【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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まえがきネタ普段から考えてるんですけど、いざ投稿ってなるとたいがい忘れます。


EPISODE 33. We`re 仮面ライダー! 1/4

「何を、してんだよ……!!」

 

その瞋恚が、ビル街の狭間に重々しく響き渡った――

 

 

「アギト……ゴグバ、ゴラゲグギダバ!」

 

あと一歩での勝利を阻まれたにもかかわらず、ガメゴはむしろ嬉しそうに声をあげた。同じゴの強豪たちを、次々と倒してきたリントの戦士たち。彼らと繰り広げられるはずだった死闘がこんなしまりのないもので終わるのは残念だったし、クウガに優る戦闘能力を有するという超人アギトとは一度戦りあってみたくもあった。低く唸るような怒りに身を焦がしているこの異形は、果たしてどこまで楽しませてくれるか。

 

鉄球を振り回しながら、悠然と迫るガメゴ。対してアギトの動きは素早かった。

 

(ワン・フォー・オール――)

 

(――フル、カウル……!!)

 

 

オールマイトより受け継いだ超パワーを全身に纏わせ、その身を躍らせるアギト。復帰から二ヶ月、みっちり鍛え直したおかげで再びコントロールできるようになった。まだオールマイトのようにフルパワーとはいかないが、彼には半冷半燃という生まれながらの強力な個性もある。

 

「ウラァッ!」

 

迫り来る敵めがけ、鉄球を振りかぶるガメゴ。それは常人からすれば見かけにはふさわしくないスピードで放たれた攻撃だったのだが、アギトはそれをかわした。正確には、ガメゴの視界から消えたのだ……一瞬にして。

しかし目線を逸らした刹那には、アギトは再び目の前に現れていた。

 

「――ハァッ!!」

 

鋭い蹴りが、ガメゴの腹部に突き刺さる……いや、浅い。深く食い込んでいればかなりのダメージを与えられたかもしれないが、実際には一、二歩後退させるだけに終わった。そんなだから、アギトが着地すると同時に、再び鉄球による攻撃を仕掛けてくる。

 

「チィ……ッ!」

 

身代わりに砕け散るコンクリート。その破片に舌打ちをこぼしつつ、アギトは後ろに飛び退いた。右足が地面に触れると同時に、"右"を発動させる。奔る氷柱。しかしそれは、鉄球によって容易く粉砕されてしまった。

 

かまわない。これはあくまで目眩まし、本命はこれからだ。

 

「こいつは、砕けねえだろッ!!」

 

"左"――燃焼。猛火が迸り、ガメゴに喰らいつく。氷結と違って固体ではないから、彼の言うとおり鉄球では防ぎようがない。

 

「グォアッ……!?」

 

咄嗟に庇う動作をした腕の皮膚が深いところまで灼かれ、うめくガメゴ。即座に治癒へと転じるとはいえ、わずかな間でも動きは鈍る。

その瞬間こそ勝利を獲りにいくときだと、轟焦凍は心していた。

 

「ふー……ッ」

 

深々と息を吐き出しながら、両拳を後ろに引く。受け継いだ力を示す光流が、ますます烈しい輝きを放つ。

 

「ワン・フォー・オール……!」

 

そして――跳ぶ!

 

「KILAUEA McKINLEY SMAAAASH!!」

 

右と左、両拳。さらに"進化"したアギトの必殺技は、直撃すればいかにゴのグロンギといえどもただではすまない。

実際、焦凍は勝利を確信していた。オールマイトと父・エンデヴァーと、お母さんの力。この一撃は、それらすべてがひとつになったもの。決して破られるはずがない――

 

恐怖を感じたのか、ガメゴがこちらに背を向ける。――もう遅い、逃がさない。

 

 

そして、ビルの谷間に激しい衝突音が響き渡る――

 

「………」

「な……ッ!?」

 

彼の口から漏れ出したのは、勝利の歓声などではなく、驚愕に上擦った声にほかならなかった。

拳はガメゴの背中――甲羅を捉えていた。そこからは白煙すらも上がっている。だがそのあまりに硬い感触は、肉体そのものにまでダメージを通していないことを明らかに示していた。

