【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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何と一日で復活させた……やればできる子なんです。

冗談はさておき、展開は概ねそのままですが一度書いたものを書きなおしたってことで文章がちょっと粗いかもしれません。

あと展開が展開なのでこういうポジティブなサブタイでよかったのか今更悩んでたり。まぁ数年ぶりの再起動ゆえ最初は不具合も起きるってことでひとつ……。



EPISODE 32. 心操人使:リブート 3/3

 

からからと、球の廻る音が室内に響き渡っている。

やがてそれが止んだとき、見守っていた派手な服装の女が気だるげな声をあげた。

 

「赤のじゅうろくぅ~……」

 

それを受けて、詰襟を纏った陰鬱な雰囲気の少年が、

 

「亀戸三丁目……ボン、ブバブ……」

 

ぼそぼそと呟きながら指差したのは、都内の各地域を示した地図。ことばどおり、そこには"亀戸"と表示されていた。

 

「狭いな……。まあいい、それはそれでスリルがある」

 

立ち上がる青年――ガメゴ。彼は根城としている遊技場を出ると、そのまま屋上へと向かった。この周辺では最も背の高い摩天楼の頂、遥か彼方まで見渡すことができる。

 

「ガンガダシバ」

 

標的を見定めた男は、誰にともなく戦闘態勢を見せつけるようにジャケットを脱ぎ捨てた。同時にその身体が大きく膨れあがり、異形のそれへと変貌する。人間体からは想像もつかない巨駆。

 

――カメ種怪人 ゴ・ガメゴ・レ。

 

彼が左手から球状の装飾のついた指輪を毟りとれば、それはたちまちサッカーボール大にまで巨大化する。

 じゃらりと持ち手の鎖を鳴らし、もはや凶器と呼ぶべきその鉄球を構える。爬虫類の特徴が色濃く表れた瞳が見据える先――亀戸三丁目には、仮面の男、ドルドの姿があった。バグンダダを手に、じっとその到来を待っている。

 

 そんな彼の背後から、エンジンの嘶きが迫ってきた。

 

「……バダーか」

「よう、ガメゴのゲゲルは進んでるか?」

「もうすぐ次が来る。……いや、来た」

 

 ドルドにつられて顔を上げたバダーが見たのは、空高くを弾丸のごとく飛翔する鉄球。ひとつ、ふたつと雲ひとつない青空を渡るそれは、弧を描きながらビルの向こうへ墜落していく。

 

――そして、激しい衝突音。分厚いコンクリートの壁すら易々と破砕する鉄球……そんなものを頭上から受けた人々がどうなるかは、言うまでもあるまい。

 平和な市街が一転、阿鼻叫喚に彩られるさまを冷たく見つめつつ、ドルドはバグンダダの珠玉を素早く移動させていく。

 

「54のうち……51」

「おー、大したもんだ」

 

 感心した様子で手を叩くバダー。仲間の美技を評価する器量はあれ、自分と同じ姿をしたものたちの無惨な死にざまを憐れむ心は、他のグロンギ同様持ち合わせてなどいないのだった。

 

 

 

 

 

 沢渡桜子はいつもどおり考古学研究室にこもっていた。資料に目を落としながら、難しい表情でブツブツと何か呟いている。

 

「”聖なる泉、枯れ果てしとき”……」

 

 それは”凄まじき戦士”に関する碑文の解読結果だった。太陽を闇に葬る凄まじき戦士が、雷のごとく現れる……実際、クウガに電撃の兆候が現れ、また憎悪によって暴走を起こしたときには、この碑文が現実になるかと思われた。ただ彼は凄まじき戦士とはならず、”金の力”と称する強化形態への変身能力を手に入れたようだけれど。

 グロンギたちはさらに強力になっている。緑谷出久がクウガたることを望んでいる以上、暴走には至らない新たな力を得たことは喜ぶべきなのだろう。しかし、強くなることそのものにリスクはないのだろうか。暴走を引き起こした第35号事件のあと、関東医大の椿医師は出久の身体はさらに常人から変質していると語っていた。それが、もし――

 

 そんな不安に桜子が駆られた途端、電話が鳴った。噂をすればというべきか、相手はまさしくその椿で。

 

『――緑谷のことでお話ししておきたいことがあります。お忙しいところ申し訳ないんですが、これから関東医大に来ていただけませんか?』

「……ちょうどよかった。こちらから伺おうかと思っていたところなんです」

 

