【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我 作:たあたん
そしてライダーの方は宣伝したのでアニメヒロアカ4期についても。来年10月スタートだそうですね。楽しみだけどもまた色々試練が待っているようでドキドキ。次回予告があの3人なのもその辺が影響してたりします。
始まる頃には流石にこの作品も完結してますかね…。このペースだと来年夏には終わりそうですが、そうすると暑くなってきた頃に雪山で殴り合いという前の作品と同じ季節逆転現象が起きそうな悪寒。
気が早いですが、完結したらこの作品のさらにifとして出久アギトの読み切り短編を書こうかなーと思ってます。現状あかつき号絡みの話にする予定。
東京から神奈川にかけて未確認生命体による殺人が連続している中にあっても、文京区の一角にある喫茶ポレポレでは賑やかながら穏やかな時間が過ぎていた。
「お茶子ちゃん、エビフライカレーふたつとアイスクリームふたつね」
「はーい!」
沢渡桜子に、麗日お茶子。前者が客の注文を聞き届け、後者がそれに従って調理を行う。タイプは違えど若い美女ふたりによる見事な役割分担である。あくせく動き回る桜子が正規のウェイトレスでなく、ただ趣味で手伝っているだけなどと、一体誰が気づけるだろうか。
「ふー……とりあえずひと段落かな」
ひととおり客からの注文が落ち着いたところで、桜子はそう口にして息をついた。白い額に汗の粒がきらりと光る。
「ありがとうございます桜子さん!コーヒー飲みに来ただけやのに、手伝ってもらっちゃって……」
「いいのいいの。お茶子ちゃんと真逆で研究室にこもってばかりだから、すごくいい息抜きになってるもん」
「アハハ……確かに真逆ですもんね、私たち……」
片や研究一筋の大学院生に、救助専門の若手プロヒーロー。生活パターンはまったく異なると言っていい。そんなふたりが肩を並べて喫茶店のウェイトレスをしていて……同じ青年に、想いを寄せているという事実。
「……ねえ、桜子さん」
「ん~?」
「デクくんって……どんな人?」
「え?」
その抽象的な問いかけだけでは、桜子が怪訝な表情を浮かべるのも無理からぬことだった。昨日今日初めて会ったならともかく、お茶子だってもう半年近く、出久と親しい友人づきあいをしているのだから。
流石にことば足らずすぎると自分でも思ったのか、お茶子は慌てて付け足した。
「いっいや改めて、桜子さんから見たデクくんってどういう人なのかな~って!」
もう互いが出久をどう想っているかを知っているせいもあってか、彼女は何かを期待するような目で見つめてくる。それがなんなのかは読めなかったけれど……あるいは少し、王道からは外れた答を返してみようかと桜子は考えた。
「そうねぇ……」
「激しくて、危なっかしい子……かな?」
「……へ?」
お茶子が目を点にしている。想像していた答とはまったく異なっていたのだろうが……出久に負けず劣らず、わかりやすい娘だ。
「だって出久くん、他人が困ってると暴走機関車かってくらい躊躇なく首突っ込んでいくのよ?それが危険なことでも関係なしに。頭は間違いなくいいんだけど……頭じゃあれこれ考えながら、身体はもう動いちゃってるのよね」
「……激しい、っていうのは?」
「意外とカッとなりやすくて、そうなると言葉遣いや行動が乱暴になるところかな。けど、自分のことではめったに怒らないのよ。出久くんが怒ったり真剣になるのは……やっぱり、他人のこと」
「あ……、」
まさしく出会いがそうだったと、お茶子は思い返した。弱音を吐いてしまった自分を、彼は叱ってくれた。弱音を吐いたことではなく、それを恥じて思わず「自分はヒーロー失格だ」とつぶやいてしまったことを。怒りというほど強くはなかったけれど、確かにあのとき、彼はとても激しかった。
そしてきっと、いまも――
「デクくんは……危険なことにでも突っ込んでくって……」
「うん」
「もしそれが……未確認生命体と戦うようなことだとしても?」
「!」
桜子が目を丸くするのを見て、お茶子ははっとした。あわあわと両手を振りながら、
「もっ、もののたとえです!未確認生命体のことは、プロヒーローだって二の足踏んじゃうし……」
「そ、そっか」
まるで安堵したかのように息をついた桜子の表情が、真剣なものに変わっていく。
「戦うよ、出久くんは」
「!、――」
