その愚者は誰がために 作:夢泉
本当は今週は、別の作品を手掛けるつもりだったのですが、熱い応援に励まされて、こちらを進めることとしました!
では、どうぞ!
今回もコメントや評価、お気に入り登録お願いします!
「ニーナ…本当にニーナなのか…?」
「だから、そうだって言ってるでしょ!もう!」
グレンはわかっていても尋ねずにはいられなかった。それほどにその会合は信じられないものであり、それほどに、彼女は美しくなっていた。
「…久しぶり、だな…」
「そうだね…久しぶりだねグレン」
グレンとニーナ、片や魔術師として魔術の世界で、片や商会の跡取りとして権謀術数渦巻く経済界で。どちらも裏の世界には違いなかったけれど、その本質はまるで違う。
彼らの世界はどうしようもなく異なっていて、どうしようもなく離れていた。
けれど、
「…あの子達は元気?」
「あぁ、アルドのおっさんもアイツらも、元気にやってるよ」
彼等にしかわからないそのやり取り。彼等が確かに共にいたことを示すその思い出が、彼等の距離を一気に縮める。
「「……………」」
彼等はそれぞれに過去に思いを馳せ、そして微かに笑う。
「…色々あったみてぇだな」
「…グレンもね…」
「そう…だな…」
色々な事があった。現実は子供の頃彼が想像していたものより遥かに無情で恐ろしかった。愛する人は死に、夢は打ち砕かれた。
正義の魔法使い、思えば彼女が、俺の夢をはじめて伝えた人だったな……
(……悪いなニーナ…俺は正義の魔法使いにはなれなかった。お前は成し遂げたっていうのにな……かっこつかねぇなぁ俺……会わせる顔がねぇよ……)
すまねぇ、俺は正義の魔法使いにはなれなかった。そんな言葉を発しようとすると……
パンパンッ‼
「はい!辛気くさい雰囲気はおしまい!」
ニーナが手を叩きながら明るい声を発する。そして…
「ッ⁉ニーナッ⁉」
「大きくなったね~!」
驚くグレン。それもそうだろう。ニーナは急にグレンの首に腕をまわし、彼と頬を合わせてうりうり、即ち頬擦りをし始めたのである。
「昔はあんなにちっちゃかったのにいつのまにかこんなに大きくなって・・・」
「やめろよ!親戚の叔母さんみてぇなこと言ってんじゃねぇ!はーなーれーろーッ!」
ヤバイ、とグレンは思う。
ニーナは飛びっきりの美女に成長しているわけで、その顔が間近に来ているのだから。体の色んなところも密着している。具体的には、その大きすぎず小さすぎず、見事に成長した綺麗な双丘とかである。
故に彼はニーナを剥がそうと必死だ。しかし、帝国式軍隊格闘術の練習を怠っていた訳ではないらしく、細い腕だと言うのになかなか引き離せない。
「うわひっどい!昔はあんなに可愛かったのに!」
「可愛くなくなってすみませんねぇ……」
「昔は『おねぇちゃーん、助けてー』とか泣きながら言ってたのに……」
「言ってねぇ!断じて言ってねぇ!記憶塗り替えんな!」
わちゃわちゃと揉み合う二人。
それは離れた時間を埋め合わせるようで、ニーナも、口では嫌がるグレンも笑っていた。
端から見ればいちゃついているようにしか見えないが・・・
___________________________
「はぁ…はぁ……で?何しに来たんだよ……」
やっとの思いでニーナを振りほどいたグレンは、息も絶え絶え言葉を紡ぐ。
「グレンに会いに来た、じゃ駄目?」
対してニーナは余裕綽々な様子でおどけている。
「駄目に決まってんだろ。今のお前は、会いたいから会う、何て事はできねぇ身分だろ?そろそろ真面目な話をしようぜ」
「…そう…だね……」
お互いにトーンが下がり、いきなり真剣な顔になる。そこに先程までの和気あいあいとした様子は微塵もない。
その、表と裏の切り替えの速さ。それは、二人が裏の世界で多くの修羅場を乗り越えてきたことを示していた。
「グレン、お願いがあるの」
「……お願い?」
やがてニーナが口を開き、
「私のお婿さんになってくれない?」
爆弾を投下した。
ニーナが出てる作品って今のところこれだけなんだよなぁ・・・
何としても書き上げねば!