【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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鷹野警部補はディケイド・クウガの世界に登場した八代刑事をモデルにしてます。なので下の名前は"藍"です
20代後半のイメージだったんですが演者の佐藤寛子さんは当時まだ23歳くらいだったという……これは……陳情、だな……

[追記]
駿速さんの最高時速をコッソリ修正しました。やっぱり元ネタに合わせようかと…


EPISODE 6. 吼えよドラゴン 3/4

 警視庁では未確認生命体関連事件合同捜査本部の捜査会議が行われていた。ヒーローと警察官が向かい合うようにして座る会議室において、未確認生命体第6号(ズ・バヅー・バ)の凶行を止めるための重大な情報がもたらされたのである。

 

「工場の煙?」

 

 報告を聞いた管理官の塚内警視が、確認するように声をあげる。説明役を務める鷹野警部補は、それに対してはっきりと頷いた。

 

「はい。爆心地によれば、第6号は逃走の直前、突然咳き込むようなしぐさを見せたとのことです」

「そういえば、確かにそうだった……」飯田がポンと手を叩く。

「確認したところ、当時の風向きは北西でした。現場を基点とすると、このように――」プロジェクターに簡単なシミュレーションマップが表示される。「工場はちょうど北西にあります」

「なるほどね。しかし、それだけでは……」

 

 6号が煙を嫌ったという確たる証拠にはならない――塚内はそう釘を刺そうとしたが、ここで森塚が手を挙げた。

 

「ハイハイ、僕も手伝わされ……お手伝いして調べたんですよ。これまでの6号の関与が疑われる墜落死の現場の、当時の風向き」

 

 森塚によれば――調査した25件のうち、18件の現場は近隣の工場からみて風上にある。残り7件についても工場が半径数キロ圏内にないゆえの"保留"であり、総合すると工場の煙を避ける形になっているのはほぼ確定的である。

 

「ふむ……爆心地、きみはどう考える?」

 

 刑事らの分析をじっと聞いていた勝己は、意見を求められるやラグなく口を開いた。

 

「あんときの奴の様子からみても間違いないと思います。連中は超古代から甦ってきた可能性がある、汚れた空気はなるべく吸いたくないと考えられる」

「銃弾も爆破も大して気にとめないくせにねえ。図太いんだかナイーブなんだか」

 

 森塚に「私語をするな」と注意しつつ、塚内は鷹野に続きを促した。ここからが本題だ。

 

「説に従い、本日の風向きから出現予測地点の絞り込みを行いました。昨日、最も多くの被害者が出た杉並区に限定すれば――このようになります」

 

 狭められた出現予測地点が表示される。その表示を――本部長は、信頼することにしたようだった。

 

「よし、杉並区の該当範囲、また周辺区を中心に、所轄署と協力して警戒を行うことにする。鷹野警部補、森塚巡査、爆心地の三名は杉並へ。インゲニウムと気谷巡査部長は品川・港区を……」

 

 面構警視長の命令により散会、ヒーローと捜査員らはそれぞれの担当区域へ向かうべく動き出したのだった。

 

 

 

 

 

 それから一時間ほどした頃、文京区の喫茶店・ポレポレのカウンター席にて、緑谷出久はひとり悩んでいた。

 

「なんで青くなっちゃったんだろう……」

 

 置いてある醤油の蓋を横目で見つつ、ぽつりと呟く。蓋の色が青いとか、そんな程度の低い話ではなかった。

 

「確かに赤のままじゃ勝てなかったけど……結局青も青でパワー負けしちゃうし……」

 

 パワーで優位に立てるマイティフォームでは、あの跳躍力には対応できない。かといってジャンプ・スピードで互角のドラゴンフォームでは、ほとんどパンチやキックといった打撃が通用しないのだ。あちらを立てればこちらが立たず。戦闘中にも思ったが、せめて不足したパワーを補う手段がないと、後者は相当使いどころが限られてしまう――

 

 と、野菜の入った段ボール箱を抱えたおやっさんが二階から下りてきた。

 

「どうした出久、悩みごとか?」

「あっ、おやっさん……」

 

 段ボールをカウンターの上に置くと、彼はすかさず醤油とソース、ふたつの小瓶を手にとる。出久はそれをただ眺めるばかりだ。

 

