【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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令和初投稿でございます。
クウガ放送も昔のことになったんだなぁ…とちょっとせつないきもち。



EPISODE 47. 死を呼ぶ咆吼 3/3

 "仮面ライダー"たちがひとときの休息をとっている間も、鷹野と勝己は警らを続けていた。とはいえ数時間駆けずり回りっぱなしというわけにもいかないので、ただいまは公園脇に車を駐め、休憩の最中だった。

 

「爆心地、コーヒー。よかったらだけど」

「……ども」

 

 差し出された缶コーヒーを素直に受けとる勝己。つい今しがた幼なじみが同じようなやりとりをしていたと知ったら、盛大に顔を顰めるだろうが。

 

 ふぅ、と息をつきつつ、ウィンドウ越しの夜景を見遣る。公園は暗く人気もないが、その向こう側には住宅街があって、ほの明るくライトアップされている。サラリーマンなども、そろそろ帰宅する頃合いだろう。

 

 と、不意に鷹野が口を開いた。

 

「結局気ィ張りっぱなしね、あなた」

「あ?」

「うとうともしないんだもの。私だっていい加減眠くなってきてるのに」

 

「けっ」と、勝己は口を尖らせた。

 

「眠くなんねえわ、こんな状況で」

「ふぅん……」

 

 何時間も神経を張り詰めさせ、それでいて疲れた様子も見せずにじっと周囲を窺い続けている勝己。プロヒーローとしては、非の打ち所のない姿ではあるが。

 

「ねえ爆豪くん」

「……ンだよ」

 

 不意に柔らかい声を発する鷹野。この女性はこんなふうにも話せるのかと内心驚きつつ、勝己はぶっきらぼうに応じた。9ヶ月の付き合いにはなるが、個人的にはあまり話したことがない。

 

「未確認がすべて滅んだら、あなたはどうするの?」

「はぁ?……決まってんだろ、ンなこと」

 

 今さら言うまでもなく、爆豪勝己はプロヒーローである。ヴィランと戦い、治安を守るのが使命。グロンギ発生はイレギュラーな事態であって……奴らが滅びれば、また本来の業務に戻るというだけのこと。

 警察官だって、それは同じはず。

 

「そうね……」うなずきつつ、「でも少しだけ、疲れたわ」

「………」

 

 つぶやく鷹野の表情は、どこにでもいる若い女性のそれだった。

 

「まあ、別に警察を辞めるわけじゃないわ。好きでやっているわけだし……でもちょっとくらい休みをとって、世界中を回るなんていうのも、いいかもしれないと思うの」

「……あっそ」

 

「いいんじゃねーの」

「!」

 

 鷹野は目を丸くして、隣の青年のむすっとした横顔を仰ぎ見た。馬鹿にされるかいいところ無関心に終始すると思っていたので、肯定的な返答がなされるとは予想していなかったのだ。

 

「……別に休むつもりはねえけど、俺にもやりたいことはある」

「そう……。どんなこと……なんて、訊くのは野暮ね」

「フン」

 

 鼻を鳴らしつつ、口許を弛める勝己。戦線をともにしなければ、こうした表情を見ることはなく……彼もまたひとりの若者であると、思いを致すこともなかっただろう。それは逆も言えることだが――

 

 車中でのつかの間の安息を、静かな気持ちで過ごすふたり。

 

――そんな彼らの気持ちを嘲笑うかのように、異変が起きた。

 

「!、おい、あれ……」

 

 カーテン越しに電灯が漏れていた家々。それが突然、光を失っていく。電気を消したわけではなく、徐々に闇に覆われていくような――

 

「何……?一体、何が――」

 

 未だ状況が呑み込めない鷹野。しかしガラス戸が開き、そこから息も絶え絶えの子供たちが飛び出してきたとき……隣に座っていたヒーローが、飛び出していた。

 

「爆心地!?」

「あんたは家ン中確認しろ!!」

 

 爆破の勢いで一気に接近し、ふたりの幼子を抱きかかえる。その瞬間、屋内から漏れ出してきたあの黒い霧が、彼らのもとにまで到達したのだ。

 

「……!」

 

 反射的に動きかけた鷹野だったが、勝己のことばを脳内にリフレインさせることで己を押しとどめた。すぐさま個性"ホークアイ"を発動させる。双眸が金色に輝き、視力が飛躍的に上昇する。当初の目的――黒い霧の中で何が起きているのか、はっきり確認するために。

 

 

 そして彼女は、残酷な真実を思い知らされたのだ。

 

 

 *

 

 

 

 同時刻、警視庁。

 

