【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我 作:たあたん
結果的に5話にもアチョーが波及してダブルミーニングがトリプルミーニングになりました
アチョーで思い出しましたがシャーマンキングの李白竜が好きでした
沢渡桜子の憂鬱は深まっていた。出久を説得しに行った結果、彼の予想以上の決意の固さを思い知らされてしまった。
(何が、憧れちゃったんだからしょうがない、よ……)
かつてヒーローに憧れていた子供なんて、星の数ほどいるだろう。多くは大人になるにつれ、憧れは憧れでしかないと割りきって身の丈に合った生き方をする。出久だって一度はそれを選んだはずだ。それが、あの日心細いからと同行してもらって、そして未確認生命体に襲われてしまったばかりに。力を手に入れてしまったばかりに――
だが、力を得た出久が間違ったことをしているかといえばそうではない。ヒーローたちでも対処しきれない怪物を、一撃で吹き飛ばしうる力。人の笑顔を守るためにそれを使うというのは、人として間違ってはいないのだ。だから勝己もトライチェイサーを渡したのだろう。
だが、間違っていないからと、どうして出久がそんな重責を負わねばならないのか。他人のためなら自分を捨て石にしてもいいと思っているように見える出久だから、なおさら平穏の中に生きていてほしかった。
懊悩を抱えながら、自室でテレビをぼんやり眺めていた桜子。不意に、テーブルの上に置いた携帯が振動する。メッセージが浮かんだのを見て、小さく溜息をついた。――送信者は、緑谷出久。
『電話しても大丈夫?』
「………」
この時機に、電話をしてくる用事。午前中の出来事がある以上、そのことで話したいに決まっている。だが、出久はやや性急すぎた。桜子の気持ちは当時からまったく冷えていないのだから。
結局、暫く待っても返信はなく。出久は小さく溜息をついた。
(どうしよう……)
せめて話に応じてくれれば、頭の中でこねくり回した自分なりの考えを伝えられると思うのだが。完全にチャンネルを閉ざされてしまえば、出久にはもう打つ手がない。
ここまでコミュニケーションをとることに躍起になったのは、彼の人生において恐らく初めてのことだった。――それゆえ、どうしていいかわからない。恋愛とはいかないまでも、異性との交流の経験がもっとあれば違ったのだろうか。同性の友人すら高校まで満足にできなかった出久にとって、女子と親しくするなんて夢のまた夢。桜子との出会いは人生で二番目の奇跡だったのだ(一番はクウガの力を得たこと)。
女性経験が豊富な人間なら、妙案をくれるかもしれない。身近にそうした人間は――いた、一応。出久が"おやっさん"と呼ぶ、ポレポレのマスターだ。そう自称する割にいい歳して独身なので信憑性には疑問符がつくが。
ちょうどいい、午前の穴埋めもある。そこでおやっさんのアドバイスを――クウガのことは伏せて――求めてみよう。そう決心してトライチェイサーに跨がった直後、携帯が鳴った。タイミングがタイミングだ、桜子が応じてくれたと信じて表情を輝かせた出久だったが、
「え、かっちゃん……?」
勝己からの発信。「何かあったら連絡する」という彼のことばを思い出した出久は、笑みを消して即座に出た。
「もしも――」
『奴らが出た、杉並区阿佐ヶ谷だ』
もしもし、すら言わせず、切迫した口調が耳に響く。内容が内容であるから抗議の気持ちはない。
「……わかった、すぐに向かう!」
手短にそう応じて通話を終えると、出久は阿佐ヶ谷に向かって即座にトライチェイサーを発進させた。交通量のある都道であるから、人目を憚ってすぐに変身はできない。それでも暫し走っていると、トンネルに差し掛かった。運の良いことに、周囲の車の流れは途切れている。――いましかない。
「――変身ッ!」
出久が叫び、顕現したアークルの中心が赤い輝きを放つ。と同時に、トライチェイサーがトンネル内に入った。