 もちろんありがたいことなのだが、やはり出久のこととなるとどこまでも積極的。これがデートの誘いだったらこうはいかないだろうと椿は一瞬苦い思いに駆られたが、瞬時にそれを胸の奥深くにしまえる程度には彼も大人の男性だった。

 

 

 

 

 

 新たな未確認生命体の凶行を止めるべく、都内を駆けずる面々。そんな彼らのもとに、本部の塚内管理官から通信が入った。

 

『本部から全車へ。未確認生命体によると思われる圧死事件について各署からの情報を整理したところ、現場九か所はすべて同一線上にあると判明した』

 

 明確な法則性――これで敵は未確認生命体、グロンギであるとほぼ明確になったと言っていい。

 

『凶器と思われる球体の軌道を分析した結果と住民からの通報を総合した結果、発射地点は墨田区太平二丁目、富永コーポレーション本社ビルと推定される。……ただ、次の犯行がいつ行われるかわからない。被害予想地域付近にいる者はそちらの避難誘導に向かってくれ』

 

「――……ッ、」

 

 自分の役割は間違いなく、敵を倒してこの凶行を終わらせること。そう心した緑谷出久はひとり、相棒のトライチェイサーを駆って太平二丁目へと急いだ。

 

 

――その一方で、心操人使もまたG3ユニットの拠点”Gトレーラー”のコンテナルーム内で通信を聞き届けていた。既にレザー地のアンダースーツで首から下をすっぽりと覆っている。瞳は閉じられ、表情は静謐そのものだ。

 

「聞いていたね、心操くん」玉川三茶がいささか甲高い声を発する。「いよいよ初陣だ、心の準備はいいか?」

「もちろんです」

 

 おもむろに立ち上がり、己が鎧のもとへと歩み寄る。主を待つ緋色の瞳は、その奥が空洞であるにもかかわらず強い光を放っている。これこそ自分に相応しい色だと、彼は思った。

 

 ほどなく、発目明の協力によってシークエンスが開始される。科学の力によって”製作”されたG3は、クウガやアギトのように一瞬にして変身というわけにはいかない。胸部ユニット、腕、脚と、アンダースーツの上から順々に装着していく。

 そして――最後に、頭。仮面を被せるように頭部ユニットを肌に接触させることで、後頭部の装甲が自動で展開される。

 

「装着完了ですッ!続いてはガードチェイサーへ!」

「……あぁ」

 

 指示に従い、安置された専用マシン”ガードチェイサー”へと跨る心操――G3。名称が似通っていることからわかるように、トライチェイサーの発展型とも言うべきマシンである。ただトライアルタイプだった原型とは大きく異なり、大型化した青と純白のそれは、G3のあらゆる武装を内蔵する武器庫としての役割ももっている。

 ガードチェイサーのエンジンを起動させると同時に、背後のコンテナの扉が開き、路上に架橋が下ろされる。ガードチェイサー自身もまた、G3とともにゆっくりレールを後退してゆく。

 

「発進シークエンス、全工程終了!」

「よし。――1220(ヒトフタフタマル)、オペレーション開始!」

「ガードチェイサー、離脱します!」

 

 

「了解!――発進する!」

 

 路上へと下ろされたガードチェイサー。パトランプを輝かせながらトレーラーを追い抜き、トライチェイサーを上回る速度で現場へ向かう。未確認生命体を一刻も早く倒す――市民を守るため、同時に、”あいつ”をもう戦わせないため。

 

 

 心操のそんな決意が通じたのか、彼が太平二丁目へ辿り着いたとき、周囲は未だ戦場の風塵など影も形もない静かなビル街のままだった。

 

「ここか……」

 

 ガードチェイサーから下り、富永コーポレーション本社ビルを見上げる。予測どおりなら、ここに未確認生命体がいる。

 ひとまず生命反応をサーチしようとした心操だったが、その必要はなかった。屋上から巨躯がぬっと姿を見せたのだ。それがターゲットであることは、視聴覚を補強されたいまの彼には容易くわかった。

 

「目標を発見しました。GM-01、GG-02、GA-04の使用許可を」

『こちらでも確認している。だがスコーピオンとアンタレスはともかく、もうサラマンダーまで使うのか?』

「ええ。一気にケリをつけます」

『……了解した、使用を許可する』

 

