【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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同期の人と一緒に映画2回目行ってきました。何度観てもいいね……出久の「うるせぇ…!!」が特にツボです。あとロングホープフィリアの歌詞がヒロアカすぎる。

帰ってきたあとに観る「デクvsかっちゃん2」も最高でした。基本出久が好きなハズなんですが最近かっちゃんにシンパシー感じ過ぎて困る。某別サイトでかっちゃんが脳無にされちゃう話とか読んでたんで余計に。あの複雑すぎる内面を描き出すのはなかなか難しいと思います。原作ですら……まあ少年漫画なんでそれでいいとは思うんですけども。


EPISODE 31. エチュードの果てに 3/4

 戻って、湘南。

 

 八百万の提案でクルージングを楽しんでいるはずの一同だったが……実際には海に出ることすらなく、別荘にこもって広いリビングでテレビに釘付けになっていた。

 それは何も、青空が一転曇天となってしまったからではない。すべては目の前の液晶から流れるニュースが原因だった。

 

「プールを襲う未確認、かぁ………」

 

 おやっさんがぽつりとつぶやく。プールではないし都内でもないとはいえ、無関係とはいえない場所にいるだけに不安は拭えない。

 不安。正真正銘の一般人であるおやっさんはそれだけでも構わない。だがこの場には現役プロヒーローが三人もいた。

 

「……私たち、ここでこうしてることしかできんのかな」

 

 お茶子のつぶやきに、真っ先に反応したのが峰田実だった。言うまでもなく、彼もヒーローなのだが。

 

「おいおいおい、何言ってんだよ!?あいつらヒーローだって殺しまくってるんだぜ?だからいまじゃ捜査本部とW4号に任せて、特別な指示がない限り戦闘は行わないようにって指示が出てんじゃねえか!」

「でも、爆豪くんや飯田くんがその捜査本部におるのに……!」

「それとこれとは別だって!……もう理想だけで無茶していい立場じゃないだろ、オイラたちは」

 

 旧A組一の臆病者――それを差し引いても、峰田のことばもまた正論だった。未確認生命体によって影に隠れてしまってはいるが、ヴィランによる犯罪も災害も、日々収まることはない。自身の立場をなげうってでも未確認生命体と戦うと言えば聞こえはいいが、それはそうした脅威からのセーフティーに穴を開けることにもなりかねない。まして、それで返り討ちに遭うようなことがあれば。

 

 

 それは殉職ですらない――犬死にだ。

 

「峰田さんのおっしゃることにも一理ありますわ……今回は」

「ヤオモモ……」

「もちろん都内で活動している以上は、耳郎さんたちのように突発的に交戦せざるをえない状況もあるかもしれません。その際、私たち自身の身も守りつつ被害を最小限にする方法を常日頃から考えておく――いまはそうして、できることをするしかありませんわ」

 

 無謀な戦いに命をなげうつことは、正しくない。だがそれを言い訳にして目の前で失われようとしている罪なき命から目を背けることもまた、正しいはずがない。――だから、自分にできるだけのことをする。

 

「そう、やね……」静かにうなずいたあと、「じゃあさ、パトロール中に未確認と遭遇した場合のシミュレーションでもしない?せっかく三人ヒーローがおるんやし、三人寄ればなんとかってね!」

「文殊の知恵、ですわね。わたくしも賛成ですわ」

「えー……せっかくこれからお色気シーンありまくり昼ドラの再放送が」

「……峰田くん」

「じょ、冗談だって!オイラだってやるときゃエロ抜きでマジメにやるんだぜ……家で録画してるし」

 

 途端にわいわいと盛り上がり出すプロヒーロー勢。学生時代もこうしてあれこれと討議していたのだろうか……そう考えるとより微笑ましく思われるのだった。

 

「いやぁ頼もしいねぇ、最近の若手ヒーローズは。ねえ桜子ちゃん?」

「ふふ……そうですね」

 

 リントが争いを好まない平和な種族であったがために、孤独な戦士だったのかもしれない古代のクウガ。だが現代においては違う。

 彼女たちのような心ある人々がいる限り、クウガは……出久はもう、独りにはならない。

 