目を見開いたお茶子が何か、ことばを探すように沈黙したそのとき……ドアベルの音が、鳴り響いた。
「たっだいマンモス~!いやーまたまた買い杉村春子だよ、新しくできたスーパー"スーパー1"の品揃えのよさと言ったらもう……」
レジ袋を両手に引っ提げ、ブツブツサムいことをつぶやきながら現れた男。傍から見れば不審者としか思われないが、幸いにして彼はこの店の主だった。
「あ……おかえりなさい、マスター」
「おう、どーもどーも!悪いねぇ桜子ちゃん、がっつり手伝ってもらっちゃったみたいで!お礼に今度リゾートホテルのペアチケットあげるから、出久と行ってくれば?」
「!?、ちょっ、マスター!!」
一体ナニを想像したのか顔を真っ赤にして怒るお茶子。あまりの剣幕にテーブル席の客までこちらを見ている。流石のおやっさんも冷や汗をかいた。
「じょ、冗談だって……もう。――じゃあ桜子ちゃん、ボクと一緒にどぉ?」
「ごめんなさい」
「オーマイガー!」
漫才のようなやりとりは店内の雰囲気を和らげるのに一役買ったが、そのせいでお茶子は桜子に訊きたいことを訊けずじまいとなってしまった。出久が"おやっさん"と呼ぶこの店主が帰ってきた時点で、それは半ばあきらめていたのだが。
*
着実に犠牲者を増やしていく未確認生命体第43号――ゴ・バダー・バを追って、走り続ける出久たち。
そんな彼らのもとに捜査本部からの通信が行われたのは、神奈川県横須賀市内に入ってすぐだった。
『塚内から全車へ。神奈川県警および地元のヒーロー事務所との合同作戦が決定した』
「!、来たか……」
戦闘に向かう最中であるから当然緊張感をもって臨んでいるが、それでもさらに表情が引き締まる。並走するパトカーに乗車している森塚や飯田も同じだろう。
――塚内から説明された"作戦"は、次のようなものだった。
まず神奈川県警の白バイ隊員が囮となってバダーの予想通過地点を走行する。当然安全面を考慮し、パトカーに搭乗した捜査本部の捜査官・所属ヒーロー、神奈川県警および地元のヒーローという重厚な布陣を護衛として同行させたうえでだ。
バダーが白バイを狙って接近してきたらば、すぐには仕掛けず周辺への影響が少ない特定のポイントへ誘導、そこで反転攻勢に出て、バギブソンを破壊する――具体的には狙撃部隊によるガス弾の一斉射撃によって動きを止め、ヒーローたちの個性による攻撃、極めつけにG3のサラマンダーの一撃。バダー本人は倒せずとも、武器となるバイクの破壊すれば、かなりの弱体化が期待できる。
――最後はやはり、出久……クウガの出番。無力化されたバダーを倒すのは、やはり自分の成すべき役割なのだと心する。
『第43号の進路予測から、神奈川県衣笠および佐原、観音崎の主要道路とその周辺の封鎖を進めている。最終的には、三浦市南下浦町の三浦海岸を追い込み地点とする。そして、作戦にあたってのそれぞれの役割についてだが――』
そのときだった。塚内の声に割り込むようにして無線が入る。
それは、神奈川県警の白バイ――トライチェイサーαからのものだった。
『こちら神奈川TR02、誘き出し作戦のため警ら車両と合流中、横浜横須賀道路佐原インター付近において、第43号の人間体と思われる存在を発見、現在追跡中です』
「な……ッ!?」
早くもバダーを発見した――だがそれを聞いた出久たちの表情には、ただただ焦燥ばかりがにじんだ。
『単独で追跡だなどと……危険だ!』
「ッ、塚内さん!」出久が叫ぶ。「追跡をやめさせてください!」
もとより塚内もそのつもりだった。
『神奈川TR02へ、こちら塚内。合同作戦はまだ開始されていない、無理をせず43号と距離をとれ!これは命令だ!』
警察において、上位者の命令は絶対。まして塚内はこの作戦の指揮官である、かの白バイ隊員も従う意志はあった。
しかしもう既に、バダーは追跡者を獲物と見定めていた。
いきなりスピードを緩め、追いついてきたαが並走する形となったところで思いきり肘打ちをぶつける。突然のことに対処できなかった隊員はその衝撃によって振り落とされ、地面を転がった。
その数メートル先でバダーはマシンを停車させ――もろとも、異形の姿へと変貌を遂げる。
「――こういうの、お前らリントのことばじゃなんて言うんだっけか?」
「……へ、」
「いやいい、思い出した」
「"飛んで火に入る夏の虫"っつーんだよなァ!!」
