SAO 〜無型の剣聖〜   作:mogami

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今回は3人称視点を取り入れてみました。
経験が浅いため、読みづらいところもあるかもしれませんがそのような場合はご指摘下さい。


31話 剣戟

ジャリィン、カキンッと金属音が響く。

部屋の中にはぶつかり合い火花を散らす4つの剣……そしてそれを握る2人の剣士とその様子を見守る2人の騎士と剣士。

 

「はあぁぁああーーーっ!!」

 

「———シッ!」

 

2人の……キリトとアルスの戦いは互角に見えた。

だが、よく見るとキリトが押されている。

 

「おかしい……キリトとアルスは互角の筈なのに」

 

ユージオが2人の戦いをそう評価した。

村にいた頃からの付き合いであの2人から剣を教わり、試合をして切磋琢磨してきた彼がそう感じる程に力に差の様な物ができていた。

 

「恐らくですが、先程チュデルキンを殺した事が影響しているのでしょう。チュデルキンはアドミニストレータの側近……かなり高い権限を持っていた筈です。それを倒したのだからアルスの権限も相応に上昇したという事でしょう」

 

アリスはそう推測していた。

……結論から言うと彼女の推測は当たっていた。

もともと、アルスとキリトは権限に差があった。だが、アリスの推測通りにチュデルキンを殺した事が影響でアルスの権限が上昇し、アドミニストレータの洗脳によって強化されている。それがアルスとキリトの差になっていた。

 

キン、キン!と金属音が鳴り響く。

 

ユージオとアリスが戦いを見守り、それぞれが2人の差について考えるなか、キリトとアルスの戦いは続いていた。

 

「アルス、その剣をどこで学んだか覚えているか?」

 

「さあな、何も覚えてないし、何も知らない。この剣技も俺がお前と磨いた物だと言うのか?」

 

アルスはそう言うと右手に握った《黒藍の死剣》に薄い青色のライトエフェクトを纏わせる。

 

「そうさ、何度も何度も刃を交え、技を磨いてきた……たとえお前が忘れても……必ずお前を取り戻す……!!」

 

キリトは低く叫ぶ様に語りかけながら右手に握った《黒い奴》にアルスと同様のライトエフェクトを纏わせる。

 

「「ぜあぁぁぁああーーーーっ!!」」

 

2人の雄叫びが響き、剣が一段と強くぶつかり合った。

片手剣ソードスキル《ホリゾンタル・アーク》と同じく片手剣ソードスキル《バーチカル・アーク》が衝突する。

 

だが、剣と剣の間に凄まじい力の奔流が生じる。

2人の力が互角ならばその力はお互いに力が跳ね返り、少し後ろに後ずさるだけだっただろう。だが、それは"互角"ならばの話だ。

 

「ぐぅっ!?」

 

ソードスキルとソードスキルの衝突で生じた力がキリトに襲い掛かった。当然の結果だ。2人の間に出来てしまったステータスの差が力の差を開いてしまった。

 

かつてキリトは誰かに言った事がある。

"たかが数字が増えるだけで、そこまで無茶な差がつくんだ。それがレベル制MMOの理不尽さというものなんだ"

 

(まさか、あの時のセリフが今になって自分に返ってくるとわな………)

 

キリトは《黒い奴》を杖に立ち上がり、そんな事を思いながら苦々しく苦笑する。

 

「おい、どうした。まさかこの程度じゃないよな?」

 

二本の剣を器用にクルクルと回しながら挑発する様にアルスが言う。

 

「全く……お前はいつも」

 

その先に続く言葉を飲み込む。

思い出す……アインクラッドでの日々。

 

—おい、どうした?まだまだ始まったばっかだぜ?

—ぜぇ……ぜぇ……逆に何でスキルを持ってないお前が俺以上に《二刀流》を使えるんだよ……

—ああ……自分の才能が怖い

—(イラっ)絶対に泣かす!

