その愚者は誰がために   作:夢泉

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遅くなりました!テストとかあったので、書けなかったんです。勉強の方が忙しくなったんで、これから更新の頻度は下がってしまうと思いますが、なんとしてでも書き上げるので、応援よろしくお願いします!


やる気が出るので、評価・コメントお願いします!




商会と愚者

「それで?本当は何が目的だ?ニーナ=ウィーナス嬢」

 

 応接室に入り、ニーナとセリカが席につくなり、セリカは急に雰囲気を変え、殺気とも言えるような警戒心を露にする。

 

「フフっ、いやですわ義母様。何度も申し上げた通り、グレンに会いに来たのでございますわ」

 

「私は貴様の母親になった覚えは無いぞ。いい加減猫を被るのを止めたらどうだ?」

 

「そうですね……」

 

 やがてニーナも急に取り繕う雰囲気を変える。

 そこで、部屋の扉が開いた。

 

「全くだ、何か困ってんのかよ」

 

「グレン…?飛ばされたはずじゃ…」

 

「白猫のヤロー、遠慮なく吹っ飛ばしやがって……てかテメェ、セリカ!念話で、なんてこと言いやがる!」

 

 急に入ってきたグレンは、ここにはいないシスティーナに悪態をつくと、直ぐ様セリカの方へ向き直り、声を荒げる。よく見ると息が上がっているのか肩が上下していた。

 

「ん~?なんのことかなぁ~?」

 

「なーにが『学院外まで飛ばされたようだが、そのままだと、職務中に勝手に外に出たことで減給するぞ♪早く応接室に来い』だよ!もう無いも同然の俺の給料をさらに削るつもりかっ!?!?」

 

「はっはっはっはっは!」

 

 

 

 

 

「で?結局どういうことなんだ?俺と結婚したいとかいう冗談いったりしてよ」

 

 グレンは落ち着くと、セリカの隣に座り、話を切り出した。

 

「……別に冗談じゃ無いのに……」

 

「……ん?なんだって?」

 

「なんでもない‼」

 

「お、おう…?」

 

 ニーナが小声で言った言葉が聞き取れず聞き返しただけなのだが、グレンはニーナに怒られてしまい、解せぬと首をかしげた。

 

「私がウィーナス商会のトップに立ったことは知っていますね?」

 

「あぁ……」

 

「商会の者は私をトップとするべく、様々な教育を行いました。異国の言葉を含め各種教養は勿論、言葉使いから歩き方、商会の取引先の常連の詳細、人間関係に至るまで、ありとあらゆることを叩き込まれました」

 

「………」

 

「しかし、商会の者の魂胆、彼等の真意など見え透いていました」

 

「お前を意のままに操ること、か」

 

「えぇ。誰も彼もが私を利用しようとしていました。あるものは私を影から操り、実権を握ろうとしていましたし、またあるものは、私を暗殺し、濡れ衣を他者に着せようとしていました。周りを見渡しても何処にも本当の笑顔などありませんでした。どの笑顔も作り物で、その目の奥にはドロドロとした欲望が渦巻いていました」

 

「まさしく四面楚歌って感じだな」

 

「そうですね。全くもってその通りでした。彼等からすれば、ポッと出の、しかも無知な貧乏人がいきなり勢力図に割り込んできたのです。憎らしくて仕方なかったのでしょう」

 

「けれども私は登り詰めると誓ったのです。あの日、あの時、孤児院の皆を救うと決めたときに決意したのです。なにをしてでも登り詰めると。私は時に愚か者の振りをし、傀儡のように振る舞うことさえしました。そのなかで少しずつ、味方、いえ、協力者、とも言えませんし……そうですね、手駒、そう、自らの手駒を増やしていきました」

 

「手駒って……」

 

「言い方は悪いですが経済界とはそういうものです。誰も彼もが互いに相手を駒としか見ていない。仲良くしているように見えていても、血の繋がりがあっても、切り捨てるときには情け容赦なく切り捨てる。そういう世界です」

 

「しかし一体どうやって……」

 

「そこは話せば長くなる話ですので割愛しますが、損得で動く人間は、損得で操れる、ということです。自分でいうのも何ですが、幸い私はそれ相応に容姿には恵まれていましたしね」

 

「……それって……」

 

「止めとけグレン。そこを詮索するのは野暮だ」

 

「…そうだな………。ニーナ、頑張ったんだな……」

 