 ガードチェイサーのトランクを開き、指定した武装を取り出す。脚部から外した”GM-01 スコーピオン”にアタッチメントを取り付けることでグレネードランチャー”GG-02 サラマンダー”を装備。同時に左手にはアンカーユニットである”GA-04 アンタレス”を装着――

 

――屋上の縁にフックを引っ掛け、伸びたワイヤーを巻き戻していくことで、重量のあるG3の身体は素早く上昇していく。ジャンプ力ではクウガの青はおろか赤にも及ばないが、この方法によってそれらに比肩することができる。無論、武器で補えるのはそれだけではない。

 

「!」

 

 ともあれ突然屋上に現れた闖入者に、ガメゴは流石に驚きを隠せない様子だった。いまにも投げ出すつもりだった鉄球を構えたまま、こちらを凝視している。

 

「……なんだ、おまえは?クウガに似ている――」

 

(だろうな)――そればかりは心操も同意せざるをえなかった。G3はクウガをモデルにして設計されている。とはいえこれでも”警察の新装備”により相応しく改良されているようで、資料でのみ見たことのある前身のG2などはほとんどそのままの姿をしていた。クウガとは因縁浅からぬ彼らにとっては、見過ごせない存在であることに間違いはないだろう。

 ちょうどいい、とにかくこちらを意識してくれている。まず第一段階はクリアだと内心呟いた心操は、次に彼を知らぬ者からすれば予想外の行為に及んだ。

 

「なぁ、未確認さん。これってゲームなんだろ、楽しい?」

「ム……?」

 

 妙に親しげな、敵意を感じさせない口調。何のつもりかと、ガメゴは不思議そうに首を傾げている。ならばと、言い募る。

 

「教えてくれよ。喋れるんだろ、日本語?」

「……どういうつもりか知らないが、いいだろう」

 

 

――かかった!

 

 途端に、ガメゴの身体から力が抜けた。鉄球を繋ぐ鎖が、手から滑り落ちる。――心操が自らの個性”洗脳”を発動させたのだ。彼のことばに応えたがために、ガメゴはその発動要件を満たしてしまった。

 動物や無機物など、コミュニケーションが成立しない相手にはそもそも発動させられない個性――しかし以前ならいざ知らず、現在の、高い知能を有するグロンギ相手ならやはり通用するらしい。想定どおりだ。

 

「そのまま突っ立ってろ。そんで――」サラマンダーを、構える。「――こいつを、喰らえ」

 

 銃口を向け――トリガーを、引く。さらに鍛えられた心操の身体はもう、その反動によって揺らぐこともない。狙った先、ガメゴの胴体ど真ん中に、戦車をも粉砕する弾丸が吸い込まれていく。

 

――そして、命中した。

 

「グガァッ!?」

 

 鉄球の命中率を少しでも上げるために屋上の縁ぎりぎりに立っていたガメゴは、その衝撃で宙に投げ出された。情けなく四肢をばたつかせながら、地上数十メートルを落下していく。

 ほどなくして耳をつんざくような激突音が屋上まで響いてきた。すぐさま見下ろせば、地面に巨大なクレーターが出現している。その周囲には粉々に砕けたコンクリート片が無数に散らばっていた。

 

「やったか……?」

『油断は禁物だ、心操くん。死亡確認を』

「了解」

 

 確かに、グロンギはしぶといと聞いている。心操は再びアンタレスのアンカーを縁に引っ掛け、ビルの壁面を蹴りながら地上へ降下した。

 その間、クレーター内に動きはない。だがガメゴの死体も肉眼では確認できない。今度こそサーチ機能の出番か、と心操が考えたそのとき、バイクのエンジン音が接近してきた。

 

「!、心操くん……」

「……緑谷」

 

 緑谷出久――友人であり、クウガであり。いまこの場では見たくない顔だった。ヘルメットを脱いで露わになった大きな瞳が、ひどく複雑そうないろを孕んでこちらに向けられている。

 「どうだ」――そんな思いを抱いてしまったことは事実だった。独力でグロンギを倒すことができた。別にひとりにこだわるつもりはない、捜査本部の面々や轟焦凍――アギトと力を合わせることにはなんの抵抗もないのだ。ただ、この男とだけは。この男にだけは、戦わせるわけにはいかない。

 

 

 心操自身は気づいていなかったが、そんな思考に囚われる時点で彼は平常心ではなかった。死亡確認を速やかに実行しないまま、出久のほうにばかり視線を注いでしまっている。

 

 その数秒間が、ガメゴにつけ入る隙を与えてしまった。

 

