【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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あけましておめでたふございます!またしてもひとつクウガが遠くなってしまいましたが、拙作では現役でがんばりますよー!

新年一発目ということで(?)、ひとまずは平和な展開となっております
とはいえ三分割なので、次から血生臭くなっていくことは確か…(今のテレビじゃ)見せられないよ!


EPISODE 9. 血漑戦線 1/3

「じゃ、俺らの今後の活躍と無事を祈念しまして!」

 

 

「「「「「かんぱ~い!!」」」」」

 

 カン、と小気味よい音を立て、黄金の液体が揺らめくジョッキをぶつけあう――

 

 

 居酒屋にて、切島鋭児郎は旧交を温めていた。相手は雄英時代のクラスメイト――上鳴電気・瀬呂範太・芦戸三奈・耳郎響香の四人。当時、とりわけ親しく付き合っていた面々である。

 

「ひっさしぶりだよなあ、この面子で集まるのも」

 

 早速ビールをぐびぐび飲み干しつつ、こういう席の開幕としてはありがちな台詞を吐く上鳴。会話のボルテージを上げるべく、切島は努めて調子よく「確かになあ!」と応じた。

 

「芦戸は福岡だもんな。瀬呂なんか日本にすらいないし」

「まあな。結構面白いぞ、アメリカも」

「いちばん地味だったのにいちばんハデに動いたよねえ、いざデビューしたら!」

「オイ」

 

 学生時代は皆同じ目標に向かい、文字どおり同じ釜の飯を食ってプロヒーローへの途を歩んできた。無事卒業し、デビューして二年、短いようで長い月日はそれぞれの途を大きく枝分かれさせている。自分のように都市部で活動する者、地方に軸足を置いた者、国外に飛び出した者――決して多くはないクラスメイトたちだが、それぞれにそれぞれの現況がある。

 その中にはひとり、最も将来を嘱望されながら姿を消した者もいる。この中の誰とも特別親しいわけではなかったが、それでもかけがえのない仲間であることに変わりはない。彼の失踪を止められなかったことを思うと、いつも胸が締めつけられるような思いに駆られる。

 

 そんな切島の郷愁をよそに、上鳴が相変わらず陽気にしゃべり続けている。

 

「東京いたってそうしょっちゅうは遊べねえしなー、オフ合わせにくいし。なっ、キョーカちゃん?」

「その呼び方キモいからやめろ。……まあそういう仕事だしね、ヒーローって」

「その点切島はいいよね~!事務所一緒なんだもん爆豪と!」

「あー……一応コンビでやらせてもらってるしな」

「あの爆発さん太郎とコンビでよくハゲねえよなー。でもアイツ、いまはアレだっけ?未確認の捜査本部?」

「そりゃこの集まりにも来ないよな。ただでさえノリ悪いんだし」

 

 盛り上がりから一転、どこか湿っぽい雰囲気になる一同。三年間付き合ってきたわけであるから、彼らは勝己の残念すぎる性格を嫌というくらいによく知っている。一方で、短所を補って余りある長所の数々もよく存じている。だから勝己のことが大好きなのだった。

 

「未確認か……いまんとこ俺も耳郎も遭遇したことはねえけどさー。切島は何回か戦ったんだろ?」

「おう。……正直やべえよあいつら。殺傷能力も防御力もとんでもねえ。それでも、俺とか爆豪がそれこそ殺すつもりでぶちかませばダメージは与えられっけど……すぐ全快されちまう。何より回復力が一番厄介だな」

「ふぅん……そういえば爆豪の奴、4号とコネがあるって風の噂で聞いたけど……そこんとこどうなの?」

「あ……」一瞬、口ごもる。「いや……俺も詳しくは教えてもらってねえっつーか……」

 

 一応、嘘は言っていない。切島が4号の正体を知ったことについて、勝己はなんら関与していないのだから。

 

「にしても、爆豪はどこでそんなコネ見つけてきたんだろうな。出会い頭で爆殺してもおかしくなさそうなのに」

「フフフ、ここは名探偵デンキの出番のようだな!」

「すっこんでろ」

 

