SAO 〜無型の剣聖〜   作:mogami

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61話 暗黒界の騎士

剣戟が鳴り響く中で、アルスとアリスはゴブリン達亜人と対峙している。衛士達もゴブリンなどと対峙しているが、こちらの2人は衛士や亜人達のそれとは比べ物にならない程の力を見せていた。

 

「アリス、前方40メル先に増援が来た!」

 

「了解!そちらに怪我人がいるようです、あなたはそちらの治療をしてあげてください!」

 

「おう!」

 

戦闘力の凄まじさもそうだが、連携が凄い。アルスが索敵しながら援護、アリスがアルスを守りながら壁役をしている。アタッカーとサポーター。2人でどちらも担う事が出来るが故にこの2人の連携が乱れることはない。

 

「はぁぁぁーーっ!!」

 

アリスは先の反乱以降地道な反復練習を積み重ねて身につけた心意の力で自身の動きをブーストしながら整合騎士達の中でもトップクラスの剣技を放ち、ゴブリン達の刃をへし折って行く。

 

一方、アルスは傷付き倒れた衛士達を無詠唱で発動させた神聖術で治し、剣を振るえない彼にとっては十八番とも言える心意で亜人達を無力化していた。

 

「な、に……!?」

 

だが、アルスの心意が光を発し、不可視であるはずのその力を亜人達の脳裏に刻み付けていたのだ。

アルスの心意が光を宿す事はこれまでも何度かあった。だが、それはあくまでもぼんやりとした朧げな物だった。しかし、今の彼の心意はどうだろう。眩いとまでは行かずともはっきりとした光を放っていたのだ。

 

ゴブリン達はその光を放つ力に抗う術を持っていなかった。1人、2人と彼の生み出した光の斬撃によって確実に命を刈り取られて行く。その心意の斬撃の鋭さは嘗ての彼が整合騎士と化した際にチュデルキンを殺害した瞬間の心意をも超えている様に見える。

 

「・・・・」

 

彼はそんな自分自身の変化に戸惑っていた。調子が良いとはまさにこの事だろう。アルスは紅の騎士と黒の剣士の決闘を夢で見て、目が覚めてからは自分の中から何が湧き上がる感覚を感じていた。何が湧き出て、それが地道に溢れ出て行く様な力の流れ。それらの感覚がプラスの方向に働いた結果、今の心意があるのだろう。

 

「アルス、粗方殲滅は終わりました。後は………」

 

「ああ、この矢鱈と強い心意の持ち主を確認する事しか残ってないな」

 

キリト達と別れる前から感じていた鋭く、ピリピリとした肌を突き刺す様な心意。無論、アルスが発しているわけではない。だが、答えはある程度出ている。この心意の持ち主こそが"ゴブリンを率いていた何者か"なのだろう。

 

アルスとアリスは走り出す。剣戟はもう鳴り止んでいた。それが衛士が全滅した可能性がある事を主張している。

2人が走った先には先程まで村人達が集まっていた広場よりも少し狭いスペースが広がっており、無数の衛士達が折れた剣と共に倒れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———そして、その景色の中に"ソレ"は居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

その中心で佇む黒い騎士。

騎士が握っているのは血の様に真っ赤な水晶質の片手剣。その身を包んでいる漆黒の鎧。背中で靡く真紅のマント。そして、腰に挿している一本の鞘ともう一本の黒い剣。

 

アルスはその立ち姿を視認した瞬間、言い知れぬ感情を覚えた。背筋が凍てつくような、嫌な汗が吹き出して、毛穴が開く感覚。

 

きっと、側から見たら歴戦の騎士。そのように見えていただろう。事実、アルスもアリスも息を飲んでいる。だが、2人の視線はかの騎士が握る剣に注がれている。

 

柄を含めて全体的に剣十字の様な形で、赤い色の皮仕立ての柄、ナックルガードは左右に出ており、先端は西洋剣の切っ先の様に鋭い。

 

 

 

似過ぎてる。

アルスは自分の手に握る刀身の半ばを失った黒藍の死剣と背中の勝利の白剣をみる。

 

………あまりにも、アルスの剣に似過ぎていた。

 

「っ!?」

 

アルスが息を吐き出そうとした瞬間、背中の勝利の白剣が1人でに鞘から飛び出し、アルスの手に収まると同時に佇む黒騎士目掛けてアルスの身体が飛び出す。だが、それは彼の意思ではない。何故ならアルスは剣を誰かに向けて振るう事ができないからだ。現在進行系でアルスは黒騎士に目掛けて剣を振り下ろそうとしている。

 

「………!」

 

黒騎士はそれに反応したのか、その赤い剣で勝利の白剣を受け止める。ギィィィ!っと剣が軋む金属音を上げながら火花を散らす。

 

「その剣は………」

 

かの騎士は自分に向けて刃を向けてきた男とその人物が握る白い剣と折れた黒い藍色の剣を見て反応を示す。きっと、騎士の兜が顔を全体的に覆うタイプのもので無ければ目を丸くしている表情がはっきりと見えたのだろう。