「ヌゥウウウウンッ!!」

「ッ!?」

 

 覆いかぶさるコンクリートの破片群をことごとく吹き飛ばし、クレーターから姿を現したガメゴ。我に返った心操が振り向いたときにはもう、その手からは鉄球が放たれていた。

 

「が――ッ!?」

 

 意趣返しのごとくその直撃を胴体に受け、G3は後方へ弾き飛ばされる。「心操くんッ!!」という、出久の悲鳴にも似た声が響いた。

 壁に叩きつけられ、地面に転がる仇敵を眺めつつ、ガメゴは嗤う。その胸元には肉をえぐり取られたような傷痕が拡がっていたが、そんなものは意に介してすらいないようだった。

 

「ギバガラゾジャスドパ、ダギギダジャヅザバ」

 

 立ち上がれないG3に、その魔の手が迫っていく。

 

「だが、俺に勝つには不足だったな……」

「ぐ……く、そぉ……ッ」

 

 

「変、身ッ!!――うぉおおおおおッ!!」

 

 それを食い止めたのは、他でもない出久だった。身を躍らせながら赤のクウガへと変身を遂げ、ガメゴの横っ面を力いっぱい殴りつける。

 

「グォッ!?」

 

 不意討ちにたまらず後退するガメゴ。その間隙にクウガが割り込み、格闘の構えをとる。だが敵もさるもの、すぐに態勢を整え、反撃に及ばんとしている。鉄球を手にしていなくとも、その巨体は威圧感を与えるに十分すぎるほどだ。

 

「クウガ……ヅギパ、ゴラゲンダンバ」

「……」

 

 いまにもはじまろうとしている、クウガとガメゴによる第二ラウンド。自分は第一ラウンドの敗者と決められてしまったのだと、心操は思い知らされた。

 これが、現れたのがたとえば轟焦凍なら、それを認めるほかないと思えた。自分は大人しく引くか、援護に徹するべきだと。

 

 だが――

 

「……発目、G3の損傷程度は?」

『胸部ユニットにダメージ、バッテリー一部破損、出力70パーセントに低下……戦闘継続は可能ですが、この状況ですと距離をとって援護に回るのが妥当ってところですね!』

「そうか、継続できるんだな。――”GS-03”を使用する」

『えっ、私の話最後まで聞いてました!?』

 

 発目がそんな応答をするのも無理はなかった。”GS-03 デストロイヤー”は、高周波ブレードだ。刃が高速で振動し、分厚い鉄板すら易々と切り裂く。武器としての価値は高いが、考えるまでもなく接近戦専用だ。

 聞いてはいたが、無視したというのが実際のところだった。なんとか立ち上がった心操はガードチェイサーへ駆け寄り、刃だけでも幼児の背丈ほどもあるそれを取り出し、右手に装着した。

 

『待つんだ心操くん、無茶だ!ここは第4号の援護を――』

「……これしか、ないんです」

 

 上官である玉川の指示すら振り切り、心操のG3はデストロイヤーを振り回して突撃した。既に開始されているクウガとガメゴの戦闘に割り込んでいく。その乱入に鼻白んだのは、巨大すぎる刃を差し向けられたガメゴばかりではなかった。

 

「なッ……何するんだよ!?」

「うるせぇッ、どいてろ!!」

 

 普段の理知的な彼からは想像もつかない乱暴な口調で友人を突き放し、G3はデストロイヤーを振り回し続ける。高速振動するブレードに斬られるのは流石に憚られてか、ガメゴは打って変わって防戦一方だ。絶大な回復力をもつグロンギだが、攻撃を受けた際に苦痛を感じないわけではないのだ。

 ただ、強引に下げられてしまったクウガ――出久からすれば、それは快いものではない。友人があんな行為に及んだ理由は、つい二時間ほど前に警視庁で及んだ相剋を思えばはっきりしている。

 

(だからって、こんなときに……!!)

 

 苛立ちが溢れ出してくる。ガメゴでなく、味方ではあるはずの心操に対して敵愾心を抱くほど、いまの彼は荒れつつあった。

 一方で優位を取り戻したかにみえるG3だが、実際にはスーツと肉体両方に受けたダメージに喘いでいた。出力低下と痛みの二重奏で、動きが鈍っている。

 

(くそっ……こんなはずじゃ……!)