やがて、その車体が再び姿を現したとき。ライダーの姿は、緑谷出久から赤き異形の戦士――クウガ・マイティフォームへと変わっていた。さらにはその車体も、先ほどまでの漆黒から黄金と赤を基調とする派手な色合いへと変化している。マシンの色彩を変更できるマトリクス機能によって、クウガ自身とカラーリングを共通のものとした"ゴールドヘッド"だ。
バイクともども劇的な変貌を遂げた古代の英雄は、アクセルを力強く振り絞り、疾風迅雷のごとく戦場へと走るのだった。
*
ズ・バヅー・バは苛立っていた。
27人目の獲物として選んだ警察官。その抵抗を力でねじ伏せ、ビルの屋上へと連れて行き――突き落とす。そうして彼をもの言わぬ肉塊に変えるつもりだった。
しかし、現実はそうはならなかった。墜落した警官は地面に接触した途端、軽快な音とともにバウンドしたのだ。そうしてどこも傷つくことなく、一命を取り留めた。
何度かそんなことを繰り返し、無意味と見るや撲殺を試みたのだが、それも無駄だった。
「残念だったな、化け物め!」警官が叫ぶ。「俺の個性は"軟体化"!全身を軟らかくすることで衝撃を殺せるんだ、だから殴ろうが突き落とそうが意味はないぞ!!」
「……ゴグバ。ジャザシヂバグバ、リント」
復活してからの数日で、様々な人間と接触したバヅーは少しではあるが日本語を解するようになっていた。現代人たちの得た力も。ゆえに、この人間の能力は自分とは相性が悪いことがわかった。
しかしそんなもの、さしたる問題ではなかった。
バヅーは放たれる銃弾にも怯まず一気に距離を詰めると、警官の手から拳銃を弾き飛ばし、その首に手を伸ばした。彼は咄嗟に個性を発動する。力をこめると、軟らかくなった肉が掌から逃げる。それも構わず、バヅーは思いきり力を込めた。
「かっ、あ……!」
警官が、苦痛に呻く。骨まで軟らかくなっている以上、強い圧力が加わっても砕かれることはない。だが、気管が圧迫されていることに変わりはない。――窒息。それだけは、避けられぬ運命であった。
「ガンダダダバ……ザグ、――ゴパシザ」
いよいよ警官の意識が途絶えようとした瞬間、
エンジンの嘶きとともに現れた黄金のトライチェイサーが、バヅーのみを弾き飛ばした。
「グワッ!?」
呻き声とともに、バヅーが地面を転がる。トライチェイサーを下りたクウガはその隙を突き、蹲って咳き込んでいる警官を救け起こした。
「大丈夫ですか?」
「!?、よ、4号……?」
警官は当惑こそすれ、恐怖はあまりない様子。4号――クウガが一切人を傷つけず、未確認生命体のみを相手としていると知っていたからか。
「ジョグジャブ、ビダバクウガ!」
「!」
早くも復活したバヅーの歓迎の声が飛んでくる。
「キョグギンジャンママ、ズ・バヅー・バザ。――ボギ!!」
指で招くようなしぐさを見せつつ、バヅーは近くの二階建てのビルの屋上へと跳躍した。誘われている――察しつつも、逃げるわけにはいかないとクウガはあとを追って跳んだ。
着地した途端、バヅーの跳び蹴りが飛んでくる。ある程度予測していたクウガは咄嗟に回避、肩のアーマーに掠っただけで済んだ。衝撃はあったが、痛みは大したことはない。怯むことなく、反撃に身を低くした状態からの上段蹴りを繰り出す。これは見事にバヅーの胴体を捉え、彼をふらつかせることに成功した。
(ッ、いまので決めてれば……)
咄嗟すぎて、一撃必殺の意識をもてなかったのが惜しかった。右脚が熱くならず、バヅーの胴体に紋は浮かんでいない。今度こそと意気込んだ矢先、バヅーは後ろに退き――そして、再び跳んだ。今度は、より高いビルへ。
「!?」
「ゾグギダ、クウガ!!」
容易く飛び移るのに成功したバヅーは、縁に右脚をかけてこちらを見下ろしている。かっとなったクウガは、すぐさまあとを追って跳ぼうとするが……その高さと距離は、即座に冷静さを取り戻さざるをえないもので。
(い、いくらなんでも遠すぎる……!)