 桜子が改めてそのことを感じていると、テレビ画面の向こうが別のニュースに切り替わった。ただしそれは、未確認生命体事件と関連のあるもので。

 

『一方警視庁ではきょう、新型戦闘用パワードスーツ装着員の最終選考が行われており――』

 

 

 

 

 

「――ふ……ッ、はっ!」

 

 黒いレザーに身を包んだ青年がひとり、がらんどうの室内で見えない何かと格闘している。そう表現すると危うい印象を受けるが、彼は頭部をすっぽりとヘッドマウントディスプレイに覆われており、幻覚などではない、電子的には明確に存在するものと戦っているのだ。

 巨大な尻尾を生やしたその姿からわかるように、彼は尾白猿夫その人に他ならない。

 

 彼はいま、G3装着員の最終選考に装着している。モニター越しに仮想敵の姿を認め、襲いかかってくるそれにもてる力を駆使して立ち向かっているのだ。

 

 そんな尾白の姿は、強化ガラス越しのモニタールームで試験官たちによって観察されている。現実の姿ばかりでなく、仮想の――長大な尻尾を生やしたG3が、仮想敵と戦っている姿も。

 

「流石はテイルマン……見事な格闘だ」

「尻尾との併用もうまいものだな。――流石はあなたの教え子、というところですかね……イレイザーヘッド?」

 

 試験官のひとり、抹消ヒーロー・イレイザーヘッド。本名を相澤消太――尾白や勝己らの担任、その人だ。

 無機質な瞳でモニターを見つめる彼は、小さく溜息をついた。

 

「教え子云々は関係ないでしょう。……確かに彼の格闘技術と個性の相性は良いし、それを活かせてもいます。ただ――」

 

 そこでブザーが鳴った。試験時間終了の合図――それに伴い、バーチャルの戦闘風景も消失する。

 

「それまで。速やかに着替えて待合室に戻ってください」

 

 ディスプレイを外した尾白は、息つく暇もなく撤収していく。その際ガラス越しの相澤と目が合った。一瞬のことだったが……その瞳はより成長した姿を見せることができたという自負に溢れていた。

 確かに、それは認めるところだ。プロヒーローとなって相澤の手を離れてからも、彼らはそれぞれ成長している。――特に良くも悪くも一番印象に残っている教え子、爆心地こと爆豪勝己は本当にめざましいのだが……それはひとまずここでは関係ない。

 

 「ただ」――そう続けようとしたように、それだけでは合格の決め手とはならないと相澤は考えた。この試験はヒーローとしての実力を競うものではなく、あくまでG3の装着員を選ぶためのものだ。そこには明確な違いが存在する。

 

「次は……ああ、この候補者も雄英出身か」

「普通科出身で現在は城南大学の学生……。唯一ここまで残った完全な民間人、一番のダークホースですな」

「………」

 

 愛用している目薬を差してから、相澤は書類に目を落とした。心操人使――教え子と括れるのか、そうでないのか……その微妙な境目にある青年。そんな彼に対し何を思うのか、無機質な瞳からは読めない。

 

 

 

 

 

 漆黒のライダー怪人――ゴ・バダー・バの襲撃を受けるというアクシデントに見舞われつつも、緑谷出久は飯田天哉らとともにミラージュホテルへとたどり着いた。

 

「ふぃ~、やっと着いたぁ……」

 

 運転席から降りた森塚が、ぐうっと伸びをしている。確かに道中色々あったから、達成感を覚えてしまうのも無理はないのかもしれないが。

 

「気を抜いている場合ではありませんよ森塚刑事!我々の職務はここからです!!」

「わかってますって。緑谷くん、TRCSはヘーキそうな感じ?」

「は、はい……とりあえずは、なんとか」

 

 バギブソンに吹っ飛ばされたときはもう駄目かと思ったが、流石は警視庁の新型白バイというべきか。何事もなかったかのように立ち上がり、出久をここまで運んでくれた。

 ただ森塚は、「それはよかった」だけで流してはくれなかった。

 

