はい、前書きです!
実は後書きに今後の方針についてまとめたコメントを載せさせていただきました。実は前から発表すべきと思っていたのでこれを機に作品方針を決定いたします。
恐らくご期待に添えない形になってしまう事をこの場で謝罪させて頂きます。
あの後、軽い会議の様なものがあり、俺たちはそれに参加した。最初は奇異の目を向けられていた俺やキリト、ユージオだったが、先ほどの軍勢を攻撃したのが俺だとアリスから説明があるや否や周囲の態度が激変した。
「手のひら返すってのはこういう事か」
整合騎士達は言うほど急な態度の変化を見せるものは居ない……と言うか、殺意剥き出しな奴はほぼいなかった。ベルクーリの言葉のお陰だろう。
だが、術者連中の態度の変わりようが凄まじかった。実はここに来た時に色々と言ってやがったのがこの術者連中だった。『反逆者——』、『何しに来た——』、『ダークテリトリー云々』……。あの罵詈雑言の嵐を浴びせてきた奴らだったが、亜人達の殲滅は俺の神聖術であると知った途端に崇めてきた。
連中があまりにもしつこかったもんだから、その辺の木の枝をロープに変換して縛り上げて逃げて来たのだ。
『非礼の数々をお許し下さい』から始まり、最終的には『あなた様のその御業の数々を我らにお教え下さいッ!!』と弟子入り希望までして来たのだ。丁重にお断りしてきましたが。
「くそ……僕はどうしてこうなんだ……」
「・・・ん?」
ベルクーリとの約束の刻限まで時間があるので周囲の状況を確認すべく散策していた所、どこかで聞き覚えのある声によく似た声を聞いた。
一瞬、ユージオかな?と思いはしたが、伝わってくる心意の感じからして彼でない事だけは分かる。
少しだけ歩を進めると、1人の少年が目に移った。
薄いピンクがかった髪の少年が、どこか飛び道具の様な刃物……たぶん、ブーメランとかそう言う種類の武器だろう。それも神器である可能性が高い。
彼はその神器を握ったままで膝をつき、呼吸が乱れている。
周囲の木々が傷ついてる事から、たぶんここで訓練でもしていたのだろうが、様子がおかしい。
「いつまでも自分の神器を使いこなせないなんて……やっぱり僕は失敗作なんだ……」
彼の独白は続く。
「戦う事が怖くて仕方ない。武器すらロクに扱えない。……記憶の解放も出来ない……。どうして、こんな僕が整合騎士なんだ」
「分かる……分かるぞ、その気持ち」
どこかで覚えのあるその悩みに思わず同調して飛び出してしまう。というか、聞き覚えのあるなんてレベルじゃなく、少し前まで俺が悩んでいたものだったり、現在進行形で頭を抱えているレベルの物もあった。
「わあっ!!?」
そんなに驚かなくても……。
1人だと思ってつぶやいていたのに聞かれていたら驚くか。
うん、ごめんなさい。
「すまん、身に覚えのある呟きだったから思わず飛び出してしまったんだ。驚かせるつもりは無かった。すまない」
「・・・貴方は確か……アルスさん、ですよね」
「あれ、俺の事知ってるの……って、そうか。寧ろ知らない方がおかしいのかな?この場所では」
ついルーリッドにいた感覚で話してしまう。その辺の意識をどうにかしないとな。しかも相手は整合騎士。知らない方がおかしいんだ。
「僕はレンリ。レンリ・シンセシス・トゥエニセブン。整合騎士です」
「俺は……アルス。アルス・カーディナルだ」
一瞬、カーディナルを付けるべきか悩んだが、いずれは名乗る必要が出てきそうなので最初に名乗っておくことにした。
まあ、問題ないだろう。
「それで……アルスさんは何故ここに?」
「いやぁ、あまりにもやる事ないし、ぶらぶらしてたらここに着いて」
「僕の独り言を聞かれてしまったと」
「はい、その通りです。ごめんなさい」
それに関しては謝るしかない。
いくら身に覚えがあったとはいえ、他人の独り言を盗みがいてしまったわけだからな。
こんな事ならキリトやユージオ、アリス監修の下で奥義を思い出すべく剣を振っていた方が良かったか?