 本部に戻ってきた緑谷出久と心操人使は、向かいから歩いてくるふたり組の姿を認め、揃って「あ」と声をあげた。

 そのふたり組というのが、決して良好な関係とはいえないはずの轟親子だったのだ。まだこちらに気づいていないのか、何事かことばをかわしあっている。笑顔がこぼれるわけでもないが……互いに剣呑な様子もうかがえない。

 

「……ふつうの親子だなぁ、ああ見ると」

 

 ぽつりとつぶやく出久。少し考えてから、心操もまた「確かにな」と同調する。彼らの間にあるわだかまりはゆっくり時間をかけて、融けて、なくなっていくのだろう。自分と幼なじみが、そうであるように。

 

 と、こちらに気づいた焦凍が駆け寄ってきた――父親を置き去りに。

 

「緑谷、心操……どこ行ってたんだ?」

「ちょっとね、話してたんだ」

「……ってか、親父さんはいいのか?」

「いい」即答である。「つーか、……」

「?」

 

 なんだか恨みがましい視線を向けてくる焦凍。意味がわからず当惑する出久に対して、人の機微に鋭い心操は「ははーん」と意地の悪い笑みを浮かべた。

 

「あんた何、拗ねてんの?」

「へぁ?」

「………」

 

 目を丸くする出久に対し、焦凍は憮然としたまま。――つまり、図星。

 

「……だって、ずりぃ。お前ら大学のこととか、俺にわかんねえ話してること多いし……」

「あ、あー……」

 

 ここでようやく出久にも合点が行った。焦凍はつまり、"仮面ライダー"となる以前から友人同士であった自分たちの関係に、疎外感を覚えているのである。

 

「ご、ごめんね轟くん!でもきみたちだってほら、僕にわからない雄英の話とかできるでしょ!?僕も常々羨ましいなあって思ってるしさ!」

「………」

 

 慰めているのか張り合っているのかわからない出久のフォロー。この友人はやはりニブいと心操は密かに思った。輪に入れないことを僻んでいるというより、出久を自分に取られてしまった気持ちになって嫉妬しているのだろう。少年期に友人が少なかったといえどそれなりに俗世の垢にまみれている自分たちと異なり、焦凍は本当に箱入り息子だ。こと人付き合いに限っては、まだまだひよこのようなもの。

 ただ結局のところ、優越感めいたものを覚えている時点で、心操も五十歩百歩ではあるのだが。

 

 若者3人が子供じみたやりとりを行っていると、

 

「……ふっ」

 

 不意に漏れる笑い声。振り返った彼らが見たのは……頬を弛めた、かの元No.1ヒーローの姿だった。

 

「え、エンデヴァー……」

「いや……失敬。気にしないでくれ」

 

 そう濁しつつ、彼は出久たちのもとに歩み寄った。

 

「緑谷くん、心操くん。……こんな息子だが、これからも友人でいてやってほしい」

「!」

「よろしく、頼む」

 

 深々と頭を下げるエンデヴァーの姿を目の当たりにして、呆けていた出久たちは慌てた。

 

「ちょ、ちょっ……やめてくださいそんな!頼まれるようなことじゃないですから!」

「……イメージ変わりますね、正直」

「あんたな……」

 

 盛大に顔を顰めた焦凍が父に歩み寄ろうとした――刹那、

 

「!!」

 

 彼の脳裏に、鮮烈な電光が奔る。それは五感、第六感をも超えた、まさしく本能に訴えかけるもので。

 

「轟くん?――!、もしかして、奴ら?」

 

 こういうときは鋭く察してくれる友人が、焦凍にはありがたい。

 

「ああ。それも、爆豪たちが危ないかもしれねえ……!」

「ッ、急ごう!」

 

 一礼して、真っ先に走り出す出久。すぐに続く焦凍、心操。

 

「………」

 

 沈黙とともに、轟炎司は彼らを見送った。使命を終えた者の、それが唯一できることなのだと心して。

 

 

「――緑谷、轟。先に行っててくれ、すぐに追いつく!」

「わかった!」

「ああ」

 

 己のマシンですぐさま出撃するふたりに対して、いったん彼らと別れてGトレーラーへ向かう心操。逸って飛び出していったところで、彼はただの人間でしかないのだ。GトレーラーでG3を手順にしたがって装着しなければ"仮面ライダー"とはなれない。こういうときばかりは、いつでもどこでも変身できるふたりが羨ましく思われる。

 

 