 

思えばいつもこんな感じだったな。

二刀流を手に入れたばかりの頃、熟練度と立ち回りを向上する為にデュエルしてアイツの器用さに負けたっけな。

 

(だが、あの頃と違う事がある)

 

それはアルスが敵だと言う事。

一番心強い味方が敵に回ると一番厄介と言うセリフをどこかで聞いた事がある。

まさかそれを自分自身が体感すると思ってなかった。

 

そして駆け出し、切り結ぶ。

剣と剣が火花を散らし、激しい金属音が鳴り響く。

それが何度も続き、結果は…………。

 

「がはぁっ!?」

 

キリトが崩れ落ちた。

 

「……もうよしたらどうだ、いくら加減していてもこれ以上は危ないぞ?」

 

「相変わらず……心配性だな」

 

そう呟くキリトの体には一切傷がない。

理由は簡単。アルスが剣をキリトの剣にのみ当てているからだ。

 

「なに?」

 

「お前は心配性だなと言ったんだ」

 

「……それは俺とお前が親友だった頃の話しか?」

 

「なんだ……興味のあるのか?」

 

「まあな、お前の太刀筋には覚えがある。なぜか懐かしい感じもするんだ」

 

アルスが肩を竦め、暗い表情を浮かべる。

 

「正直、俺は公理教会がどうなろうとどうでもいいんだ」

 

"初めて完成された整合騎士"失格だなと呟き、続ける。

 

「ただ呼ばれたから従っているだけ……俺は人形でしかないんだ」

 

アルスのただでさえ稀薄な感情がさらに薄くなり、瞳が再び虚ろになる。

 

………ドクンと心臓が暴れる。

キリトはこの表情を知っていた。

かつてのアルスと今のアルスが重なる。

……キリトにはこの後にアルスの言うであろうセリフが分かる。

 

「『なぁ、教えてくれよ………空っぽの人形()はどうすればいい?』」

 

アルスの言葉と記憶の中のアルスが完全に一致し、キリトは息がつまり、気が遠くなる様な感覚に陥る。

 

「はあぁぁああーーーっ!!」

 

気合いと共にアルスが一瞬でキリトとの距離を詰め《時穿剣》を振り抜く。

 

「うおっ!?」

 

それを間一髪で回避するが、回避直後の隙を見逃すアルスではなかった。

 

「シッ!」

 

今度は《黒藍の死剣》を横薙ぎに振るう。

キリトはほぼ直感的に剣を盾にする事で不可視の斬撃を防いだ。恐らくその直感が働いたのは以前、アルスと藍色の騎士の戦いを見て、カーディナルから《黒藍の死剣》の素となった玉のルーツについて聞いたからだろう。

 

「まだまだ!!」

 

それでもアルスの腕は休まらない。

両手に握る剣がまるで意思を持つかの様に不規則的に斬撃を繰り出す。

 

「キリト!」

 

ユージオが腰の《青薔薇の剣》に手を添えて2人の戦いに介入しようとするが………。

 

「手を出さないでくれユージオ!!」

 

当の本人に拒否される。

そしてキリトはアルスの攻撃に擦り、時には弾き、必死に掻い潜りながらその様子を観察する。

 

「でりゃあぁぁぁーー!!」

 

虚ろな表情でそれでいて苛烈な気合を込めた叫びと共に剣を振るっている……その様子は矛盾した物に見えた。

 

(矛盾している……?いや、違う。あの様子はまるで涙を流さずに泣きながら駄々をこねている子供じゃないか)

 

そう思考を重ねつつ、アルスの攻撃を観察を続ける。

先程から攻撃に擦りながらも致命傷になる様な傷はついていない……というより、アルスがそうなる様な場所に攻撃して来ないのだ。わざと見逃している部分もあるのだろうが、駄々をこねている子供が暴れている様な攻撃とも感じる。

 

「はあぁぁああーーーっ!!」

 

「うぐっ!?」

 

自分の中で出た結論を意識しながら考えるとやはりそんな感じがする。それでも2振りの神器がその違和感を埋める様に力を発揮している。

 

先程から自分の手の中で火花を散らし金切り声を上げている2振りの神器に目を向ける。

 

《黒い奴》……俺とユージオそしてアルスが切り倒した"悪魔の巨樹"ギガスシダーから作られた神器で名前もまだ決めていない。

《勝利の白剣》……アルスが藍色の騎士との戦いで手に入れた白い宝玉から作られた《ホワイトライダー》そっくりな神器。そして整合騎士になり、俺たちの前に現れたアルスが俺に貸した剣。