「いえ、気にしないでください。僕も警戒不足でしたし……、はぁ。やっぱり僕が整合騎士だなんてやっぱり間違ってる」
さっきから聞いていて何となく思った。
彼は自信がないだけなのではなかろうか。そりゃ、自分の神器を扱えないなら落ち込むし、悩むだろう。現に俺も同じ状況だ。
「すまん、さっきの独り言を聞いていて、何となく他人に思えなかったんだ」
「さっきも言ってましたね、それ。貴方に何が分かるんですか。その強大な力で最高司祭を打ち砕いた貴方が」
……忘れてた。彼らにとって俺は反逆者アルスであって、ベルクーリやアリスの保護下にあるだけの存在に過ぎないんだった。勿論、俺の記憶がないなんて事は預かり知らない訳で……。
「生憎だが、俺はあの戦いで力の大半……自分の神器の扱い方と剣の技を無くしてしまったよ」
取り敢えず、現状を話そう。
なんか、どことなくユージオに似てて嘘がつけないというか、それに罪悪感を覚えるというか……無垢な子供に嘘つく感じがして居た堪れないので、記憶がないことを伏せて説明した。
「俺の神器は座標を操る能力があった。それを用いて斬撃を遠くに送ったり、数万、数億倍に増幅させたり、瞬間移動したりもできたんだ」
ま、俺は覚えてないからキリト達から聞いた言葉をそのままコピペしただけなんだけどな。自分に身に覚えのないことを自分の事のように(本当に自分の事なのだが)語るのはつかれる。
「なんですか、能力を使えない僕への当てつけですか」
「そう思うのならそう思ってろ。取り敢えず、俺はその能力を無くしてしまったんだ」
「何故ですか?」
「知らん。俺が聞きたいくらいだ、だが、ひとまず言えるのは今の俺はアドミニストレータへ反逆した時よりも確実に弱いと言う事だ。かつて扱えた神器の能力も、半神人が如き存在と渡り合った剣技も無くした」
今言うべきではないだろうが、コイツ。斜に構えすぎてるというか、スレすぎじゃなかろうか。
「なら何故、貴方はここに来たのですか」
「失くしたものを取り戻す為。仲間達と共にある為だ」
「死ぬかも知れないのに?貴方言ってましたよね。弱体化してるって、それでは死にに来るような物じゃないですか」
「たしかにいう通りだ、だがな、俺の恩人が言ってたんだ」
最果ての洞窟で出会った堕天使。白い鬼、彼の言った言葉。
「剣を握るのは理由、剣を振るのは覚悟。俺は今の浮ついた覚悟を確かな物にしたい。その為にこの戦場に来たんだ。んで、その第一段階として、失くしたものを取り戻し、仲間達と共に在りたいと言う理由を見出したわけだ」
俺の言いたいこと、伝わってるだろうか?
……噛み砕いて言うか。
「俺は簡単に言うとキッカケを得る為にここに来たんだよ、本来の自分に戻るためのキッカケをな」
「キッカケ……?」
「そうだ、お前は戦いが怖くて、神器が扱えない自分にある種の劣等感を感じてる。違うか?」
「……違いありません」
レンリがうな垂れた。
まあ、赤の他人にここまで言われれば凹むか。
「多分、お前が神器を扱えないのはその劣等感の所為なんだよ。神器にだって意思はあるんだ、どうせ自分なんかとか自分を卑下しまくる主人に騎士として使えたいと思うか?」
「思いません」
……なんだろう。自分の発言が何気にブーメランとなって自分に刺さってる気がする。
「だったら今回の戦いでキッカケを見出せばいい。お前に戦う理由がないならこじつければ良い。"自分は整合騎士だ、だから人界を守る為に戦う"ってな。それだけでもだいぶ変わると思うぜ?」
現に、剣を振れないがどうこう言ってた俺は恐怖しんから死にたくないと思った事で剣が振れるようになったんだ。これだけでもキッカケの重要さは証明されているだろう。
まあ、その過程を目の前の彼が知る由も無いので彼に対して証明する事は不可能だが。
「キッカケ………か」
「お、なんか前向きな悩み方だな?」
うな垂れていた様子から天を見上げるような体勢になったレンリの表情はそれまで見せていた自虐的なものでは無くなっていた。うん、これなら大丈夫かな?