クウガに変身することで、確かにジャンプ力も強化はされている。そうでなければ、この2階建てビルの屋上にだってたどり着けなかっただろう。
しかし、それでもあの高さには到達できない。試したわけではないが、アークルがそう訴えかけているように思えてならなかった。
結局、彼が選んだのは、
「――ッ!」
助走をつけての跳躍。10メートル、15メートル、あとわずか――
――というところで、落下が始まった。咄嗟に非常階段の縁を掴んで一旦勢いを殺し、再び落下する。そのおかげで、かろうじてまともに着地ができたが。
「ッ、だめか……。もっと、跳べたら……!」
口惜しさをこめて見上げる先では、バヅーがさも落胆したように肩を落としている。かと思えば、その場からなんの躊躇もなく跳躍、再びクウガに跳び蹴りを仕掛けてきた。今度は躱しきれず、胸の装甲で受け止めるほかない。身体が思いきり後ろに吹っ飛び、仰向けに倒れ込む。装甲が分厚いとはいえ、痛手を受けたことは間違いなかった。
しかし、それ以上の追撃はない。バヅーは再び腕組みをして、口を開閉させた。
「ガバギビガラビ、キョグリパバギ」
「何……!?」
「ザジャブガ、ゴビバセ!」
挑発なのか、何かを促しているのか――当然訊けるわけもなく、バヅーは再び高層ビルの屋上へ戻っていった。
「……ッ」
何か、何かあるはずだ。あそこへたどり着く方法が。自分が超古代から受け継いだ力は、それすらできずに敗れ去るしかないような、そんな中途半端なものではないはずだ。
「跳ぶんだ、もっと高く……!」
その意志を現実のものとすべく、姿勢を低くし、脚に力をこめる。もっと、高く。他の一切を、それこそ敵のことすら排除して、一心にそれだけを望む。
――新たな主の望みを、アークルは聞き届けた。
中心に宿る霊石が発光し始める。その光の色は赤ではなく……青。
「――!」
行ける。直感的にそう思った彼は、迷うことなく跳んだ。霊石を皮切りに、全身を青い光が覆う。光とともに、クウガは見事ビルの屋上にまでたどり着いたのだった。
着地し、ゆっくりと立ち上がったクウガは、身体が遥かに軽くなったような感覚を覚えていた。――それは、錯覚などではなく。
手、胴体の装甲が視界に入って、彼は初めて異変に気づいた。
「青くなってる……!?」
装甲ばかりでなく、瞳の色も。赤かった部分はことごとく青へと変わっている。ただ色が変わっただけではない、筋肉質だったボディは、まるでマラソンランナーのようなほっそりとしたものとなっていた。
――ドラゴンフォーム。クウガの、
その姿を目の当たりにしたバヅーは、
「ゴグザ、ゴンガゴグギギ――!」
嬉しそうに声を昂ぶらせながら、クウガ目がけて飛びかかる。クウガはそれを流れるように回避、さらに放たれたハイキックをもすんでのところで躱すと、構えた拳を次々胴体に叩き込んだ。
「……フン!」
「ッ!?」
直撃にもかかわらず、バヅーは怯んだ様子を見せない。お返しとばかりに掌打を胴体に叩き込んでくる。
「ぐあっ!?」
本気の一撃でないことは一目瞭然だったのに、激痛にも近い痛みがクウガを襲う。装甲が薄く、身体も細くなっているせいか、間違いなく防御力が低下しているようだった。いや、それだけではなく。
(打撃力も、弱くなってるのか……!)
格闘では、明らかに不利。しかし
「ボギ!」
再び誘うようなしぐさを見せて、バヅーがさらに高いビルへと跳ぶ。赤のときでは、明らかに届かない高さと距離。しかし、考えているとおりなら――
その可能性を信じ、バヅーを追って跳躍する。すると案の定、なんの苦労もなく追いつくことができた。
「やっぱりだ。ジャンプ力、いやきっと敏捷性そのものが増してるんだ!」
ジャンプ力と、スピード。一方でパワーは不足している。何か補う方法があれば――
だが、それを考えている猶予もなく。バヅーが再び襲いかかる。跳躍、からのキック。この姿で受けたら致命傷にもなりかねないと予感して、焦ったクウガは咄嗟にその場を転がった。
しかし、着地したバヅーはいよいよ本気になっていた。すかさずクウガの首に手を伸ばして締め上げる。呻くクウガが苦し紛れに放った拳をも拘束して完全にその身体を支配下に置き――
そしてクウガは、空中へと投げ飛ばされた。
つづく
青山「ボンソワール、青山優雅だよ☆緑谷が(物理的に)ブルーになってマドモアゼル沢渡も(心理的に)ブルーに……しかも緑谷はビルから突き落とされちゃったから次回はちょっと大変だ☆どうすれば青くなっちゃった緑谷が6号に勝てるのか、碑文にそのヒントがあるとボクは読んだけどみんなはどうかな?コレはマドモアゼル沢渡の協力が必要不可欠だね☆説得ならいつでも承るよ☆」
EPISODE 6. 吼えよドラゴン
青山「次回も、さらにキラキラが止められないよ☆」
※今週末から2週間ほど海外へ行くため音信不通になります
次回アップは最速で12/6です。向こうでどれくらい執筆時間がとれるかわからないのでもっと遅くなるかもしれません
ご迷惑おかけしますがご容赦ください