昨日のアレは凄かったな。
確か青薔薇の剣だったか?途轍もなく重かった。
ユージオですら持ち上げる事が難しいなら俺にはシンドイな。
「アルス!大変だ!」
「ん?どーしたキリト」
キリトが慌てていたのでまたユージオをからかったかセルカに怒られたのかと思ったら……
「セルカが居なくなった!」
「なんだと!?」
どうやら俺が想像していたよりもヤバイ事態らしい。
「とりあえず、ユージオに報告して行きそうな場所をきくぞ!」
——
セルカが向った先…それは彼女の姉でユージオの幼馴染の"アリス"と言う少女が連れ去られる原因となった"果ての山脈"の可能性が高いらしい。
「システム・コール!リット・スモール・ロッド!」
ユージオの持っていた猫じゃらしが淡い光を放つ。
「「システム・コールだぁ!?」」
キリトとハモった。この世界はどうなってるんだ?
「ゆ、ユージオ……いまのは?」
キリトが恐る恐る尋ねるとユージオは何処か得意げな顔で答えた。
「神聖術だよ、凄く簡単な奴だけどね、一昨年、《青薔薇の剣》を取りに行くと決めた時に、一生懸命練習したんだ」
神聖術……ユージオはシステムとか、リットとかの意味はないと思っている様だ。恐らく、この世界の魔法のようなもんだろう。
キリトどこかわくわくした様にユージオに尋ねている。
……このゲーマーめ!
そんなこんなで果ての山脈の入り口に着いたのだが……
「なぁ、本当にセルカがここを通ったのか?」
「ああ。俺もキリトと同じ意見だ……」
目の前に広がる洞窟の入り口を見て嫌気がさす。
洞窟外に露出している岩は湿っており、それがうねりながら奥まで延びている。
「あっ…」
足下に水の感触がしたので見てみると足跡が続いている。
「当たりだな」
「見たいだな」
なんと言うかこういう感ばかりは当たるな。
「この奥にセルカが?」
「いるだろうな……」
とその時、洞窟の奥から悲鳴が聞こえて来た。
「急ぐぞ!」
「ああ!」
「2人とも待って!」
キリトの後に続いて走り出した。その後にユージオが続く。……何故だろう。
—遠い昔……似た様な事があった気がする。あの時……俺やキリト、ユージオが追い掛けていたあの子は……誰だったのだろうか……—
——
「何か武器になる物があればな……」
無い物ねだりしてもしょうがない。どーするかな。
「なあ、アレって……ゴブリンだよな?」
キリトが指さした先には軽く30を超える数の人型の怪物……SAOやらで散々戦ったゴブリンがいた。
たが、今までのゴブリンと違う所がある。
奴らの眼からは悪意が見て取れる。
「おい、見ろや!今日はどうなってんだぁ?また白イウムの餓鬼が3匹も転がりこんできたぜぇ!」
どうやら気づかれたらしい。
「どうする?奴ら、俺たちに気づいたみたいだぞ?」
「2人とも、俺が3つ数えたらあいつらに体当たりして体勢を崩させるぞ」
キリトが指示をする。相変わらず無茶な事をする。
だが、この状況だ。それ以外に道は無いな。
「1、2、3……今だ!」
「「うぉぉおおおお!!」」
俺とキリトが体当たりを食らわせるのと少し遅れて「うわぁぁぁぁあ!!」と悲鳴地味だ叫び声が聞こえて来た。
「なんだこいつら!?」
体当たりをした俺たちを見て、周りのゴブリンたちが動揺する。その奥に、怯えるセルカがいた。
「ユージオ、この刀は斧と同じ様に扱える筈だ!」
キリトがゴブリン達から武器を奪い取り、曲刀をユージオに渡して自分は直剣を構えた。一方俺も奪い取った直剣を構える。
「き……キリトとアルスは?」
「「俺たちは奴らを倒す!!」」
本当に俺たちの思考は似通っている。
「行くぞ、キリト……死ぬなよ?」
「ああ!そっちこそな!」
俺たちは互いに頷いてキリトは親玉ぽい奴に俺は他の軍団に向かって突進する。
「はははは!白イウムの餓鬼が向かって来るぜ!」
「いいぞいいぞ!抵抗しない玩具なんてつまらねぇからな!」
そんな発言をしているゴブリン達を見ながら自分の手の中にある直剣を見る。
所々が錆びていて、この世界の俺のステータスが低いからか重く感じる。だが、アインクラッドでの俺の愛剣達に比べるとどうしようも無いくらい軽い。
(もうあの愛剣達を振るう事は無いんだろうな……)
なんて事を考えながら剣を振るう。
が、ゴブリンの装備を少し削る程度で止まる。
(チッ!しっかり研いでおけよ!!)