「ま、やっぱり醤油はね、日本料理なら大概合いますよ。これにしときゃほぼ間違いなしだよね」赤い蓋の小瓶を掲げつつ言ったあと、「でもソースにはソースの良さがある!カレーにかけるならやっぱりソースのほうが主流だしねえ」今度は青い蓋の小瓶を掲げて、である。

 

「おやっさん……」出久は溜息をつきつつ、「それ、逆です」

 

 おやっさんは取り違えていた。赤がソース、青が醤油である。もっともポレポレのことはすべて知り尽くしている彼だから、本当に間違えたのではなく道化を演じたのだろう。予め用意していたらしき「()()()か」という駄洒落も含めて。

 

 実際、彼の言動のおかげで出久の心は随分と解れた。

 

「でもありがとう、おかげでちょっと気が楽になりました」

「そうかそうか!んじゃ、楽になったついでに外掃いてこい。昨日のぶんも働きなサイケデリック!」

「はーい」

 

 苦笑しつつ店の外に出て、箒とちりとりを持って掃除に着手する。ちょうど春の半ばということで、桜をはじめ散った無数の花片がそこかしこに沈んでいる。いささかもったいない気もするのだが、悲しいかな花も地に落ちれば景観を損ねるものとなってしまうということか。

 ともかく、給金をもらう身の出久は、人の道に外れた行為でもない限りやれと言われたらやるしかないのである。心の中でごめんと謝りつつ箒を地につけた、ほとんどその瞬間だった。――そばに駐めてあるトライチェイサーの無線がひとりでに起動したのである。

 

『鷹野より杉並3、そちらの状況は?』

『こちら杉並3、現在のところ異常は――』

「!」

 

 警察の無線のやりとりを傍受しているのだということはすぐにわかった。このマシンは元々、白バイの試作機なのだから。

 そしてその内容が、未確認生命体の再出現に備えたものであることも容易に想像がつく。出久は自然、聞き耳を立てていた。この偶然の先で、何かが起こるのではないか――そんな予感がしたのだ。

 

 そしてそれは見事に的中した。一分もしないうちに、所轄側の警官の様子が途端に慌ただしくなったのだ。何ごとかを問う鷹野警部補に対し、

 

『桃井四丁目付近に、6号らしき影を発見!』

「……!」

 

 やっぱりか。腹の中で、どくんと何かが熱く疼いたような気がした。

 居ても立ってもいられなくなった出久は「ごめんなさいおやっさん」と声に出して叫ぶと、その場に箒とちりとりを放ち、トライチェイサーを発進させたのだった。

 

 

 

 

 

 考古学研究室に戻った桜子は、自身のデスクトップで解読作業を行っていた。青い戦士――そのワードから連想できることばを検索にかけていく。青、空、海――直接関係のありそうなものはヒットしない。暫し停滞して悩んだ桜子だったが、そこで海から"水"という単語を着想した。早速検索にかけてみると、

 

「!、これだわ……」

 

 青い――水の戦士の、真の戦い方。早速それを伝えるべく、桜子は出久の携帯に連絡しようとする。しかし、いくら待っても出る様子がない。出久は携帯の入ったカバンをポレポレの休憩室に置き去りにしていたのである。逸った桜子は次に勝己にも電話をかけてみるが、こちらも電源が入っていない状態だった。

 よもやと思いテレビをつければ――朝の情報番組が、未確認生命体の出現を伝える緊急報道に取って代わられていた。やはり出久も勝己も戦いに赴いているのか。

 

「井荻……!」

 

 伝えられた出現地域を聞いた瞬間には、桜子は考古学研究室を飛び出していた。キャンパスを出口目がけてまっすぐ駆け抜ける途上で、再びの心操とぶつかりかけた。

 

「ッ……沢渡さん?どうしたんですか?」

「!、心操くん、バイク借りていい!?」

「は?」

「私、どうしてもいますぐ行かなきゃいけない場所があるの!」

 

 井荻駅の属する西武新宿線は未確認生命体出現によって現在運行を見合わせているそうだし、周辺の道路も封鎖されていることが予想できる。しかし、バイクを使えば――

 

 桜子の必死の懇願を聞いた心操は、小さく溜息をつき、

 

