【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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夢の日曜朝8時投稿。予約投稿って便利ですよね


お気に入り100件超えありがとうございます!!ホントは前回の時点で書くべきだったんでしょうが、すっかり忘れてしまい……大変失礼いたしました

さて、いよいよマイティフォームの登場です!クウガとしては避けて通れないというか、序盤最大のみどころである炎の教会……きちんと描けているかドキドキです。あと言うほど長くならなくてよかったです(笑)



EPISODE 2. 緑谷出久:クウガ 4/4

 自分と同じベルトを巻いた青年が、右腕を突き出し、構えをとる。次の瞬間、その姿は異形へと変わる。自分が変身した白い戦士に、よく似た異形へと。

 

――似ている。そう、よく似ているのだ。だが決してイコールではない。脳裏に浮かんだその姿は……赤に、染まっていた。

 

 

「ちょっと出久くん、一体何やってたの!?」

 

 喫茶店の入口前にオートバイを停めて早々、そう声をあげながら桜子が駆け寄ってきた。その表情には、理由も告げずに置いていかれた怒りがにじんでいたが……同時に、ある程度見当がついているようでもあった。

 

「まさか、戦ったの……!?」

「……うん」

「そんな……」

 

「でも……駄目だった」

 

「え……?」

 

 メットを脱いだ出久の瞳の翠は、暗く濁っていた。

 

「やっぱり、通用しなかったんだ、あいつらには……。僕は、何もできなかった……ちゃんとした姿にすら、なれなかった……」

「ちゃんとした、姿……?」

「イメージで見た戦士は、赤い身体をしてた。僕も、白じゃなくて……本当は赤にならなきゃいけなかったんだ……」

「出久くん……」

 

――中途半端に関わんな。

 

 勝己のことばが、脳裏に焼きついて離れない。それがすべてなのかもしれない。

 

 力も覚悟もない自分では、真の英雄(ヒーロー)にはなれない。中途半端な存在にしかなれない。それだけの、ことだった。

 

 

 

 

 

 約束どおり、出久は桜子を通夜会場まで連れていった。夏目教授とかかわりも面識もない学生であること、服装も場にふさわしくないことを鑑みて、出久は外で待っていることを選んだ。

 通夜や葬儀というものには、何度か参列したことがある。そのすべては、ほぼ人生をまっとうしたと言っていい老人のもの。遺族は悲しみに暮れつつも、それが天命なのだと受け入れているようだった。

 

 だが、夏目教授はまだ若い、桜子によれば妻と中学生の娘もいるとのことだった。突然、夫・父を奪われた彼女たちの悲しみは、いかほどのものだろうか。

 

 出久の思いに、同調するかのように。セーラー服を着た少女が、式場の外に飛び出してきた。

 彼女は立ち止まると、その背を塀に押しつけ、そのまま力なく座り込んだ。嗚咽が、漏れ聞こえる。瞳からは、大粒の涙。

 

「おとう……さん……っ」

「……!」

 

 出久は、悟った。この少女こそ、夏目教授の娘なのだと。

 

 

 大切な人を突然、理不尽に奪われて、悲しみに暮れる少女。あの怪物たちがのさばる限り、そうした人々はこれからも増え続けるだろう。

 奴らを止められるはずの力。そんな力を、自分は無為に眠らせておくつもりになっていたのか?

(僕は……一体何をやってんだ………!)

