【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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出久がライダーに変身する小説も増えてきましたね。
ハーメルン内だけでも、

BLACK&BLACK RX※拙作(超・世紀王デク)
クウガ※拙作(これ)
W※Wとエターナルで二作品
OOO
ウィザード
ゴースト
エグゼイド※グラファイト

とまあ色々。オリ主等に広げれば平成はコンプリートできそうと思わなくもなかったり。
別にライダークロスに限った話ではないですが作品によって出久の性格が全然違ったり、それに伴ってかっちゃんとの関係性が全然違ったりするのが面白いですね。作者の二作はどうしてもかっちゃんに甘めです……ある意味厳しいっちゃ厳しいんですが。


あと主役以外のサブライダーも面白そうだなぁと思わなくもなかったり。特にアギトはアギト含め全ライダー出久に合いそう。変身する度にボロボロになってくギルス、警察官になったifでG3、ちょっとダークな方向に性格改変できそうなアナザーアギト……G4はアカン。

他にもメタルヒーローとか戦隊とか…戦隊だとコグマスカイブルーとか似合いそうだと思いました。まぁ色合い的にはグリーンなんですけども……グディーンヅゥーとか?


EPISODE 27. 緑谷:ライジング 3/4

 第37号の落下地点が判明した――そんな報せを受けた飯田天哉は、鷹野や森塚ら捜査官とともにその現場へと到着していた。

 慌ただしく動き回る所轄の捜査員や鑑識の面々。その中心には、もとがなんだったのか一見するとわからない金属の塊があった。よくよく観察すれば下部に四輪が存在し、それが自動車であったことがわかる。

 

「うっわぁ……自分の愛車こんなにされたら僕なら泣いちゃうね」

 

 森塚の戯れ言をいつものこととして流し、鷹野が「落下してきた37号の直撃を受けたのね……」とつぶやく。高度数千メートルから真っ逆さまだったのだ、余程強い衝撃が加わったのだろうことは想像に難くない。

 

 ただ、だとすると首を傾げざるをえない点がひとつ。

 

「第37号の死体はどこに?」

 

 飯田の疑問に返ってきた答は、ひどくシンプルなものだった。

 「ありません」――そもそも存在しないと、所轄の捜査員がそう言ったのだ。

 

「ない、とは……まさか、」

「はい。すぐそこの道路工事の作業員が、轟音の直後、ここから立ち去る第37号と思しき影を目撃しています」

「……!」

 

 轟音の直後ということは、墜落して車に叩きつけられてもなお、落命するどころか気絶することもなく、悠々と去っていったというのか。

 

(それほどまでに強力になっているというのか、奴らは……)

 

 何をどうしても、倒すことなどできないのではないか――そんな悲観的な考えすら浮かんでしまう。あのクウガの攻撃まで通用しなかった相手だ、それは十分に現実的ではないか。

 独りそこまで思い詰めかけて……飯田は、ぶんぶんと首を振った。

 

(ッ、何を無責任なことを……!民間人である緑谷くんが傷だらけになりながら矢面に立ってくれているというのに……!)

 

 それなのに、ヒーローである……本来は世界中の誰よりも最前線で未確認生命体と戦わねばならない自分が弱気になっているなど、許されるわけがない。

 客観的な事実として、クウガの力が通用しなくなりつつあるのは間違いないかもしれない。――だが負傷した出久も付き添った勝己も、悲観するのではなく状況を打開するために思考を巡らせていることだろう。そちらに参画するか、捜査に尽力するか――自分は今回、後者を選んだ。それだけのことだ。

 

 意を決した飯田が捜索再開を進言しようとしたそのとき、バイクの音が急接近してきた。

 

「飯田!」

「!」

 

 振り返れば、そこにいたのは白銀のオートバイを操るライダー。バイザー越しに見つめるオッドアイは、まぎれもなく親友のもので。

 

「轟くん……」

 

 こちらに来たのか、とこちらが問う前に、どこか思い詰めたような表情で「ちょっといいか」と尋ねてくる。出久に劣らずその双肩に多くのものを負っている親友には、ヒーローである以前にひとりの人間として、可能な限り応えてやりたいと思った。

 

 

 

 

 

 一方、ゴのグロンギたちが根城にしている洋館。

 その一室に、かのサングラスの青年の姿があった。――ゴ・ブウロ・グの、ヒトとしての姿。

 

 アギトによって片翼を焼かれ、車上に叩き落とされたにもかかわらず、彼の身体に傷らしい傷はなかった。せいぜい被服に隠れた背中に火傷痕が残されている程度だ。

 傷がほとんどないのは身体面ばかりではない。彼は屈辱も憤懣も窺わせることすらなく、静かに読書に興じていた。題名は"戦争と平和"――レフ・トルストイの名著である。

 