などと内心で持ち主に悪態をついた。
(やはり昨日、確認した《オブジェクト・コントロール権限》も関係しているのか?)
たしか俺とキリトの権限は38。因みに青薔薇の剣はクラス45。きっと青薔薇の剣を使えなかったのは権限が足りなかったからだろ。となると物を上手く扱えるかは権限も関係している筈だ。
「うぉぉおおおお!!やっちまぇぇぇ!!」
ゴブリンの1匹が曲刀を構えて切り掛かってくる。
「負けてたまるかぁぁぁぁ!!」
俺は死にたく無い。なので俺は剣を振るった。
かつて俺が生まれた世界での剣術を再現して。
だが、それは思わぬ形で現れた。
体が自然と動き、剣には薄っすらと光が宿る。
……それは紛れもなく、片手剣用
「………」
俺の放ったホリゾンタルは向かって来たゴブリンの首を切り落とした。
キリトを見ると向こうもSSを使っている。……この世界でSSが使える理由については後で考えるとしよう。
「この餓鬼ぃぃぃぃい!!」
「まずは目の前のお前らを倒してからだ!!」
俺は剣を振るった。昨日のユージオの手伝いでの筋肉痛などを鑑みるにこの世界にはペインアブソーバー……つまり痛覚抑制が存在しない。それは怪我をしたらその痛みが直接襲い掛かってくるという事である。
まあ、剣士が怪我を恐れてどうするっての!
ゴブリンを1匹、また1匹と倒していく。1匹を倒すたびに剣が軽くなっていくのを感じる。
「キリト!やられたのか!?」
ユージオの声が聞こえ、振り向くとキリトが肩から血を流し、地に伏していた。
「キリト!!」
走って駆け寄ろうとするが、ゴブリン達に邪魔されて近づけない。
「どけぇぇぇええ!!」
片手剣SS、ソニックリープでゴブリンの達を斬る。
「やめろぉぉぉぉ!!」
俺がゴブリンを斬っている間にユージオもやられたらしく、キリトの隣に倒れている。
その2人に追い打ちを掛けようとする親玉の蛮刀を片手剣SS、バーチカルを使って弾き、ユージオ達に駆け寄る。
「ユージオ…もういい……もう……」
キリトは立ち上がろうとするユージオに声を掛けていた。
親玉は余裕の表情で歩いている。
そんな中でユージオは焦点を失いかけた瞳で俺とキリトを見て、鮮血に濡れた言葉が流れた。
「こ……子供の頃……約束したろ……。僕とキリト、アルスに——アリスは生まれた日も死ぬ日も一緒……今度こそ……守るんだ……僕が……」
それだけ言うとユージオは気を失った。
—「ああ!アルス!それ、俺が狙ってたのに!」
「へん!早い者勝ちだよーだ!」
「もう!キリトもアルスも喧嘩しないの!」
「でも本当に美味しいよ、アリス」—
唐突に景色が流れてきた。
藍色の髪の少年と漆黒の髪の少年、亜麻色の髪の少年と金色の髪の少女が共に笑い合っていた。
……そうだ。変わるものなど無いと、4人、いつも一緒で笑い合えると信じていた。なのに俺は守れなかった……弱くて、何もできなかった。あの絶望、無力感を忘れるものか……もう2度と……繰り返させやしない!!