 

 もっと強くなりたい。ヒーローになりたい。人を――命だけではない、笑顔だって守れるような……オールマイトのような、最高のヒーローに。

 

 

――中途半端に関わんな。

 

 再び、勝己のことばが浮かぶ。それでも、出久の瞳に宿った炎はもう、失われることはなかった。

 

「わかったよ……かっちゃん……。僕はもう、"中途半端には"関わらない……!」

 

 

 

 

 

 それからおよそ十時間近くが経過した夜明け前、爆豪勝己はひとりサン・マルコ教会の前にいた。その紅い瞳は、爛々と教会の建物を睨みつけている。

 

 勝己はなんとしてでも未確認生命体第3号――ズ・ゴオマ・グを潰すつもりだった。そのために、受け身でいるつもりはさらさらなかった。

 夜のうちに、勝己は警視庁の森塚を訪ね、半ば脅すかたちで警察内の情報を手に入れた。――目撃証言などを総合すると、第3号の潜伏場所はここサン・マルコ教会ではないかと推測される。この教会の神父とも連絡がとれない状態であることが、その可能性をさらに強めていた。

 

 警察では突入部隊の編成が進められているが、勝己はそれを待たない。警察は、足手まといにしかならない。これ以上いらぬ犠牲を出すくらいなら、自分ひとりで――

 と、携帯端末がぶるりと振動した。ディスプレイに表示された名前を見て、小さく溜息をついてから、勝己は通話を選択した。

 

『あっ、出た……おいバクゴー、オメーいまどこにいんだよ!?森塚刑事からさっき連絡があったぞ、オメーが3号のこと訊きに来た、って……』

 

 切島の声が、耳に刺さる。うるさいとは思いつつも、勝己は舌打ちまではしなかった。森塚が彼に連絡することだって、予想の範疇だ。

 

『まさかオメー……ひとりで3号とやりあうつもりじゃねえよな?』

「………」

 

 沈黙を是と捉えたのだろう、相手の声がいっそう大きくなる。

 

『死ぬ気かよ!?いくらオメーだって、あんな怪物相手にサシでなんて無茶だ!待ってろ、すぐ俺もそっちに……』

「来んな。怪我人はいらねえ」

 

 一昨日・昨日と立て続けにダメージを受け、タフな切島も流石に万全とはいえない状態だった。だから勝己は、あえて切島にも声をかけなかったのだ。

 しかし切島は納得しない。なぜなら、

 

『バカっ、オメーだって怪我人だろうが!!』

 

 勝己もまた、ゴオマの攻撃を胴体に受けていた。命にかかわるものではないが、戦闘を行っていい状態ではないのは同じ。

 

 だが、それでも。

 

「アレとは俺ひとりでケリをつける。それが一番合理的だと判断した。……だから、余計なことはすんな」

『ばく――』

 

 なおも切島が言い募ろうとするのを、通話を断つことで一方的に打ち切った。そして、ジャケットをその場に脱ぎ捨て、教会の裏に回った。文字通り、敵の裏をかくためだ。

 

(3号がいるなら、裏口か何かを侵入経路にするはずだ)

 

 いくら怪物といえど、流石に正面の扉から堂々と出入りはすまい。道路に面している以上、夜だとしても目立ちすぎる。同時に、怪物である以上、裏から入ってきちんと鍵をしめる習慣があるとも思えない。勝己はそう推測した。

 

 万一どちらかが外れても、最悪、個性を利用して鍵を壊すつもりだったが――その必要はなかった。どちらも的中したからだ。

 

 

 ニヤリと笑ったあと――勝己は、教会内に突入した。間髪入れずに、

 

閃光弾(スタン・グレネード)ッ!!」

 

 爆破。教会内が、眩い閃光に覆われる。

 ゴオマが光に弱いことには、既に勝己も気づいていた。それゆえ、彼は単独での勝負に出たのだ。閃光弾で行動不能にしたあと、全力の爆破をこれでもかと浴びせかけて始末する。シンプルどころかゴリ押しに近いやり方だが、強力な個性がそれを可能にしてくれる――勝己はそう自信をもっていた。

 

 やがて光が収まり、蝋燭の光のみに照らされた薄暗い全景が露わになる。その片隅に芋虫のように転がる影を認めた勝己は、全速力で走り出した。

 

「ハハハハハハッ、死ねぇえええッ!!」

 

 至近距離にまで迫り――渾身の爆破を、仕掛ける!

