私はmogamiです!今までは匿名希望!という名前で活動してきましたが、ノリと勢いで解除しました。
これまで応援してくれた方も今回から見始めてくれた方、これからもよろしくお願いします!!
現在の状況を確認しよう。
俺、アルスはセントラル・カセドラルの壁に剣をぶっ刺してぶら下がっている状況だ。
「もういいその手を離しなさい!!お前まで落ちますよ!生き恥をさらしてまで助かりたくはありません!!」
そう、俺は剣をぶっ刺してぶら下がっている。
……右手にアリス・シンセシス・サーティをぶら下げながら。
「頼むからそんなに暴れるな!」
そして右手の騎士様は"くっ!生き恥をさらしてまでおめおめと生きていられるものか!早く殺せ!!"と言うような事を言っている。これが俗に言う【くっ殺】なのだろうか?
さてと……どうすっかな……。
《黒藍の死剣》もそろそろ天命が尽きそうで、《勝利の白剣》はカセドラルの80階に置いてきてしまった。
キシ、キシと音を立てる愛剣に心の中で謝りつつ、右手でぶら下げているアリスに目を向ける。
「早くっ!早く離しなさい!!」
「だから暴れるな!死に急ぐなっ!このアホ!!」
アリスは最高レベルの優先度を持つ剣と鎧を装備している。極論を言うおう。
彼女は華奢な見た目とそんなに重そうには見えない鎧と剣の割に予測していた数値の数十倍は超重量なのだ。
そんな彼女(防具込み)と俺を支えている《黒藍の死剣》の天命がめりめりと減っていっている事は確認するまでもないだろう。
「アホ!?今わたしの事を侮辱しましたね!?」
「ああ!!もう何度でも言ってやる!この馬鹿!アホ!ドジ!マヌケ!」
半ばヤケになりつつ知っている罵倒語をひたすら並べた。
「大体!何故、お前がわたしを助けるのですか!?あなたの目的が整合騎士の殲滅ではない事は十分かりました、でも、だからと言って助ける理由も無いはずです!!むしろ、あなたの相方2人をここへ連れてきたわたしに恨みを抱く方が正しい筈だ!」
「お前がここにあいつらを連れてきた事に思う事が無いわけじゃ無い!でも!キリトもユージオもそして俺も!自分のやった事に後悔はしていない!それにここでお前の手を離したら俺達の旅の全てが無駄になる!だから俺は今、この手を離さない!必ずあんただけでも助けてみせる!!」
「うおぉぉぉぉー!!」
体にある全ての力を集中させて俺が剣を刺している壁の隙間と同じ様な位置までアリスを引っ張り上げる。
「早くっ……!剣を刺してくれ!頼む!」
「………」
僅か一瞬だけ沈黙して、アリスは剣を隙間に刺した。
それと同時に俺の剣が抜けた。
剣が隙間から抜けた一瞬で俺の思考が働いた。
地面まで523m19cm……頭にそんな数値が浮かぶと同時に即死だな、と諦めに似た感情が湧いた。
たが、俺はガクンッ!という衝撃で現実に戻される。
不思議に思い、顔を上げるとアリスが葛藤する様な表情を浮かべつつ、俺の右手を握り返していた。
「は、離せ!お前も落ちるぞ!?」
「うるさいです!お前にだけはっ!言われたくありませんっ!!!」
そう怒鳴ると彼女は俺を片手で壁の隙間の前まで持ち上げた。俺はもう一度、剣を刺しこむ。
……俺はこの2年間で様々なこの世界の人々を見て来た。
だが、ここまで何かを葛藤する様な表情を見せたのは他にはユージオくらいしか見た事が無い。
「とりあえず……ありがとう。助かった」
「礼を言われる事ではありません。借りを返しただけです。ただ、無事に戻れたらあなたを斬ります。それだけは忘れないように」
助けられたので礼を言ったら後で1発な?見たいな返しをされた。
「そんじゃあ、貸借り無しになったところで提案がある」
「なんです?言ってごらんなさい」
「俺達はここで斬り合う意思は無い、それはいいよな?」
「そうですね。ここで斬り合ってもお互いに助からないでしょうし……」
「だから無事に戻れるまで休戦しつつ同盟を結ばないか?」
「……休戦は分かりますが同盟とは?」
