SAO 〜無型の剣聖〜   作:mogami

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54話 平和な日々 その6

最近、思う事がある。

俺はいつまでこのままなのだろう。

何度も言う様で申し訳ないが、記憶が無い。というこの状態だと不便も思う事が多くなってきた。

 

「アルス飯〜……」

 

「なんか、お前からそのセリフを聞くのは何度目なんだろう……」

 

例えばキリトだ。

育ち盛り?なのか基本的に「飯〜」とかそんな感じのセリフしか聞かない気がする。

そんな時に飯を作るのが主に俺の仕事なんだが……キリトの好物がよく分からないから困る。

 

好物を知っているだけでも料理のしやすさは雲泥の差と言う言葉を使っても良い程に変わる。

 

後は村の店とか言った時に困るのが言語というか、言葉の意味だ。

どういうわけか俺は神聖語なら理解できてるくせに一般的に使われているらしい言葉の意味……というか、表現の仕方がわからないことがあるのだ。

 

例えば、まどの内側を見えない様にする布。

俺がその布をカーテンと言ったら、通じずに窓掛けと言い直された。

 

こんな事が多いと、記憶を失う前の俺は一体どんな生活をしていたのか否が応でも気にせざるを得ない。

 

「アールースー……」

 

「分かった、分かったからちょっとまて」

 

思考を弄んでいるとキリトがそろそろ限界らしいので、思考よりも先に手を動かすとしよう。

 

えっと材料は……うん。これならパンかな。

後は新鮮なミルクもある。

色々と材料は揃っているし、パンを中心にクリームとかバターを塗った焼いた奴とかフレンチトーストとかも良いだろう。

……はて?フレンチって………?

なんか、初めて知らない神聖語を発見した気がする。

 

「まあ、いいか」

 

俺はとりあえず、使う材料を一通り取り出して調理を開始した。

 

バターを作る為に神聖術でミルクを冷やしながら、心意の腕で振動を与え続ける。

チーズも発酵とかそういう工程を神聖術と心意で短縮させる。

クリームも同様に心意と神聖術をフル活用。

 

「パンは……どんなのを作ろうか」

 

頭の中に入っているパンを思い出す。

……何故だろう。

ふと、食べた事が無いはずのパンが思い浮かんだ。

 

いかにも固くてぼそぼそしてそうな黒パン。

その上にゴッテリと乗せられたクリーム。

 

……俺は、これを何処かで食べた事がある……?

 

「とりあえず作ってみるか」

 

ひとまず手を動かす事にした。

 

———

〜30分後〜

 

「ほれ、出来たぞ。席に着けーい」

 

「よっしゃ!待ってました!」

 

出来たパンをトレイに乗せて机に運ぶと誰よりも我先にと言わんばかりの勢いでキリトが席に着いた。

その様子にユージオ達も苦笑いを浮かべながら席に着き、アリスは運ぶのを手伝ってくれた。

 

「おお……!今日はパン祭りか!・・・ん?」

 

他の面子が「いただきまーす!」と声を揃えてパンを頬張る中で、誰よりも腹を空かせていたキリトの手が止まる。

 

「キリト?」

 

「アルス……これ、どうしたんだ?」

 

キリトが"これ"と持ち上げたのは、俺の頭に浮かんできたからなんとなく作ってみた黒パンのクリーム乗せだった。

 

「作ったんだ。なんか、献立をパンにしようと考えた時にそれが頭に浮かんでさ。気になったんで作ってみた……味は流石に分からないから再現は出来ないけどな」

 

「・・・あぐ!」

 

俺の言葉を書き終えたキリトはパンを丸呑みしそうな程に大きく口を開いてパンに齧り付く。サクサクっと小気味の良い音を立てながら、パンを食べるキリト。

うん、パンのできは我ながら上出来と言えるだろう。

 

「……これ、やっぱりアインクラッドの……」

 

「・・・俺とキリトが食べた事のあるパンだったか?」

 

「ああ……。アインクラッド第一層で、良く食べていたんだよ。あの頃は割と贅沢もできなかったからな、どうすれば美味く食べられるかを工夫して、最終的にこの形に収まったんだ」

 

「そんな事が……」

 

……何故だろう。

それが俺の頭の中に浮かんだのか……?

ひょっとして、記憶が戻り始めてるのかな。

 

「・・・いつか、私達もそのアインクラッドなる土地に行ってみたいものですね……」

 

俺とキリトの話を聞いていたらしいアリスが少し改まった言葉遣いでそう言った。

 

「そうだな、いつか連れて行くさ。必ず……このメンバーで。そしたら、向こうの仲間を紹介するぜ。みんな気さくで、良い奴だからすぐに仲良くなれるさ」

 

久しぶりに聞いたキリトの思い詰めたような声。

その言葉にこの場にいた全員が思わずキリトの方を見た。

 

「・・・なんか、キリトの調子が変じゃない?」

 

「奇遇ね、ユージオ。私もそう思ったところよ」

 

「ふ、2人とも!キリトだってやる時はやる子だからね!?」

 

明らかにキリトの事を心配するフリをして煽ってるユージオとアリスとは反対に一応フォロー?をしているセルカ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・俺は、何も知らないんだな」

 

黒パンのクリーム乗せを齧りながら、小さく呟く。

その声は誰にも聞こえてはいなかったようだが、なによりも、俺の胸に虚しく響いた。




後書き

はい、後書きです?
最近は色んなゲームに手を出して見ているのですが、比較的にDMC4をプレイする時間が多いですかね。
来年には続編のDMC5も出る事ですし………別の小説でDMC要素を盛り込んだ話でも作ろうか(ボソッ

そして、今回の話はアルスがパンを作りながらアインクラッドの第1層で食べた黒パンのクリーム乗せを偶然作り、キリトが久しぶりにシリアスな一言を放つお話でした。
分かりづらいかもしれませんが、今のアルスは自分の過去と剣を握る事が出来ない現状をだいぶ思い詰めています。
アルスが記憶を本格的に取り戻したいと願った瞬間に『平和な日々』は幕を閉じることになります。

そして、コラボ回についての続報です!

・投稿日時は16日の9時00分。

・投稿内容としては、番外編ではなく、ストーリーとして投稿します。

・今回コラボさせて頂く作者様の方でも同日同時刻に投稿される予定ですが、なんとあちらは……多話投稿となっております!!
いや、ほんとすげぇよ……俺には真似できねぇや。

・あちらの名前と作品名はコラボ回の後書きで発表しますのであしからず。


それでは、皆さん。
閲覧ありがとうございました。
暑さも少し引いてきましたが、体調を崩さぬようにお気を付けて下さい。

次回もよろすく(誤植にあらず)!
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