SAO 〜無型の剣聖〜   作:mogami

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前書き

えーと、皆さんに連絡があります。
実は当小説、『無型の剣聖』なのですが、実は場面切り替えが分かりづらいのではないかと今更ながらに思いましたので、場面切り替えの書き方を変更することにしました。

・視点切り替え。変更前)
———
〜〇〇視点〜


・視点切り替え。変更後)
▶︎△◀︎▶︎△◀︎
〜 〇〇視点 〜



・場面切り替え。変更前)
———
〜〇〇後〜




・場面切り替え。変更後)
▶︎△◀︎▶︎△◀︎
〜 〇〇後 〜



以上のような形に変更します。『場面切り替え』の〇〇には時間が入ります。要するに……。

▶︎△◀︎▶︎△◀︎
〜 30分後 〜

こんな感じです。
よくある感じになってしまいまして申し訳無いです。

以降は本編です!


59話 来訪者

あれから数日経ったある日、唐突に家の外で何かが羽ばたく音が聞こえた。雨縁の羽ばたきの音では無い。

その証拠に雨縁の威嚇する声も聞こえている。

 

「……あれは」

 

俺たちは外へと飛び出して、空を見上げる。

ユージオが目を細めていた。

 

俺たちの警戒が伝わっているのか、月咬も低く唸っていた。

 

しかし、雨縁の警戒したような声はすぐに消え、代わりに甘えるような声をあげた。

 

理由はすぐにわかった。

空で翼を羽ばたかせていたのは飛竜だったのだ。人界は確かに広いが、飛竜は公理教会にしかいないとアリスに聞いたことがあった。

 

「滝刳……?」

 

やはり、というか。アリスはあの飛竜を知っているようだ。

 

「えっと、知り合いか?」

 

「ええ。乗り手は恐らく……」

 

キリトの質問にアリスは何とも言い難い表情を浮かべた。

 

そんな俺たちを他所にしなやかな身のこなしで飛竜から騎士が降りてきた。

 

「やはり、あなたでしたか。何用ですかエルドリエ・シンセシス・サーティワン」

 

「お久しゅうございます、我が師アリス様」

 

……どうやら、アリスの弟子らしい。

 

▶︎△◀︎▶︎△◀︎

〜 数分後 〜

 

「どうぞ、粗茶ですが」

 

「ありがたく頂こう」

 

ひとまずお茶を入れて振る舞ってみた。

何か言いたげに睨まれたが……まあ、俺やキリト、ユージオは叛逆者らしいしな。しょうがない。

 

「……何やら良い匂いがしますな、ところで私。急ぎ央都より馳せ参じました故、食事をとっておりません」

 

エルドリエの視線がシチューの入った鍋へと注がれる。

また、俺達の視線は彼が持参していたワインに注がれる。

 

「いや、ワイン持って食料を持たないとかふざけてr『はーい!ユーちゃんは向こうでキリトとお話ししててねぇ〜!』わっ!ちょ!?」

 

誰もがあえて指摘しなかった所にワザワザツッコミを入れたKYなユージオをひとまずキリトとアイコンタクトして押し付ける。

 

「何するのさアルス!?」

 

「ほら、行くぞユーちゃん。向こうで月咬と遊ぼうなぁー」

 

「誰だよユーちゃんって!?おいキリト、何で引っ張るんだい!?」

 

ユージオの様々な訴えを右から左へ受け流し、ひとまずこの場に残って成り行きを見守ることにする。

 

アリスはアリスで呆れたように目を細めて、適当な皿を取り、シチューをよそって彼の前に置いた。

 

「おお……まさか我が師の手料理を頂けるというのですか!?」

 

「あ、いえ。作ったのは彼です」

 

何やら感動で打ち震えていたエルドリエの感動に水を差すようにアリスは俺を手で指してきた。

アリスよ……もうちょい浸らせてやろうぜ……。

 

「…………」

 

うわぁ……みてる。めっさ見てるよ……。

無言で睨んできてるよ。どうしよう?