――そして出久たちに後れること数分、心操を収容したところでいよいよ発進するGトレーラー。

 コンテナ内部では、いよいよG3の装着シークエンスを開始していた。専用のアンダースーツを纏った心操の身体を、青と銀のパーツが次々に覆っていく。もはや幾度となく繰り返されてきた光景。

 

「G3、装着完了ですウフfFF!」

 

 ユニットに復帰した発目が揚々と声をあげる。本日数度目とは思えない態度だが、"わが子"の活躍のお膳立てをしているようなものと考えれば理解も及ぶ。常人の思考回路をもつ玉川班長はそう自分に言い聞かせ、粛々とシークエンスを進めた。

 

「よし、ガードチェイサー発進用意。2025、G3システムオペレーション開始――」

 

 

――刹那、予想だにしない凄まじい衝撃が、トレーラーを襲った。

 

「!?」

「うぐッ!!?」

 

 左右に激しく揺れる車両に翻弄され、壁に叩きつけられる玉川と発目。姿勢制御にすぐれたG3のみ、その場に片膝をつくことで態勢を保った。

 そんな状況が続くこと十数秒……トレーラーが停止し、異変はようやく収まった。

 

「ッ、な、なんだ一体……!」

「い、痛たたた……。そ、外の映像出します……!」

 

 全身の痛みに耐えて動いた発目のおかげで、モニターにトレーラー周囲の映像が映し出される。衝突事故でも起こしてしまったのではないかと戦々恐々としていた玉川だったが、その心配に関しては杞憂に終わった。

 

 事実は、それより遥かに恐ろしかった。

 

「あ、あれは……!?」

 

 前方に立ち塞がる、巨大なシルエット。G3とも通ずる巨大な複眼をもつそれは、しかし所々が赤黒い血肉を露にしている。背には、蝙蝠のような一対の翼。

 

「じ、G2……!?ってことは、あれは――」

「――第、3号……?」

 

 もとの怪人の姿からして醜悪だったが、いまの彼はもはやヒトの原型すらほとんどとどめぬ化け物となってしまっている。そのおぞましさに皆、息を呑んだ。

 しかし呆然としてもいられない。改造されたゴオマは本能のままにトレーラー内の人間の匂いを嗅ぎつけ、本格的な攻撃を仕掛けようとしている。

 

「……ここから離れてください、自分が奴を排除します」

「!、しかしG3はG2よりも……」

「その差を埋めるための武器が揃ってるんだ、あんな図体だけの奴にやられたりしません」

 

 きっぱり言い切って、心操はこのオペレーションに身を投じることを宣言した。いまは出久と焦凍に頼ってばかりいられない、自分の居場所は自分で守るしかないのだと、覚悟を決めたのだ。

 

 

 同族であるはずのズ・ゴオマ・グを改造するよう仕向けたかの少年もまた、"飼い主"としてこの場に現れていた。人間たちの覚悟を嘲るかのように、薄ら笑いを浮かべてたたずんでいる。

 

「ヒヒッ……これでひとり、減るかな」

 

 ダグバは十分に育った。彼以外のものはすべて、もはや滅ぼされるためだけの存在となる。

 

 "仮面ライダー"はもう、用済みだ。

 

 

 *

 

 

 

 鷹野警部補の運転する覆面パトカーが、住宅街を疾走していた。いかにサイレンを鳴らしているとはいえ、平時なら危険極まりない行為。

 だが、いまこの状況は非常も非常だった。住宅地を黒い霧が取り巻き……家という家から、大量のグロンギがあふれ出している。獣の本能しかもたぬ彼らは、生者の気配を察知して追いすがってくる。その命を、渇望するかのように。

 

 鷹野が必死の形相でハンドルを握っていると、助手席から苦しげな声がかかった。

 

「ッ、車停めろ……!俺が出て、奴らを……ッ」

「バカ言わないで!!そんなことができる状態じゃないでしょうッ、それに――」

 

 息も絶え絶えの勝己を怒鳴りつけ、さらにアクセルを踏み込む。後部座席には、さらにぐったりした幼い兄妹がいる。一刻も早くここを脱出して、病院に――

 

 そのときだった。前方に、2メートル超の大柄な影が現れたのは。

 

「あれは、7号……!?」

 

 未確認生命体第7号――ズ・ザイン・ダ。筋骨隆々の体躯と鋭く尖った角のような鼻をもつ、サイに似たグロンギ。ひと目見ればわかるその能力を改めて思い起こして、鷹野は慌ててブレーキを踏み込む。しかし法定速度を遥かに超えたスピードは、容易にはゼロにならない。

 そして……衝突。同時にその拳がボンネットをぐしゃりと潰し、車両に致命的なダメージを与えていた。

 

「しまっ……!」

「ヌゥウウウウンッ!!」

 

 さらに、フロントガラスに対して一本角の一撃。粉々になった破片が車内に降り注ぐ。

 

(このままじゃ……!)

