士!?」
先生の声に反応して振り返る余裕すらない。
「キリト……ユージオ……」
ウンベールの部屋に向かったキリト達になにも起きていない事を願いながら一刻も早く、キリト達の元に向かう為に俺は全力疾走した。
——
「おや、キリト殿にユージオ殿。随分と遅いお出ましだな」
俺とユージオがウンベールの部屋に着いた時、何故かこいつは俺たちが来る事を見越していたような言い方をした。
「おや、アルス殿は不在か。まあいい、たった今、西帝国産の50年物を開けたところだ。 平民には手が届かない代物だぞ?」
「いえ、お気遣いなく。それよりこちらに私やユージオ。アルスの傍付き錬士、セルカ、ティーゼ、ロニエは来ておりませんか?」
ウンベールのわざとらしい言い方にイライラしつつも出来るだけ丁寧な口調で催促する。
「キリト殿、お顔の色がすぐれないようだ……景気付けに一杯いかがかね?」
奥の方で背中を丸めているライオスが声を掛けてくる。
「いらないと言っているっ……!なんでもいいから質問に答えろ!」
「この、無礼者!!」
捲し立てるとクラースが立ち上がり、詰め寄って来るが、
「よい、下がれクラース」
「……はい」
相変わらず穏やかな口調のライオスがクラースを嗜める。
「ふむ……そうか、あの3人はキリト殿達の傍付きであったか……」
「……やっぱりっ!」
ユージオも反応を示す。
「あの3人の態度は凄かったぞ、たかが下級爵士と村娘の分際で我等に意見するなどな」
「っ!?あの3人に何をした!」
こいつらの事だ……考えたくはないが、間に合わなかったと言う可能性もある。
「キリト殿は少々冷静さを欠いているようだ。ここは一つ、上がるといい」
ライオスが俺とユージオを部屋に入れる。
「……っ!!」
部屋に入ると、天蓋つきのベッドに並んで横たわる、3人の少女がいた。
「……セルカ…ロニエ…ティーゼ……!」
いや、転がされていると言うべきだろう。何故なら、3人とも灰色の制服の上から赤い紐で縛られている。
……3人は意識が朦朧としているのだろう。3人の目はぼんやりと天井を見つめている。
「なんで……」
ユージオがまず先に3人の縄を解こうと彼女達に近付こうとすると、
「おっと、動かないで貰おうか」
「……どういう意味だ…!!」
「そうだな。そこの3人は我等に反抗的な態度をとった」
「なっ……それだけの理由で!?」
ユージオがクラース、ウンベールの発言に驚愕している。
「いやはや、それはもう、とんでもない口ざまだったぞ。貴殿らにも聞かせてやりたかったよ……『貴族の誇りはないのですか』などと。よもや六等爵家と村の娘ごときにあのようなことを言われようとは……いやはや、本当に参った参った」
ライオスの言葉にウンベールとクラースが下品に笑う。……この反応を見るに、こいつらの狙いは、はなから俺達ではなく、フレニーカと仲が良いことを利用してセルカ達を呼び寄せることだったんだ……!
「だからと言って、これは上級修剣士に与えられる、懲罰権を逸脱した行為の筈だ!」
「懲罰権?誰がそれを行使すると言ったかね?これは、帝国基本法及び禁忌目録に則った、正当、厳粛なる貴族の裁決である!」
その言葉にはっとする。
貴族裁決……この前のピクニック兼、森遊びでロニエやティーゼの話していた上級貴族に与えられる特権……下級貴族などへ効力を発揮する、れっきとした法。
俺が思考している間に、ライオスがセルカ達の転がっているベッドににじり寄る。
そして、今まで朦朧としていたティーゼの目が何度か瞬きする。
そして自分に迫る、ライオスを見て眼を見開き、弱々しい悲鳴をあげる。
それは、セルカもロニエも同じだった。
「やめろ……!!」
ユージオが駆け寄ろうとするが、その前にライオスがギョロッとこちらに眼を向ける。
「おっと、動くなよ平民!これは先程言った通り、厳粛なる貴族の裁決である!貴族の裁決権を侵害するのは、法に背くことと同義!つまり、そこから動けば貴様らは罪人となるのだ!!」
「そ……っ!」
ユージオが言葉を詰まらせる。
俺もそうだ。今ここで、こいつらを斬ることができればどれ程楽か……!