「片方が落ちそうになったらもう片方が助ける。さっきのお前みたいにな」
実際、ここからの生還を目的としてもこの高さだ。落下は即死確定だし、またさっきみたいに剣が抜けて落ちる何てことも無いとは言えない。
「成る程……一理ありますね」
「……なぁ、俺、今の口に出してたか?」
「お前の考えなど顔を見れば分かります……」
何故かどこかで似たような会話をしたような気がした。
「ま、とりあえず……片方が落ちても片方が食い止められるように鎖かロープが欲しいが……そんなもん、あったらとっくに出してるもんな……」
ここが懐かしのアインクラッドならロープくらい何巻でも出せるのにな……
「……ロープが必要なのですね?何か余分な布でもあれば用意できますが」
余分な布か………
「あー……今一番余分なのはこのコートなんだろうが…俺は片手でコートを脱ぐと言う技術を持っていないな……必要なら根性で脱ぐけど?」
地上から500メートル以上離れている場所で左手で剣を握ったままコートを右手で脱ぐ……いままで経験してきた中で1位、2位を争うほど困難な気が……
「はぁ…脱がなくていいです。ほら、私の籠手を外しなさい。いいですか?決して肌に触れないように!」
「は、はい……」
剣を握ってない方の手を差し出してきてそう言ったので少し戸惑いつつ、片手でアリスの籠手に付いている金具を取り外す。それと同時にアリスは手を籠手から引き抜いた。
「システムコール——」
そして彼女は立て続けに神聖術のコマンドを高速詠唱した。……詠唱を聞くに唱えたのは物体の形状を変化させる物だろう。
そんな事を考えているうちに、俺の手の中にあるアリスの籠手が淡く輝き、形を鎖へと変化させていった。
「……当たりだ」
学院でも本でしか読んだ事の無い術を目の前で見ることができるとは思わなかった。
コマンドをしっかり覚えておいたから後で試してみよう。
「……?どうしたのです?」
「いや、整合騎士ってのは何気に化け物だったんだなーと思いまして」
「随分な口振りですね。それをあなたが口にして良いはずがないのに……」
「ん?なんでさ?」
「……はぁ」
なんかアリスが心底呆れたような表情でため息を吐いた。
「解せぬ」と出かけたが、言葉を飲み込み、鎖の端を腰にある黒藍の死剣の鞘に繋げてもう一方の端をアリスに手渡す。
「なに『解せぬ』みたいな表情を浮かべているんですか……ここに来てからのあなたの行動を振り返ってごらんなさい」
「ここに来てからの俺の行動………」
言われて行動を言葉にして振り返ってみる。
「ベルクーリのおっさんに連れて来られて、おっさんの入浴シーンを見て、斬り合って、上半身裸で彷徨いて、服借りて、アリスと遭遇して、斬り合って、宙ぶらりん………波乱万丈だな」
「……いや、必要ないものまで思い出しすぎですよ。重要なのは小父様に勝ったと言うところです!」
うん、確かにあのおっさんには勝った。
強かったな、あのおっさん……
「それで?」
「それで?じゃあありません!!良いですか?小父様の肩書きを言ってみなさい!」
「ベルクーリの肩書きって……整合騎士長……あっ……」
そこまで口にして気がついた。
あのおっさん、整合騎士長で俺はそれを倒した訳だ。という事は……
「気づくのが遅すぎます。整合騎士は何気に化け物と言ったお前はその長を打倒しているのです。現状ではお前が一番の化け物だという事を忘れないように」
ですよねー。
まあ、いいか。今はセントラル・カセドラル内部に戻るのが最優先だ。
「さてと……」
アリスも鎖を鞘に繋いだようなので軽く引っ張って確認する。
うん、この強度なら問題なさそうだ。
「じゃあ登りますか!」
そう意気込んで俺はアリスに笑顔を向けた。
因みに、アリスが高所恐怖症に近い状態だと知るのはその直後である。
アリスと外に飛び出してしまったアルスくん……彼らが無事に戻るまでの話は1話から2話で構成したいと思います。
523m19cmという数値は……そのうち説明します!
それでは閲覧ありがとうございました!