SAO 〜無型の剣聖〜   作:mogami

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93話 会敵

 

「くっ、キリト!」

 

「あぁっ!」

 

2人の少年の斬撃が1人の男に襲い掛かる。だが、その斬撃を受けても怯む何処ろか余裕の表情を見せるのはガブリエル・ミラー。少し前までベクタという名でこの世界に入り込んでいた偽りの王。その男は人の形をもはや保ってはいなかった。

 

溢れ出す負の心意は暴風雨の様に吹き荒れ、その背に3対の羽を持った天使の様な姿に変わる。禍々しい、天使の姿に。

 

そしてその天使に立ち向かう2人の剣士は苦い顔をして自分の剣の限界が近いことを感じ取りつつ、手詰まり感を覚えていた。

 

何故なら、彼らの放つ技の一つ一つ。本来なら人に向けて放てば原型も残らず吹き飛ばしてしまう様な斬撃ですら涼しい顔で無効化されていたのだ。

 

「これって、間違いなく……」

 

「あぁ、心意だろうなっ!」

 

自分には攻撃が通らない。そんな理不尽すら許容してしまうのはこの世界。キリトとユージオ。そしてこの場にはいないアルスは何度もその力に助けられてきた。なのでその厄介さも良く知っている。

 

斬撃は受け止められ、術式は吸収される。

為す術がないとはまさにこの事。

 

キリトとユージオは苦戦を強いられていた。

 

「キリト!ユージオ!」

 

そこへ駆け込んできたのは黒い藍色の少年、アルス。

 

「新手か」

 

「うわっ、禍々しい……!」

 

ガブリエルの魔の手がアルスに伸びた瞬間。目にまとまらない速さで鞘から剣を引き抜いたアルスはガブリエルの伸ばした暗い闇の触手の様な心意を切り刻む。

 

そして剣の力で瞬間移動。一瞬で肉薄し、剣でガブリエルを貫く。

 

「やったか!?」

 

思わず叫んだユージオ。しかし、キリトはその一撃すらガブリエルには届いていないと瞬間的に理解した。

 

「離れろアルス!」

 

「なにっ!?」

 

自分の一撃に手応えがない。それどころか攻撃したはずが自分の力が吸い取られる様に抜け落ちてゆくその奇妙な感覚にアルスは図らず剣を引き抜き、キリトたちの隣に転移する。

 

「なんなんだ、あの化け物」

 

「リアルワールドの産んだ化け物ってところか」

 

「アルスの心意でも届かないのか……」

 

「よっぽど我が強いんだろうぜ」

 

軽口を言いながらアルスは2人の剣の天命を自身の剣の力で回帰させ、その天命残量を最大まで回復させる。

 

「お前、こんな事できる様になったのか」

 

「いろいろあってな。記憶も取り戻した。レクス……黒騎士とも決着を付けたし、アリスとセルカを菊岡の所に送った。んで、1番やばそうな心意のぶつかり合ってる場所に来たんだが……」

 

アルスはガブリエルを一瞥すると居心地悪そうに頭を掻いてあっさりと言い放った。

 

「俺たちだけじゃ勝てないよな、アレ」

 

頷くキリトと悔しげなユージオ。

 

苦々しい沈黙が3人に流れる。

 

「どうした、その程度か。もっと喰らわせてくれ」

 

ガブリエルが挑発する様に言うとアルスが中指を立てて言う。

 

「お断りだ、さっさとこの世界から出て行け」

 

リリース・リコレクション。と起動句を告げてアルスは剣の力を解放し、それに続く様にユージオが叫ぶ。

 

「咲け、青薔薇っ——!」

 

ユージオの剣が地面に突き立てられ、青薔薇の剣から地面を割り、駆け抜ける青い氷の蔦。それはガブリエルの四肢を拘束するとアルスの剣の力で蔦の時間が停滞する。

 

これにより、ユージオの氷の蔦は物理的に破壊不能の拘束となる。

 

そんなアルスとユージオの連携に最期の一撃を加えるのは黒の剣士。

 

「行っけえぇぇぇぇーーーーーっ!!!」

 

