SAO 〜無型の剣聖〜   作:mogami

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前書き

今回もオリ主が主体なストーリー展開が受け入れられる人とそうでない人で感じたが別れると思われる内容です。


45話 1つの終わり

アリスはその人智を超えた殺し合いを見守っていた。

ユージオも今にも眠ってしまいそうな自分に鞭を打ち、戦いの行く末を見守る。

 

聴き覚えの無い単語が数個聞こえてきたが、そんな事は2人にとって些末ごとだった。

何故なら、アリスとユージオは信じていたからだ。

例え、アルスとキリトに自分達の知らない一面や隠している事があったのだとしても、それでもまた会えた。また触れ合えた。共に肩を並べて戦った。それだけで充分だった。

 

アリスとユージオが願うのはただ1つ。

世界が救われる事ではなく、いま戦っている、アルスとキリトが無事に帰ってくる事だ。

 

激しい剣戟、何かを激しくぶつけあったような金属音、剣と剣がぶつかる度に吹き荒れる剣圧。離れていても感じる凍てつくような凍気、押し潰されるような気迫。

 

その全てがこの戦いの異質さを物語っていた。

 

そして、その人智を超えた殺し合いも幕を閉じる。

キリトの剣がアドミニストレータに致命傷を与え、それから逃れる為にこの世界から脱出しようと光に包まれ、宙に浮いたアドミニストレータの背後にアルスが現れ、その体を貫き、剣の記憶を解放させる。

 

音も光もなかった。

ただ、アルスの剣を中心に空間が歪む。

そんな中で、アドミニストレータは影も形も残さずに消滅した。

 

 

 

呆気ないほどに静かな終わり。

耳が痛くなるほどの静寂の中でアルスの着地する音だけがカツンと静かに響く。

 

そして右胸に刺さったアドミニストレータの細剣を抜き捨てる。その時に身体の力が抜けたのか、握っていた剣がアルスの手を滑り落ち、床に突き刺さる。

だが、アルスは倒れそうになる体を何とか支え、一歩ずつふらふらとアリス達の方へと歩く。

 

やがて、力尽き膝を着いたキリトと今、必死にアルスを見上げているアリス達の数メートル前に歩いて来ると少し、困った顔をして言った。

 

「ええっと……ただいま?」

 

そんな少し間の抜けた言葉で本当に戦いが終わった事を実感したアリス、キリト、ユージオは身体の疲れを全て忘れてアルスに飛び付いた。

 

———

アルス視点

 

「うわっぶ!?」

 

何やら緊張した表情でこちらを見つめて来る3人に対して何を言うべきか困り果てた結果、「ただいま」と言ったら一気に破顔した3人に飛び付かれた。

 

正面から3人分の体重が衝撃となって俺に襲い掛かる。既にふらふらな俺にそんな力を受け止めきれる筈もなく、俺は仰向けに倒れた。

 

「アルス!?大丈夫ですか……?」

 

「……大丈夫か心配するならひとまず3人同時に腹の上に乗るのは止めてくれッ!」

 

「「あ……ゴメン」」

 

俺の言葉に気付いたキリトとユージオはひとまず俺を挟むように左右に寝転んだ。

 

「えっ……と、アリスさん?」

 

「嫌です、退けたくないわ」

 

「……さいですか」

 

少しツンケンした様子のアリスは梃子でも動かないであろう事が何となく分かったので、諦めた。

 

それから少しの間そうしていると、不意にユージオが呟いた。

 

「本当に終わったんだよね……?」

 

「ああ。間違いなくアドミニストレータは死んだ」

 

俺がそう返すとユージオは少し思い返すような表情をする。

 

「……僕ら、2日前まで学生してた筈なのに……気が付けばとんでも無い相手と戦ってたんだよね」

 

「そうだな……世界の中心で世界を守る騎士達と敵対してた訳だからな……」

 

「それも見事にお前達に壊滅させられるし、こうして私も反逆者の仲間入りを果たした訳ですし……」

 

「挙句に少なくとも人界の神とも言うべき存在を殺しちまった訳だからな……これからどうなる事やら」

 

4人がそれぞれ、ここまでの戦いを振り返る。

この戦いが始まってから終わるまで、2日。

たった2日がこんなに濃密だとこれからの日常で支障をきたしそうだ。

 

「ねぇ……これから、私たちはどうするの?」

 

俺の上にいるアリスが当然の疑問を漏らす。

 

「……少なくとも俺たちが反逆者である事には変わり無い」

 

「だが、アドミニストレータを放置していたら人界の民の殆どがあのゴーレムにされていた。そう考えると結果として人界を救った事になる……のか?」

 

「そうだね……。でも、ダークテリトリーとの戦いで必要になる戦力の大半を僕達が削いでしまったということでもあるよね。騎士達の殆どを倒してしまった訳だし」

 

「しばらくは忙しいだろうし、息つく暇も無いでしょうね……」

 

4人でこれからの事を考えるとどうしても暗い方向に思考が進んでしまう。

 

「あっ……」

 

「ん、どうした?」

 