「この短時間で126人か、流石だな」

 

 そんな彼のもとに現れたバルバは、まず賞賛のことばを口にした。ズやメ相手なら皮肉のひとつでもぶつけていただろうが、彼は最上位のゴにふさわしい成果を挙げている。

 

「うむ。クウガに引導を渡せなかったのが心残りではあるがな……それに、アギトも」

「アギトか。奴にやられた傷は、癒えるのか?」

「これを読み終える頃にはな」

 

 素っ気なく返して、再び書籍に目を落とす。物静かな文学青年にしか見えないその姿――室内でもサングラスをかけていることの是非はともかく――。バルバはその背姿を一瞥すると、黙って部屋をあとにした。ブウロ自身が焦っていないなら、これ以上口を出す必要はない。

 

――残り、あと81人。それですべてが終わるのだから。

 

 

 

 

 

「そうか。緑谷くんがそんなことを……」

 

 合流した焦凍から関東医大での一部始終を告げられて、飯田はそうつぶやいていた。

 驚きは、なかった。出久がさらに強くなるための手段を考案することは予想していたことだ。それがリスクを孕むものであったとて、貫き通そうとする理由も。

 

(彼らしい)

 

 そうとすら、思えてしまう。

 ただ話す焦凍の表情は、それだけでは収まらない深刻さを抱えていて。

 

「きみは反対のようだな……その様子だと」

「………」

 

 明確な首肯はなくとも、否定する気がないことだけは確かだった。

 

「やはり彼が、凄まじき戦士になってしまうかもしれないから?」

「……あぁ」ようやくうなずき、「でも……でも、それで脅威が増えるとか、そんなことは正直、あんまり考えなかった」

 

「あいつらがこれ以上、傷つくのがイヤだって……そう、思った」

「轟くん……」

 

 それは焦凍のあまりに悲痛な本音なのだと、飯田は悟った。その証拠に、宝石のようなオッドアイがひどく揺らめいている。出会った頃の触れれば切れてしまうような冷たく気高いそれと同じものとは思えない。ずいぶんと弱々しくなったと感じられる。

 

 そうではない……むしろ逆なのだと、飯田天哉はよく知っている。

 

「ふざけてるよな……あいつの右手に、あんな傷つけといて。そんな資格ねえってわかってるけど、でも……」

「……資格なんて、最初から誰にもないさ」

 

 ベンチに座り込んだ焦凍の隣に、同じように腰掛ける。視線をしっかり合わせて、続ける。

 

「きみが緑谷くんに消えない傷をつけたことは事実だろう。だが彼が、それを厭わずきみを救おうとしたこともまた事実だ。彼はそういう人間だ、きっとこれからも、多くの人を救うために傷だらけになっていくんだろう」

 

 そんな姿は見たくない。無理はしてほしくない。でもそれこそ無理なのだ。どれだけ遠ざけても、出久はまた戻ってくる。

 だったら、

 

「彼のことばを、逆手にとってやればいいじゃないか。彼がこれから負っていくであろう傷を、俺たち全員で、引き受けてやればいいんだ」

 

 俺たちは仲間で、友人なのだから。そうして隣に立ち続ける限り、出久はきっと、闇には囚われない。あとは、全力で支えてやればいいだけだ。

 

「大体轟くん、傷つけたからなんだと言っていたら、爆豪くんはどうなる?彼のほうがよほど緑谷くんに酷なことをしてきたらしいじゃないか。それでも彼らはいま、きちんと互いに向き合って頑張っているんだ。きみもそこに割り込んでいくくらいの気概を持ちたまえ!」

「……それも、そうかもな」

 

 焦凍の表情が、ようやく少しだけ緩んだ。

 

「俺、少し弱気になってたみたいだ。愚痴っちまって悪かったな」

「構わないさ、そういうときは遠慮なく俺に愚痴でも弱音でも吐いてくれ!」

 

 友人だろう、俺たち――そこまで口にするのは野暮だと飯田はわかっていたし、口にされずとも焦凍もわかっていたのだった。

 

 

 

 

 

「科警研行くぞ、デク」

 

 トイレから戻るや、出久は勝己のそんな命令を受け、早々に関東医大病院を出発することになってしまった。

 

「科警研行ってどうするの?」

「追々わかる。早よ準備しろ」

「……わかった」

 

 相変わらずの調子。まあ話の流れからしてさらなる強化案に関係することは明白なので、しつこく追及はしなかったが。

 