 

少し考えて………。

 

「✌︎( ˙-˙ )チ-ッス」

 

と返して見た。

何故だか睨まれた。

 

「んっんん!」

 

そして、とうとうアリスが咳払いして、本題を切り出した。

 

「エルドリエ、なぜお前がここにいるのです。まさか我々を探しにきた訳ではないのでしょう」

 

「師弟の絆が引き合わせた……などと申してみたいのですが、実は本当に偶然です」

 

彼の説明はこうだ。

 

ゴブリンやオークが動き回っているらしい。

騎士長の指示で北、南、西の洞窟は崩落させたが、また掘り返そうとしているかもしれない。

それで確認しに来たと。

 

……だが。

 

「洞窟、ですか」

 

アリスは眉を顰める。

きっと俺も似たような表情をしていただろう。

 

「もしや、何かご存知なのですか?」

 

エルドリエの声に数日前の出来事を思い出す。

 

「北の洞窟は先日、ゴブリンによって掘り返されました」

 

「なんと!?」

 

「そこにいるアルスと、アートなる青年の活躍で進行を食い止めることができましたが……」

 

アリスの言葉により再び視線を向けられた。

 

「✌︎( ˙-˙ )」

 

「……チッ」

 

はい、舌打ち頂きましたっと。

別に煽ってる訳でもないんだが……このプライド高そうな騎士とどう接していいのか分からないんだよなぁ。

 

《ユ-チャンッテヨブナ-!

《オチツケヨユ-チャン!

 

なんか、あっちはあっちで騒がしいし……。

誰かこの空気をなんとかしてくれ。

 

そんな俺の願いが通じたのか、エルドリエが意を決したように口を開く。

 

「アリス様…いま、この時に再びお会いできたこの機会を得たからには申し上げます。今一度……騎士団へとお戻り下さい!我らは千の強者よりも、幾万もの術者よりも、あなた様1人の剣を必要としております!!」

 

ただただ剛直な騎士の表情をしたエルドリエがアリスを強く見つめ、頭を下げた。

 

……これだけで、アリスがどれ程騎士団に必要とされているか。どれだけ頼もしい存在なのかが計り知ることができる。

 

「……できません」

 

だが、彼女は……アリスは首を横に振った。

 

「何故です」

 

エルドリエは顔を上げ、こちらを睨みつけた。

 

「そこの男ですか」

 

俺は一歩前に出る。

こちらに矛先が向けられた以上は我関せずの構えでこの会話を静観するわけにはいかなくなったからだ。

 

「その者たちが何をしでかしたのかあなたもお分かりのはずだ。騎士たちを傷つけ、最高司祭様を殺害した!」

 

「やめなさいエルドリエ!彼らが動かなければ人界の民が犠牲なるところでした、それを未然に防いだのですよ!?」

 

「その点に関しては感謝もしましょう、我らにはできなかった事だ。だが、その人界の民を傷つけたのもまたその男達だ!彼奴等が何故セントラル・カセドラルに連行されたのかをお忘れか!」

 

「それは……!」

 

……俺が知らないことはまだありそうだな。

俺が禁忌目録を破ったことは聞いたが、何をしたかは聞いていない。

 

「その話、聞かせてもらってもいいか」

 

「貴様……、自身がしでかしたことも分からぬのか!」

 

「生憎と記憶が曖昧なものでね、詳細な事は覚えていない」

 

彼と向き合うためにアリスを下がらせて、正面に立つ。

彼と……いや、整合騎士達と向き合うためには自分のした事を、アリス達の視点とは別の視点から知る必要があるから。

 

「記憶が定かですらないというのにアリス様を縛り付けるか……!良い、話してやろう!貴様は罪なき民を傷つけ、殺害したのだ!!」

 

「違う『アリス、いいんだ』……アルス」

 

咄嗟に否定してくれようとしたアリスを制止する。

俺が知らなければ意味がない。俺が受け止めねば意味がないのだ。

 

「確かに貴様らは人界を救ったのだろう!だが、その過程に犠牲を出し過ぎたのだ!結果はどうあれ、事実は動かないっ!」

 

エルドリエの言葉を聞き終え、俺は反論する。

 

「そうだ、確かに事実は変わらない。だか、俺達が動かなければ人界の民が犠牲になるという結末を迎えていただろう。その事実もまた変わらないはずだ」

 

彼らと敵対する為ではない。

ましてや共闘する為でもない。

 

「俺達にも信念がある。それに基づいての行動だ」

 

「信念だと…?自身の記憶が曖昧な貴様が信念などとよくも軽々しく口にしたものだな!」

 

「そうだな、確かにその通りだ。だが、遊び半分でも!愉快犯でも!ましてや叛逆の意思のみで戦った訳でないことだけは分かるさ!」

 

頭の中がクリアになる。

そして、まるでもう1人の俺でも居るかのように1人でに口が開かれた。

 