愉悦を露に声をあげ、バダーはバギブソンを反転させて走り出す。うなりをあげるエンジン。死の恐怖に直面した白バイ隊員が逃げようとした時にはもう、後の祭りだった。
マシンが躊躇なく男の全身を打ちつけ、大きく吹き飛ばす。紙のように宙を舞いながら、彼は既に意識をなくしていた。地面に叩きつけられ、力なく横たわる肉体。
そこにようやく神奈川県警のパトカーが一台追いついてきたのだが……隊員を救助することはおろか、バダーを止めることすらできなかった。
勢いよく跳躍したバギブソンはパトカーを飛び越え、悠々と走り去っていってしまった――
制服警官が車内から飛び出してきて、倒れたままぴくりとも動かない白バイ隊員のもとへ走る。――反対方向から駆けつけてきた出久たちは、彼の表情がさあっと青ざめていくのを目の当たりにしてしまった。
「……ッ!」
バダーがちょうど海岸方面へ右折していくのが見える。黙って見送るわけにはいかない。メットの下で歯を食いしばって、出久はトライチェイサーをそのまま走らせた。
一方で森塚と飯田は、警官のもとへと駆け寄った。
「その人は!?」
「………」
白バイ隊員"だったもの"を見下ろしながら、警官は無言で首を振った。制帽に隠れて彼の表情は見えないが、唇がかすかに震えていることはわかった。やりきれない思いが、ふたりを襲う。
「……管理官、森塚です」
森塚からもたらされた殉職の報に、塚内の表情が青ざめる。しかし声音は、あくまで揺るぎのないまま。
『……きみたちはそのまま緑谷くんの支援へ向かってくれ。言うまでもないが、自分の命を守ることを最優先するように』
「「了解!」」
ふたりとも思うところがないではなかったが、言いよどむことなくそう応じた。塚内の気持ちを思えば、不安を与えるわけにはいかない。――何より大勢の市民を守り、救けなければならない自分たちがそう易々と倒れるわけにはいかないと、理解してもいた。
「すぐに応援が来ます」森塚が警官に声をかける。「我々は43号を追いますから、ここはお任せします」
「……了解、しました」
項垂れながらも己の職務を果たそうとする年下の警官の肩を、森塚はそっと叩いた。彼も若手には違いないが、刑事としてキャリアを積みつつある。
「さてインゲニウム、また僕のライダーになってくれるかい?」
「もちろんです!」
威勢のいい返事に満足げにうなずいた森塚は……己のソフト帽を宙に放り投げ、同時に跳躍した。
その身体が光に包まれ、形を変容させていく。やがて着地したとき、彼は派手な黄色を基調としたオフロードバイクへと姿を変えていた。カウルには、SD調の大きな瞳が浮かんでいる。
そのシート……人間体でいえば背中に、躊躇なく跨がる飯田。己の脚に絶対の自信をもつ彼だからこそ、"
「よしッ、参りましょう!!」
『オーケー!』
*
一方で湾岸線を我が物顔で疾走するバダー。追う出久とトライチェイサーは、その背中を捕捉することに成功していた。
「逃がすか……!」
ならば、すべきことはひとつ。
「変、身ッ!!」
腹部から浮かび出たアークルの中心、モーフィンクリスタルが鮮烈なる赤い輝きを放ち、出久の肉体を強靭なものへと変えていく。全身の皮膚は漆黒に、その上から赤い鎧が現れ……そして黄金の二本角に、やはり真っ赤な複眼。
再びクウガ・マイティフォームへ変身を遂げた出久は、マシンを急加速。バダーとの距離を一気呵成に詰めていく。
バダーも当然、背後から宿敵が迫りつつあることに気づかないはずがない。フンと鼻を鳴らしながら、その身に力を込める。――たちまち、怪人体へと変身する。
肘の突起を取り外して突き刺すことで、彼のマシンは最凶の殺人バイク"バギブソン"へと変わる。エンジンの唸りが、生き血を求める餓狼の咆哮のごとく響く。
バダーがあえて速度を落としたために、数秒もしないうちにクウガのトライチェイサーと並ぶ形となる。
「よォ、さっきぶり。今度こそ喰われに来たか?」
「ふざけるな!!今度こそおまえを倒すッ!」
「もう誰も、傷つけさせやしない!!」
義憤をこめた拳を横から放つクウガ。咄嗟にスピードを上げてそれをかわすと、反撃とばかりにすかさず車体をぶつけようと迫ってくる。体当たりをまともに受ければトライチェイサーにとっては命取りになりかねない。自分自身に対する攻撃以上に、クウガの回避行動は俊敏だった。
(いつまでも道路で戦りあってるわけにもいかない、海岸に誘い込まないと……!)