 

「……大した攻撃だ、バルバたちが執心するのもわかる。が、俺を討つには今一歩だったな」

「ッ、くそ……!」

 

ガメゴの後頭部を睨みつけるアギト。しかし彼はその頭越しに見た。かろうじて立ち上がったクウガが、転がっているデストロイヤーを手にこちらへ駆けてくるのを。

 

「緑谷……!」

「うぉおおおッ、超――変身ッ!!」

 

モーフィンクリスタルの赤い輝きが紫へと変わると同時に、全身を電光が覆い尽くす。全身の筋肉が膨れ上がり、鎧が変化する――銀と紫を一瞬経由して、紫と金に。デストロイヤーもまた、黄金の刃をもつ大剣へと変化した。

 

紫の金、ライジングタイタンへと超変身を遂げたクウガは、堅牢な鎧を揺らしながらガメゴへ迫る。迎撃しようとするガメゴだが、背後にいるアギトがその身を羽交い締めにしたことで、それも不可能になった。

 

「ッ、ビガラ……!」

 

たじろぐガメゴの腹部に、剣が突き刺さる。今度こそ――

 

「!?、ぐ、く……ッ!」

 

苦しげな声をあげたのは……クウガのほうだった。ソードが完全に貫くことができたのは、表皮のみ。分厚い脂肪と強靭な腹筋は、ゴ・ジイノ・ダにすらとどめを刺したライジングタイタンソードすら受け止め、寄せ付けない。そのために、一瞬浮かび出でた封印の紋は体内に浸透することなく消失する。

 

「ボンバロボゼゴセ、ゾダゴゲスバ……!」

「こ、の……ッ!」

 

懸命に奥へ突き入れようとするクウガ。しかしそれはかなうことないまま、アークルを覆う黄金の煌めきが失せていく。

 

(まずい、制限時間か……!)

 

それを目の当たりにしたアギトは、敵越しの仲間の異変を悟った。

 

「これ以上は無理だッ、下がれ緑谷!」

 

だが"あと一歩"を手放せない出久は、そのことばに従わない。そのうちに制限時間である三十秒が経過し、黄金の輝きは完全に失われた。もとの――エネルギーを消耗しきった――タイタンフォームに戻ってしまう。

その瞬間を逃さず、ガメゴは頭を力いっぱい後ろに振りかぶった。突然の一撃は見事にアギトの顔面を捉えてしまった。

 

「ぐッ!?」

 

予想外のダメージに、アギトの身体から力が抜ける。その隙に腕を振り払い、剣を腹で受け止めたまま鉄球をつくり出す。ここに至ってようやく退避しようとしたクウガだったが、遅きに失したと言うほかなかった。

 

「グゲソッ!!」

「が――ッ!?」

 

鉄球が捉えたのは――クウガの、左目だった。ガラスが割れるような音とともにルビーのような飛沫が飛び散り、その身が後方に吹き飛んでいく。

やがて地面に叩きつけられ、転がる身体は萎んで弱々しい白のクウガへと変わってしまった。それも一瞬のことで、完全に静止する頃にはもう緑谷出久の姿に戻っていたが。

 

「緑谷ッ!!」

「ふん……次はおまえもああなる」

 

腹から血を流しながらも、ガメゴは余裕綽々でそう告げた。グレネードランチャーの直撃を受けた傷痕ももうほとんど消えてしまっている、腹の傷もじきに癒える。致命傷でないそれらは、彼らにとって戦闘継続になんの支障もなさないのだ。

 

焦凍は心中で舌打ちした。この敵、攻守ともにこれまでのグロンギの比ではない。以前より出力の上がったワン・フォー・オールの一撃も、紫の金の力も通用しなかった。ひとりで戦うには、厳しい相手だ。だがそれでも、こちらから退くわけにはいかない――

 

 

頭上から爆発音が響いたのは、そんな、完全なる一対一の戦闘がはじまろうとしているときだった。

 

「――死ィねぇえええええッ!!」

「!」

 

漆黒の影により放たれる、爆破。それはガメゴのみを呑み込み、アギトにはただ熱風だけを浴びせかけた。

 