 

 

「ヌゥウウウウンッ!!」

「!?」

 

 背後から迫る殺気に気づき、振り向いた次の瞬間、勝己は胴体に凄まじい衝撃を受け、大きく吹き飛ばされていた。

 

「がぁっ!?」

 

 勝己の身体が燭台に激突し、床に叩きつけられる。落下した蝋燭の灯火がカーテンに燃え移り、教会を炎の色に染め上げた。

 

 しかし、そのようなことを気にしている余裕は勝己にはなかった。――最悪の想定外が、起こったのだ。

 

「ラダ、ガダダバ」

「!、テ、メェ……っ」

 

 薄緑色の、異常に長く細い四肢をもつ、蜘蛛に似た異形。未確認生命体第1号――ズ・グムン・バ。

 一昨日の戦闘では逃走を許したことから、生存しているであろうことはわかっていた。だが、なぜここにいる?まさか、勝己がゴオマを倒しにやってくることを見越して?

 考えても仕方がない。だって現実に、グムンは目の前にいるのだ。そして、

 

「ゴラゲ、ジョブロ……ドググゾロ……」

「……!」

 

 ふらつきながらも、ゴオマがゆらりと立ち上がる。彼はグムンと何かことばを交わしているようだった。未知の言語であるがゆえに、勝己には内容はわからない。だが、最悪なことに、何か合意に達してくれてしまったらしい。

 

「ゴセパ、ジビガブ……」

「ヂパロサグ……ボギヅンヂパ、グラゴグザ……!」

「……クソが、」

 

 いくら勝己であっても、命の危機を覚えざるをえない状況。だが、それはあきらめと同義ではない。

 

「上ッ等、じゃねぇか……!」

 

 燃え広がる炎を背に、勝己はゆらりと立ち上がった。アドレナリンが放出されているのか、痛みは消えうせている。――最低でも、相討ちには持ち込む。そのつもりでいた。

 

「オラァァァッ!!」

「!」

 

 両手から爆破を起こしながら、勝己は跳ぶ。いきなり相手から迫られ、虚を突かれた様子の二体めがけて――それらを、お見舞いした。

 

「グォッ!?」

「ガッ!?」

 

 怯んだ隙を見て、二発目。しかし立て続けに喰らうほど、グムンもゴオマも鈍くはなかった。前者は蜘蛛の糸を噴出して、後者は翼を広げて宙に浮き上がる。

 そして、

 

「ボソグゥッ!!」

「っ!」

 

 猛スピードで急降下。彼らもまた、肉を切らせて骨を断つつもりなのだろう。いや、肉すら切れるかわからない。

 だが、それでもやるしかない。いよいよ覚悟を決めつつも、勝己は最後の一撃を放つつもりでいた。

 

 

 その瞬間、

 

 

 正面の扉が開かれるとともに、オートバイが突入してきた。

 

「!?」

 

 勝己ばかりでなく、グムン・ゴオマの動きが停止する。その間に、オートバイは段差によってバランスを崩し、ライダーを投げ出したあとに炎の中へ突っ込んでいった。炎とガソリンが反応し、大爆発が起きる。独特の臭気が辺り一面に広がると、それを嫌った未確認生命体は咄嗟に距離をとった。

 

 その隙に、ライダーが勝己に駆け寄っていく。メットを脱ぎ捨てて露わになったその顔を目の当たりにして、勝己は驚愕した。

 

「かっちゃん……!」

「デク!?」

 

 グムンとの遭遇以上の衝撃に、一瞬身体が動かなかった。しかし、彼がここに来た理由――考えうるそれは、ひとつしかない。勝己の全身を、激情が支配した。

 

「~~ッ、テメェッ、何しに来やがった!?」

 

 瞋恚のままに胸倉に伸ばされた手を――出久は、振り払った。

 