「……うん、ありがとう」

 

 ニーナはとびきりの笑顔で呟くように、お礼を言う。彼女の心境はわからないが、グレンの目には確かに、彼女の目が潤んで見えた。

 

「でも、グレンだって色々と頑張ったんでしょう?」

 

「……俺は何もやってない、いや…出来なかった。………だけど、そうだな、こう言う場合は、ありがとうって言うのが正しいんだろうな。ありがとうニーナ。」

 

 グレンもまた、ニーナからの労いに、礼を言う。

 その様子を見て、彼を最も身近で見守ってきた女性、セリカ=アルフォネアは優しげな笑みを浮かべる。

 彼女にとって、彼は息子のようで、弟のようで、友人のようで……未だ、なんとも形容しがたい存在だが……強いて、一言でグレンとの関係を形容するならば……それは、きっと、以前グレンが言ったように、家族なのだろう。

 一時期の彼は未来への歩みを止めてしまっていた。まるで、過去を失い、いつまでも終わること無い怠慢な日々の中で、酒と力に溺れていた頃の彼女のように。一向に立ち直る様子の無い彼をひどく心配して、何日も眠れなかった日もあった。

 けれど、

 

(よかった……どうやらもう心配は要らないようだな。少しずつ、本当に少しずつだけど、コイツは歩き始めている……)

 

 グレンが全てに絶望することとなった魔術師の世界。そこへの後押しをしたのは自分であるのだと、セリカは自分を責め続けていた。

 彼が立ち直るきっかけになればと、学院で働かせるように仕向けたが、実際それが良い選択であったのか、彼のためになることだったのか、また私は彼を絶望させてしまうのではないのかと、ずっと悩んでいたが、どうやらそれは杞憂であったようだ。

 彼は良い人々に囲まれ、確かに立ち直りつつあったのだ。

 そして、彼女はグレンに向けていた視線を、その対面に座る女性へと向ける。

 

(ニーナ=ウィーナス……もしかしたらコイツが、グレンの最後の後押しになってくれるのかもしれないな……)

 

「……それで?お前は商会のトップまで登り詰め、商会の膿を一掃したって話だったよな?」

 

「報道では、そうなっていますね」

 

 ニーナは悲しげな表情を浮かべつつ言葉を発する。

 

「事実は違う、と?」

 

「違う、というわけではないのです。確かに私は商会を私物化し、外部から見てもわかる悪質な取引を行っていた者たちは一掃できたのですが……」

 

 彼女の表情には、商会の腐敗を前にして、やるせない気持ちがありありと浮かんでいた。

 

「そうか、なるほどな」

 

「えぇ、そもそも商会自体が腐っている以上どうしようもありません。昨日の味方が明日も味方、とは限らないのです。そして敵は商会だけではありません。その他のグループにも、ウィーナス商会をよく思わず、商会を潰して市場の独占を図ろうとする者は数多くいます。私が商会から追放した人達も私をひどく恨んでいます。そして困ったことには、商会内外、目的は違うにせよ、彼等の手段は同じなのです」

 

「暗殺か……」

 

 それまで静観していたセリカが呟くように言う。

 

「えぇ。勿論、そういったことに上手く対処していくのも商会当主たる私の務めです。信頼できる人達もいます。そういった人達を要職に就け、体制を整えてはいます」

 

 そう語る彼女の顔は、内容に反してとても暗い。

 

「なら……」

 

「しかしその人達も、他の人達と比べて僅かに信頼できる、という程度でしかありませんが……」

 

 そうなのだ。100パーセント信頼できる人物など、彼女の周囲にはいるべくもなかった。最もそれも、一人を除いて、ではあるが。

 

「……少し見ねぇ間に、随分とひねくれちまったな」

 

「……グレン、ブーメランって知ってる?」

 

「うっ………」

 

「そして、商会の上部にいる、或いは、いた者達というのはそれなりの貴族。彼等は当然のように魔術を身に付けています。さらには、どこかの者達は、私を抹殺するために、殺し屋やフリーの魔術師、果てはテロリストと手を組んだという情報さえあります。………ところでお二人とも、天の知恵研究会を知っていますよね?」

 

「「……!?」」

 

 急に出てきた、忌まわしいその名に、グレンもセリカも驚き、その身を引き締める。

 

「天の知恵研究会もまた、この件に絡んでいるようなのです」

 