「チィッ、大層なナリしといて苦戦してんじゃねえよ半分野郎!」

「爆豪……」

 

ヒーロー・爆心地こと、爆豪勝己。この場で唯一変身体もパワードスーツももたない生身の人間であるにもかかわらず、まったく気後れすることなくガメゴの目前に降り立ち、掌から威嚇の爆破を繰り返している。

 

「……次から次へと。まるでゴキブリだな」

「ア゛ァ!!?ゴキブリはテメェらだろうが!!」

 

聞いていたとおりかつてのリントとはかけ離れた言動。この男の"個性"とやらも、この不敵な態度に違わぬ強力なものであると聞く。クウガやアギトのように致命的なものにはならないにせよ、厄介なことには変わりない。

それでも戦ってみるのもまた一興――そう考えたガメゴだったが、自らの手を見下ろして即刻改めた。

 

「……ダラギセバ。ガゴヂグ、グギダジョグザ」

「グギグギうぜぇわッ、どっちかに統一しろや!!」

 

図々しくも指図しながら、ついにこの爆発男が襲いかかってきた。素早く飛び退きながら、ガメゴは指輪に手をかける。それを鉄球へと変化させるや、思いきり振りかぶった。ただし敵に対してではなく、すぐそばの、ビルの外壁に向かって。

 

「!?」

「爆豪ッ!」

 

鉄球の一撃によって破砕されたコンクリート片の群れが、まるで狙い澄ましたかのように――実際ガメゴは狙ったのだろうが――落下してくる。破片といえども大きいものでは数十センチ四方であり、頭にでも直撃を受ければひとたまりもない。勝己はそちらに向かって爆破をなせばならず、そのために彼らの視界は一瞬塞がれた。

 

無論、爆炎が遮蔽しているからガメゴの側からの攻撃も至難。だがそもそも、彼にそのつもりはなく。

 

炎と煙とが収まり視界が確保されたときには、この場に未確認生命体の姿はなかった。

 

「チッ……――デク!!」

 

逃げられた――グロンギの逃げ足の速さを嫌というほど思い知らされている勝己は、深追いすることをせず倒れている幼なじみのもとへ真っ先に駆け寄っていく。

 

「デ……」

 

呼びかける声は、途中で途切れた。――地面を汚す、赤黒い血潮。

それは固く閉ざされた左瞼の奥から、流れ出でたものにほかならなかった。

 

「ッ、……轟」

「……なんだ?」

「あの亀野郎、ンな強かったんか」

 

先ほどまでの烈しさとは打って変わった、しずかな問い。それは彼をして努めて振る舞いを抑制せねばならぬほど、心が荒れ狂っていることの証左にほかならない。焦凍にはそれがよくわかる。彼とは浅からぬ関係を数年にわたって続けているし、何よりまったく同じ気持ちだった。

 

「ああ……強かった」そこは認めつつ、「けど、それだけじゃねえ」

「どういうこった」

「そこで寝てるそいつが、一番よく知ってるはずだ」

 

 

「――そうだろ、心操」

「……ッ、」

 

動力を完全に失い、倒れ伏したままのG3――心操人使。それゆえ彼は指一本を動かすこともできず、ただふたりのヒーローの怒りの視線を受け止めるほかないのだった。

 

 

 

 

 

その様子をモニターしながら、玉川三茶は深々と溜息をついていた。猫耳がしゅんとしなだれている。

 

「こんなの、上にどう報告すりゃいいんだ……」

 

これは困ったことになったと思った。ただ逃走を許してしまった、敗北したというだけなら言い訳も立つ。適切な戦法をとってそれでも勝てないなら、武装をさらに改良するなり捜査本部と協議して作戦を立てるなり手段を講じるすべはあるのだ。

だが今回の初オペレーション、何よりの問題は誰がどう見ても心操の行動に問題があった。あとから現れたクウガと協力するどころか妨害し、敵の面前で反目しあった。その結果、敵を利してしまった――

 

