【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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報告忘れてましたが無事アークル予約できました。


EPISODE 33. We`re 仮面ライダー! 3/4

 薄暗い一室。その中央で、三人の男女がポーカーに興じている。それぞれが手持ちのカードを見つめつつ、悟られぬよう歓喜あるいは焦燥を押し殺す。

しかしその果てに、ついにギャンブラー風の男が勝負に出た。

 

「ロサダ、ダダ!」

 

 晒された手札。派手な服装の女は小さく舌打ちをし、詰襟の少年は深い溜息をつく。この男――ゴ・ガメゴ・レに賭け事で勝てたためしがない。G3のトラップでビルから墜落したときは溜飲が下がったが……それからアギトの攻撃を受け、さらにライジングタイタンソードに腹を貫かれてもなお、彼はこうして涼しい顔でカードを玩んでいる。人間としての姿である細身の青年からは、想像もつかないタフネス。基本的に互いの力は認めあっているゴの面々だが、実力に裏打ちされたガメゴの不敵な態度は、まだ若く血の気も多いこの遊び仲間たちには不愉快でならなかった。

 

 と、どこからともなくふたりの審判者――バルバとドルドが現れて。

 

「グン、パルギデ、ビダバ?」

 

 それをゲゲル再開を促す合図と捉えたガメゴは、カードを置いて悠然と立ち上がった。

 

「ボンバボグガスビ、ボドダンリント……"ケ・セラ・セラ"」

 

 「なるようになる」――生粋のギャンブラーであるゴ・ガメゴ・レだからこそ、吐けることばだった。

 

 

 

 

 

 椿医師と沢渡桜子の訪問を受けた心操人使と爆豪勝己は、彼らとともに病院の廊下を進んでいた。上からジャケットを羽織っているとはいえ勝己は爆心地のコスチュームのままだから、どうしたって入院患者や看護師たちの目をひく。そんなものに興味はないとばかりに、勝己は前だけしか見ていなかったが。

 

「確か、6号のときだったか……」つぶやく椿。「やられたあいつが、初めてここに運び込まれてきたのは」

「……そんなこともありましたね」

 

 感慨深げに応じる桜子。6号といえば、心操がリアルタイムで初めて接した未確認生命体だ。いずれにせよ、彼らが長い眠りから醒めてまだ数日というときに現れた存在。

と、するならば。

 

「……沢渡さんは知ってたんですか?そんな、早くから」

「うん。……ていうか、見ちゃったのよ。出久くんが、初めて変身するところ」

「え……」

 

 

「出久くんね、1号から私を庇って――殺されかけたの」

 

 ひゅ、と喉が鳴った。

 

「そんなときに、遺跡から発掘されたあのベルトを身につけて……出久くんはクウガになった」

「……そんなことがあって、そのあとも大怪我して。なのにあなたはどうして、緑谷が戦うのを受け入れられるんですか?」

 

 声が震えるのを止められぬまま、心操は問うた。この女性が、出久が傷つき人でなくなっていくのを認めるなんて。

 

「私だって最初は嫌だったよ?爆豪さんもそうだったし……だから出久くんを止めてってお願いしたのに、何があったか知らないけどバイクあげちゃうし……」

「……スンマセン」

 

 憮然とした表情ながらも、勝己はきちんと詫びのことばを述べた。その願いをいったん聞き入れておきながら、自分は変節した。それは言い訳のしようがない。

 

「けど……覚えてないかな、心操くんが言ってくれたんだよ?"ふつうに考えて、ふつうにやればいい"って」

「!」

 

 そういえば、そんな話もしたかもしれない。あのとき悩んでいた桜子に、自分なりの思いの丈を伝えた。それをきっかけに桜子は、どんなことがあっても出久を支えようと決めたのだ。

 

「出久くんが戦わずに済むなら、それが一番だけど……でも出久くんが戦うって決めたんだから、私も頑張ることにしたの。私は直接戦えないけど、できることはあるから」

「………」

 