「とはいえあくまで試作機だからね、あまり過信はしないほうがいい。あとで科警研に持っていったほうがいいよ」

「……そうします」

 

 はっきりうなずき、建物へ向かおうと一歩を踏み出す――と、エントランスからちょうど人が出てくるところだった。

 

「!、かっちゃん……」

「轟くんも――おぉぉい!!」

 

 野外でも反響する大声に、彼らは一斉にこちらを見た。勝己は明らかに眉を顰めている。飯田の声をうるさがったのかと思いきや、それだけではなかった。

 

「おいクソナードゴラァ!!」

「ヒィッ!?」

 

 まさかの自分に矛先が向き、出久は数歩後ずさった。そんなのお構いなしとばかりに勝己は大股で距離を詰めてきた。

 

「テメェ、コイツらより一時間も先に向こう出たハズだよなァ……?」

「そ、そうです……!」

「だったらなんで同着なんだボケカス!!どこで油売ってやがった!?」

 

 あまりの剣幕に言い訳もできず震えることしかできない出久。そんな彼を庇うべく、飯田がふたりの間に割って入った。

 

「待つんだ爆豪くんッ、これにはやむをえない事情があるんだ!!」

「事情だァ?じゃあとっととそれ説明しろや!!」

「どうしてそう喧嘩腰なんだキミは!?」

 

 今度はこの元同級生同士による口論が始まってしまう。出久はもうあわあわしていて使いものにならないため、ここは年長者の出番とばかりに森塚も参戦した。

 

「ハイハイハイやめやめ!――バイクに乗った未確認に襲われたんだよ緑谷くん。ほら、35号んときに邪魔してきた」

「!」

 

 その存在をしっかり記憶していたのだろう、勝己の目が見開かれる。

 ややあって、

 

「……なんで連絡しなかった、テメェ?」

 

 一転して、低く唸るような声で詰問してくる。やばい、本気で怒っている。怯えながらも、出久は飯田たちに隠れることなく進み出た。

 

「そいつ、すごく強くて……時間とられただけじゃなくて、危うくやられるところでさ……」

 

 ふたりが追いついてくれなければ、自分は永遠に東京へ戻ってこられなかったかもしれない。

 

「早く戻らなきゃって焦りとか……それより何より、負けたことがすごく悔しくて、連絡しなきゃとかそういうのが全部、頭から抜け落ちちゃったんだ。……ごめん」

「………」

 

 しかめ面で、頭を下げる幼なじみを見下ろす勝己。ただ基本的にいつもそんなだから、彼の怒りがどこまで根深いかはわからない。

 

「勘弁してあげてよ、爆心地」森塚が再び声をあげた。「連絡しなかったのは僕らも一緒だしさ」

「そのとおりだ……。すまない、爆豪くん」

「……チッ」

 

 舌打ちしつつも、この爆ギレヒーローはひとまず矛を収めることにしたようだった。遅れて駆け寄ってくる焦凍をちらりと見遣りつつ、彼は本題を語った。

 

「来て早々悪ぃが、ここにもう用はねぇ。奴が次に出る場所がわかった……いや、()()()()以上はな」

「!、それって……39号のゲームの法則がわかったってこと?」

「あぁ」

「――それは俺から説明する」

 

 名乗り出たのは焦凍だった。彼の口から、判明したルールについて語られる。それはまだ何も知らない出久たちに、大いなる衝撃を与えるに十分だった。

 

「まさか、そんな……」

「……信じがたいのはわかるが、状況証拠は揃ってる。間違いねえ」

「奴ら、我々の文化をそのような……くっ」

 

 古くから親しまれてきた雅な音楽への造詣――それを殺人に利用するなど。サスペンスの世界なら見事と称賛してもよいが、現実である以上湧き起こるのは怒りでしかない。飯田が拳を握り締めている。

 それはともかくと、表面上落ち着いている森塚が問うた。

 

「"決まった"って、なんか引っ掛かる言い方だね。こっちから場所を指定するみたいな」

「みたいじゃなくて、実際そう」

 