「……いいですけど、沢渡さんふだん俺のみたいな大型のに乗らないでしょ。危ないですよ」

「わかってるけど――」

「――俺がお供しますよ。なんか関係あるんでしょ、さっきの話と」

「え、でも……」

 

 「いいんです」と心操は笑った。

 

「俺のバイクあなたに貸したなんて知れたら、緑谷に怒られちゃいますし」

「心操くん……」

「それにほら、タクシー代をもうもらってますから」

 

 喫茶店で桜子が奢ったぶん、それを指しているのだろう。

 

――なんであれ、心操の心遣いが胸に染みた。

 

「ありがとう、心操くん……お願いしていい?」

「ええ。ちなみに、どこに行けば?」

「えっと、井荻なんだけど……」

「井荻って……」一転、困惑した表情を浮かべる。「いま、未確認生命体が出てるんじゃ?」

「うん……もしあれなら、やっぱり……」

「……いや、尚更ひとりじゃ行かせられないですよ」

 

 結局心操は理由を深く追及せず、躊躇いもせず、桜子を自身のマシンのもとに誘ってくれたのだった。

 

 

 

 

 

 桜子からの電話に出なかった勝己は、ちょうどバヅーを発見、戦闘に入ろうとしていたところだった。

 バヅーは既に、先行して交戦していた警官数名を死傷させている。もはや様子見をしている猶予もないと、勝己は例によって全力で挑みかかっていた。

 

榴弾砲(ハウザー)――着弾(インパクト)ッ!!」

 

 最大限の殺意をこめた爆破が放たれる。それは爆風だけでも凄まじいもので、直撃を避けたはずのバヅーの身体が大きく吹っ飛ばされた。

 

「オラァ、40人殺した威勢はどーしたよバッタ野郎がァ!!」

「チッ……クウガジョ、シジャバ、バギザバ」

 

 人間といえど侮れるものではない――それは理解したバヅーだったが、それでも退くつもりはない。むしろリスキーな獲物だからこそ、必ず狩ると意気込んでいた。

 

「ハッ!」

 

 掛け声とともに空高く跳躍、付近の建造物の屋上に着地すると、即座に降下してジャンプキックを放ってくる。勝己は間一髪でそれを躱し、やはり爆破で反撃。こちらは直撃だったが、しかし一瞬表皮が黒焦げになっただけで即座に回復されてしまった。

 睨み合う勝己とバヅー。――実はこのとき、後者をライフル銃のスコープ越しに狙う女の姿が付近のビルの屋上にあった。

 

「こちら鷹野、これより第6号を狙撃する。できるだけ奴の動きを押さえて」

 

 無線機から、勝己の耳に装着された骨伝導型イヤホンへと伝達する鷹野警部補。"了解"の意を示す舌打ちが返ってくるのを確認して、自身の個性を発動させた。スコープを覗く瞳に、猛禽類のごとき光が宿る。

 

――鷹野藍。個性、"ホークアイ"。視力が人間の限界まで強化され、キロメートル単位で離れた場所にある物体のディテールを観察したり、あるいはその動きをスローモーションで捉えて次の行動を予測することもできる。この個性は狙撃部隊や警備畑において、元々の高い洞察力と相俟って十全に活かされ、ノンキャリアである彼女が20代で警部補にまで昇進するのに一役買った。

 

 己が個性を駆使し、一撃必殺のヘッドショットを狙う。ライフルも通常のものではなく、通常の銃火器に耐えるような異形型敵の鎮圧などに使用されている特注品だ。殺害できるかは別にして、これでダメージを与えられなかったら末代までの恥だと彼女は心していた。

 幸いにして、勝己は襲ってくるバヅーを最小限の動きでいなし、照準がつけやすいように配慮している。ただの傍若無人なワンマンかと思っていたが、任務を完遂するために必要な協調ができないわけではないらしい。ヒーロー爆心地に対する評価をわずかに上方修正しつつ、鷹野は慎重に的を絞り、

 

 そして、引き金を引いた。一瞬の烈しい銃声のあと、放たれた弾丸がスコープの中心――バヅーの頭部に吸い込まれていく。

 その直撃を受けた瞬間、バヅーは声を出すこともできずに大きく吹っ飛び、建物の壁に激突した。大量の粉塵にその姿が隠れる。

 

「………」

 

