SAO 〜無型の剣聖〜   作:mogami

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俺は、忘れないだろう。
あの危うさと希望を合わせ持ったあの少年との出会いを。

今日は、あいつと出会い、戦った日とその後を話そうか。


見つけた整合騎士長

ベルクーリ視点。

 

あの日の俺は央都セントリアを離れ、任務を遂行。

愛竜の星咬に跨り、空を移動しながら帰途に着いていた。

 

「シンセシス・ワン。聞こえるかしら?」

 

「あ、なんだい。最高司祭様じゃねぇか」

 

唐突に最高司祭……アドミニストレーターが術で連絡を送って来たのだから驚いた。

 

そんで、その連絡の内容はこうだ。

 

禁忌目録を犯した3人の少年の内、『アルス』と言う少年を俺がセントラル・カセドラルに連行した後、かの者を殺害せずに実力を見極めろ。

 

今だからぶっちゃけた事を言う。

あの時は最高司祭が何を言っているのか理解に苦しんだ。

禁忌目録を犯した罪人は処刑される。それが常識として根付いていたからだ。

 

だが、向こうは最高司祭。俺は騎士長とは言え、使えている身。

雇用者と労働者。

俺はその命を受けて、ノーランガラス修剣学院に向かう事になった。

 

若い芽が1つ潰える。

禁忌を犯す程の行動力をどうして他の事に向けねぇのか。

なぜ、その若い芽を摘むのが俺ら先達者なのか。

何もかもが最高な皮肉に感じる。

 

俺たち整合騎士に老いという概念は無い。

天界から召喚された時点で天命が凍結するからだ。

・・・まあ、この天界とか、300年近く生きてきて一度もお目にかかった事もなけりゃ、召喚時に説明された召喚されると同時に記憶を失うとかの言葉も今となっては胡散臭いにも程がある。

だが、余り深く考えると眼が痛むもんだから深く考えちゃいねぇが。

 

ここだけの話し、この頃の俺はもうじき整合騎士の長と言う座を交代する時期だと考えていた。

 

整合騎士団の連中は皆、猛者達だ。

あいつら全員、俺よりも後に"召喚"された俺の後輩に当たるわけだが、生きが良い奴は本当に生きが良い。

多分だが、アリスの嬢ちゃんには近いうちに抜かされるだろう。

だから、連中には「俺に勝った奴がその瞬間から騎士長だ」と言ってある。

 

まあ、詰まる所。そろそろ俺も精神的には大分老け込んだ訳で……。若い連中に今の立場を任せたいと考えていた。

なんで、修剣学院の若い少年の命が摘まれることが残念だった。

それも実力を見極めろ?

死にゆく前に曲芸でも見せろってか?

タチが悪い悪質な新手の嫌がらせか?

 

騎士としての任務と先達者としての老婆心がせめぎ合う中で、アルスと言う少年の回収地点たる、ノーランガルス修剣学院に着いた。

 

「よっと……おい少年!お前さんがアルスかい?」

 

俺は星咬の上から降りて、黒い藍色の制服と髪に身を包んだ少年に問う。

 

「……迎えが来たか」

 

「先輩……これ、お腹がへったら食べて下さい」

 

「本当、なにから何までありがとな、ロニエ」

 

・・・これは肝っ玉が据わっていると言うべきか、ただの馬鹿と判断すべきか……。目の前に整合騎士がいるんだぜ?

もっと別の反応があってもいいと思うんだが……。

 

「あれ……俺は無視かい?」

 

もしかしたら無視されているのでは?と思い当たると同時に少年に問うた。

 

「あ、いや、すまん。無視した訳じゃないんだ。

……北セントリア修剣学院所属、アルス修剣士です」

 

佇まいをただして、慣れてなさそうな敬礼をとる少年。

本当にこんな平凡そうな少年が禁忌を破ったのか?