 

《黒い奴》にはルーリッドの村からの思い出が、《勝利の白剣》にはかつてのアルスの愛剣に似ていることからアインクラッドの日々を彷彿とさせる。

 

「アルス……」

 

そして目の前の相棒を見る。

その瞳は昔の彼自身に重なる。

"俺は死にたくない、消えたくないんだ"とあの頃のアルスは言った。だが、あいつは俺のことを信じ、共に戦ってくれた。

 

—さらばだ、キリト君

—やめろおぉおぉおお!!

 

そして、忘れもしないあの日……ヒースクリフ…いや、茅場との殺し合いであいつは……アルスは俺を庇い、そして死んだ。死にたくない、消えたくないんだと言っていたにも関わらず文字通り命を使ってまで俺を助けてくれた。

 

—俺は、このままで良いのか?—

 

不意にそんな自問をする。

 

(良いわけがない)

 

—今の俺にそんな力があるのか?—

 

(力なんて無い。それでもあの時のアルスはシステムを超越し、俺を助けてくれた。ならば俺もそれに応えたい)

 

そして再剣達に視線を戻す。

 

(なあ、この戦いの後で名前を付けてやるし、お前の主人を取り戻してみせる。だから力を貸してくれないか?)

 

そう内心で語りかけると不意に両手で握る剣の柄から燃え盛る様でそれでいて暖かな温もりを感じた。

そしてその感覚に後押しされる様に立ち上がる。

 

「……なんだ、やる気にでもなったか?」

 

「ああ……もう迷いは無い。俺は取り戻す。お前を……大切な親友をっ!!」

 

キリトが剣を構えるとその姿に変化が現れる。

黒いシャツを覆う様な漆黒のロングコート、同様のズボン、そしてその漆黒の瞳が金色に輝いていた。

 

—おい、早く行こうぜ、アルス〜

—ちょ、待ってくれよキリト!!

—もう!2人ともあんまり走ると転ぶわよ〜!!

—さ、3人とも待ってよ〜!!

 

ふと、キリトの脳裏に景色が浮かんだ。

夕焼け空、ススキを手に駆け回る2人の少年とそれを後ろから追う少女とやや遅れ気味な少年。

 

「ふっ………そうか、そうだったのか」

 

キリトは思い出した。切り離されていた過去の記憶。

そして4人が引き離された出来事。

少女は連れ去られ。

2人の少年は元の世界へと戻り。

1人残された少年。

だが、長い月日を経てあの頃の4人が今、ここに集った。

 

「行くぞ。《無型の剣聖》……俺は絶対に負けない!!」

 

敢えてアルスを2つ名で呼び、一気に踏み込み、切り結ぶ。ソードスキル同士の衝突をしてもキリトが吹き飛ばされることはなく、怒涛の勢いでアルスに迫る。

 

「なにっ……!」

 

そしてアルスも余裕の表情を消し、キリトを潰しに掛かる。

 

「うおぉぉぉぉーー!!!」

 

「あぁぁあぁぁーーーー!!」

 

鍔迫り合いになり、お互いの剣から火花が散る。

流れはキリトにある。それを悟ったアルスは鍔迫り合いを切り上げ、《時穿剣》を振う。剣が通った軌跡には陽炎が残り、キリトはそれの危険性に直感的に気付き、体を捻る。

 

「まさか初見でよけられるとはな……」

 

「ふっ……なんとなく危ない気がしてなっ!!」

 

「むっ!?」

 

キリトの剣が少しずつ重くなっている。

それの理由は………心意だろう。

キリトの服装が変わったのもそれによる影響だ。

 

「剣が重くなった……だが負けん!」

 

キリトに負けじと斬りこむアルス。

2人の戦いはどんどん苛烈に激しくヒートアップしていった。

 

「はっ!」

 

「せいっ!」

 

アルスとキリトの戦いは終局に差し掛かっていた。

今の2人は互角でも戦いにおいて武器の能力差も重要な要素だろう。

 

《時穿剣》の能力によって生み出された空間に設置されている斬撃の陽炎がキリトを囲む様にユラユラと浮かんでいた。

 