 

 目の前のザインばかりでなく、しつこく追いすがってきた他のグロンギたちも四方八方を囲もうとしている。神経断裂弾を装填した拳銃1丁で、どこまでやれるか。いよいよ鷹野は、生命の危機が迫っていることを感じざるをえなかった。

 

「ッ、クソ……っ」不意に身を起こそうとする勝己。「ガキども連れて逃げろ……!ここは、俺が――」

「何言ってるのッ、あなたこそ逃げなさい!!」

「こんなで、逃げきれっかよ……!」

 

 満身創痍の状態で戦えるわけもなければ、逃げきれるわけもない。だが座して死を待つわけもなく、勝己は前者を選んだ。殿となって、鷹野らを逃がす――

 

 彼女に拒否権など与えるつもりはなかった。勝己は咄嗟に助手席から転がり出て、同時にザインめがけて爆破を放った。その衝撃に、大柄な身体が吹っ飛ばされる。

 ただ猛火は、弱った主の身体にも反動を与えた。そのまま仰向けに倒れ込む勝己。すぐさま起き上がろうとして、苦痛に顔が歪む。見ていられない姿だった。

 

(こんな子を、見捨てて逃げなければならないというの……!?)

 

 鷹野の心に、激しい葛藤が生まれる。自分ひとりなら、彼を守って戦うことを迷わず選べる。しかし現実には、一刻も早くここから逃がさなければならない子供たちがここにいる。

 どうすればいい?どうすれば、戦友を救える?

 

 彼女の心は、初めて助けを求めた。――ヒーローに。

 

 

 そして、"彼ら"が来た。

 まずその事実が示されたのは、鷹野たちに群がろうとしていたグロンギたちが突如爆散、黒い霧となって消滅したことだった。

 

「!」

 

 はっと顔を上げた彼女が見たのは……漆黒の夜空に浮かぶ巨大な甲虫と、それにぶら下がる異形の姿。緑と金に彩られた装甲が、燦然と輝いている。

 

――上空から戦友たちの姿を認め、彼……クウガこと緑谷出久は、思わず息を詰めた。

 

「かっちゃん、鷹野さん……!」

 

 ふたりに指一本でも触れさせてたまるものか。そんな燃え盛る信念を指先に込めて、ライジングペガサスボウガンで地上のグロンギたちを掃射する。

 そしてある程度ふたりの周囲に空間をつくったところで、ゴウラムから手を放した。同時に「超変身!」と声をあげ、青の金――ライジングドラゴンフォームへと姿を変える。地上に降り立つと同時に、まず体調の悪化している勝己のもとに駆け寄った。

 

「かっちゃん、大丈夫!?何が――」

「ッ、るせえ!耳元で叫ぶな……ッ」

 

 罵声はいつもどおりだが……明らかに苦しげだ。何があったのか改めて聞き出そうとするも、未だ大量に残るグロンギたちが襲いかかってくる。ロッドを振り回して斬り裂くが、きりがない。

 と、火炎と氷山が左右に奔り、クウガを援護した。さらに、

 

「KILAUEA McKINLEY SMASH!!」

 

 火炎を纏った左拳。冷気を纏った右拳。相反するふたつの力をワン・フォー・オールの輝きで覆った両拳が、怪物たちをまとめて弾き飛ばした。

 

「轟くん!」

「チッ……またこんな数がいんのか」

 

 個性をフルに駆使して排除しているにもかかわらず、次から次へと湧き出してくるグロンギたちに、忌々しげな声をあげるアギトこと轟焦凍――その正体を、知らないがゆえに。

 

「轟くん!」声をあげるクウガ。「かっちゃんが――」

「何?」

 

 振り向いた彼は――見たのだ。パトカーの後部座席に蠢く、異形の影を。

 

「緑谷ッ、後ろだ!」

「え――」

 

 その瞬間、パトカーの後部座席のウィンドウが粉々に割れ……中から飛び出してきた異形の腕が、クウガの首を絞めあげんとした。

 

「なっ!?うぐッ」

「緑谷くん!?」

 

 引きずり込まれそうになるクウガ。すかさず車内へ銃を向けようとする鷹野だったが、それよりも"彼"が先んじた。

 

「オ、ラァァァッ!!」

 

 爆炎がパトカーに襲いかかる。その衝撃で重量のある車体が横転し、何メートルか滑走する。まともに煽りを食らったクウガも吹っ飛ばされたが。

 