 そう言って微笑むこの女性(ひと)は、本当に強いと心操は思う。そういえば36号事件が起きた頃だったか、出久がひどく悩んでいて、「どう生きていけばいいかわからない」とまで吐露してきたことがあった。次に会ったときにはすっかり立ち直っていたようだったが……自分の与り知らぬところで、きっと力を尽くしていたのだろうと思う。

 

(ふつうに考えて、ふつうにやる……か)

 

 きっと自分にも、それを実践しなければならないときが来た。

 

 

 気づけば目当ての病室の前に到着していた。

 あ、と思ったときにはもう、椿が扉をノックしていて。変に躊躇して時間を浪費せずに済むのはむしろありがたい、心操はそう考えることにした。

 

 扉が引かれ、病室内が露わになる。その奥にはベッドに腰掛けた緑谷出久の姿があって……ちょうど、左目の包帯を外していたところだった。

 

「あ………」

「………」

 

 出久と心操、ふたりの視線が交錯する。しかし彼らが口を開くより先に、他の面々が出久のもとへ歩み寄っていった。

 

「出久くん」

「あっ、あれ……沢渡さん?」

 

 今度は元々大きな目をさらに見開く。彼女がなぜここに?そう顔に書いてある。

 桜子は努めて笑顔で応じた。

 

「ちょっと、話すこととかあってね。まさか出久くんが運ばれてくるとは思ってなかったけど」

「……ごめん、心配かけて。でももう大丈夫だから。視力もちゃんと戻ってるみたいだし」

 

 瞼をぱちぱち開閉してその健在をアピールする出久。確かにその左目はもとの翠の輝きをすっかり取り戻していている。たかだか数時間前、鉄球に潰されたとは思えない。

 

「そっか」

 

 桜子はただ、そううなずいただけだった。治ったということは、出久はまた戦場に出ていくということ。またこんな傷を負いかねない――でなくとも、確実に"戦うためだけの生物兵器"に進んでいく戦いに、また飛び出していく。それでも彼女は、引き留めないのだ。

 

 その様子を見守っていた心操は、意を決して前に進み出た。出久も思わず立ち上がったから、自ずと対峙する形となった。

 暫しの静寂。居合わせている桜子も椿も勝己も焦凍も、口出しせずに見守ってくれている。これ以上は、ふたりの行動にかかっている。

 

 心操はす、と息を吸い込んだ。そして、

 

 

「「――ごめん!」」

 

 ふたりが勢いよく下げた頭は、すぐ上げられてしまった。怪訝な表情とともに。

 

「……なんで、あんたが謝る?」

「いや、その……」

 

 一瞬口ごもりつつも、出久は正直な胸中を告白した。先ほど焦凍に吐露した、そのままを。

 

「……そんなふうに、思ってたのか」

「うん……勝手なのはわかってる。とにかくそのせいで、余計にカッとなって、わかってもらおうともしなかった。……だから本当に、ごめん」

「緑谷……」

 

 「でも、」――出久のことばには続きがあった。

 

「僕はやっぱり、きみに戦ってほしくない。できることならいまからでも装着員を辞退してほしいって、そう思ってる」

「……ッ、」

「だから……そこまで含めて、ごめんなんだ」

 

 それを聞いた心操は――拳を、握っていた。

 見かねた椿が思わず間に入ろうとするが、勝己がそれを手で制する。心操が次にとる行動がどんなものであるか、彼は信頼することができていた。出久をはっきり友だちだと言った、この男なら。

 

 やがて心操は、勝己の信じたとおり、振るうことないまま拳を解いた。

 

「……それはさ、俺だって同じだよ」

 

「誰がなんと言おうと、俺はおまえに戦ってほしくない。おまえには戦いとかじゃなくて……ばあちゃんの大荷物持ってやるとか、そういうやさしい人助けだけしといてほしい」

「………」

「でもおまえは、絶対に引かないんだろう?」

「……うん」

「じゃあそれも、俺と一緒だ」

 

 俺たちは自分の意志を曲げられない。自分が危険に身を投じることも、相手にそれをさせたくないことも。

 だったら――答えは、ひとつだ。

 