 

ひとまずは俺も礼儀として名を名乗り、任務遂行の為に少年が持つ剣を受け取り、星咬に繋ごうとした時。

 

「(重い……!?)」

 

少年の剣を受け取った瞬間の感想がそれだった。

1学生が持てる重さでもなければ、持っていい重さでも無い。

アルスの剣は整合騎士ですら保有する事が難しい程に高い優先度を持つ剣を握っていた。

 

その瞬間。

俺の興味は、整合騎士長の座を誰に譲るかとか、若い芽が云々よりも目の前の黒い藍色の剣士に注がれた。

 

———

 

アルスを竜に繋げてカセドラルに連行した後。

俺は任務遂行の為に体をほぐす為、大浴場で汗を流しながら、体をほぐしていた。

 

「どうだ、お前も入るか?」

 

「………遠慮する」

 

誘ってもみたが断られた。

まあ、いきなりこんな展開にらなったら誰でもビビるわな。

 

そんな事を考えながら、俺は少年を観察する。

流石に落ち着いた様子はなかったが、()から一切目を外す事のないその姿勢は整合騎士でもなかなか取れるものではないだろう。

そんな少年への興味は自然と加速した。

なぜ、最高司祭は他の連中ではなく、俺を指定したのか、目の前の少年は一体どんな力を持っているのか。

 

久しく感じる事のなかった、未知なる物への興味と楽しみ。

 

そして、見れば見るほどに理解する。

何かを渇望するような、いずれ身を滅ぼしかけないその目。

一言でこの時の俺の心情を語るなら……。

 

『よく分からないが、気に入った』

 

その一言に尽きるだろう。

 

 

そして、俺は少年と戦いを始める。

 

アルスの力を測るために最初から《時穿剣》の武装完全支配術……空斬りを放った。命までは取るなと言う御達しがあったもんだから、瀕死一歩手前に止まる程度の威力で放ったんだが……。

 

「うおぉぉぉぉーー!!!」

 

俺の剣圧を避けて雄叫びを上げながら凄まじい速度であいつは突進してきた。

 

「(おいおい!?そんな勢いで突っ込んできたら死ぬぞ!?)」

 

俺の空斬りで設置した斬撃の陽炎と少年の体が重なる。

・・・だが、アルスに傷1つなかった。

 

「ほう、無傷か」

 

思わずそう漏れた。

あれ程の速度で動いておきながら、宙に留まる斬撃に気づいて速度を減速し、予め持っていた硬い枝で俺の斬撃を直には喰らわなかったらしい。

 

ただ、俺が驚いたのはその後。

 

「武装完全支配術か?」

 

アルスがそう問うてきた事だ。

そもそも、武装完全支配術は整合騎士や限られた者しか知らない禁呪に近い技だ。それを目の前の少年が知っている。

その事実が俺の剣士としての部分を高揚させる。

 

だからか。俺は柄にもなく、アルスに向かって自身の剣に着いての成り立ちを話していた。

とりあえず俺ですら聞いた事のないような起動句を唱えながら、アルスは俺の話を聞いていた。

 

『時計は時を示すに非ず、時を創るのだ』

時穿剣を作る際に最高司祭が語ったその言葉の意味は俺には分からなかったが、少年は『時計が時を示すからこそ、時間という概念を正確に知る事ができるんだ。そうでなければあやふやな時間という概念を確認する術が無い。確認できない、有るか無いか解らない概念なんてあっても無いようなものだろ?』言った。

 

どちらにせよ俺には良く分からなかったが、後で足らない頭を捻りながら考えた結果、『心なんてそこにあるか分からない。時間も同じだ。普段は有るか無いか分からない。だが、時計が時間を示すから時間は流れていると知る事が出来るだろ?』

的な物かと結論を出した。

 

まあ、そんな話は割とどうでも良い。

重要なのは、その後。

 

何かの詠唱を終えたアルスは時穿剣の特徴を理解した上で再度俺に突っ込んできた。

この行動に一番驚いただろう。

他の騎士連中は時穿剣の能力を知っているが故に近接戦を仕掛けてくる奴は少ない。ほぼ皆無だろう。

 

何を企んでいるのか、その隠し玉がとても楽しみで、俺は空斬りを放ちながら軽く挑発する。

 

だが………。

 

「せあぁぁぁぁーー!!!!!」

 

気合いの一閃と共に薙がれた不可視の斬撃が、空斬りを無力化した。

再び俺は驚いた。

お互いの剣がお互いの能力を打ち消し合いながら、俺とアルスは切り結んだ。

 

——楽しい。

 