「キリトは昔からぶっきらぼうで悪戯好きだった、でも、誰かが傷ついてる時はいつの間にかそいつの隣に寄り添う奴だった!ユージオはいつも俺達の背後を付いてきてた、でも、俺達が本当にやってはいけないことをしそうになった時は必ず止めてくれる奴だった!」

 

「なにを………!?」

 

「アリスはキリトや俺と悪戯をするようなお転婆娘だった!けど、正義感も責任感も強くて、困ってる奴がいたら放っておかない。それこそダークテリトリーの暗黒騎士すら助けようとして禁忌を犯すほどにな!」

 

「アリス様が禁忌を犯しただと……!口から出まかせを!貴様が我が師を知ったような口を叩くなッ!!」

 

とうとう我慢できなくなったのか、エルドリエの拳が振るわれる。白銀色の籠手に包まれたその拳。今の俺にはそれすら止まって見えた。

 

エルドリエの拳を避けて、捻り、突き飛ばす。

 

「大切で大好きな幼馴染のことだ、知ってるさ!子供の頃からずっと一緒いたんだ!!」

 

「アル、ス……?」

 

俺は突き飛ばされて、体勢を崩しかけたエルドリエの襟首を掴んで立たせ、正面から見据える。

 

「そんな幼馴染達と共に戦った、だからこそ俺は信念があったのだと断言する!俺達は守りたかった物の為に戦うだけだ。今までも、これからも!」

 

「………」

 

「お前達はどうなんだ?アドミニストレーターもチュデルキンも居ない。俺か殺したからだ。最高司祭亡きいま、お前達は何の為に戦う。公理教会の守護の為か!人界を守る為か!」

 

そう、俺達は戦うだけだ。守りたい場所や者の為に。

 

「ベルクーリに伝えろ、俺も戦線に向かう。人界の為とかではなく、自分の為に。自分の信念を押し通す為に」

 

世界がどうなろうと俺の知ったこっちゃない。

もう一度剣を取る為に。記憶を取り戻す為に。大切で大好きな奴らと一緒にいる為に。その場所を守る。

それが俺の信念だ。

 

「……伝えておいてやる。私に説いたその信念とやらを押し通して見せよ、戦場にて待つ」

 

エルドリエはアリスに一礼して、そのまま飛竜に乗って去って行った。

 

「・・・アルス」

 

「……?」

 

彼の背中を見送っていると、不意に横から視線を感じて体を向ける。そこには明らかに不機嫌そうなアリスがいた。

 

「勝手にいろんなことを決めて……。キリトやユージオ、セルカにどう説明するつもりなのかしら?」

 

「い、いや……それは……うっ!?」

 

不機嫌そうににじり寄ってきたアリスから後ずさりすると、不意に頭痛がした。

 

「あっ……がっ!!?」

 

堪らず膝をつく。

 

「アルス!?」

 

アリスが支えてくれたので倒れはしなかったが、代わりに頭痛がどんどん激しくなっていく。

 

この前感じた記憶の欠片を覗くような感覚をさらに強化したような頭痛。頭がどんどんまして行く。

 

—さらばだ、キリト君。

 

—やめろぉぉぉぉぉーーーーっ!!

 

「なんだ、コレ………!!?」

 

十字を象った剣と大盾を構えた紅い鎧の騎士。

それと向き合う黒と白の剣を握った見覚えのある剣士。

そして……振りかざされる十字の剣に向かって走り出す俺。

 

身に覚えがないけど懐かしい景色。

激しい頭痛の末にそんな光景を幻視した。




後書き

はい、後書きっす!

場面変更で『———』から『▶︎△◀︎▶︎△◀︎』に変更した詳細な理由としては、当小説だと、不意に昔を思い出した時や心の中で核心をついた時に『—』を繋げて使用して表現します。

(例)不意に昔を思い出した。
—アルス、森へ行きましょう!

(例)心の中で確信をついた
———それなら、全て無駄だったということか……?

この表現だと、
———
〜 〇〇視点 〜

は分かりづらいかなと感じましたので変更しました。申し訳ありませんがご容赦下さい。

そして本編についてです。
今回はエルドリエの訪問と、アルスが自分の信念を語る話でした。
ユージオのユーちゃん呼びや、アルスの( ˙-˙ )は何となく入れてみたネタです。やってみたかったんです!

余談ですが、皆さんは『—』と(ー)と《一》の区別がつきますか?実は左から『よこぼう』、(伸ばし棒)、《漢数字の1》なのですが……わかりづらいですよねぇ?

それでは閲覧ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!

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