「だったら、俺がおまえを守る」

「!」

「その代わり――おまえも、俺を守ってくれよ」

「心操、くん……」

 

 「嫌か?」と意地悪く訊くと、当惑していた出久は慌てて首を振った。こういうしぐさは、いままでと何も変わらない。変わらないこの出久を、守りたいと思う。

 

 だから出久が伸ばした手を、心操はとった。傷ついた右手、それもきっと誰かを守るため……救けるために負った傷なのだろう。悔しいけれど、そういう人間だからこそ、心操は友だちと呼ぶことができるのだ。

 

「なぁ、」

 

 不意に焦凍の声が割り込んでくる。それもどうしてか、やや不満そうな。

 

「お前らが仲直りしてくれたのはいい。……けど、俺たちがいることも忘れるな。俺たちだって全力で、お前らを守る」

「う、うん。ありがとう轟くん」

「……オイ、"たち"ってなんだ。まさか俺も頭数に入れてねえだろうな?」

「そりゃ入れるだろ」

「ざけんな半分野郎、テメェの身はテメェで勝手に守りゃいいんだボケ」

「……また心にもないことを」

「アアン!?」

 

 そんなやりとりも、もはや様式美とでも言うべきか。

 くすくすと笑いすら漏れる病室内。――そんな一連の会話を外で聞いていた玉川三茶は、ふっと小さな溜息をついた。

 

(発目くんの言うとおりだったニャ……)

 

 G3の修理を委ねてここに来てはみたが、必要なかったようだ。自分が何か言わずとも、彼らは期待した以上の連携を見せてくれるだろう。

 

 病室には入らず、黙って去ることにした玉川。そんな彼を呼び止めたのは、彼より随分と歳を重ねた重厚な声だった。

 

「やあ、久しぶりだねえ玉川くん」

「!?、あ、あなたは……」

 

 

 病室の扉が再びノックされたのは、その邂逅から三十秒も経たないうちだった。

 

 今度は誰だ?そんな疑問が皆の胸に浮かぶ。心操は玉川さんだろうと見当をつけていたが、それは半分正解というところだった。

 

「失礼するよ」

「!?」

 

 玉川とともに現れた、体格のいい壮年の男性。警察官の制服を纏ったその姿に対する反応は、彼を見知った者とそうでない者で二分された。

 

「あ……あなたは、警視総監の……」

「えっ!?」

 

 警視総監――日常生活においてはまったく馴染みのない最高級の警察官を表すことばに、後者の側だった桜子と椿は驚きを隠せないようだった。

 

「おぉ、覚えていてくれたか緑谷くん。ハッハッハッハ、嬉しいねぇ」

「それは……まぁ……」

 

 忘れられるわけがない、こんな濃いキャラクター。風貌はそこまででもないが、纏うオーラは一度だけ対面したことのあるオールマイトにすら匹敵するものだと感じる。

 

「初めてお会いする方もいるから自己紹介しましょうか。警視総監を務めている本郷猛と申します。以後お見知りおきを」

「あ……」

 

 桜子と椿が揃って名乗り返そうとするが、本郷はそれを手で制した。

 

「結構結構、あなた方のことは存じている。城南大学考古学研究室の沢渡桜子さんに、こちらの病院の監察医である椿秀一先生。日頃のご協力、心から感謝を表します」

「!」

 

 淀みなく言い当てられ、呆気にとられるふたり。その間に本郷の視線は心操へと向いていた。柔和な瞳の奥に常人離れした強靭な意志を感じ取って、心操は思わず身体をぶるりと震わせてしまった。

 

「G3装着員の心操人使くん……直接あいまみえるのは初めてだが、その様子だと、私のことは知っていたようだね」

「……警察の情報は、以前から収集していましたので。ニュースやホームページで拝見したことが何度か」

「ハッハッハ、そうかそうか。きみは元々警察官志望だったんだものな」

 

 鷹揚に笑う警視総監は、若者の多いこの場では浮いていると言わざるをえない。見かねた玉川が遠慮がちに声をかけた。

 

