2人の子供がルーリッドの村を駆けていた。
1人は黒い藍色の髪をした少年。
1人は眩い金色の髪をした少女。
「アルス〜!早くしなさいよー!」
「ちょっ!?待ってよアリス〜!」
手にパイを入れた籠をぶら下げてアルスと呼ばれた少年がアリスと呼ばれた少女に手を引かれながら走っていた……と言うより、引き摺られていた。
そんな様子を村人達も微笑ましげに見ている。どうやらこの村では見慣れた光景らしい。
「アリス……いつもの事ながらみんな見てるよ……」
「うっ……!あ、アルスが走るの遅いからじゃない!」
いや、もう既に12歳の男女が手を繋いで走っているからじゃないかな?と口から出かけているのを必死に抑えているアルスの苦労をアリスが知る事は無いだろう。
「はぁ…偶には静かに過ごしたい」
そんなアルスの切実な願いを聞いたのか、アリスが何かを閃いたのか急に立ち止まる。アルスが「ふげっ!?」と言う悲鳴をあげてアリスにぶつかるが、アリスは体勢を崩す事もなく、むしろアルスを抱きとめた。
「ねぇ、アルス。今度一緒に森へ遊びに行きましょう!」
そんな彼女の提案を聞いて、彼は目を輝かせた。
「良いね!そんじゃ、キリトとユージオにも声をかけないとな!」
いつものメンバーと一緒に行くと言う意味だと思った少年はそう口にするが、
「………二人きりで行くのよ‼︎」
「………ふぁ!?まじで言ってるのか、アリス」
顔を真っ赤にしたアリスに怒鳴られる形になったアルスは驚きながら確認する。
「全く……察しなさいよバカ」
「ん?何か言ったか?」
やはり彼はどこまで行っても鈍感らしい。
「なんでもなーい……ほら、早くギガスシダーに行きましょ。二人がお腹を空かせてるわ」
そう言う彼女の頬は朱色が差している。
そして先程のように……と言うより、ややヤケクソ気味にアルスの首根っこを引っ掴み、再び引きずりながら歩みだした。
そしてその様子をやはり周りの村人達は微笑ましげに見守っている。
それから十数分後、2人はギガスシダーの前に辿り着いていた。
「おーい!遅いぞ2人とも、俺たち腹減って気絶するかと思ったぞ」
「あはは……所でアリス、顔赤くない?」
漆黒の髪の少年、キリトと
亜麻色の髪の少年、ユージオが2人に声をかける。
「な、なんでもないわよ!」
「へぇ〜……その割には顔が真っ赤だぞ?」
悪戯好きなキリトがアリスを揶揄うように言うが、赤面したアリスの睨みにより、ビクッ!と体を震わせた。
「そしてアルスは随分とぐったりしてるね、大丈夫かい?」
「ユージオ……この青ざめた顔を見て大丈夫そうに見えるか?」
「あはは……ごめん、やっぱりさっきの言葉無しね」
首根っこを掴まれ引きずられながらここまで来ていたアルスをみてユージオはああ、いつもの事かと思いつつ、苦笑しながら声をかける。
「て言うかそろそろ飯にしなか?真面目に腹減り過ぎて天命が減少しそうだ……」
「うん、俺もキリトに同意だ。腹減ったよ」
「………アルスの鈍感……バーカ」
「あー……えっーと。あはは、それじゃあ食べようか」
ギガスシダーの前に座り、パイを頬張る。4色の子供達。
《漆黒の髪の少年》、
《亜麻色の髪の少年》、
《金色の髪の少女》、
そして
《黒藍色の髪の少年》。
4人は生まれた時も死ぬ時も一緒。
4人は信じていた。いつまでもこんな何気ないけど楽しい、幸せな日々が続く事を信じて疑わなかった。
………そんな彼らが、金色の髪の少女と黒藍の髪の少年が………
———
「はあぁぁぁぁあーー!!」
「せぇぇぇぇぇいーー!!」
世界の中心、セントラル・カセドラルの中で片や咎人、片や騎士に分かれ、過去を忘れ、敵としてお互いの剣を相手に向けている。
ギィィィンと刃と刃が火花を散らし、ぶつかりあっている。
だか、騎士と咎人の剣が発生させたのは火花だけではなかった。
2人の剣がぶつかったとき、騎士と咎人の脳裏に身に覚えのない光景がよぎる。
「っ!?」
「い、今のは……?」
火花を散らしながら競り合っていた剣をお互いに弾き、距離を取り、脳裏によぎった映像について考え、困惑する。
咎人……アルスは今起きた現象を過去に経験したことがある。『セントラル・カセドラルのあなたたちをずっと待っているわ……』そんな言葉を2年前に似たような体験をした時に聞いた。
騎士……アリスは今までに経験したことのない感覚に困惑していた。目の前の咎人は整合騎士長であるベルクーリを打倒した実力者。何かしらの奇妙な術式を知っていてもおかしくない。そう感じつつ咎人……アルスの表情を見る。自分が握っている剣に目を落とし、首を傾げている。どうやら向こうも同じ物を見たらしい。
「念の為に確認しますが、今のはお前の術ですか?」
「いや、経験したのは初めてじゃないがあの時も今も術式を唱えたなんて事はないな」
垣間見た見覚えのない光景、それでも、2人には何故かそれが他人の物とは思えなかった。むしろ、考えれば考える程に自分の事の様に思える。
「まあ、何はともあれ斬り合っている以上はお互いに剣を振るわない訳にはいかないよな?」
「ええ。その通りですね」
そんな会話の数秒後、アルスとアリスはお互いに踏み込み、再び斬り合う。
アリスは疑問を抱いていた。彼女の剣はこの世界が生まれた頃から存在する金木犀の木を剣とした物で優先度は神器の中でもトップクラスだと言えるだろう。そんな《金木犀の剣》と打ち合ってもビクともしないアルスの剣は一体何なのだと、何故、咎人が……たかが修剣学院の学生がそんな神器を所有し、それを自在に操るほどのオブジェクト・コントロール権限を有するのかと。
「せいっ!!!」
「たあっ!!!」
アルスがアインクラッド流《ホリゾンタル》を発動させ、アリスはハイ・ノルキア流《天山烈波》を発動させる。
奥義同士の衝突は2人の記憶をより一層激しく揺さぶる。
2人とそれぞれの剣は鍔迫り合いながら激しく火花を散らした。
今回は三人称視点で書いてみました。
理由としてはアリスとアルスの過去と現在を客観的に表現できたらな〜と思ったからです。まぁ、残念な感じが滲み出てる気がしますが(苦笑)
アルスとアリスって名前が似てて何度も打ち間違いました……1人で「一人二役か!?」ってツッコミを入れてました(笑)
次回からアルス視点に戻ります。
それでは次回もよろしくお願いします。
……アルスとアリスの部分で誤字ってたらご指摘お願いします。