白い堕天使と出会い、別れた翌日。
俺は改めて自分の状態を確認した。
剣を振ることは相変わらず出来ないが、それでも握れている。この事実に俺は喜びで打ち震えた。
キリト達に彼の話をしたところ、アリス達は「そんなこともあるのね……」と物語を聞くような相槌だった。だが、キリトは目を見開き、「そうか……」と呟いた。
キリトの反応からしてやはり知り合いだったのかと考えたが、今は考えるだけ無駄だ。記憶がないのだから。
でも、記憶が戻れば彼らを思い出す事ができるだろう。
楽しみが1つ増えた、と前向きな思考ができるようになった。
本当にアート様々だ。
「・・・駄目です。そのうち瓦礫も撤去されてダークテリトリーから亜人たちがこちらに侵攻してきます。時間はあまりなさそうです」
だが、いい事だけではなかった。
あの日、神聖術で塞いだダークテリトリーとの通路もすぐに復旧され、ゴブリン達がやってくると言う。
「それに……あれから約半年。そろそろ私達の居場所も特定されてもおかしくない時期です」
「「・・・・」」
キリトとユージオが俯く。
聞いた話だと俺達がここに来れたのは整合騎士長のお陰らしいのだが、やはり戦争が起きようとしている中、より上質な戦力を求めるのは当然の事。そろそろお呼びが掛かるだろう。
俺達は公理教会を壊滅させた。
最高司祭を殺害したのも、元老長と言う奴を殺害したのも俺達らしいのだ。戦力として呼ばれないわけがない。
俺は何となく夕暮れで真っ赤な空を見る。
赤い、紅い、朱い。
赤々としすぎてどこか現実味のない空の色。
———それが、これから流れる血に見えた。
一昨日までの俺ならこの段階で目を逸らし、これから起こる事を見て見ぬ振りをしようとしただろう。
たが、それはしない。
俺はもう戦える。
剣を振るえなくても、俺にはできる事がある。
やれる事があるのだと知ったから。
「・・・・」
キリト、ユージオ、アリスの顔を見る。
………どこか、懐かしい。
—キリト〜!アリスが怒ったぁ!
—アルスが変な事するからよ!
—まあまあ、落ち着けよアリス!
—アルスはアルスで何をしたのさ!?
ふと、黒藍の髪の少年が金髪の少女に羽交い締めにされ、それを苦笑いで眺める漆黒の髪の少年と亜麻色の髪をした少年。そんな彼らの姿を幻視した。
「……止まらない。俺は決して止まらないさ」
白い堕天使がくれた言葉を。
俺は何となく一人で呟く。
剣を振り下ろす覚悟も、彼らとの思い出も、自分の事すらも無くした。
でも、この戦いで必ず取り戻す。
そしたら帰ろう。
4人で……いつ、どこかも分からないけど、平和で。楽しかったあの日々に……。
後書き
うぃーす、後書きでーす。
最近、就職試験も近いという事で学校に足を運んで履歴書を書いていたわけなのですが……昨日、学校に鞄を忘れるというトジっ子っぷりを発動させました。鞄の中には履歴書とスマホも入っていたのでなにかと萎えました。学校に行ったら先生に注意を受けるわ、スマホの電池は切れてるわで萎えまくった1日でした。
本編のアルス……少し前向きなったようですが、彼がどんな風になるのか……実はわたしにも想像が付きません。
あ、本日も朝9時に『artisan』様の方でコラボストーリーの続きが投稿されました!是非あちらもご覧下さい!