「万事休すか……?」

 

キリトがそう呟いた瞬間、《勝利の白剣》を握る手が勝手に動き、《勝利の白剣》を振るった。

すると、パリンと小気味良い音と共に斬撃が織り成す牢屋の様な空間……《斬撃圏》を構成するうちの1つの斬撃を砕いた。

ふと《勝利の白剣》に視線を落とすと今まで感じていた熱が一段と暑くなるのを感じる。まるで『自分を使ってでも主人を取り戻してくれ』と叫ぶ様だった。

 

「任せろ」

 

キリトは相棒から"借りた"剣に意志を伝えるとキリトは辺りに浮かぶ斬撃を全て薙ぎ払った。

今度はまるでガラスが割れていく様な音を立てて行く。

 

そんな中でアルスは頭の中に浮かんだ……いや、浮かびかけている朧げなビジョンに頭を押さえる。

 

—ア……ス!今度は……のダ…ジョン……こうぜ!

 

(誰だ……お前は……)

 

途切れ途切れな声。目元ははっきりと浮かばないがそれでも分かるような満面の笑顔……それがアルスの中に浮かんでいた。

 

「せりゃぁあぁぁぁぁーーっ!!!」

 

吸い寄せられるようにアルスの視線がキリトへ向けられる。

今まさにアルスが作り出した《斬撃圏》を突破しようと剣を振るい、叫び声を上げている真っ黒な少年。

強いて黒くない部分を指摘するのならアルスから借り受けた《勝利の白剣》くらいだろう。

だが、その姿が頭の中のビジョンを徐々に鮮明にしていく。

黒いロングコート……と言うより、全身がものの見事に真っ黒でこれまた真っ黒な剣と純白に青を足したような色の剣を携えた二刀流の剣士。

 

「うっ……ああ……」

 

朧げで摩耗していたビジョンに次第に色が戻る。声が戻る……掛かっていた靄が消える。

 

—アルス!今度はあのダンジョン行こうぜ!

 

「キ………リト」

 

知らないうちにアルスは目の前の剣士の名を口にしていた。何がそうさせたのかは分からない。

 

「アルスーーーーっ!!!」

 

気が付けばキリトは《斬撃圏》を突破し、目の前に迫っていた。そして、キリトの叫びが心のどこかに深々と突き刺さる。それに伴ってアルスの反応速度が遅れた。

 

「ここだぁぁぁーー!!」

 

ギィィィンと激しい音を放ちながらキリトの持つ《勝利の白剣》がアルスの持つ《時穿剣》を弾き飛ばした。

 

「くっ……」

 

(ああ……そうだ。前も似たようなことがあった)

 

弾き飛ばされた《時穿剣》を横目にアルスは勢いを殺さずに突進してきたキリトに押し倒される形で床に倒れ込む。

アルスは頭痛に耐えるように表情を強張らせるが、その目は数分前の無感情な物では無かった。押し寄せる波のような記憶を必死に受け止めようとするようにも窺える。

 

(そうだ……そしてキリトは言うんだ)

 

「『お前は人形なんかじゃない……泣いたり、笑ったり、怒ったりできる人間だ。それでもお前が"空っぽの人形"だと言うのなら、俺が中身になってやる!』」

 

キリトの声がフロアに響く。

その声は離れた位置にいるユージオとアリスにまで届き、そして、文字通りキリトの下敷きになっているアルスの精神に響いた。

 

「………キリト」

 

力無く呟くとアルスは最後に手に握っていた《黒藍の死剣》を離し、体から力を抜いた。この段階でアルスの記憶は全て戻っていた。

 

「よう相棒。寝起きの気分はどうだ?」

 

「ふっ……そうだな、悪く無い」

 

キリトが冗談めかして普段交わすように声を掛けるとアルスは天井を見上げながら弱々しく笑って返事をした。

 

 

 




後書き

アルス君……闇落ち短いですね。
ちょっとクドいかな?と思う戦闘描写でした。
三人称視点は大変でござる。

それでは閲覧ありがとうございました。
感想は随時募集していますので気が向きましたら気軽に書いて送ってみてください。
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