「な……っ!?」

 

 勝己は呆気にとられた。――そこでようやく気づいた。出久の表情から、怯えが消えうせていることに。

 

「――かっちゃん。僕、決めたんだ」

 

 

「こんな奴らのせいで、人が死ぬ……誰かが傷つく……。――やっぱり僕は、それを見て見ぬふりなんてできない!受け継いだこの力で、ひとりでも多くの人の笑顔を守れるならっ、僕は、戦う!!」

「……!」

 

 炎に照らされたその表情かおは、勝己の知る緑谷出久ではなくなっていた。

 

「だから――」

 

 両腕を、力強く広げる。

 

「見ててくれ、僕の―――変身ッ!!」

 

 その瞬間、出久の腹部に、銀色のベルトが現れる。中心の宝玉の輝きが、以前より明らかに強く、確かなものとなっている。炎よりも濃い、赤。

 

 ベルトに手をかざし、右腕を突き出す。――イメージで見た古代の戦士と、同じ構え。

 

 右腕を右前方へと動かしきったあと、勢いよく左腰に拳を落とし、そこにあるベルトの起動スイッチを――力強く、押し込む。

 

 そして、

 

「うおおおおおおッ!!」

 

 雄叫びとともに、出久は二体の未確認生命体に飛びかかっていく。当然、グムンもゴオマも応戦するが、次の瞬間驚くべきことが起こった。

 

「はっ!」

「ガッ!?」

「でやぁッ!」

「グォッ!?」

 

 個性攻撃すら防ぐ強固な肉体をもつ異形たちが、出久の殴打や蹴りに苦痛を覚えている。勝己は気づいた。ベルトは既に、出久の肉体を内部から作りかえつつあるのだと。

 

 変化が、体表面にも現れる。腕が、脚が、黒い皮膚に覆われる。さらに胴体には、宝玉の色と同じ真っ赤な鎧。

 最後に残った顔もまた、黒い装甲が覆い隠し――

 

 戦士は、完全なる姿へと"変身"を遂げた。

 

 勝己は驚愕した。鎧や手・足首の装甲など、白かった部分が、ことごとく真っ赤に染まっている。建物中を包みはじめた炎のせいでは、決してない。それに、二本の角も倍の長さに伸び、天に突き出していた。

 

「うぉりゃあッ!!」

 

 戦士の拳に顔面をつぶされ、ゴオマがなすすべもなく吹っ飛ぶ。怯んだグムンも、慌てて距離をとり、

 

「ガバブバダダバ……"クウガ"……!」

「……!」

 

 その瞬間、変身を遂げた出久の脳裏に、再び、あの無機質な女性の声が響いた。

 

――心清く、身体健やかなるもの、これを身につけよ。さらば戦士"クウガ"とならん。

 

 

「"クウガ"……。そうか、"クウガ"か……!」

 

 クウガ――それが自分に与えられた、戦士として……否、ヒーローとしての名。

 で、あるならば。その名にふさわしいことを、為さなければならない。

 

「ボソグッ!!」

 

 グムンが飛びかかってくる。出久――赤のクウガはもはや震えることもなく、それを迎え撃った。爪の一撃を受け止め、膝蹴りを見舞う。グムンは痛ましいうめき声とともに、身体をくの字に折った。クウガはさらに、その背中に肘打ちを叩き込んだ。

 

(戦える……いや、戦うんだ!(みんな)の笑顔を、守るために!)