 というわけで一時間ほど併走し、千葉県柏市内にある科学警察研究所――通称"科警研"にたどり着いたのだった。

 

(ちょっと久しぶりだな……ここ来るの)

 

 記憶によれば、出久が最後にここを訪れたのは一ヶ月と少し前、あかつき村事件が発生した……つまり轟焦凍と出会った日だった。あれから随分と色々なことがあったが、この場所はもっと緩慢に時が流れているように感じる。当然といえば当然なのだが。

 と、エントランスできょろきょろと周囲を見回していた勝己がひとつ舌打ちをこぼした。

 

「チッ、まだ来てねえか……」

「え、誰が?」

「テメェも知ってる奴。ここで待っててもしょうがねえから発目んとこ行くぞ」

「あ、うん……」

 

 勿体ぶらずに話してくれてもいいのに、と思いつつ、そういえば発目とも久しく直接顔を合わせていなかったことを思い出した。せっかく来訪したのだし、会えるならそれに越したことはない。

 

(相変わらずなんだろうなぁ、発目さん……)

 

 

「お元気そうですねぇ緑谷さん!ご活躍はかねがね伺ってますよウffFF!!どうです、そのクウガのドッ強力なパワーをさらに科学の発展に役立ててみる気はありませんか!?」

 

――相変わらずだった。

 

 開口一番にこんな調子で来るので、出久は苦笑いを浮かべるほかなかった。

 

「い、いきなりだね発目さん……。役立てるって、具体的に何するの……?」

「色々ありますけども、私としてはロボクウガとか作れないかな~と思案中です!!」

「ろ、ロボクウガ……?」

 

 ロボット――つまり、"メカクウガ"とあだ名されるG2のような強化服ではなく、完全に自動化したものということだろうか。

 

「う、う~ん……あんまりおすすめしないかなぁそれは……」

「?、どうしてです?」

 

 だってクウガは、暴走の危険があるから――それも当然あるが、

 

「小っちゃい頃観てた架空のヒーロードラマでさ、主人公のヒーローをモデルに造られたロボットヒーローが敵のアメーバみたいな奴に乗っ取られるシチュエーションがあったんだよね。あれがトラウマで……」

「!、あぁそれ、私も観てた覚えありますよ~!あの番組、毎週色々なサポートアイテムが登場してましてね~、創作意欲をこれでもかってくらい掻きたてられたものです……!」

「お、おぉ~……さすが発明家……!僕はヒーローの活躍ばっか追ってたや……でも確かに、その活躍もサポートアイテムあってこそだもんね!実際玩具人気もすごかったし!」

「ウフfF、流石緑谷さんわかってますねぇ!」

 

 周囲をそっちのけで盛り上がるふたり。話が合うのはいいことだが、残念ながらここは大学の飲み会の場などではないわけで。

 

「テメェらいっぺん黙れや」

「!」

 

 低く抑えた声で凄まれ、出久は我に返った。怒鳴らずとも、その声音と般若のような表情は他人に強制力を及ぼすのに十分すぎるのである。まして身体で覚え込まされている出久にはよく効く。

 その一方で、発目のようなネジの飛んだ人間にはそうでもないのだった。

 

「おや残念、ではこのお話はまた日を改めてということで……。そういう爆豪さんはどのようなご用でこちらに?まさかこの前のことを謝罪にいらしたとか?」

 

 発目のことばに、出久は室内の空気が心なしかぴりついたものとなったように感じた。――そういえば、勝己はここにいるプロジェクトチームの面々に対して強引に迫り、G2を装着して第36号と戦ったのだ。その責任はひとりで負ったとはいえ、研究員らの中には面白くない者もいるだろう。

 

(かっちゃん……)

 

 勝己にそうさせてしまったのは自分だ。自分にも責任はある。――だがこの場で殊更にそれを強調するのは、勝己のプライドを逆撫ですることに他ならない。この男は誰をも恃まない、誰のせいにもしない。すべて自分の選んだことだと、どんなに風当たりが強くとも一歩も退くことなく踏ん張って立っている。

 自分が彼に手を差し伸べることがあるとしたらそれは、彼が本当に傷つき渇いているとき。出久は黙ってその背中を見守ることに決めた。

 

 そして、

 

「……ああ、この前は迷惑かけた。――皆さんも、すんませんでした」

 

 自らの非を素直に認め、勝己は面々に向かって頭を下げた。そうすることが意地を張るより誇りを守ることに繋がるのだと、いまの彼はよく知っているから。それを見守る出久にももう、いまさら驚きはなかった。

 それに対し、発目はというと、

 