 耳郎の冷たい突っ込みにも怯まず、名探偵デンキは己の推理を披露する。

 

「爆豪が切島にも言わずにそんなコネつくれるわけがねえ。つまりは元から知り合いだった……つまりは俺らの同級生!ズバリ、4号の正体は轟、なんてどうよ!?」

「あー……」

 

 上鳴にしては一応無難な推理ではある。しかし、

 

「だったら切島にまで頑なに秘密にしてるのは変じゃない?」

「あっ、そこはほら、あいつって読めねえとこあるし……俺ら凡人には……」

「んなこと言い出したら推理になんないじゃん。……でも、元々の知り合いっていうのはありうるかも。高校んときじゃなくて、たとえば小中学校の幼なじみとか」

「……!」

 

 鋭すぎますよ耳郎さん。切島は切実にそう思った。

 この流れは非常によろしくない。もちろん彼らだけで緑谷出久という個人にまでたどり着くことはないだろうが、自分に疑惑の矛先が向けば終わりである。この四人を相手に隠し通せる自信はなかった。

 と、幸いというべきか、芦戸が話を上手い具合に脱線させてくれた。

 

「ハァ、爆豪が来ればそういう話もできたのになー……あのことも直接問い詰めたかったしぃー」

「あのこと?――ああ、梅雨ちゃんの件?」

「そ。梅雨ちゃん今年から東京(こっち)に拠点移したでしょ?」

 

 蛙吹梅雨――この場にはいないが、彼女もまた雄英時代の同級生。"蛙"――そのものズバリである――という異形型の個性を活かし、現在はフリーで水難救助や海賊行為の取り締まりを国や自治体から請け負っているはずだが。

 そのヒーローとしての活動エリアの違いから、東京にいても勝己が彼女と再会することはないだろう。切島はそう考えていた。――まさかこの翌日、彼女が勝己どころか出久とまでも邂逅を遂げることになるなどと、予想できるはずがないのだった。

 

 

 

 

 

――翌日 文京区・ポレポレ

 

 おやっさんことポレポレのマスターは、新人女子店員から差し出されたクッキーに舌鼓を打っていた。

 

「んっ、うまい!これならね、ウチで出すコーヒーのおつまみにできるよ」

「ホンマですか!?」

「ホンマホンマ、本間千代子!!」

 

 おやっさんの時代錯誤なギャグを無視し、「よかったぁ~」と嬉しそうに笑う女子店員。――彼女の名は麗日お茶子、本業は災害救助を専門とするプロヒーローである。ゆえあっていまは謹慎中であり、食い扶持を確保するためにここで働いている。

 そう解説すると仕事に対してネガティブな印象を受けるが、彼女は違っていた。二杯のカレーの恩とばかりに実によく働く。ただ言われた仕事をするばかりでなく、新メニューのアイデアなどもバンバン出しまくる。このクッキーも彼女が考案した手作り品だ。

 

「その感じすごくイイよ~お茶子ちゃん。店のことマスターよりも考えてるその感じ!その点出久はさあ、真面目は真面目なんだけども――」

 

 噂をすれば影、というべきか、おやっさんの口から"出久"の名が飛び出した途端、からんころんと音をたてて扉が開かれる。現れたのは当然、

 

「おはようございます!」

「おう、おは横山やすし!」

「おはようデクくん!」

 

 緑谷出久――城南大学法学部に在籍する学生であり、ポレポレの店員としての勤務歴はお茶子よりも圧倒的に長い。ついでに言うならヒーローオタク。ただそれだけの地味な青年である――表向きは。

 

「あれ、何してるんですか?」

「ん~?いまねえ、おまえの悪口言ってたとこ!」

「へぁ!?」

「ちょっ、私は言ってませんよ!?」

 

 出久があからさまにショックを受けるのを目の当たりにして、お茶子は慌てて「ホントだって!」と言い募る。おやっさんは愉快そうに笑っている。

 