黒い巨槍が激しく、鋭く螺旋状に回転しながらガブリエルを貫く……筈だった。

 

しかし、その黒の巨槍さえもガブリエルは吸収し、ユージオとアルスの拘束を容易く砕いた。

 

ここまでの芸当をこなせるものはガブリエル以外にはいないだろう。その並々外れた心意の力は時空を操るアルスの剣をももろともせず、あらゆる物を停止させる青薔薇の氷すら寄せ付けず、大地を削り、地面を抉る漆黒の巨槍をも打ち消した。

 

「終わりか?」

 

余裕の表情を浮かべるガブリエルは触手を伸ばし、3人を薙ぎ払う。

 

キリトたちは何とか受け身を取るものの、その異様で圧倒的な力を前に焦りを見せた。

 

揺るがない自信。底の知れない狂気。それらが織りなす禍々しい心意は触手となり、アルスたちに容赦なく襲い掛かる。

 

「ぜぇっ!」

 

アルスが触手を弾く。剣を振る剣圧で砂埃が舞うほどの力で。

 

「スイッチ!」

 

続く触手をキリトが受け止めた。弾丸より鋭く重い一撃を十数メートルも後退させられながら。

 

「僕だって、すいっち!」

 

そんな2人に生まれた隙を消す様にユージオが氷の壁を張り、攻撃を受け止める。しかし、触手はそれだけでは止まらず、ユージオに襲い掛かり、それをまたアルスが止めた。

 

一方的な戦い。

 

ユージオ、キリト、アルスはアンダーワールド随一の実力者。それが3人掛で挑んでもなお、ガブリエルには届かない。

 

化け物に立ち向かう小動物。そんな構図だった。

 

「キリト、ユージオ。俺の切り札を使う。時間稼ぎ頼めるか?」

 

「分かった、でも長くは持たないぞ!」

 

「任せて……とは流石に言えないね!」

 

度出す2人。氷が舞い、夜空の光が当たりを包み込む。そして、それらを飲み込む深淵が口を開ける。

 

それでも2人が止まらないのは単にアルスを信頼しているから。

 

激しい抵抗の最中。それは遂に完成した。

 

「キリト!ユージオ!離れろ!」

 

アルスの怒号に2人は飛び退き、道を開く。するとアルスはその場にいる全員が聞き取れないほどの高速詠唱を披露すると起動句を告げる。

 

「————ディスチャージ!」

 

轟く怒号は虚しく響く。

 

彼の詠唱でなにか、起こった訳でもない。変化はない。ただ叫びが響いた。アルスの詠唱だけだ。

 

「ははは!無駄だ無駄だ。私は深淵、この世界の全てを喰らい尽くす者!」

 

——不発?キリトの脳裏にそんな言葉が掠めた瞬間、それは危機感に変わった。キリトとユージオが道を開けたが故に今のアルスは無防備。

 

そんな無防備なアルスに黒い触手が迫る——!

 

「……なぁ、キリト、ユージオ」

 

しかし、アルスは嗤う不敵に。

 

数秒後にはその命が消えるかもしれないと言うのに。

 

触手は槍となり、アルスを貫く——!

 

その寸前。

 

「俺たちの心意で足りないなら、何処からか持ってくれば良くないか?例えば————この世界中からとか——————!」

 

深淵の心意で構成された触手が霧散した。

 

 

 

 




後書き

はい、後書きです。
アルスがPohやらレクスと戦っている時、すでにキリトたちはガブリエルと戦っていました。そこにアルスがようやく参戦した感じです。

ガブリエルの口調が違うとかあっても許容ください。この前、引っ越しで小説を手放してしまったので記憶の中のこんな感じだったかな像を引っ張り出して書いてるんです……!

さて、キリト、ユージオ、アルスの攻撃が一切届かないチートオブチートなガブリエル。そんなガブリエルにアルスは何をしたのか。やっと数話にわたってアルスが準備してきた"大規模術式"が日の目を浴びます。

以上、閲覧ありがとうございました。
これからかなり強引な展開が続きますので今更ながらご都合主義が苦手な方はブラウザバック推奨で……。

それでもいいよと言う方はもう少しだけお付き合いください。
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