SAO 〜無型の剣聖〜   作:mogami

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16話 上級修剣士生活 その11

「お前ら……覚悟はでき「ひぃぃぃぃぃ!!」……逃げんのかよ」

 

雨の道を走り続け、壁に駆け上がってきてキリト達に剣を向けるライオス。先の無い手を押さえて蹲るウンベール。ロニエを襲おうとしているクラースがいたのでとりあえず、心意の腕でクラースを吹き飛ばし、壁にめり込んだところに顔の隣、2センチくらいの場所に手元に何本かあるギガスシダーの枝のうち1本を突き刺す。

 

そこから、手元の黒藍の死剣を抜きながら脅し文句を言い放とうとした矢先にクラースは悲鳴をあげながら逃げた。

……全くもって興醒めだ。

 

「うおぉぉぉぉぉーー!!!」

 

先程から剣戟の音が聞こえる。

雄叫びを上げたのはキリトだった。

 

天山裂波に押し込まれるキリトの輪渦。

これと同じ光景を今年の3月、セルルト先輩とウォロ修剣士の戦いで見た………単発秘奥義の2連撃。

 

キリトはセルルト先輩の技を一度見ただけでものにしていた。

 

(やっぱりキリトの観察力とか飲み込みの早さには勝てないな……)

 

ユージオの方をちらりと見ると左目から涙を流している。……右目からは血が流れている。

 

「イヤァァァァァァ!!」

 

キリトの輪渦2連撃はライオスの剣を真っ二つにへし折り、手首の少し上を跳ね飛ばした。

 

ライオスは悲鳴をあげながら切断された手の断面を抑えている。

 

「う、ウンベール!!その紐を解いて、私の……私の血を止めろ!!」

 

「い、嫌だ!これを解いたら俺の天命が減る!!」

 

と向こうで色々と騒がしくなっているので、とりあえずロニエ達を縛っている紐を解こうとする。

紐か何かを渡せば死にはしないだろう。あの血の勢いで死ぬかは五分五分なところだが。

 

「せ、先輩……」

 

「ごめんな、遅れちまった」

 

……それにしても、俺達3人とも禁忌目録違反か。

キリトとユージオは他人の天命の減損。

俺は他者の部屋、敷地に許可なく侵入したことによる不法侵入。

 

「禁忌……しかし天命が!!禁忌…天命ぃい…禁忌ぃ…!!」

 

ライオスの声に異質な物を感じて目を向ける。

 

「てんめい、きんぎ、でんめい、ぎんぎ、でん、で、で、ででで」

 

ライオスの声にさらに異様な響きが加わる。

 

「でででっ、でっ、でっ、ディッ、ディル、ディル、ディルディル、ディルディルディルディルディルディ——」

 

まるで壊れたラジカセのようにブツりと声が止まり、ライオスは背後に仰け反るように倒れた。

 

あまりの出来事に俺とキリトは表情を凍りつかせてしまう。

 

ユージオはあっけに取られ、紐を解き終わってティーゼ達の紐を解いていたロニエと解かれていたティーゼ、セルカも似たような反応をしている。

 

「……まさか、フラクトライトが崩壊したのか……?」

 

ライオスの手首からは血が出ている。つまり、まだ天命は尽きていない。だが、ライオスが生きていないことは明らかだった。その結果、ラースの研究員やキリトの言っていたフラクトライトの崩壊が原因だとしか思えない。

 

「ら、ライオス殿……死んで!?ひ、人殺し……化け物!!」

 

ライオスの顔を覗き込み、ウンベールはクラースと同じように部屋から逃げるように出て行った。

 

俺たちはロニエ達に対してどうすればいいのか分からず、ただ俯いていた。

 

すると、正面から衝撃が来ると同時に何かに抱きつかれる。

 

「先輩……」

 

ロニエだった。

ふと周りを見るとキリトやユージオも同じ状況になっている。

 

それでもどうすればいいのか分からない……とりあえず泣きじゃくるロニエを抱きしめ返して頭を撫でる。

 

「ごめんな……守る約束、守れなかった」

 

なんでだろうな、守るって約束した奴を……約束した人に限って守れない。………俺が弱いから。

 

「ごめんなさい……アルス先輩……。私……わたしたちのせいで……!」

 

違う……本当に謝るべきなのはロニエ達じゃない。

 

「!?」

 

寝室の天井に《ステイシアの窓》によく似た何かが浮かんでいる。だが、それはステイシアの窓よりもずっと大きく、しかも丸い。そしてその奥から何かがこちらを覗いている。生白い肌にはまる、硝子球のような眼。

 

……以前、どこか……。そう、だ……あの日。アリスが連れて行かれる前に……。

 

俺がそう何かを思い出しそうになるのと同時に、白い顔が底無し穴のような口を開いた。途端、キリトが俺とユージオにごくかすかな声で囁いた。

 

「ロニエ達に聞かせるな!」

 

そして声が聞こえた。

咄嗟にまだ泣きじゃくっているロニエの耳を塞ぐ為にロニエの頭を強く抱きかかえた。

 

「シンギュラー・ユニット・ディテクティド。アイディー・トレーシング……」

 

紫の板、いや、窓の向こうの何者かが奇怪な声を発した。神聖術の式句の様な単語が聞こえる。

 

「コーディネート・フィクスト。リポート・コンプリート」

 

そんな声を発したあと、窓は消えた。

残されたのは泣きじゃくるロニエ達とそれを抱き締める俺達。

 

だが、俺の脳裏には泣きじゃくるロニエの顔と、今まで守れなかった人達……そして先程の紫の板から覗いていた目だった。

 

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