「ンfFF……まあいいでしょう、おかげさまで飯田さんバージョンとはまた違う戦闘データもとれましたしね。――ねぇ、皆さん!」

 

 発目のことばに、勝己に敵対的な感情を抱いていた研究員らも不承不承うなずかざるをえなかった。実際、勝己がG2を装着したことは、彼らにとって損なことばかりではなかったのだ。それはそれとして受け入れるほかないと、彼らもわかっていた。

 

「まあ、そんだけのために来たんじゃねえけどな」

(いきなりケロッとした……)

 

 悪びれるそぶりもなく態度を切り替えるあたりも、流石としか言いようがないが。

 

「G3見せてもらいてーんだけど」

「フfF、やはりそれが目的でしたか。でも、今日の会議で飯田さんからお話と資料の提示があったのでは?」

「話聞いてガワの写真見ただけで満足できっかよ。あんだろ、映像がよ」

「ごうつくですねぇ」

「テメェのワードセンスはなんだコラ。――テメェも見てぇだろ、デク」

「!、う、うん。見せてもらえるなら……」

 

 興味がないわけがない。装着者が何者になろうと、近い将来ともに戦うことになるのは確定的なのだから。

 

「承知しました!一応まだ所外秘なので、関係者以外に漏らさないでくださいね!」

「今さら言われるまでもねぇわ」

 

 発目もそこは信用しているのだろう、それ以上は念を押すことなく保存された映像を再生した。かつて出久もバーチャル脳無と戦った、実験室の様子が映し出される。

 そこに立ち尽くす、青と銀を基調とした機械じかけの戦士の姿。そのディテールと鮮烈な橙の複眼は、未だクウガの面影を色濃く残している。

 

 そんな戦士G3の前に、ヒョウに似た異形の怪人が現れた。出久にとり、色濃く記憶に残っているその姿。

 

「あれって……第5号?」

「はい!」

 

 未確認生命体第5号――ヒョウ種怪人 ズ・メビオ・ダ。グロンギ復活からそう時を置かずして現れた、人間離れした脚力をもつ怪人である。

 

「未確認生命体のデータも随分集積できましたからねぇ、こうしてバーチャルエネミーとしても使えますよ~。緑谷さんも戦闘訓練がしたいときには遠慮なくおっしゃってください、いつでもお貸ししますので!」

「ほんと?ありがとう!」

 

 そんなやりとりをしているうちに、いよいよ戦闘が始まった。仮想のメビオがG3に襲いかかったのだ。狭い室内であるから新幹線並みの走力こそ発揮されないものの、常人には捉えきることのできない脚力は十二分に役立っている。縦横無尽に部屋中を駆けずり回り、かと思えば勢いよく壁を蹴り、一気呵成に距離を詰めてくる。

 対して、現実に一度死闘を演じているためか、G3を装着した飯田天哉の対応は冷静そのものだった。振り下ろされる爪の一撃を左腕の装甲で受け止め、すかさず右拳を胸部に叩きつける。「ウッ」とうめきながら、メビオの身体がわずかに後退した。しかし逆上した様子で再び仕掛けてくる。

 

「G3の性能実験ですから、飯田さんには個性を使用しないようお願いしてあります」

 

 発目の補足説明のとおり、飯田はまったく個性の"エンジン"でメビオにスピード勝負を挑むそぶりを見せない。ただ純粋に格闘にのみ意識を集中している様子。

 

(すごいや飯田くん……格闘技術だけであんなうまく捌けるなんて)

 

 無論パワードスーツの性能もあるのだろうが、それにしたって良い動きをしていると感じる。一流のプロヒーローは個性一辺倒ではないのだ。出久は改めてそのことを思い知った。

 ただ飯田の実力が確かであることと、戦況の推移は必ずしも一致するものではなく。

 

「……効いてねぇな、大して」

 

 勝己のことばは遠慮がなさすぎたが、端的に捉えたものであることは間違いなかった。

 パンチやキックといった打撃が、命中したところで軽く怯ませる程度の効果しかもたらしていないのだ。全力の攻撃なのに牽制程度にしかなっていない――威力が足りないのだ、つまり。

 

「G3の打撃力はカタログスペック上、クウガの青い形態に匹敵するものとなってます」

「青って……一番力の弱い形態、だね……」

 

 遠慮がちに出久がつぶやくと、不満げに唇を尖らせて発目が振り向いた。

 

「これでも頑張ったんですよ我々!常人でも長時間の活動に耐えうるようデチューンを繰り返した結果なんですから!」

「ご、ごめんっ、そうだよね!だから色々な武器を開発したんだもんね……」

「そうです!全部ロールアウトすればだいぶ違ってくると思うんですけどねー……」

 