「じゃ、そろそろ失礼するわ。神器、使えるようになると良いな」
「いえ、こちらこそ無礼をお詫びします。アルスさんも失くしたもの、取り戻せることを祈ってます」
そんな声を背中で聞きながら、俺、何か彼に無礼なことされたっけ?と疑問に思いながら右手を上げて声に応え、その場を後にした。
……内心、俺の方が無礼な気がしていたのは内緒である。
▶︎△◀︎▶︎△◀︎
〜 数分後 〜
レンリと別れた数分後、再び術者連中に追われていた。
全力で走りたいのは山々なのだが、俺の身体能力と権限の高さから推測するに、全力疾走しようものならその辺の義勇兵の皆さんが一瞬で挽肉になってしまう可能性すらありえる。なので全力で逃げたいのに全力で手を抜いて走っていると言う奇妙な状態で俺は逃げていた。
「きやっ!?」
「あ、悪い!」
柄にもなくあっちこっちに心意を張って術者を警戒する余りに自分の周囲に対する注意力が緩慢になっていたか。
角道でぶつかってしまった焦げ茶色の髪の女の子が転びかけてしまったので慌てて手を伸ばしてそれを阻止する。
見たところ怪我もなく、天命の減少は見受けられないが、一応聞くのが礼儀か。
「怪我とかはないか?」
「………!」
目の前の少女と目が合う。
……この気持ちはなんだろう。キリト達から感じる懐かしさと同質の何かを感じる。
「もう、前を見ないからそうなるなよ………って、え?」
今度は髪を真紅に染めた少女が現れた。
こちらの子も何故か目があった途端に同じ感じがした。
「「………」」
2人の視線を浴びながら、考える。
ひょっとして自分はこの娘達と会ったことがあるんじゃないだろうか。
「あ、あのっ『きゅるるー!』えっ!?」
焦げ茶の子が何か口を開き変えた時、どこからともなく月咬が俺の胸元に飛び込んで来た。
「……お前、いつの間に飛べるようになったんだよ!?」
『きゅる!きゅ、きゅるるー!!』
俺のツッコミを無視した月咬が慌て気味に説明してくれた。人語に直すと、『そろそろ時間だから迎えにきたんだよっ!』の意である。俺は太陽を見る。……やばい、沈んでやがる。このままじゃ、ベルクーリ達との約束に間に合わないか。
「すまない!時間がなくなっちまった、また会えた時に謝るから、今は勘弁してください!!」
月咬を抱えたままで2人に頭を下げてその場を後にする。
「あ、あの先輩っ!!」
「追うわよロニエ、やっと会えたんだからっ!」
2人が自分の後を追っている事に気付かずに。
後書き
はいっ、戦争開戦少し前のお話ですね。
今回はレンリくんと謎の少女2人組(すッとぼけ)が登場しました。
アルスが術者達に弟子入りを懇願されているシーンを一部の方に分かりやすく説明するなら、『オーバーロード』に登場する、アインズ様(モモン)に弟子入りを懇願するフールーダの構図を思い浮かべて頂けると分かりやすいかと思います。……まあ、フールーダ的な奴らに囲まれて懇願されたとなるとアルス出なくても逃げ出したくなりますよねぇ……。
最後になりましたが、この前。『全体的に雰囲気が軽く、主人公にただついていっているだけの様に感じる』とコメント頂きましたが、すみません、それが私のスタンスです。変えるつもりはありません。もともとアリシゼーション編は濃厚な話が多いのでそういう話を期待される方もいらっしゃるかも知れませんが、私にはそれを再現するだけの文才はありません。
なぜ、こんな事を言うのかと言いますと、今後のネタバレになってしまうのですが、原作で様々な視点で描かれる戦闘や心理描写を作品ではカットしようと思っているからです。
先程申した通り、原作でもアリシゼーション編は濃厚です。濃厚すぎてそう言う描写1つ1つを書くとなると……絶対に完結できないと思ったからです。
今後の方針としては、細かい描写や別視点での戦闘(シェータvsイスカーン戦など)をカットさせて頂きます。
当作品の雰囲気を改善しようとして下さった方、原作の様に細かい描写を期待して下さっていた方。ご期待に添え申し訳ありません。
こんな身勝手な私ですが、お許し頂けるのであればどうか完結までお付き合い下さい。
閲覧ありがとうございました!