 

そう、俺は楽しんでいた。

任務の事など忘れて、1人の剣士として、目の前の剣士が次にどんな技を出してくるのか、アルスの挙動の一つ一つが楽しみで仕方がなかった。

 

そして……アルスは俺の期待を上回る行動に出た。

 

「オブジェクトID・ホワイトライダー・ジェネレート!!」

 

その詠唱と共に、少年が取り出した白い宝玉が剣として形を成し、元々握っていた黒藍色の剣と同じ形を取った。

そう、剣をもう一本作り出したのだ。

 

俺とアルスは再度切り結ぶ。

 

「エンハンス・アーマメント!!!」

 

武装完全支配術。

それを二本の剣で使ってみせた。

 

「ぐっ!ぐああぁぁぁぁ!?」

 

この絶叫は、アルスではなく、時穿剣を弾き飛ばされた時の俺のものだった。

 

今までに一度も感じた事のない感覚。

一度に何億回も打ち込まれるような重い斬撃。

その力に、俺は負けた。

その後にアルスは心意までも扱った。

心意の太刀。これもまた、整合騎士が何十年も掛けて体得する秘技なのだ。

 

数時間前まで学生をしていた男が整合騎士に伝わる秘技や奥義を扱い、騎士長たる俺を越えてみせた。

・・・完全に俺の敗北だった。

 

その戦いの終わりに、アルスから一つの真実が告げられ、俺のどこかで考えないようにしてきた公理教会への疑惑は疑いようのない程まで膨らんだ。

 

300年、整合騎士をしていて、禁忌目録で連行された咎人がどうなったのか。その結末をこの目で一度も確認したことがなかった事も事実。

だから、俺はアルスを見送る事にした。

 

教会に疑惑を持ったと言う理由だけじゃない。

単純に、アルスがこの戦いで何を成すのか。何を見るのかが気になったからだ。

 

「………その目は危うい。いずれ身を滅ぼすぞ少年……」

 

ただ、彼の渇望し過ぎるような目がとても危うい物に感じられた。

 

———

 

そして、いつのまにか寝てた俺を起こしたのは、一皮向けた様子のアリスの嬢ちゃんと割と疲労困憊と言った様子のアルスだった。

 

聞いた話だと、俺と戦った後に嬢ちゃんとも戦ったらしい。

……普通は無理だろ。

 

で。何処からともなく、元老長の野郎が出てきた。

アルスは嬢ちゃんを心意の腕で部屋の外へ逃し、無詠唱で神聖術の凍結術式を発動させた。

 

だが、チュデルキンには届かなく、俺は石化させられ、アルスは膝をついた。

 

薄れゆく意識の中で、俺が最後に見たのは、時穿剣を持ち、空斬を放ってみせたアルスだった。

 

———

 

それから、どれくらい経ったか。

俺が次に目を覚ましたのは、全てが終わった後。

アルスとキリトと言う少年が、アドミニストレーターを討ち取った後だった。

 

ただ、アルスは戦いの果てに眠りに就いた。

それこそ目が覚めない程に深い眠りだ。

 

「アルス……っ!」

 

そう名前を呼びながら、あいつの手を握って泣いていたアリスの嬢ちゃんは別人の様に変わっていた。

無論、良い方向に。

 

その後、嬢ちゃんは任務でカセドラルを離れざるを得なかったが、その間にカセドラルの中でもそれなりに高い権力を持つ整合騎士とその他の術者の合同会議が開かれた。

内容は、アルス達の処遇について。

 

アドミニストレーターの所業は全て暴かれた。

結果として、人界を救ったのだから温情があって然るべきと言う声があった。

そもそもが咎人で反逆者だ。危険因子は取り除くべきと言う声も上がった。

 

そして、現在のカセドラル内で最高権力者の俺に決定が委ねられた。

 

「処刑はしない」

 

短くそう答えた。

まあ、それに反論が起きないわけもなく、当然反発もあった。

 

そこへ、副騎士長のファナティオの発言が加わったことでだいぶ場は静まったが、それでも完全に黙らせる事は難しかった。

 

「騎士連中には前から言ってなよなぁ、俺に勝った奴がその瞬間から整合騎士長だって」

 