暗い方向に考えていた中でふと、約束を思い出した。

 

「なあ、落ち着いたらルーリッドの村へ戻らないか?」

 

俺はセルカとの約束を思い出し、提案する。

アリスにはセルカに会うように話した事もあったし、丁度いいだろう。ロニエとの約束を果たすのはもう少しだけ先になりそうだ。

 

「ルーリッドの村……でも……」

 

ユージオは少し不安そうにアリスを見る。

だが、ユージオの心配とは裏腹に割と明るい表情を浮かべていた。

 

「心配しなくてもいいわ。あの時のことを後悔はしていないし、また、あなた達に会えたもの。それに、私達の故郷はあそこだけよ。それから、セルカにも会いたいしね」

 

そういうアリスは寧ろ楽しみだと笑っていた。

 

「それもいいな。仮に村へ入れて貰えなくても俺たちで家を建てるのも楽しそうだ」

 

キリトも前向きに考えている。

俺もそうだ。これからどうするかを考えると割とどうにかなる気がしてくる。俺もキリトも、ユージオとアリスも前向きにこれからの生活を考えて顔を綻ばせる。

 

 

 

 

だが、その前に俺とキリトにはやるべき事がある。

キリトに目配せする。どうやら向こうも同じ事を考えていたらしい。

 

「アリス……少し退いてくれ」

 

「アルス……?」

 

俺の声色が低くなったのを感じたのか、一瞬だけ首をかしげるが、「分かったわ」と退いてくれた。

ユージオも不思議そうな顔をしていたけど何かを察したのか、身体を起こす。俺もひとまず行動する為に立ち上がろうとするが……。

 

「……うぐっ!?」

 

体に力が入らずに前のめりに転ける。

 

「アルスは無理するな、動ける様になってからでいい」

 

俺が地面に激突する前に俺を受け止めたキリトが俺に聞こえる様に呟くと、アドミニストレータが出現させたシステムコンソールに向けて歩き出す。

 

キリトも多少ふらついているが、着実に歩いている。一方、俺の体は全く言う事を聞いてくれない。

そんな俺の体を支える様にアリスとユージオが肩を貸してくれた。

 

「……いいのか?」

 

"何を"とは言わない。アリスとユージオの顔付きから何かを察している事が分かるから。

 

「詳しい話は分からないわ。でも……」

 

「必要なことなんだろ?お前にとっても、キリトにとっても……なら、それだけで充分だよ」

 

「…………ありがとう」

 

何も言わない俺たちを信じてくれるアリスとユージオに感謝しつつ、一歩ずつ前に進む。

 

何歩、歩いた頃だろう。

キリトがコンソールに辿り着き、それを操作する。

その時、警告音が鳴り響き、キリトの目の前に日本語のダイアログが表示される。

 

キリトはそれを躊躇いなく操作した。

次の瞬間、世界の何もかもが遅く感じる様な感覚に陥る。もっとも、それは一瞬だけの出来事だったが、次の瞬間に俺に送られてきたメッセージウィンドウで事態を把握する。

 

【フラクトライト加速倍率が1.0倍に固定されました】

 

そのウィンドウは管理者である俺にしか送られていないらしい。アリスもユージオもこのウィンドウを見て目を瞬かせている。

 

そして、俺はそのウィンドウの右下にSOUND ONLYと真ん中に書かれた別のウィンドウを見つける。

 

それを指で突いてみると、画面が大きくなった。

画面の下から虹色のメーターが跳ねたり、落ちたりしている。そんな事を繰り返す中で、だんだんと音が聞こえてきた。

 

(……どういう事だ、現実で何が起こっている!?)

 

さっきまで殺し合っていたせいか、感覚が鋭敏になっているのか、耳を澄ましてようやく聞こえそうな音を最初から聞き取ってしまった。

 

だが、それは俺に疑問を生んだ。

なぜなら、その画面から聞こえてきたのは、人の声ではなく、小機関銃の発砲音だったから。

 

「菊岡!菊岡ぁぁ!!」

 

キリトがコンソールに浮かぶ同様のウィンドウに向けて叫ぶ。

 

『あ……ああああ!?菊さんッ!中から呼び出しです!アンダーワールドの中っすよ!!これは……彼だ!桐ヶ谷君ですッ!』

 

『な、なにぃっ!?』

 

何かに驚いた男の声と、菊岡の驚愕の声が聞こえる。

 

『キリト君、もしかして、アルス君もいるのか!?そこにいるのか!?』

 

間違いない、菊岡誠二郎。キリトを見込み、色々と押し付け、実験をして来た男の声。

 

「菊岡!あんたのした事がどんな事なのか分かっているのかッ!?」

 

キリトの激情の声が聞こえる。この世界に来てから押し殺してきた現実への思いが爆発しかけているのだろう。俺もこの世界に関して言いたい事は複数ある。

 

『その誹りは後でいくらでも受ける!だから今は僕の話を聞いてくれ!!』

 

"あの男"らしくない切羽詰まった声。

キリトも異常を察したのか黙ったので俺も黙って聞く事にした。

 

