SAO 〜無型の剣聖〜   作:mogami

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FEのラグネルは投げる物。
私は今までそう、思っていました……。


29話 痕跡

俺とユージオはカーディナルに《武装完全支配術》を教わり、それぞれの剣を奪還して立ちはだかる整合騎士達と戦い、そして整合騎士達を無力化した後に80階《雲上庭園》に辿り着いた。

 

「ここは……」

 

「花や草……木も生えてるし、川も流れてるよ」

 

隣に立つ、ユージオの言葉に頷く。

この部屋は室内でありながら、まるで人の手を加えられているとも感じさせない程の自然で溢れている。

 

数分間周りを呆然と見渡していたが、部屋の中に違和感を覚える。

 

「キリト…なんだか不自然に荒れてない?」

 

「ああ……。まるで嵐が吹いていたみたいな感じがする」

 

部屋の中心が抉れている。……そうだ、ファナティオと俺の《武装完全支配術》同士がぶつかり合った跡に似ている。

 

「間違いない。誰かがここで誰かと争っていたんだ」

 

"誰かと誰か"のうち、1人は恐らく……。

 

「!?き、キリト!あれを見て!」

 

ユージオが慌てた様子で指を指す。その方向を見るとそこには、純白の剣が落ちていた。

左右に剣の切っ先の様に短く伸びた鍔、透き通るような水晶質の剣身……。

 

「《黒藍の死剣》に似てるけど……色が違うよね」

 

ユージオが首を傾げているが、俺はこの剣に見覚えがある。かつてアルスが《無型の剣聖》と呼ばれる前、振るっていた。

 

「《ホワイトライダー》……」

 

意図せずに呟いていた。

《ホワイトライダー》……アインクラッドの第1層、フロアボスのラストアタックボーナスでアルスが手に入れた純白の剣。

 

「間違いない……ここでアルスと誰かが戦っていたんだ」

 

「……やっぱり、アルスの剣なんだよね、それ」

 

「ああ……。恐らくあの白い玉を剣にした物だろう」

 

剣を拾って周囲を見渡すと、鞘も落ちていた。鞘にショルダーベルトが付いていたので剣を鞘に収めて背負う。

長年の癖なのか、背中に剣があると落ち着く。

 

「アルス、無事だよね?」

 

「俺もそう信じたいが……」

 

普通、誰かと斬り結んで剣だけ残して立ち去るだろうか?《黒藍の死剣》がこの場に無いと言うことは、アルスが持って行ったということか?……いや、もう一振りの剣を残して立ち去るだろうか?

 

(まさか…アルスに何かあったのか?)

 

考えても、考えても答えが出ない。

俺たちはひとまず上を目指す事にした。

 

———

 

「うぅ……ここは?」

 

頭痛を感じつつ、目がさめる。

周囲を見渡すと、目の前には階段……。

 

「そうだ……アルスッ!」

 

私は……アルスと戦い、共に壁を登り……あの2人……キリトとユージオと合流する為に下の階へ向かって、大浴場で小父様を見つけて、元老長が現れ……私を助ける為にアルスが私を突き飛ばしたんだ。

 

「急がないと……!」

 

腰の鞘に収まっている《金木犀の剣》を杖代わりに立ち上がり、簡単な回復術式を唱えて傷を回復する。

 

アルスの仮説と自分の状況判断によると、整合騎士はアドミニストレータに偽りの記憶を入れられて洗脳に近い形で従わされてきた。これは間違いない。ならば、アドミニストレータや元老長に捕まることは、整合騎士と同じ末路を辿ると言う事だ。たいした実力も無いならばいざ知らず、アルスの実力ならば確実に整合騎士にされるだろう。急がないと手遅れになる。

 

歩きだそうとした時、声をかけられた。

 

「アリス?……アリスなのか!?」

 

「……ユージオとキリトですか」

 

———

 

「アリス?……アリスなのか!?」

 

「……ユージオとキリトですか」

 

アルスの行方を捜して階を上がると、予想外の人物がいた。金色の鎧、金色の髪、金色の剣……俺たちをこのセントラル・カセドラルに連れて来た整合騎士アリスだ。

 

「アリス!その目は!?」

 

アリスの顔を見ると、右眼を眼帯で覆っている。

彼女は右手を眼帯まで持っていくと、少しだけ微笑んで言った。

 

「公理教会に刃を向けると決めた時に弾け飛んでしまいました。ユージオやキリトも同じなのではないのですか?」

 

「俺たちの名前を覚えていたのか……?」

 

俺たちの名前を口にしたので、聞いてみる。

あの時の整合騎士とは思えない程、雰囲気が変わっている。少し警戒した様な所が有るが、以前の冷め切った目ではなくて、どこか温かみを感じる。

 

「ええ。ルーリッドの村での事も思い出したわ」

 

「なんだって!?」

 

アリスは《シンセサイズの秘儀》を破ったのか?