 これで倒せた――とは、誰も思っていない。通常の拳銃の弾丸を容易く弾き返す全身だ、強力なライフルをもってしても完全に貫通させるまではいくまい。

 そしてそれは現実のものとなった。粉塵が散るとともに、バヅーがおもむろに立ち上がってきたのだ。ただ、ノーダメージというわけではなく、身体がふらついている。軽い脳震盪を起こしているようだ。鷹野の面目は無事に保たれた。

 

「ッ、バンバンザ……ギラボバ?」

 

 戸惑いぎみに呟かれたことばの意味は、勝己にも理解することができた。それゆえに、

 

「知りたきゃ地獄で調べろやぁ!!」

 

 罵詈雑言とともに、爆破を顔面にぶち込む。バヅーは顔を黒焦げにして再び建物の壁に自らの背中の形を刻み込むのだった。

 

 いける、勝己はそう確信していた。未だ決定打こそ与えられてはいないものの、自身の爆破と鷹野の狙撃で着実にバヅーの体力を削ることができている。長期戦になればなったで飯田たちも参戦してくるだろう。これなら――

 

 が、流石に形勢不利を見てとるやバヅーは方針を転換した。動けるようになるや否や跳躍、そのままビルの上に飛び移ってしまったのだ。

 

「ッ、テメェまた逃げる気か!!」

 

 当然、勝己も鷹野もバヅーを逃がすつもりはない。だが、爆速ターボもホークアイも、ビルからビルに縦横無尽に飛び移って逃げる敵までは捕捉しきれないのだ。

 万事休すかと思われたそのとき、一台のパトカーが現れ、運転席から小柄な刑事が姿を現した。

 

「おっと、ゲロマズな状況みたいだね」

「!、森塚刑事……」

「ここは僕も働かんとね……――とうッ!」

 

 被っていたソフト帽を天に投げつけ、同時に自身も跳躍する。その瞬間、彼の身体は光に包まれ、

 

 イエローを基調とした、オフロードマシンへと変形した。

 

『さあ、乗りたまえ爆心地!』

「………」

 

 流石の勝己も一瞬呆気にとられる森塚駿の個性は――"駿速(レーザーターボ)"。肉体をバイクに変形させることで、最高時速278キロでの走行を可能とする。飯田の"エンジン"の変則型と言ってもいい個性だった。

 ともあれ、これで爆速ターボよりも安定したハイスピードで追跡できる。勝己は躊躇なく森塚の変身したバイクに跨がり、走り出した。

 




キャラクター紹介・グロンギ編 グシギ

ヒョウ種怪人 ズ・メビオ・ダ/未確認生命体第5号

「ゴギヅベスババ……ビ、パダギンゾンビ!(私の本気に……追いつけるかな!)」

登場話:EPISODE 3. エンカウンター~EPISODE 4. TRY&CHASE!
身長:203cm
体重:172kg
能力:270km/hでの走行
   鋭い爪による引き裂き
活動記録:
人間体は黒を基調とした衣装に身を包んだ十代後半の無口な少女。その姿で文京区茗荷谷駅付近に現れ、絡んできたチンピラ2名を惨殺したのを皮切りに、都道を走行する車両を襲撃する。その際未確認生命体第4号(赤のクウガ・マイティフォーム)と遭遇し交戦するも、駆けつけた警官隊の銃撃を受けて左眼を負傷。逃走して区内に潜伏する。
翌日再出現し、自らを傷つけた警官隊を執拗に殺戮、駆けつけたターボヒーロー・インゲニウムですら追いつけないスピードで逃走を図るが、中央自動車道にて警察の新型白バイの試作機"トライチェイサー"を爆心地より譲り受けた4号に追いつかれ、その体当たりを受けて深傷を負う。それでも執念で4号に襲いかかろうとしたところで、そのキックを腹部に受けて爆死した。

作者所感:
作者のライダー初怪人が彼女。当時アンパンマンくらいしかヒーローもの?を見たことがなかった作者にヤンキーを蹴り殺す衝撃的なシーンを見せてくれたお方。その恐怖で一旦リタイアしたので4話はリアルタイムで見てません。5話で復帰したらクウガがかっこいいバイクに乗ってたりしました。ディケイド・アギトの世界ではアントロードに惨殺されてたり、美人なのに色々と不憫……


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