その愚者は誰がために 作:夢泉
テスト終わったので投稿します!
「私のお婿さんになってくれない?」
ニーナは世間話をするような調子で、特大の爆弾を投下した。
「……………………………は??ちょっと待っ」
暫く放心していたグレンは意識を取り戻すと直ぐ様、何がおきたか確認しようとするが……
「「「「「はああああああああああ!!!????」」」」」
グレンの声は
魔術を学ぶ学院の最高峰たる、アルザーノ帝国魔術学院に通う生徒であるならば、一年生であろうと、どのような落ちこぼれであろうと、精度の差こそあるが、遠見の魔術と遠耳の魔術程度の初歩魔術は誰もが使える。
そして今はお昼休み。多くの生徒が弁当片手に思い思いのお喋りをしている。故に、噂は一気に広まりやすい。
すなわち、この二人のやり取りは、学院中の人間に見られ、聞かれていたのである。
「ちょっと、どういうことよ!」
システィーナもまた放心していたが、ルミアに揺さぶられて我に帰ると、直ぐ様、グレンの方へずかずかと歩み寄って問い詰める。先程の、このやたらに美人なニーナとかいう女性とグレンの二人によるイチャイチャを目にして、相等鬱憤が溜まっていた彼女は、かなりイライラしていた。
最近やっと自覚したとある気持ち。この女性と勝負にでもなったら自分に勝ち目などないという考えから来る、焦りで彼女はいっぱいいっぱいであった。
システィーナのように放心こそしていなかったルミアも、システィーナと同じような今にも泣き出してしまいそうな顔をしていた。彼女達が受けたショックは相当なものであったようだ。
「いや、俺も何がなんだかわかんねぇよ!」
その言葉に嘘はない。彼も何がなんだか全然わかっていないのだ。むしろ当事者である彼の方が混乱しているだろう。そこに、さらに状況を混沌とさせる悪魔が来襲する。
「グ~レ~ン~?いつの間にこんなに可愛い子を捕まえたのかなぁ~?お母さん妬けちゃうなぁ~?」
そう、セリカである。ニマニマとグレンを弄るときの楽しそうな笑みを浮かべたセリカがやって来る。それを見て、グレンは確かに戦慄した。セリカの目が、全くもって笑っていなかったのだ。
「セ、セリカ!?」
そこにさらに油が注がれる。
「グレンのお母様ですか?お初にお目にかかります。ニーナ=ウィーナスと申します。」
ニーナが恭しく頭をさげつつ自己紹介をする。さすが貴族、その所作は完璧で美しかった。
「こ、これはご丁寧にどうも…。私はグレンの母の……ん?ウィーナス?」
その丁寧な所作にセリカもついつい釣られて丁寧な言葉遣いになってしまう。そしてそのまま自分も名乗ろうとして途中で気づいた。というか思い出した。
「はい。ウィーナス商会の現当主。ニーナ=ウィーナスと申します」
「「「………………ええええええええ!!!!??」」」
ニーナの身分が明かされ、学院中から悲鳴のような声があがる。
「まじかよ」
「今話題のパーフェクトレディ?」
「嘘でしょ?」
「どっかで見たことあると思った!」
「噂通り凄くきれい!」
「なんだよあの美人!やべぇ!」
さっきまでの恐ろしい雰囲気はどこへやら。学院中の興奮とは対照的に、冷静な様子となったセリカは、次の瞬間にはとびきり楽しそうな笑みを浮かべつつ呟いた。
「……ニーナ=ウィーナス…そうか。そういうことか」
「セリカ?」
「君があのときのグレンの女か!」
そしてセリカは急に大声を発してウンウンとうなずいている。
「は…?」
「「「「…?」」」」
その突然の変わりように、グレンも生徒達も呆気にとられ、学院は急に静まり返る。だが、次の瞬間には、セリカの一言により、またもや騒然となることとなった。それもさっきよりも大層激しく、かつ悪い方向に。
「グレンが街の路地裏で関係を持ったあの子か!」
「ちょっと待てセリカ、落ち着け。確かにそうだけど言い方がおかしい」
「「「「……………」」」」
不自然に静まり返る学院。
「先生…?」
「白猫?いやこれは違うんだ。違くないけど違うんだ。その何て言うか」
グレンは必死に弁明をしようとするが、その努力はこの状況において全く意味をなさなかった。
「《変態は・さっさと・消え去れ》ーーーッ!」
「ぎゃあああああぁぁぁぁッッ!!!!!!」
システィーナの黒魔【ゲイル・ブロウ】の巻き起こした激しい突風が、
「とりあえず、立ち話もなんですから、さあ、こちらに。婚約について詳しくお話ししましょう。学院の応接室にご案内します」
相変わらず、普段の話し方とはかけ離れた話し方をするセリカ。我が子がいきなり婚約者を連れてきたりしたときの親の話し方のようだった。まぁ、事実そのような状況だからあながち間違ってもいない。
「え、えぇ……その、グレンは大丈夫なのですか?」
「ハハハ、あんなのは日常茶飯事ですよ。相変わらずでしょうグレンは」
セリカが優しげな顔で笑いながら発した問いに、
「フフッ、そうですね。グレンらしいですね」
ニーナもまた、とても優しげな笑みを浮かべつつ答えた。
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