道路の傍らはそのまま海岸線になっている。それも砂浜ではなく、荒涼とした岩肌の剥き出しとなった大地。
躊躇うことなく、クウガはそこへ進路を向けた。傷ついていてもオフロードマシンとしての高い性能は変わらない。それを最大限、活かしてやらねば。
腹立たしいことに、バダーもまったく同じ考えだったらしい。並走する形で、潮風の吹き付ける大地へ突入していく。
風の音にもかき消されぬエンジン音をばらまきながら、波打ち際ぎりぎりまで接近していく二台。突き出た突起も段差も、彼らにかかればなんの障害にもならない。滑らかに跳躍し走行し、隙あらば互いを破壊せんと攻撃を仕掛ける。
たった一秒ののちには、どちらが骸になっていてもおかしくない……それほどまでに、緊迫した戦い。しかし異形のライダーふたりの露にする心持ちは、対照的と言わざるをえない。
「ハハハッ、どうした!?俺を倒すんじゃなかったのか?もう誰も傷つけさせやしないんだろう?」
「ッ、……!」
無論、犠牲になったライダーたちのように、一方的に追い詰められるような局面ではない。自らに戦闘能力で勝るバギブソンに、トライチェイサーは精一杯喰らいついてくれている。
だが互角に立ち回っているように見えて、その実翻弄されっぱなしであることをクウガは肌で感じていた。――最大の要因は性能差などではなく、
(ッ、それでも……!)
勢い込んでグリップを捻り、急加速。敵との距離を一気呵成に詰めていく。
バイクとバイクがすれ違い、わずかに触れあった部分から激しい火花が散る。そのまま距離が開いていく……かと思いきや、
ほとんど同時に急停車。マシンをそのまま反転させて……まっすぐ、向かい合う。
「………」
クウガはおろか、もはやバダーも単語のひとつも発しようとはしない。自身の声の代わりに、グリップを握ることで発せられるマシンの唸り声がすべてを表してくれているからだ。
いつ打ち破られるとも知れぬ、際限なく膨らんでいく緊迫の時間。ただ過ぎゆくなかで、潮風と波の音だけは、悠久のものとしてそこにある――
そして、ひときわ大きな白波が打ち寄せた瞬間、
互いのマシンがいよいよ最大の咆哮をあげて、走り出した。狙うはただひとつ、互いの駆逐のみ。正面衝突?いや違う、
ほとんど同時に、彼らは前輪を高く掲げた勢いで跳躍したのだ。マシンごと。宙へ舞い上がった二台に、もはや操縦は効かない。ただ風に操られるままに弧を描き……そして、衝突した。
「ぐぁっ!?」
「ガッ!?」
その衝撃でたまらずふたりは振り落とされ、マシンもろとも地面に叩きつけられた。
「ッ、う……」
ごつごつとした岩肌。生身の人間ならば確実に即死していただろう。強化された肉体でも、痛みに一瞬身動きがとれなくなる。
立ち上がったのは、バダーのほうが先んじた。――おぞましいことに、彼のそばにはトライチェイサーが墜落していた。そのために……目をつけられてしまったのだ。
クウガがようやく態勢を立て直した時、相棒は既に、バダーの手中に落ちていた。
「な……!?」
動揺するクウガ。彼のそばにもバギブソンが横たわっていたが、自分はそれを奪おうなどという発想は浮かばなかった。そもそも、視界にすら入っていなかったのだ。
「くくっ、いいバイクだな」
「……ッ!」
「てめえのマシンに轢き殺されろッ、クウガァ!!」
本性を剥き出しにしたバダーが迫る。クウガの……そして、悪魔の手に落ちたトライチェイサーの運命は?
――そして、ビートチェイサー。
彼はただひとり、静かに、出撃の
つづく
ミリオ「今回は俺たちが次回予告を担当するよ!」
天喰「……俺には荷が重い。帰りたい……!」
ねじれ「相変わらずノミの心臓だね!」
ミリオ「トライチェイサーを43号に奪われてしまった緑谷くん。絶体絶命だね、さあどうする?どうやって43号を止めようか!」
ねじれ「警察&ヒーロー&心操くん(G3)との連携でがんばる!」
天喰「……ビートチェイサー」
ミリオ「うーん……どっちも正解!ヒトとモノ、緑谷くんは両方に支えられて戦ってるんだよね!がんばれ緑谷くん!」
ねじれ「その一方で死柄木御一行を追って旅立った爆豪くんと轟くんは!……どうしてるんだろ?」
ミリオ「死柄木たちによる大量虐殺の現場で、とんでもないものを発見しちゃうらしいよ!」
天喰(……A組女子のエロ同人とか?)
ミリオ「いま良くないこと考えたよね環!――それは置いといて次回!」
EPISODE 39. BEAT HIT!
天喰「……緑谷出久、初心にかえる」
ねじれ「さらに向こうへ~!」
ミリオ「プルス・ウルトラ!!」