俺の唐突な発言にその場は騒がしくなったが、ファナティオの号令で一斉に静まる。

 

「反逆者のうちの1人……アルスと言う少年に俺は敗れた。騎士連中はこの一言だけで俺の言いてぇ事がわかるよな?」

 

一瞬だけ、その場が騒がしくなったが、俺は言葉を続ける。

 

「そう言うこった。奴らを処刑する事は俺が許さん。文句があるのなら、俺のところまで来い。以上だ」

 

その言葉を幕斬りに場が一瞬で静まり返った。

……かなり、暴論だが、こればかりは譲れない。

 

———

 

唐突だが、俺は元老長……チュデルキンからいくつか術を盗んでいる。

その中の一つに、その場で起きた過去の出来事を見る事ができる物もあった。

 

「システム・コール——」

 

俺はその術を起動して、カセドラルの最上階で何が起きたのか、それを見たのだ。

 

それにより、アルス達がアドミニストレーターの所業を暴き、これから起こるはずであった惨劇を防いだ事を知った。

 

そして、無事に起動した術式により浮かび上がった窓を覗いた。

……そこには、とんでもない戦いが映されていた。

 

 

間違いなく、人智を超えた殺し合い。

俺は情けない事にあっけに取られた。

 

その映像の中に、ソレは映った。

……アルスが振りかざした20にも及ぶ連撃。

アルスは、時穿剣を片手で操り、20連撃も斬撃を空斬でその場に留め、斬撃圏を作り出し、ソードゴーレムと呼ばれた異形の怪物を粉砕した。

 

そして、最後の方に。

 

何も無い虚空……いや、10分前までアドミニストレーターが存在したであろう場所に向かって時穿剣を振り抜くアルスが映し出された。

——裏斬。

時穿剣の記憶解放術式によって、斬った場所の10分前にそこにいた相手の天命を直接減らす。時穿剣の奥の手中の奥の手。禁じ手だ。

 

「・・・そうか、そういう、事だったのか」

 

それを見たときに、全てを理解した。

俺は、アルスと出会って戦って。

 

見出した。

あいつと出会う前まで考えていた、若い芽。俺の跡継ぎ。

きっと、それがアルスなんだ。

 

最早、天啓にも似た感覚だった。

だか、それからの行動は早かった。

 

ひとまずはアルスが目を覚ました時に、キリト達がいた方がいいだろう。それに、カセドラルではあいつらに敵意を持つ奴らが多すぎる。

だから、あいつらをルーリッドの村に帰した。

 

……あそこなら幾分かは安全だろう。

 

 

これが、俺が自分の後継者として認めた男との出会いと対決。その記憶だ。きっと、この記憶を俺は死ぬその瞬間まで忘れないだろう。

 

若い剣士との戦いで得た、何百年振りかの興奮。楽しさを。

あいつが見せた、どんな相手にも諦めずに喰らい付いて行く姿勢。それが最後に身を結んだ瞬間を。

絶望が、希望へと変わる事が証明されたあの瞬間を。

 




後書き

はい、後書きです。
眠くてかなり変なテンションで書きました。
今回はベルクーリ視点でアルスをどんな存在と捉えたかを書いたつもりです。眠くて、だいぶ何を書いてるから分かりませんが(笑)

後で修正を加えるかもです。

ざっくりと纏めるなら、【整合騎士として若い芽を摘む事に思うところがあったベルクーリがアルスと出会い、剣を交えた事で、次の世代を引っ張って行くのはアルスに任せたいと考える】という話でした。

本編でベルクーリが月咬をアルスに託したのもこれらの考えを本格的に取り入れ始めた結果で、前回の番外編でロニエの義勇団への加入を了承したのも、アルスを良く知り、支える事ができそうな人材を育てるのもいいかもしれないなと思ったからです。

原作から感じられた、ベルクーリの親父肌なところが上手く表現できずにかなり残念ですが……。


ところで話が変わりますが、前回投稿した本編の後書きでお話ししたコラボ企画についての続報です!

実は、あちらの作者様の作品でもコラボ回が投稿されます!
前回のヒントの続き。

ヒント : スリーピングナイツが全員生存している作品。

です!

では、また次回もよろしくお願いします!
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