 

「私は——」

 

そしてアリスの口から彼女の知る限りの情報が語られる。アルスが何をしていたのか、誰と戦ったのか、アリスが記憶を取り戻したこと、アリスが公理教会に剣を向け事にした理由………アルスがアリスを助ける為に元老長に戦いを挑んだ事。

 

「……まさか、アルスが整合騎士の成り立ちに気付いたとわな……」

 

「お前も気付いたのですか?」

 

「いや、カーディナルっていう……ざっくりまとめるとアドミニストレータの片割れが教えてくれた。だから間違いないはずだ」

 

それにしても、アルス……まずいな。

 

「何よりもまず、アルスを助けないと!」

 

「「ああ(ええ)!!」」

 

ユージオの言葉に頷き、俺たちは駆け出した。

階段を駆け上がると、扉がある。

 

「なんだ扉……冷たいぞ?」

 

「これは……凍ってる」

 

「どきなさい、システムコール。ジェネレート・エレメント・バースト!」

 

アリスが熱素を作り出し、氷を溶かす。

《ボンッ!》っとまるで熱して溶かすと言うより、爆発させて氷を吹き飛ばしたと言う方が適切なきがする音をさせて扉が開いた。

 

まず目に入るのは湯気と目の前に広がる湯舟。

そして……男の石像だった。

 

「小父様っ!」

 

アリスが駆け寄る。それに続く様に俺たちも歩み寄る。

 

「じょ、嬢ちゃんか……」

 

石像だと思っていた男はよく見るとまだ、所々肌色な部分も残っている。だが、その残り少ない肌色な部分も徐々に石になりつつある。

 

「いいか……良く聞け。あの少年……アルスがあの肉団子に連れて行かれた……」

 

「やはり……」

 

アルスが連れて行かれた。その一言で取り乱しそうになる。アイツは決して弱く無い。むしろ俺の知る剣士の中では1、2を争う強さだろう。いつでも自分を支えてくれていた自分の半身とも言えるアイツが連れて行かれたという事実が信じられない。

 

「……少年は嬢ちゃんを逃した後、扉を凍らせた。それも神聖術を無詠唱で使ってだ……それだけじゃ無い。ヤロウ……俺の《時穿剣》の武装完全支配術を使ってやがった……居るんだな、天才って奴は……」

 

目の前の男が語る話は俺も実感した事がある。

……アイツはどんな事でもソツなくこなすし、必要だと感じた事は人並み以上に身に付ける。何度それに嫉妬の様なものを感じた事か。

 

「頼む……少年を……アルスを助けてやってくれ。

アイツの力は俺を越えるだろう……後の世代を託せるとしたらあの少年しかいないんだ……!」

 

石に成りかけている男は後の世代を担うであろう若い芽を守りたい。そんな思いを伝えて来る。

 

「当たり前だ。アイツは……アルスは俺の半身で、親友だ。誰に頼まれるでも無く、必ず俺が助け出してみせる!」

 

気が付けばそう返事していた。俺の言葉を聞いた目の前の男は一瞬だけ目を丸くしたが、

 

「ああ……頼んだぜ」

 

そう言って今度こそ完全に石化した。

 

「なあ、アリス。この人は何て名前なんだ?」

 

「……その方の名はベルクーリ……ベルクーリ・シンセシス・ワン。私の師であり、ユージオの持つ《青薔薇の剣》の登場する物語の主人公であるベルクーリ其の人です」

 

そう言うアリスは誇らしげに笑みを浮かべる。

ユージオも「え……え!?」っと口をパクパクさせている。恐らく俺も似た様な反応をしているんだろうが、正直驚いている。まさかそんな人物が自分の相棒を高く評価しているとは思わなかった。

 

「ははは……やっぱり、アルスは凄いね。まさかあのベルクーリに認められるなんて」

 

「ええ。認められるどころか勝ってますからね……羨ましくもあり、悔しいですが……」

 

それぞれの感想を聞き、覚悟を新たにする。

 

(アルスだけは何があっても取り戻す。そして帰るんだ。現実に……そしてユージオや……アリスを連れてまた、ALOにログインする。みんなできっと冒険するんだ)

 

そんな楽しげな光景を想像していると、アリスが何かに気付いたらしい。

 

「おかしい……」

 

「アリス?なにかおかしい事があったかい?」

 

そんなアリスの様子にユージオが首を傾げる。

 

「はい……小父様の剣……《時穿剣》が見当たらないのです」

 

……確かにそうだ。アルスとベルクーリが戦って、アルスも《時穿剣》を使っていたならここに落ちている筈だ。

 

「……まずいな」

 

「うん……僕も良く無い想像をしたよ」

 

「アルスと一緒に運ばれたと考えるのが妥当ですね」

 

アリスの発言にユージオと共に頷く。

ベルクーリの話によるとアルスは元老長との戦いで《時穿剣》の能力を使った。それを見た元老長は《時穿剣》も運んだんだ。他人の神器を使う事は難しい。それをやってのけたアルスはそこにも目をつけられた。

 

「急ごう。本当に事態は最悪の方向に向かっていると考えたほうがいいだろう」

 

「「うん(ええ)!!」」

 

石化したベルクーリを尻目に上の階へと向かう。

この場にはアリスもユージオもいる。

きっとまた"4人であの頃の様に(・・・・・・・・・)"笑いあって過ごせるよな?

 

 

 

 

 

 

……ん?"あの頃"って何だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———

 

暗い、闇の様な部屋に嗤う女と闇に溶け込む様な容姿で虚ろな瞳の男が1人。

 

「うふふっ……そろそろ準備はできたかしら?」

 

「……ああ」

 

「ツレない返事ね」

 

「黙れ、あんたの事は信用できん」

 

「悲しい事を言うのね……

それじゃあ頼むわね"アルス(・・・)"」

 

「まあ、呼ばれたからにはそれなりに働くさ」

 

そう言ってアルスは一振りの剣を背中に、もう一振りを腰に帯びて姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒の剣士と無型の剣聖。

この2人を巡る物語は平穏にはおわらない

 




はい、後書きです。
前書きについては気にしないでください。誰かに聞いて欲しかったんです。

いや〜今回の話でベルクーリのアルスへの好感度は支援Aとでもいいましょうか……。

まあ、ストーリーについては次話という事で……。
閲覧ありがとうございました!
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