 

 その強い想いだけが、彼を突き動かしている。だからこそ、彼は昨日までとは比べものにならないくらい強かった。

 勝己からみれば、戦い方そのものは相変わらず稚拙。しかし、それでも敵を圧倒するには十分だった。拳も、蹴りも、着実にグムンを追い詰めている――

 だが、敵はグムン一体ではなかった。立ち直ったゴオマが、翼を広げてクウガに襲いかかろうとしていた。

 

「デクっ!!」

「!」

 

 殆ど反射的に、勝己は幼なじみのあだ名を呼んでいた。機敏に反応したクウガが、咄嗟にその場を転がる。ゴオマの一撃は、むなしく空を切った。

 

「~~ッ、リントグ、ジョベギバラベゾ!!」

 

 クウガへの攻撃を邪魔され、激怒したゴオマが矛先を勝己に変えた。勝己は当然応戦しようとしているが、わずかに動きが鈍い。痛みが、ここにきて彼を蝕みつつあった。

 

「ッ、かっちゃ――!」

「ジョゴリゾグスバッ!」

「!?、ぐぁっ!」

 

 隙を突かれた。グムンの吐き出した糸がクウガの胴体を拘束し、締め上げる。さらにはグムンの屈強な腕が糸を引っ張り、クウガをその場に引き倒した。

 

「く、う……っ!」

「ドゾレザァ……!」

 

 手の甲から生えた爪がぐぐ、と音をたてて伸びていく。その鋭い先端が急所を貫けば、いくらクウガの身体でもひとたまりもないだろう。

 だが、あきらめるつもりはなかった。

 

(僕は……守る――!)

 

 そのためなら……こんなところで、死ぬわけにはいかない。

 

「う………おぉぉぉぉッ!!」

「!?」

 

 クウガが、吼える。咆哮とともに、その全身に力が漲っていく。

 そして、真綿のように太く、鋼のように固いグムンの糸が、ばらばらに引き裂かれた。

 

「バンザド!?」

「でやぁッ!!」

「グボァッ!?」

 

 驚愕するグムンは、次の瞬間クウガのストレートパンチを顔面に受けて吹っ飛ばされた。

 

「グ、フゥ……!」

「――!」

 

 そしてクウガは――半ば本能に突き動かされるように、跳んでいた。

 

「お、りゃあぁぁぁッ!!」

 

 立ち上がろうとするグムンの胸に、右足を、叩き込む!

 それがただの蹴りでないことを、彼は感じとっていた。右脚を伝う、身を焦がすような灼熱。

 

 そしてそれは、ほどなくして証明された。グムンが苦しみ出す。同時に、蹴りの命中した箇所に、不可思議な紋様が現れたのだ。

 

「グァ……ボソ、グ……グッ、ジャ、デ、デジャス……!」

「……?」

 

 一体、何が起ころうとしているのか。苦悶の声をあげながら、紋様から下腹部に向かって亀裂が走っていく。

 それが、ベルト状の装飾品に到達した瞬間――

「ボソギデジャス……クウガァァァァ――!!」

 

 そこを中心に爆発が起き――グムンの全身が、木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

「ッ!?」

 

 想定外の威力に、自らの行為でありながら驚愕する。いま発揮された力は一体なんなのか?蹴りを喰らったグムンの胸には、紋様――恐らくは古代文字――が浮かび上がっていた。あれがグムンを爆散へと導いたのだろうか?

 クウガの姿でありながら、いつもの癖でブツブツと考察を始めてしまう出久だったが――刹那、背後から響いた凄まじい轟音によって、思考は強引に中断された。

 

「!、かっちゃんっ!」

 

 ゴオマは勝己に襲いかかっていた。まさか、その猛攻に耐えかね、遂に勝己が吹き飛ばされたのか――

 そんな予想は、思いっきり裏切られることとなった。

 

 そこには教会の外まで吹っ飛ばされた黒焦げの蝙蝠男と、不敵な笑みを浮かべて仁王立ちする黒づくめのヒーローの姿があったのだから。

 

「おいコラ、蝙蝠野郎……。怪物のくせにその程度かよ……?」

「ダ……ダババ……」

「ア゛ア゛ン゛!?」

「ヒィッ!」

 

 勝己が掌から爆発を起こせば、それだけで満身創痍のゴオマはびくりと震えた。――超人的な力をもった未確認生命体は、間違いなく、ひとりの青年に恐れをなしていた。

 

(ボンゴセグ……リントゴドビビ……!?)