『いいか……キリト君、アルス君!アリスと言う少女を探すんだ!そして彼女を……』

 

その音声を聞いたアリスは「……私?」と首を傾げている。

 

「探すも何も……いま、ここにいるぞ!」

 

キリトが一瞬、アリスをみて叫ぶ。

すると、少し間ができて。

 

『奇跡だ……!いいか、よく聞くんだ!この通信が終了し次第、フラクトライトの加速倍率を1千倍に戻す!アリスを……いや!アルス君も一緒に《ワールド・エンド・オールター》を目指してくれ!君たちの使っているコンソールはもう時期、陥ちる!』

 

「何を言っているんだ!?」

 

キリトの叫びに返答はない。

その代わりに先程の小機関銃の発砲音がどんどん大きくなってきている。

 

『菊さんッ!いま主電源ラインを切られたらサージが起こる!ライトキューブ・クラスターは保護されてますが……サブコンの、桐ヶ谷くんのSTLに過電流がッ!フラクトライトが焼かれちまいます!』

 

STLに過電流……そしてフラクトライトが焼かれる……それはまずい!

 

そこから先はあまり聞こえていなかった。

 

「あれは……なんだ?」

 

「……アルス?」

 

キリトの頭上。不自然な光が差し込んでいる。

何が不自然か、それはカセドラルの天蓋を貫通する様に差し込んでいたのだ。

 

「何も……ないよ?」

 

「……え?」

 

ユージオが心底不思議そうな顔を向けて来る。

 

「あの光が見えないのか……?」

 

俺の問いに首を振るアリスとユージオ。

そんな時、電撃にも似た直感が俺の脳裏をよぎる。

直感に突き動かされる様に俺は走った。

 

「アルス!?」

 

アリスの驚いたような声が聞こえるがそれどころではない。

 

キリトをあの光の下に居させてはならない。

そんな直感とともに俺はいままでにない速度で脳が働いたのを実感した。

 

—走る、走る、走る、走る

 

身体の疲労も気にせず、何度も転びそうになりながらキリトへ向けて走る。

 

 

きっと、キリトと誰よりも一緒にいた俺だから気付いた。誰よりも長い時間を共有した俺だから気付いた。身体を共有した俺だから気付いた。

 

……2人で1人だからこそ気付いた。

 

 

あれはキリトの魂へダメージを与えるモノだ。

フラクトライトを焼かれる。それがどんな結果をもたらすのかは分からない。もしかするとライオスの様にフラクトライトが崩壊するかもしれない。

 

他の誰にも見えていない。

俺にしか見えていない。

 

だからこそあり得るかもしれない可能性を信じて走る。

 

『駄目だ……電源切れます!!スクリュー止まります、全員衝撃に備えて!!』

 

そんな声が聞こえる。

 

「キリトぉおおおーーー!!!」

 

コンソールの前、光を見上げる様に立ち尽くすキリトを突き飛ばす事に成功した。

 

 

 

 

 

 

……これで良い。

これで良かったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———

キリト視点

 

何も考えられなかった。

ただ、俺目掛けて降ってくる白い柱達。

 

それが俺を貫く寸前。

 

「キリトぉおおおーーー!!!」

 

俺の名前を叫ぶアルスの声。

それが聞こえると同時に俺は……アルスに突き飛ばされていた。

 

 

 

 

 

 

まるで位置が入れ替わる様に。

 

「……あ………」

 

突き飛ばされて地面と衝突する寸前。

俺を貫く筈だった光の柱たちがアルスを貫いたのが見えた。

 

フラクトライトが焼かれる。その言葉が俺の脳内で永遠と再生されていた。

 

『キリトくん……キリトくん……!』

 

アスナの声が聞こえたが、それに反応する余裕など、俺には無かった。

 

———

 

「アルス!しっかりしろ、目を開けろアルス!!」

 

キリトが床へ倒れたアルスへ駆け寄る。

ユージオとアリスもアルスへ必死に呼びかけるが彼は一向に反応を示さない。

 

「アルス!アルス!」

 

「(うるさいな……キリト、お前の嫁がお前を呼んでるぞ……?)」

 

アルスは薄れゆく意識の中で疑問を持つ。

 

「(あれ……キリト、おまえ……結婚してたっけ?)」

 

アルスは響く"キリトを呼ぶ誰かの声"に対する疑問を最後に意識を失った。

 

アルスが意識を失うと同時に天井から1つの記憶の欠片がアルスへと落ちる。

 

それと全く同時に《黒藍の死剣》の罅が大きく、無数に広がり、刀身の半ばから先が割れ、砕け散った。

 

 

 

 

 

 

それは月の視えない新月の晩の出来事だった。




後書き

はい、後書きです。

まず、今後はますますアルスをねじ込んだ展開になることをご了承ください。
タグにもある様にオリジナル展開も多数あります。
ただ、ここ矛盾してるよーなどがあれば教えて下さい。

……でも、アルスに付いては一切譲りませんがね(^∇^)

閲覧ありがとうございました!
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