俺の質問によってこの場に静寂が訪れる。
だが、予め予測はしていたのだろう。キリトはどこか懐かしそうに、それと同時に思いつめた様に語り出した。
「アインクラッドは、アルス。お前の生まれ故郷だ」
かつて無型の剣聖と呼ばれた俺と、黒の剣士と呼ばれた彼の俺が忘れ去ってしまった物語。
「俺とお前が出会ったのはアインクラッドの第1層……始まりの街と呼ばれる場所だった」
「ちょっと、待ってくれ。いきなり俺の予想斜め上を行った。そもそも俺とお前は産まれてからずっとルーリッドの村にいて……そして、アリスが連行された後にアインクラッドって場所に行ったんじゃないのか?」
「いや、違う。俺とお前は産まれてからユージオやアリスと一緒に過ごしてきた。6年前のあの日までは……、ずっと4人一緒だったぞ。……"この世界"では、な」
「・・・まるで、この世界他にも世界があると言いたげな言い方だな」
「言いたげな、ではなく、言ってるんだよ。アルス良いかよく聞け。世界には種類がある。現実世界という奴と、仮想現実という世界だ」
傍から聞くと突拍子のないどころか、正気を疑われそうな話。現に俺の横にいるロニエを始めとした後輩組はぽかんとしており、俄かには信じられないという顔でキリトとアスナを見つめている。
だが、俺はそれらの話を懐疑的に聞くことは無かった。
アリスとユージオは茶化す様子もなく食い入る様に耳を傾けてるし、真っ先にノッて来そうなベルクーリのおっさんが神妙な顔で聞いているからだ。
「この世界とアインクラッドは仮想現実と呼ばれる部類で、この世界をアンダーワールドと言うんだ」
「仮想現実……そしてアンダーワールド……下の世界、か」
「そうだ、そして……。俺とアスナは現実世界、リアルワールドで生まれ育った・・・簡単に言うと異世界人だな」
「異世界‥ねぇ」
茶化しているつもりは一切ない。
だが、それでも自分の耳を疑いたくなる様な話はその後も続いた。
「んで、さっきの話から行くと……俺はリアルワールド人でもない。仮想世界のアインクラッド人って言ったところなのか?」
「……そうだ。全部話すよ、俺たちの出会いを、これまで繰り返した冒険の内容を全部」
いつものどこか飄々とした雰囲気はどこかに連れ去られたような真剣な眼差しのキリト。俺は、そんな彼の瞳を見て……、どこか焦がれる様な懐かしさや寂しさを感じた。
ただ、それは思い出を語ると言うよりも……知っていて欲しかった。と独白するかの様だった。
——『黒の剣士の独白』が始まった。
後書き
はい、後書きでふ。
今回短めなのは同時に投稿した番外編が特別長かったからです。
そちらはこれまでの番外編のような、本編の脇でこんな事がありましたよー的なサイドストーリーではなく、アインクラッドでの日々をキリトがアルス達へと独白している。と言った内容のものです。
『黒の剣士の独白』と言うサブタイトルで番外編の章に投稿しておりますので、そちらを是非ご覧ください。
それでは、『黒の剣士の独白』でお会いしましょう!