 

「くそっ、何なんだ一体!?」

 

アルスはアルスで自分の妙な感覚に違和感を覚える。黒騎士に斬りかかった瞬間、彼の身体の主導権は彼には無かった。まるで、外から自分を操られているかのように身体が勝手に動き、勝利の白剣を振り下ろしていたのだ。

 

そして、それを見ていたアリスは1つの共通点を見出す。アルスが斬りかかった瞬間、黒騎士は気付いていなかった。 アリス程になれば相手の体に力がこもっているかは動きで分かる。咄嗟の奇襲に反応したのならば僅かにでも体に力がこもる筈、それなのに騎士の体には力みが無かった。そもそも、アルスの奇襲はアリスにすら視認できない程の速度だったのだ。どんなに手練れでも力まずに反応する事は不可能だ。そして、騎士が体に力を入れたのは明らかに勝利の白剣を受け止めた直後。

 

「「………」」

 

距離を取ってお互いに刃を向ける1人の騎士と剣士をアリスは見つめる。

 

・・・さっき、勝利の白剣を受け止めた黒騎士は身体よりも先に赤剣を握るその右手が動いていた。

 

——まるで、勝利の白剣に反応したかのように。

 

アルスが勝利の白剣に導かれるように斬りかかったように、騎士もまた赤剣に導かれているようにアリスには見えていたのだ。彼女の考察を裏付けるような2人の剣はそれぞれカタカタと音を鳴らしながら震えている。まるで、お互いに反応しているかのように。

 

アルスと黒騎士は無言で対峙する。アルスは剣を振るえない事をまるで忘れているかのように相手を心意のこもった目で睨みつけていた。その双眸は、アリス達と共に戦った剣士と同じ光を放っている。

 

「………っ!!」

 

そして、アルスが静寂を破るように騎士との距離を詰める。その速度は尋常ではなく、彼が今行ったのが踏み込みなんて生易しいものではない事がアリスの感覚に伝わる。

 

「はぁっ!」

 

短い気合いと共に剣が振り下ろされる。

黒騎士はそれを受け止めるが、アルスの剣を受け止めると同時に黒騎士の身体が押し込まれ、地面に小さなクレーターができる。

 

「……たぁっ!」

 

逆に切り返した騎士に今度はアルスが勢い良く剣ごと弾き飛ばされる。宙で数回転し、着地すると同時にアルスはもう一度距離を詰める。剣士と騎士は斬り結ぶ。白剣と赤剣が衝突するたびに爆発に近い衝撃と形容し難い金属が鳴り響くが、アリスはアルスの動きを見て彼がまだ、完全に剣を振るう事を克服できていないことに気付く。

 

常人には見えない程の速度で衝突する剣士と騎士の戦いは側から見ると拮抗しているように見える。だが、騎士は明らかに相手の力量を測りながらただ受けているだけ。剣士は速度と力に任せて剣を振り回しているだけに過ぎない事はこの速度を目視できる者達には一目瞭然だった。

 

アルスの剣が決して鈍い訳ではない。だが、数秒前までは剣を振り下ろす事も出来ない状態で、尚且つ剣技に関する知識も経験も忘れている状態である事に変わりない。体に染み付いた感覚が素人には真似できない体術を無意識的に行使してはいるが、本人はそれに無自覚で付け焼き刃の太刀筋であることは鬼神の如き戦いを繰り広げた彼を知っているアリスの目には明らかだった。

 

だが、アリスがその戦いに介入する余地はない。

この2人の速度はアリスが長年の感と経験、天才的な才能を持ってしてもなんとか追う事ができるレベル。つまり、参加しても身体が追いつかないのだ。だから、せめてもの保険として金木犀の剣をいつでも開放できるように詠唱を完了させている。

 

「あぁぁぁぁーーッ!!!」

 

アルスの雄叫びが木霊し、勝利の白剣にははっきりと青に近い緑の光が宿る。この世界で剣に光が宿る事は基本的に奥義……ソードスキルを使った際しかない。だが、アルスの斬撃は奥義のそれとは違うふつうの太刀筋。アリスはその光が心意によるものだと思い至ったが、彼女はそれを否定したい気持ちを抑え込む事で手一杯だった。

 

アリスも、キリトもユージオも心意なら使える。その他に心意が使える強者の代表格はやはり整合騎士長ベルクーリだろう。そんなベルクーリを師と仰いだ彼女だが、彼の心意が光を放つ光景は見た事がない。一方、アルスの心意が光を放つ事は何度かあったのである程度は耐性が付いていたつもりなのだが、それが剣に宿るとまでは予測できなかったのだ。

 

「………」

 

「うぐっ!?」

 

一方で、黒騎士はその光景を見て、無言でその剣を横に薙ぎ、アルスの剣をその手から弾き飛ばした。

 

「なんだ……この違和感は……この手応えの無さはなんだ?」

 