 モニターに意識を戻せば、要領を掴んだのだろう飯田G3がメビオをその場に打ち倒していた。そのまま身体を踏みつけ、完全に動きを封じる。――それができるのは飯田に実力があり、また相手について予備知識があったから。仮に一般の警察官が装着したとして、初見の相手を同じように鎮圧することは極めて困難と言うほかない。まして現在出現しているグロンギは、メビオより遥かに強力だ。

 

「でも……こうして見ると、やっぱり飯田くんが装着してくれたら頼もしいって思っちゃうなぁ……」

「わかります。飯田さんのお気持ちも理解はできますけど……私としても………」

 

 そう応じる発目の表情が、どこか憂いを帯びたものになる。それは出久ばかりか、付き合いの長い勝己も初めて目の当たりにするもので。だが、一体どのような感情から来るものであるかまでは知るよしもない――彼女自身すらよくわかっていないのだ。

 

 

――あるいは、このとき勝己に電話をかけてきた相手なら、察することができたかもしれないが。

 

「あぁ……わーった、すぐ行く」それだけで通話を終え、「"奴"が来た。戻んぞデク」

「あ、う、うん!ごめんね発目さん、また今度」

「!、そうか、別のご用があるんでしたね」

 

 「いつでもお待ちしてますよ~!」――すっかり元の調子に戻った発目のことばを背に、勝己にくっついてエントランスに戻る。

 

(結局誰を待ってたのか教えてもらえなかったなぁ……まあもうすぐわかるからいいけど)

 

 思ったとおり――そこには、待ち人の姿があって。

 濃い金髪に、稲妻の形をしたメッシュが特徴的な青年。勝己の五年来の知己であり、現在は出久とも親交のある――

 

「お~、爆豪!」

「遅ぇわアホ面」

「おまっ……そりゃねーだろ!いきなり"来い"っつーからどうにか仕事抜けてきたっつーのによ~!」

「!」

 

 

「上鳴、くん……」

 

 プロヒーロー・チャージズマこと、上鳴電気。

 なぜ彼が呼ばれたのか――彼自身よりも先んじて、察せざるをえない出久であった。

 




キャラクター紹介・グロンギ編 バギンドズガギ

イカ種怪人 メ・ギイガ・ギ/未確認生命体第36号※

「ゴセ、ゾ……ダギサゲダバ………!(俺、を……滾らせたな………!)」

登場話:
EPISODE 24. 英雄アイデンティティー~EPISODE 25. デク

身長:202cm
体重:199kg
能力:
あらゆる衝撃を吸収する軟体
体液から生成する爆発性の墨
活動記録:
"メ集団"のラストプレイヤー。とりたてて特徴のない地味な人間体の容姿に反し、その実力はメ集団のリーダー格だったガリマに匹敵する。
これまでのグロンギで最多である324人のリントを二日間で殺害するゲゲルに臨んだ。さらに殺害方法については制約を設けており、触手をターゲットに突き刺して墨を体内に注入し、時間差で発熱、内側から爆発させることでターゲットおよび周囲の人間を巻き添えにするという残酷な手口を用いた。一方、戦闘においては手っ取り早く墨を直接吐き出す戦法をとることもあった。
一度に大人数を殺戮することで着実に点数を稼ぐなか、轟焦凍=アギトに発見され、戦闘となる。強力な打撃を軟体で受け流し、さらに個性による氷結を墨の生成による高熱で融かすなど翻弄し、その実力を見せつけた。クウガが途中参戦しても(変身者である緑谷出久の迷いから白=グローイングフォームにしかなれなかったことも手伝い)余裕を保っていたが、さらに駆けつけたヒーロー・爆心地の爆破を受けて様子が一変し、上記の台詞とともに逃走した。
実は体温が急上昇すると暴走してしまう体質であり、その際は沼すら蒸発させてしまうほどの高熱を放つ。その状態でゲゲルを再開しさらなる惨劇を巻き起こすが、G2を装着した爆心地こと爆豪勝己の鬼気迫る奮戦に足止めを受け、最期は自身の憧れを守ると決心し再び赤=マイティフォームに変身したクウガの強化マイティキックを受け、倒された。

作者所感:
地味ながら強力な実力者……といえば聞こえはいいですが、ぶっちゃけ余りものだった方。当初はガリマと逆で飯田G2に倒される予定でした。初ライジングをペガサスで迎えたいこと、ガリマを昇格させることなどからこの順番に。
墨を注入して時間差で爆発させる殺し方はジャラジとスコーピオンロードを参考にしました。映像にするとかなりエグいですよねきっと。

※原作では第21号。

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