「あの、失礼ですが総監……こちらにいらっしゃったのは……?」

「あぁ……実はきみたちの先ほどの戦いについて耳にしてね」

「!」

 

「正直、芳しいものではないと聞いた。だから老婆心ながら心配して来てみたんだが……どうやら、杞憂だったようだね」

「………」

 

 当事者ふたりは悄然と黙り込むほかなかった。もう和解したとはいえ、自分たちの意地の張り合いがこんな地位ある人間を動かしてしまうものになるとは――無論本郷のフットワークが軽すぎるのもあるが――。

 

 ただ本郷はもう、玉川同様咎めるつもりはないらしかった。

 

「解決したならもう何も言わんさ。次こそは見せてほしいね、――"仮面ライダー"の名を継ぐにふさわしい者の戦いを」

「へ……?」

 

 

――仮面、ライダー?

 

 ヒーローネームを思わせるその響きを、しかし当の本郷を除いては誰も、知る者はなかった。ことヒーローについてはすべて知り尽くしている、そう言っても過言ではない出久でさえも。

 

 

 




キャラクター紹介・グロンギ編 バギンドゲギド

ウミヘビ種怪人 ゴ・ベミウ・ギ/未確認生命体第39号※

「グスパギ、ブギゾ、ババゼスザベレ」(麗しく死を奏でるだけよ)

登場話:
EPISODE 26. ネクストステージ
EPISODE 28. ストレイボーイ
EPISODE 30. それぞれの波紋~EPISODE 31. エチュードの果てに

身長:198cm
体重:172kg
能力:
超低温を発生させる鞭

行動記録:
ウミヘビの能力をもち、水中で自在に活動できる女性グロンギ。グロンギとしては珍しく振る舞いは優美であり、ピアノの演奏(特にクラシック)を好む。その音色はゴ・ガリマ・バも惹かれるほど。
ゲゲルのルールもピアノにちなみ『革命(のエチュード)』の音符と音階を反映した極めて複雑なゲゲルを行った。鞭を標的の胸部に一瞬触れさせただけで超低温による心臓麻痺を起こさせるという殺害方法は神業と言うべきものであり、当初は死因が判明しないほどであった。
人間体の風貌は(髪色などを除けば)轟焦凍の母である冷に瓜二つであり、母に会うことを躊躇っていた焦凍をひどく困惑させる。親子というものについて理解し、ルールを逆手にとられてプールに誘い込まれた際には「お母さんを騙すなんて酷い」と言い放ち焦凍を混乱させようとする狡猾さも見せた。
が、既に爆豪勝己や父・エンデヴァーのことばによって立ち直っていた焦凍には通用せず、そのまま戦闘に入る。焦凍の変身したアギトのほかクウガ・ドラゴンフォーム、爆心地、インゲニウムの4人を相手取りながら一歩も引かず奮戦したが、彼らの連携により着実に追い詰められ、最期はライジングドラゴンフォームのライジングスプラッシュドラゴンによって空中に投げ飛ばされたところにアギトのライダー・トライシュートを受け、意識を喪失した状態で凍った水面に叩きつけられ爆死した。彼女の死は、それを見届けたガリマの行動にいかなる影響を及ぼすのであろうか……。

作者所感:
出番は少なかったですが結構カラーを出せたんじゃないかなーと思うグロンギです。轟母にそっくりって設定は能力から着想しました。あとはガリマと親しくなるという原作では絶対にありえない(そもそも登場時期が被ってない)設定もくっつけました。
原作の彼女はアレですね……こう、ちょっとよい子には見せられないような界隈で大人気だったりしますね。台詞が二言しかない(しかも両方グロンギ語)でグロンギにしては比較的キャラ薄めだったんですが、やはり水着が男どもを惑わせたんでしょうか。

ちなみに上記の台詞で"~レ"を"~よ"と本来ではありえない訳し方をしてますが、これはグロンギの女性詞らしいです。ベミウのほかにはバラさんがEPISODE 10(原作)で使用してます。一応はグロンギにも男女の別があるんですね。考えてみるとドルドは女性怪人には比較的親切だったりします。

※原作では第38号
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