兜の中から聞こえる困惑の声。

アルスの速度に対応し、最高権限を持つ彼の太刀を受け切った騎士はダークテリトリーの中でも有数の権限所持者で、猛者である事は間違いない。故に、この騎士もアリスと同じ思考に至っていたのだ。

 

騎士からしてみれば、突如として斬りかかってきた自分の剣と似た剣を握った謎の男。それも自分に匹敵する速力と剣に光を宿す程の心意の使い手。自分を押し込む程の権限所持者、そんな異常とも言える存在の剣技はただ剣を振り回しているような印象しか受けない。困惑するのも当然だろう。

 

「貴殿の名は何という?」

 

単純に興味を惹かれたのか名を尋ねた。

アルスは目の前の騎士の声が若い青年の物である事に気付き、ダークテリトリーの騎士に人間がいるのか?と疑問を抱くが、少しでも情報を引き出せればと考え、名乗る。

 

「……アルスだ」

 

「そうか、覚えておくとしよう……」

 

だが、アルスの考えは外れた。

 

「疑問は尽きぬが……その力は危険だ」

 

黒き騎士はアルスに向けて再びその赤剣を向ける。勝利の白剣を弾き飛ばされたアルスに残っているのは刀身のない黒藍の死剣のみ。絶体絶命。そんな言葉がアルスの脳裏をよぎった瞬間。

 

「咲け、青薔薇っ!!」

 

騎士の足下には青い氷の薔薇が咲き乱れ。

 

「旋れ、花たちッ!!」

 

黄金の花弁が黒騎士目掛けて遅い掛かる。

 

アルスはその先に地面を蹴り、騎士から距離を取る。その間にも青薔薇に拘束され、黄金の花弁は嵐となり、騎士を呑み飲む。

 

……だが、その嵐の中から、勇ましい金属が轟続けている。

 

「……この程度か」

 

そして、中から無傷の黒騎士が姿を見せる。その事実に攻撃を仕掛けた2人も、間近で見ていたアルスも驚愕する。なぜなら、空間リソースの消費も、心意の力すら一切感じなかったのだ。つまり、目の前の騎士はいつの間にか援護に来ていたユージオとアルスを守る為にありったけの心意を込めたアリスの記憶解放を技量だけで防ぎきった事になる。

 

「だが、流石に4人を相手にするのは骨が折れる……一旦引くとしよう」

 

4人?とアルスが疑問を感じた瞬間に凄まじい心意がその場を支配している事にアルスは気付く。

 

「貴殿に名乗っておこう、私の名は———」

 

「エンハンス・アーマメントッ!!!」

 

騎士の声が漆黒の巨槍の軍進の音でかき消され、代わりにアルスの聞き見知った声が響く。

黒の騎士は巨槍に呑まれる寸前で姿を消した。

 

「アルス、無事かっ!?」

 

代わりに自分に駆け寄ってくる自身の半身の姿をアルスは捉えた。一見すると大規模な攻撃を避ける為に撤退したように見えたかもしれない。だが、あの黒騎士の持っていた剣が自分の持つ愛剣と同じ能力を持っていたのだとしたら、自分達は殺されていた。その考えがアルスにかの騎士は逃げたのではなく、自分達を逃してくれたのだと言う思考に至らせた。

 

「アルス、アルス!?」

 

「———レクス」

 

肩を掴んで安否を確認してくるキリトやユージオ、アリスの事が頭の片隅に追いやられ、アルスの中には先ほどの騎士の言葉がぐるぐると回っていた。彼には聞こえていたのだ。巨槍に遮られる直前に言い終えていた騎士の言葉が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴殿に名乗っておこう、私の名は———レクス。貴殿と再び見える時を楽しみにしているぞ』

 

この言葉が、再び剣を振るう事が出来るようになった事を喜ぶ暇すらアルスに与えることを許さず、代わりに、もっと強くならねばならないと覚悟を新たにさせた。

 




後書き

はーい、アルスの目の前に強敵が現れてしまいましたねぇ……。以前にちらっと出た四頭の《原初の馬》。その伏線を回収できたでしょうか!?気になる方は『上級修剣士生活編』をよろしくお願いします!



⚠︎以下、ネタバレ的コメントあり。見たくない方は飛ばしてね!



まあ、露骨な宣伝したところで、この黒騎士レクスを登場させた大まかな理由としては……うん、SAOの主人公はキリトなんですよね。なのでアンダーワールドのラスボスはやはりキリトに倒して欲しいと言うのが1ファンとしての欲求と言いますかなんと言いますか……。分かって頂けますか、この気持ち。
でも、『無型の剣聖』という二次創作としてはオリ主にもラスボスを作りたいと言うのが複雑な投稿主心と言いますかなんと言いますか……。なので、そう言った役目をやらせる為に登場させました。

……ぶっちゃけネタバレ感のある後書きになってしまいましたが、本編でユージオとアリスの記憶解放を剣だけで弾き飛ばしたりと初登場から色々とやらかしてしまっているので『ラスボス感すげぇなコイツ』とか思ったあなたは大正解です。

という事で閲覧ありがとうございました!
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