まだ学生とは思えないくらい冷静で合理的、それでいて市民を守るのだという情熱を持ち合わせている心操。そんな彼があんな行動に出た理由は、実のところはっきりしている。クウガ――その正体である緑谷出久と、親しい友人であるということ。もっと言えば、その親しい友人が、戦いを続けるほどに人ならざるもの――戦うためだけの生物兵器へと、変わってしまう危険性を聞かされたことだ。

 

G3装着員とするにあたって、心操について徹底的な身辺調査が行われている。玉川はその結果が掲載された書類に目を落とした。大学での交友関係はそれなりにあるが、中でも最も親しいのがあの緑谷という青年だった。学内はもちろん課外でも行動をともにしている姿が頻繁に目撃されているらしい。

個性のことで孤独な少年期を過ごし、ヒーローになる夢もあきらめざるをえなかったふたり。その秘めたる正義感も相俟って、深く通じあうところがあったのだろうことは想像に難くない。

 

だからこそ、その友情で最初から見事な連携をとってくれると期待していたのだが、よもや裏目に出てしまうとは。

 

(まいったな……。論理的に叱責するにせよ、彼だって自分の行為が愚かしいことくらい理解しているだろうし)

 

相手がわかっていることをくどくど説教したところで無意味、だが感情的になって責めるのも上司のすることではない。猫髭をぴくぴくさせながら、玉川は頭を悩ませる。実のところ、彼もまだ他者を導くことにかけては経験が浅いのだ。かつて上司だった合同捜査本部の管理官殿に泣きつくという選択肢も浮かんだが、ひとまず頭の中のゴミ箱に放り込んだ。

 

「困ったニャァ……」

「困りましたねぇ~」

 

隣で追従する発目研究員は、ことばとは裏腹にのんびり修理の準備に取りかかっているようだった。

 

「……そうは見えないけどな、きみのほうは」

「そんなことないですよ。私たちのドッ可愛いベイビーちゃんであるG3が活躍もできずボロボロになるのは誠に遺憾です!」

「あぁ、そういう……」

 

まあ、G3産みの親のひとりとしては当然の感情か。

 

「ただ今回は緑谷さん絡みの問題ですから、おそらく爆豪さんたちがなんとかしてくれますよ」

「……そうなのか?」

「ええ。私の見立てですと、とりわけ爆豪さんは緑谷さんの保護者のようなところがありますし。轟さんはそうですねぇ~……弟のような印象がありますね!」

「ホゴシャ……オトウト……」

 

よもやあの、傲岸不遜な爆心地とクールなショートが――それ自体悪い事実というわけでないにもかかわらず、緑谷出久というあの平凡な印象の青年の得体の知れなさに、伏魔殿に足を踏み入れてしまった気分になる玉川なのだった。

 

 




キャラクター紹介・リント編 バギングドググドズゴゴ

耳郎 響香/Kyoka Jiro

個性:イヤホンジャック
年齢:21歳
誕生日:8月1日
身長:156cm
好きなもの:ロック・一見チャラそうで実は一途な男
個性詳細:
耳たぶが生まれつきコード状に変形しており、先端のプラグを挿した相手に自らの心音を爆音の衝撃波としてぶつけることができるぞ!ペガサスフォーム相手にやったらデク死亡確定!?
攻撃以外にも壁や地面などに挿すことで微細な音を探知することもできるなど、索敵能力も高い!汎用性の高さがウリだが、自分が爆音喰らうと死ねるので要注意だ!

備考:
ヒーローネームは個性と同じ"イヤホン=ジャック"。勝己らの同級生の女子の中でも最も男勝りでサバサバした性格だが、意外と乙女チックなところもあるぞ!
個性に違わず音楽関係、特にロックには造詣が深く、プロヒーローながらそちらの活動も行っている。趣味が高じた形だが評判は上々だ!
旧A組のメンバーの中ではとりわけ八百万百、および上鳴電気と親しいようだ。特に上鳴とは友人以上の関係にあるらしい。上記の"好きな男のタイプ"はほぼ一個人を指しているような気もするがあまり追及してはいけない(戒め)

作者所感:
峰田にマークされてないことに地味に傷ついてるあたりがカワヨ。クールなようで上鳴のことは結構からかったりしてるのがいいと思います。穏和な出久とか口田くんとの相性もよさそう。

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