「……そうか。考えてみればそれもそうだ。とびきり大きな商会を一つ意のままにできれば、資金はいくらでも手に入る………」

 

「私がある程度信頼を寄せている者の多くは、私が貴族平民問わず、能力を見て採用した者達です。大多数の者は魔術なんて使えません」

 

 そうなのだ。彼女に近い人達は、魔術も戦闘もからっきしであり、プロが魔術を用いて暗殺を本格的にしようとしたら身を守ることなど無理な話なのだ。

 

「そりゃあ、ひどい状況だな」

 

「だからこそグレンに手を貸して頂きたいのです」

 

「天の知恵研究会が絡んでいる以上、俺も動く必要があるし、何より昔馴染みの頼みだ。断る理由はない。だが、これは俺に出来る範疇を明らかに越えている。俺の過去を調べて、俺が帝国宮廷魔導士だったからか?だとしたら買い被りすぎだ。俺は結局何も出来な……」

 

「勿論それもあるわ。貴方が天の知恵研究会にも精通した、元帝国宮廷魔導士であるというのは一つの理由」

 

「だったら……」

 

「でも!それ以前に、グレンは私の正義の魔法使いなのよ?グレンは私が今まで会った人の中で、最もステキで格好いい、最高の男の子だもの!」

 

「…っ」

 

「あれ~?グレン~?頬赤くしちゃって~なに~?照れてるの~?」

 

「なっ!?…て、照れてなんか…い、いねぇし!適当な事言うなよセリカ!」

 

 頬を赤くして慌てるグレン。グレンは紅潮したまま、顔を見られるのが恥ずかしいのか、明後日の方を向きつつ、

 

「まぁなんだ。やれるだけやってみるわ」

 

 と、ぶっきらぼうに答えた。

 

「ありがとう!グレン!」

 

 対してニーナは花が咲いたような綺麗な笑顔で礼を言うと、セリカの方へ体を向ける。

 

「出来れば義母様の…」

 

「義母様はやめてくれ。セリカでいい」

 

「わかりました。では、セリカさん、と。私のことは気軽にニーナとでもお呼びください。……それで、セリカさんにもご助力を願いたいのです。いきなり来て図々しいとは思っているのですが……お願いします!」

 

「俺からも頼む。これは俺やニーナだけではどうにもならねぇ」

 

 頭を下げる二人。それに対しセリカは、剣呑な空気を崩さない。

 

「私がロクに言葉も交わしたこともない、貸し借りもない人間のために動くとでも?」

 

「そこをなんとか!」

 

 随分と冷酷な態度をとるセリカに、グレンが土下座へ移行しようとするが……

 

「話を最後まで聞け。そういう場合は動かないが……ニーナ。私は一つ、お前に貸しがある。あの時、お前は落ち込んでいたグレンを立ち直らせてくれた。なら、私が動く理由としては充分すぎる。グレンが学校にいない間の授業は私がフォローするし、時には私自ら動いてやることもあるかもな」

 

「…ありがとうございます!セリカさん!」

 

 

 

 

 

 

「では、私は一度商会に戻ります。今回は、ここの近くで事業を無理矢理立ち上げ、近隣の人々に了承を得る、という口実でここに来たのです。今現在の私の周囲の人間関係等はこの冊子にまとめておきました。すぐにまた来ますので、綿密な打ち合わせはまた今度、ということでいいでしょうか?」

 

 冊子を置きつつ、捲し立てるように一気に言葉を発して、帰る準備を始めるニーナ。

 

「あ、あぁ……」

 

「では、長々と失礼しました。では、また次回の時に」

 

 恭しく、完璧で美しい所作で頭を下げ、ニーナは部屋を出ていった。

 

「なんか、嵐みたいなやつだったなぁグレン?」

 

「だな……」

 

「どうするつもりだ?」

 

「……まぁ取り敢えず、天の知恵研究会が関わる以上、アルベルト達に力貸してくれるように頼んでみることにする」

 

「それが妥当だな。取り敢えず、アイツを疑っている訳ではないが、この資料やさっきの話に嘘偽りがないか確認するのは大事だろうな」

 

「あー‼また忙しくなりそうだ‼」

 

 伸びをしつつ、めんどくさげに言葉を発するグレンだが……

 

「そういう割には、嬉しそうじゃないか」

 

 その顔はやたらと嬉しそうににやけていた。

 

「うるせーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 




 セリカドラゴン格好いいっすねぇ!

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