ネタが降臨なされてます!
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あー……大乱闘!ゴブリンブラザーズ事件(キリト命名)から2日経った。あの後は目を覚ましたユージオを担いでみんなで洞窟を出た。キリトはゴブリンの大将の首を片手にちゃっかりとゴブリン達の武器を回収していた。
村に戻ると割と大事になったらしく、捜索隊を編成しているところだった。そこに戻った俺達を見て……いや、正確にはキリトの手にあるゴブリンの首を見て悲鳴が上がったことで更に大事になった。……ちなみに、キリトが持って来た武器はユージオの倉庫にしまってある。
そして俺達は村の掟を破ったからどうこうと言う話が上がっていたが、ゴブリン隊討伐の功績により、無事に無罪放免で翌日の仕事は休みになったので一日中、泥のように眠っていた。
そんなこんなで2日経った今日。
いつも通りにユージオの仕事を手伝っていると、竜骨の斧が記憶にある物よりも軽くなっていた。
原因は俺達がRPG等で言うところのレベルアップしたという事だろう。というのが俺とキリトの見解だ。
現に俺たちの天命は前に確認した時と比べて格段に増えていて、
「なあ、ユージオ。お前は覚えているか?ゴブリンに切られた時にお前が言ったこと……」
「……覚えてるよ。ありえない筈なのに、あの時、あの日々、あの瞬間に僕とアリスの他に……君達がいた気がするんだ」
そして俺達の記憶だ。
俺やキリトはこの前、ユージオに出会った筈なのに、何故かずっと昔、まだまだ幼かった頃にここにいない少女……アリスと過ごしたような記憶があった。
………きっと、勘違いだろう。その証拠にあの時に脳裏に浮かんだ光景はもう既に失われつつある。
「ユージオ。洞窟で、セルカがお前に神聖術を使ったとき、誰かの声を聞いたか?」
「いいや、僕は全く意識が無かったから。キリトは何か聞いたのかい?」
「いや……気のせいだ、忘れてくれ——それより仕事をしないとな」
セルカがユージオに神聖術をかけているとき、どうしてか俺とキリトは同じ人影を見ていた。
あの人影の言葉が、「セントラル・カセドラルのてっぺんで待ってる」と言う言葉が頭から離れなかった。
——
午前中の3人合わせて千回の斧うちは普段より、45分も早く終わった。これも
OC権限が高くなったからだろう。全く疲労感が無い。
ユージオはやりきった様な顔をして早めのお昼にしようといつもの硬いパン……略して硬パンを放ってくる。
俺はそのパンを眺めながら
(このパンも柔らかくならないかなぁー)
と考えた。
「斧が軽くなった様にこのパンも柔らかくなればいいんだけどな」
……流石は相棒。俺とシンクロしてらっしゃる。
「あははは」
ユージオは愉快そうに笑ってパンを齧ってから肩を竦めた。
「……おんなじだね、残念ながら。それにしても……なんで急に斧を軽く感じることなったのかなぁ……?」
「さてなあ」
そう言うとキリトはパンを齧りながら何かを考え始めた。
俺は持ち前の早食いスキルでパンを食べ終えて、この前、ユージオが持って来てから放置されていた青薔薇の剣を握る。
「………ッ!」
感触は良好。以前の様に持つのが精一杯なんて事はなく、程よい重みを感じた。まるで、あの愛剣達を握っている様な感覚さえある。
「アルス……その剣が持てるのかい?」
「……やっぱり、そう言うことなんだよな」
ユージオは単純に驚き、キリトは納得した様な表情をしている。
「………シッ!」
俺は青薔薇の剣を鞘から引き抜き、片手剣SS "シャープネイル"を発動させる。
「アルス……今のは《剣術》かい?」
「ああ。……キリトお前もやってみろよ」
俺は剣を鞘に納め、パンを食べ終わって立ち上がっていたキリトに青薔薇の剣を手渡す。
キリトは剣を受け取り、一瞬の溜めを入れると同時に、刀身を薄水色の光が包んだ。
「——セィッ!!」
キリトはSS "ホリゾンタル"を発動させて、剣をギガスシダーの幹に命中させる。
「キリトも使えるのか……君達が闇の神に攫われる前は衛士だったのかも」
そう言うユージオの瞳はまるで剣を知りたい。扱いたいと言う渇望を感じさせる。
「キリト、アルス。さっきの剣術の、流派は、なに?……それも思い出せない?」
……そういえば記憶が無い設定だったな。
「いや、憶えている。俺達の剣は、《アインクラッド流》だよ」
キリトはそう言うと俺に目配せしてくる。
「ああ。それは憶えている。俺とキリトは、この流派を一緒に学んでいたんだ」
嘘は言っていない。俺達はあの世界で生き残るために
「アイン……クラッド、流」
ユージオはその名を繰り返すと
「アインクラッド……聞いたことの無い、不思議な言葉だ。……きっと君達の住んでいたところか先生の名前なんだろうね………」
そう言って一回、目を伏せた。
そして再びその目を俺達に向けたとき、その瞳には強い意志が宿っていた。
「——僕に、君達の剣を……《アインクラッド流》を教えてくれないか——」
やはりそう来たか。
ユージオは何かに葛藤する様に体を震わせている。
現場、剣はユージオにとって最後の希望なのだろう。囚われたアリスを助けるための力が欲しいのだろう。
だからこそ、俺とキリトはなにも言うわない。ユージオの覚悟を、決心をしっかりと聞くために。
(頑張れ、ユージオ。道は目の前にある。あとはお前が自分の意思で踏み出すかどうかだ!)
恐らく、キリトも似た様なことを考えていることだろう。そんな俺達の心の叫びが通じたのか
「僕は……強くなりたいんだ……もう2度と、同じ間違いを繰り返さないために……無くした物を取り戻すために。
……キリト、アルス。僕に剣を教えてくれ」
よく言ったな、ユージオ。
そんな思いとともに、いきなり胸に強くこみ上げてくるものがあったが、俺達はそれを苦労して呑み下し、悪戯っぽく笑いながらキリトが言った。
「解った。教えるよ、俺達の知る限りの技を。——でも、修行は辛いぞ?」
俺とキリトは手を重ね、ユージオに差し出すと
「ああ……お望むところだよ!僕は、ずっと……この瞬間を待ち望んでいたんだ!」
俺達の手の上に手を重ねる。
「いま……解ったよ。僕はずっと、君を待っていたんだ。キリト、アルス。この森で6年間、君達がやって来てくれるのをずっと待ってた……」
「——ああ」
キリトは声にならない声で返事をして青薔薇の剣を握ったままの左手でユージオの背中を叩く。
「「……俺達もきっと、お前と出会うために、この森で目覚めたんだ、ユージオ」」
無意識のうちに俺達が発していたこの言葉が紛れもない本心だと確信していた。