「ぐるぁらっ……」
立ち上がると同時にキリトと共にタックルをする。
「相棒、そいつは任せたぞ」
「ああ!向こうの大群は任せたぜ、相棒!」
キリトは親玉に、俺は大群に向かって突進した。
「俺たちがイウムの餓鬼共に負けるものかぁぁぁあ!!」
ゴブリン達のうちの誰かがそう言った。
「「違う!俺たちは《イウム》なんて名前じゃない!俺は剣士《キリト》/《アルス》だ!!」」
俺たちはSSを使ってゴブリンを切り殺した。それでゴブリン達は全滅した。
「キリト!ユージオの天命がかなりのペースで減っている!」
「くそ!ユージオ、しっかりしろ!……ダメだ。意識が無い……セルカ!頼む、起きてくれ!」
「いやぁぁぁぁあ!!!」
セルカは完全に怯えている。
「セルカ!俺達だ!キリトにアルスだ!大丈夫!ゴブリンはもういない!頼む!これじゃあユージオが死んでしまうっ!」
「キリト……アルス…!?」
混乱していたセルカは元に戻ったようだが、即座に泣き崩れた。
「泣き崩れるのは後にしてくれ!ユージオが死んでしまう!」
「無理よ……私は姉様程、優秀じゃ無いもの……」
キリトがセルカを説得しようとするが塞ぎこみそうになる。
「今、この場にはアリスはいない!あの日、俺たちの眼の前で連れて行かれてしまったからだ!だが、お前はアリスの代わりに教会を継ぐんだろ!?1人で駄目なら俺もキリトも力を貸す!だから今!君にできる事をしてくれ!」
俺もセルカに声をかける……いや、勝手な事を言っているだけかもしれない。
「アルス……分かったわ。2人の力を借りるわよ、失敗したら私達みんな死ぬ事になるかもしれないから覚悟してね!」
だが、セルカは俺たちの声を聞き入れてくれた。
「「その時は死ぬのは俺だけにしてくれ」」
なんてキリトとハモった。
セルカが答えてくれたなら俺たちのもセルカに全力で力を貸すだけだ!!
セルカに言うわれるがままに天命をユージオに分ける。
「き、キリト……アル、ス……大丈夫?」
「俺たちはまだ大丈夫だ……だから俺たちの天命をもっと分けてやってくれ……」
例え俺たちが消えたとしても自分の眼でゴブリンを見、剣を握って戦ったユージオなら村長に伝えて周りを助ける筈だ。
彼ならきっとそうする。なら、ここでユージオを死なせる訳にはいかない。きっと、キリトも同じ事を思っているだろう。
視界が滲む。
感覚が無くなっていく。
「……もう、駄目……これ以上はアルスとキリトが死んじゃう……」
妙に周りが暗く、孤独感が溢れている。
……これが"死"か……?
(AIでしかない俺でも感じ取ることができるんだな)
いよいよ意識を手放しそうになった時、不意に暖かい感覚があった。
『待ってるわ……』
目の前に何かが見える。とても懐かしい感じのする誰かがいる。誰かの手が触れる。……この感触を俺は知っている。
(君は……いったい……誰なんだ?)
声になら無い声で尋ねる。
いや、尋ねることすらできてなかったかもしれない。でも、"彼女"の声が聞こえた。耳元で、泣きたくなるくらいに懐かしい、優しい声が聞こえた。
『アルス、キリト、ユージオ………待ってるわ、いつまでも……セントラル・カセドラルのてっぺんで、あなた達が来るのをずっと待ってる……』
声が途絶えると体に暖かい、黄金色の光が体の中に流れる。行き場を失った光の奔流は手から流れ出ていた。
(懐かしい……今の声は、誰のものだったのだろう………)
それが意識を失う前の最後の思考内容だった。
初の戦闘描写となりました。
何度か書き直して妥協できる感じに仕上げました。
戦闘描写って難しいですね、これからも頑張って行きます!
閲覧ありがとうございました!