 ぶっきらぼうに応じる勝己。法則が読めた以上、ただ次の場所を予測して待ち構えるだけが能ではない――

 

「都内と近郊のプールは既に営業停止ンなってる。39号は行き場を失ってるわけだ。そんなとき、ひとつだけ営業してるプールを見つけたら、どうすると思う?」

「!、誘い込むつもりか……?」

「正解」

「うーん……そううまくいくかねぇ?一ケタナンバーの頃ならいざ知らず、奴さんゲロ賢いわけっしょ。あからさまな罠に飛び込んでくるかどうか」

 

 森塚が懸念を述べるが、それとて考慮していないはずがない。指摘した当人も薄々わかってはいるのだが。

 

「確かにな、来ねえ可能性もある。だから半分は賭けだ」

「もう半分は?」

「保険。人海戦術で地道に捜す、以上」

「……ナルホド」

 

 確かに面は割れているから、それとて馬鹿にはできないが。

 

「なんにしても、もう鷹野警部補たちがそのための場所を手配してる。奴を引っ張り込んで……一緒に倒そう、緑谷」

「!」

 

 出久はそこで初めて、焦凍の様子が尋常でないことに気づいた。いま現在取り乱しているわけではない――ただ、そうさせるほどの迷いを吹っ切ったような、そんな目をしている。

 

(何があったんだろう)

 

 気にならないはずがなかった……が、訊く間もないままに忙しく移動する羽目になってしまった。いつ39号が姿を現すかわからない以上、致し方ないことではあるが。

 それに、焦凍が吹っ切った様子である以上――強引に追及するのは、かえって失礼な気がした。焦凍自身にも、今日ずっと隣にいた勝己にも。

 

 




キャラクター紹介・グロンギ編 バギンドゲヅン

イノシシ種怪人 ゴ・ジイノ・ダ/未確認生命体第38号※

「ゴセパガダデデブザブ、ゴ・ジイノ・ダザァ!!(俺は当たって砕く、ゴ・ジイノ・ダだァ!!)」

登場話:
EPISODE 28. ストレイボーイ~EPISODE 29. 僕のヒーロー

身長:202cm
体重:224kg
能力:
見かけによらぬ猛スピードでの突進
二叉の槍
活動記録:
イノシシに似たゴ集団第二のプレイヤー。筋骨隆々とした大男の人間体は、一部ではかつて社会を震撼させた凶悪なヴィラン・マスキュラーに瓜二つとも言われている。
第37号(ゴ・ブウロ・グ)の死後、「地下鉄有楽町線に乗り合わせた乗客に香でマーキングを施し、18時間で288人を殺害する」ゲゲルを行う。武器である二叉の槍を投げつけ、壁に磔にするという凄惨な方法で標的を殺害していった。
戦闘においては持ち前のパワーばかりでなく、クウガを挑発して激昂させようとするなど陰湿な性質も見せた。その後アギトとヒーロー・爆心地まで参戦したために手傷を負わされ、一時撤退する。ほどなくして快復しゲゲルを再会したが、森塚ら捜査本部の面々の懸命な捜査によってルールが露見してしまう。その後標的として出水洸汰を付け狙うが、偶然出久がそばにいたために失敗に終わる。再戦においては負傷したクウガ・タイタンフォームを追い詰めるが、爆心地の援護が入ったことで形勢は逆転、徐々に追い詰められ、最期は突進を敢行したところをライジングタイタンソードに貫かれ、殴りつける意地を見せながらも爆死した。

作者所感:
元々HBV用の怪人ってことで、時系列上一応ゴにされてま~すくらいな感じの……ちょっと残念な子。殺陣は見応えあるものでしたが、短時間であっさり通常マイティにやられてます。声のエンデヴァー……じゃねえや、稲田さんはライダー的にはその後1号になるなど東映には欠かせない人に。声が似てるネタは入れる隙がなかった……見た目はマスキュラー似って設定にしちゃったし。
ベミウは冷さんそっくりだし、微妙にネタかぶりしちまいましたね。まあジイノのほうは"洸汰がそう感じた"くらいの印象なのでセーフ()

※原作では第40号

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