 

 出久があのタイミングで現れなければ。注意を逸らしたのは自分の責任でしかないと頭ではわかっているのだが、どうしてもそんな思いを抱いてしまう。

 とにかく、せめて他の増援が来るまでは粘らなければ――そう心したのとは裏腹に、ブレードを振り下ろす動きが一瞬鈍ってしまう。それを見逃すガメゴではなかった。

 

「ッ!?」

「ヌゥ……!」

 

 デストロイヤーの柄を受け止められ、それ以上の攻撃を封じられる。純粋なパワー比べでは、ゴでも剛力の部類に入るガメゴに圧倒的な分がある。

 再び形勢が入れ替わりかけたそのとき、またしてもクウガが飛び込んでくる。ガメゴが咄嗟に後退する。一瞬並び立つ形になったふたりの戦士だが、心操にはやはりそれが許せなかった。

 

「どいてろって言っただろ!」

「ッ、この期に及んでンなこと……!きみこそッ、そんな状態でしゃしゃり出てくるな!!」

「ンだと……!」

 

 その反目はもはや、互いの心ひとつでは抑制不可能なものにまで膨れあがってしまっていた。敵がいることを忘れるほど彼らは愚かではないが、その敵を一瞬意識の外に追いやってしまう程度には彼らは頭に血が上っていた。

 そんなさまを少し距離を置いて見つめるガメゴ。彼は肩をすくめ、ふたりを嘲笑するような振舞いを見せる。

 

「ババラパセドパズ、ギヅンバジョ、ジュグザバ……」

 

 指輪に手をかけ、鉄球へと変える。じゃらりと鎖が鳴る音にクウガとG3がこちらを向いたが、もう手遅れだった。

 

「ぐぁッ!?」

「がはッ!?」

 

 互いに詰め寄っていたことが災いして、鉄球の一撃にまとめて吹っ飛ばされる。常人であれば即死の一撃、クウガもG3も無事でいられるはずがない。ましてG3――心操は既に一撃受けてしまっている。

 

「ッ、心操、く……!」

「……ちく、しょう……ッ!」

 

 既に起き上がることもできない状態で、心操はそれでも拳を握りしめ、震わせている。ただ敵に追い詰められているからではないことは、もはや考えるまでもない。

 

(なんでだよ……。なんで、そこまで……!)

 

 クウガの拳にもまた、力がこもる――初めて、敵に対する怒りとは異なる理由で。

 

 そんな青年たちの相剋は、ただ敵を利するだけだ。

 

「愚かな……。手札を自ら捨てたようなものだ」嘲りつつ、「つくづく俺もツイているな、ハハハハ……!」

 

 迫るガメゴ。まだ戦える出久も、動けない心操を捨て置く決断はできない。――ガメゴの言うとおり、自ら手札を捨ててしまったのだ。

 

「ゴパシザバ――」

 

 ガメゴが鉄球を振り上げる、刹那――氷柱が奔り、その身を振り飛ばした。

 

「グォッ!?」

「――!」

 

 

「轟、くん……」

 

 轟焦凍――彼の変身した、三色の戦士アギト。その右の足下から、氷結が生み出されている。生まれながらにもつ個性が、超人と化すことによってさらに強化されているのだ。

 その虹色の瞳はいま、右よりも左のごとく燃え盛っている。だがそれは仲間たちを傷つけた敵よりも、むしろその原因を自らつくってしまった当人らに向けられていた。彼は見ていたのだ、出久たちの行動を。

 

「ッ、何を――」

 

 

「――何を、してんだよ……!!」

 

 その瞋恚が、ビル街の狭間に重々しく響き渡った。

 

 

つづく

 

 

 




ミッドナイト「次回予告の時間よ」

ミッドナイト「友情ゆえにぶつかり合う緑谷くんと心操くん、そんなふたりに怒りを覚える轟くん。う~ん青臭いわねぇ……好み!だなんて言ってる場合じゃないわね。今回の未確認もやっぱり超強敵!緑谷くんと心操くんは病院送りにされちゃうわ。彼らの心を解きほぐすべく色んな人達が奔走する中、なんとあの人もまた彼らのもとを訪れる!?その口から語られるのは、個性黎明期に巨悪に立ち向かった、とある異形の英雄の話――」

EPISODE 33. We`re 仮面ライダー!

ミッドナイト「よい子は見ちゃダメ☆……じゃなかった」

ミッドナイト「人々の自由と笑顔を守るため!さらに向こうへ、プルスウルトラー!!……やっぱりコレね!」
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