「先輩達は動かないで……これは、私たちが受けるべき罰なんです……」
ティーゼがか細い声で言う。
「ほう……六等爵家の娘にしては大した覚悟だ。これは誰が最初に泣き叫ばせることができるか勝負といきましょうか」
クラースが下卑た声で言う。
それに同調するかのように、ウンベール、ライオスまでもが下卑た表情をしていた。
ライオス達が彼女達を嘲笑うように手を這わせていく。
「いや………いやぁ!!」
セルカが悲鳴をあげる。
「いや……助けて……たすけて……ユージオ先輩!ユージオせんぱい—っ!」
親友の泣き声を聞いて耐えられなくなったであろう、ティーゼが泣き叫ぶ。
「僕は……」
ユージオが何かに葛藤している。
……目の前で純潔を散らそうとしている後輩達から目を背ける事が正義なのか?
「アルス先輩……!!アルス先輩!!!」
ロニエがここにいない
——もし、あいつが今、ここにいたらどうするだろう。
見て見ぬ振りか?いや、違う!
「うおぉぉぉぉぉーー!!!」
パシャ!と言う音とともにユージオがウンベールの手を斬り飛ばした。
「い、イヤァァァァァァ!!」
ウンベールの劈くような悲鳴が響く。
この場の誰もがウンベールを見た。
「ふ、ふはははは!!動いたな?ユージオ修剣士、いや、大罪人ユージオ!」
ライオスが高笑いをしながら歓喜する。
「う…腕が……俺の腕がっ……!血が、血がこんなに……っ!天命が減っていくぅぅぅぅ!!!」
ウンベールはずくさま、一番近くにいたライオスにすがるように言う。
「ライオス殿!神聖術を……いや、それでは間に合わない!天命を……天命を分けてください!!」
切断された断面を抑えなが叫んでいる。だが、それだけでは血は止められない。手から溢れ出ている血がシーツに落ちる。ティーゼ、ロニエ、セルカは状況を理解できていないようでそれを呆然と見ている。
「その程度では死なん、紐でも巻いていれば血は止まる」
とウンベールに言う。
ウンベールは生命の危機を感じたのだろう。クラースには天命を要求せずに、ロニエ達を縛っていた紐を解き、必死の形相で手に結び付けている。
「クラース、お前はそのままその娘をいたぶるがいい」
「ひひっ!分かりました!」
ロニエに覆い被さるように迫っていたクラースに一声かけると、ライオスはユージオに剣を向けた。
「大罪人ユージオ!貴様をこの場で処刑してやろう!」
ユージオは呆然としている。それにお構いなしでユージオに白刃が迫る。
「シッ……!」
それを俺が弾く。
(引き金を引かねば自分か、大切な人が傷つく。その時、君は引き金を引けるか?……か)
かつて自分がシノンに言った言葉を思い出していた。
「ほう……貴様も法を犯すか、大罪人キリト!」
法、か……
「禁忌だの、貴族の権利だの、知ったことか」
14と16歳の女の子を権利がどうこう言って陵辱する事が正しい法が正義である筈がない!
俺が言い切ると同時に窓の外から強烈な何かを感じた。
「がっ……!?」
そしてロニエに覆い被さるように迫っていたクラースは不可視の何かに跳ね飛ばされたかのように壁に埋まり、その顔の2センチ隣には黒い少し太くて長い針のようなもの……いや、ギガスシダーの枝が突き刺さっている。
「それ以上、俺の親友2人と可愛い後輩に手を出させない」
聞き覚えのある声がした。
声のした方を見ると、
黒い藍色を濡らし、制服も黒い藍色が濡れて黒くなっている。雨水に濡れたアルスが怒りを露わにした表情でたっていた
今回の話は書き直しを結構してこんな感じの出来になりました。この手の話を書くのはかなり苦手なです。
それでも見てくれた方、閲覧ありがとうございました。