「ボケナードが……ッ」

「あ、ありがとう……」

 

 もう少し助ける相手に配慮してほしかった……とは言わなかった。常人ならともかく、自分はクウガだ。火の粉を浴びるくらいどうということはない。

 

 勝己の体調のことも気にかけつつ、クウガは横転したパトカーを仰ぎ見た。――刹那、後部座席のドアが内側から弾き飛ばされた。

 

「!!」

 

 ぎょっとする一同。唸り声とともに、這い出してくる何者か。

 

「ウゥゥゥゥ……!」

「ウォオオオオオ……!」

 

 それは――グロンギだったのだ。それも2体も。メ・ガドラ・ダに似た個体と、ズ・メビオ・ダに似た個体。

 

「な……!?」

 

 出久も焦凍も、面食らうのは当然だった。なぜ勝己と鷹野が乗っていたパトカーから、グロンギが?

 

「あれは、……」

 

 

「爆心地が救けた、子供たちよ」

「……え?」

 

 すぐに理解の及ばない彼らに噛んで言い含めるように、鷹野が続ける。

 

「あの黒い霧を吸い込んだ人間は……未確認生命体になる」

「……!」

 

 

――それは明確で、残酷な真実だった。少なくとも出久たちが、戦場の中心で呆けてしまうほどには。

 

 それでも時が止まることはなく、襲いかかってくる"人間だった"グロンギたち。我に返り抗するふたりの超人だが、先ほどまでより明らかに動きが鈍くなっていた。拳を突き出そうとして……止まる。

 

(じゃあ、俺たちが今まで殺してたのは……!)

 

 考えがまとまらない。ただその一点のみに愕然として、戦意が萎んでいく。

 その最中にあって出久は、もうひとつの事実に思い至った。

 

「!、まさか、かっちゃんも「俺は平気だクソナードッ!!」!?」

 

 いきなり聞き慣れた罵声を被せられ、出久は鼻白んだ。真っ赤な瞳が、夜の闇に爛々と浮かび上がっている。

 

「俺が吸い込んだ量なんてたかが知れてる……この程度でどうこうなるか……!」

「かっちゃん……」

 

 そんなの、なんの根拠もないじゃないか。現に勝己の身体は変調をきたしているのだ。

 しかし出久には、それ以上言い募ることができなかった。単に圧倒されたというのもあるし……何より彼は嘘は言わないという、ある種の信頼があった。

 

「ッ、轟くん、ひとまずここを離脱しよう!」

「……ああ!」

 

 思うところがないはずなくとも、アギトは動いた。"右"を発動させ、グロンギたちを氷山に呑み込ませる。殺さずに、一時的なりとも無力化する――いまの彼らにできる、それが限界だった。

 

 

 その葛藤さえも呑み込むかのように……突如として、黒い雷が降り注いだ。

 

「!?、うわぁあああああッ!!」

 

 あまりにも強力な雷によって、爆発が起きる。反射的に勝己と鷹野を庇おうと動いたふたりの仮面ライダーは、その煽りをもろに受ける羽目になった。そのまま吹き飛ばされ、アスファルトに叩きつけられる。

 

「う、ぐ……ッ」

 

 一体、何が起きたのか。倒れ込むふたりの思考は、しかし微妙に異なっていた。焦凍はただただ困惑するばかりだったが、いまの雷、出久には既視感があったのだ。

 

(そうだ、)

 

 思い出した。あれは以前、ゴ・ジャラジ・ダとダグバ――死柄木弔に遭遇したとき。一緒にいた桜子があわや殺される……というところで、奴らを打った雷。いまの一撃は、あれとよく似ていた――

 

 そのとき焦凍が、不意にぶるりと身を震わせた。

 

「……轟くん?」

「なん、だ……この気配……!?」

 

 彼は凄まじいプレッシャーを感じていた。かつて神野で遭遇することになった敵の親玉……"オール・フォー・ワン"に匹敵するほどの。

 

 そう。確かにそれほどの存在が、彼らの前に姿を現そうとしていたのだ。

 

 

「究極の闇を妨げる者は、葬り去らねばならぬ」

 

 

――グロンギの王、ン・ガミオ・ゼダ。

 

 

 つづく

 

 

 





心操「俺は戦う。俺たちの居場所を、創るために」

轟「俺は戦う。託された希望に、応えるために」


出久「僕は戦う。みんなの笑顔を、守るために!」


EPISODE 48. HEROES


ガミオ「貴様らは、何者だ?」
出久「僕たちは……ヒーローだ!!」




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