 

 グムンを殺したのはクウガ。それに対して、自分は人間に殺されようとしている。屈辱だった。しかしそれ以上に、勝己が恐ろしくてたまらなかった。

 

「さあ……終わりだ……!」

 

 勝己が最大最後の一撃を放とうとしたその瞬間――東の地平線に現れつつあった太陽の光が、教会に達した。

 

「グアァッ!?」

 

 その光に悶絶するゴオマ。もはや環境すらも自らに味方しないことを悟った彼が選んだのは、

 

「ゴッ……ゴドゲデギソ~!!」

 

 逃亡だった。皮膜に覆われた翼をいっぱいに広げ、上空へと舞い上がる。

 

「!、テメェ、待ちやがれ――!」

 

 当然、勝己は逃がすまいと仕掛けるが――時速120キロの飛行速度を誇るゴオマは、まだ薄暗い西の空めがけて全力で逃げていった。

 

「クソ……また逃げやがった……」

 

(ま……マジでか、かっちゃん……)

 

 直接の要因ではないとはいえ、未確認生命体相手に二度も敗走を強いた――雄英時代から常にトップクラスに君臨し続けてきた男は伊達ではないと、出久は改めて思い知らされた。

 しかし、

 

「っ、ぐ……」

「!」

 

 戦いが終わって気が緩み、全身のあげはじめた悲鳴にまでは耐えられなかったらしい。勝己はその場に膝をついた。倒れかかる身体を、クウガが咄嗟に抱きとめる。

 

「かっちゃん、大丈夫!?」

「っ、……る、せぇ。テメェにこれ以上、救けられて……たまるか……」

「………」

 

 何もできない無個性のデク。無個性でなくなったから、覚悟を決めたから――たったそれだけのことで、長年積み上げてきた評価を易々と覆してくれることなどないのだろう。わかっている。

 

(それでも、)

 

「かっちゃん……僕、中途半端はしない。ちゃんと関わるよ。だって僕はもう――"クウガ"、なんだから」

 

 その決意だけは、曲げることなく。

 赤の英雄は勝己の身体を抱え、燃えさかる教会から夜明けの街へと、姿を消したのだった。

 

 

 

つづく

 

 

 

 






切島「バクゴーの野郎、無茶しやがって!緑谷が来なかったらどうなってたことか……」
瀬呂「切島、その怒りは次回にとっとけ!つーわけで予告!」
上鳴「ウェイ!」
瀬呂「緑谷を戦わせたくない爆豪は、単身第3号を追う!」
切島「また単独行動すんの!?」
上鳴「ウェイ!」
瀬呂「しかし、未確認生命体は一匹ではなかった!爆豪大ピンチ!!」
切島「言わんこっちゃない!」
上鳴「ウェイ……」
瀬呂「そのとき爆豪の前に現れる、バラのタトゥの美女……」
上鳴「ウェウェイ!?」
瀬呂「妖艶な薔薇の色香に惑わされた爆豪は理性を失い、野獣のように女に襲いかかり……!」
切島「そんな18禁展開あんのこのハナシ!?」(※ありません)
瀬呂「一方その頃、緑谷はネコ娘とにゃんにゃんしていた」
切島「どいつもこいつも!」
上鳴「ウェイィィ……!」
瀬呂「心配ない。その結果緑谷は警察に包囲される」
切島「あぁぁ淫行条例ィ!」
瀬呂「そんな感じで次回!」

EPISODE 3. エンカウンター

切島「さっ、さらに向こうへ!」
3人「「「プルスウルトラァァァ!!」」」

瀬呂「……俺らの出番もプルスウルトラ~」
上鳴「 ウェ―(0w0)―イ!!」ライトニングブラストー
切島「……どんまい」

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