「マスターってばもう!――あ、デクくん、よかったらこれ!」

「へ……あ、え、クッキー?」

「うん。お店の新メニューにどうかと思って焼いてみたんよ」

「えっ、手作り!?」

「もちろん。……あ、もしかしてそういうの苦手?」

「い、いいいやそそそそそそんなことないよ!ぼっぼぼっ僕なんかがそんな女の子の手作りのクッキーを食べさせてもらえるなんてそんな恐れ多くてですね!」

「うわッ、すっごいブサイクな顔んなっとる!そのネガティブスイッチの入り加減もようわからへんし!」

 「いいから食べて!」とクッキーの入った包みをほっぺたに押しつけられ、出久はむぐぐ、となりながらもひとつ摘まされた。

 

「んむ、ん……あっ、美味しい!」

「ホンマ!?」

「ホンマホンマ、本間千代子!!」

「えぇ……」

 

 この男、手遅れだ――お茶子は少しだけ悲しい気持ちになった。いい職場だと思うのだが、これが伝染するとするなら早めに見切りをつけるべきなのかもしれない――

 

 しかも、

 

「これ、沢渡さんにもあげていいかな?」

「え……沢渡、さん……?」

「うん。あっ、沢渡桜子さんって言って、大学の考古学研究室の人でね、すごくお世話になってるんだ」

「これがまた美人でねえ、大人の魅力ムンムンというか。全盛期の桜田淳子を思い出すねえ……」

「………」

「……あ、あれ?」

 

 なぜかムッとするお茶子。そういう意味では確かに出久は無神経だったのかもしれない。もっとも、気持ちが曇る理由をよくわかっていないのは、このときは当人も同じだったのだが。

 

 

 

 

 

 ポレポレである意味不穏(?)な朝が過ぎる一方、警視庁では未確認生命体関連事件捜査本部の定例会議が行われていた。

 

 捜査本部のNo.2であり、実質的な取りまとめを行う塚内管理官が発言する。

 

「これまでの捜査で、未確認生命体には、ひとつの場所に集まるという習性が確認された。その点から、彼らにも一定の仲間意識があるといえるだろう。ただ、不可解なのは――」

「――連中がなんでほぼ単独行動してるか、ですか?」

 

 森塚巡査の発言。したり顔の彼をじろりと睨みつけつつも、塚内は叱責よりその発言を活かすことを選択した。

 

「……そうだ。奴らが本能のままに殺人を繰り返しているだけならば、一斉に出てきてあちこちで虐殺を始めないのは不自然だ。逆に、かつての敵連合のように大きな目的があるとすれば、統一された組織行動をとらないのが解せない」

「………」

 

 確かに、一匹ずつ現れては、無差別に――第7号などはトラックばかり狙っていたが――何十名か殺害し、そこで第4号に妨害され倒される。組織としても獣の群れとしても、やっていることは中途半端でしかない。

 皆が悩む中、インゲニウムこと飯田天哉が挙手をした。

 

「どうぞ」

「はいっ、ありがとうございます!えー……爆豪く、爆心地が遭遇した奴らのリーダー格の存在を考えれば、奴らは一定程度組織付けされていると考えるべきかと!」

「……"B1号"か」

 

 B1号――額に白いバラのタトゥをもつ、謎の女。怪人体への変化が認められないものの、その言動から未確認生命体の同族あるいは協力者と認められる存在。警察ではそれを"B群"としてナンバリング、呼称している。

 

「B1号は、確か日本語を話してもいたんだったな?」

「ええ。片言っすけど」

 

 首肯しつつ、爆心地こと爆豪勝己が発言を続けた。

 

「俺があの女と遭遇したとき、そこには3、6、7号がいました。奴らは俺に対して殺意をもっていた。が、B1号は明らかにそれを制止し、咎めている様子だった。俺に対して奴らが手心を加えたとは思えない」

「つまり、奴らの殺人行為にもなんらかの理由があり、制限がかけられているということね」確認するように、鷹野。

「俺はそう思ってます」

「私も同意見です!」

 

 刑事やヒーローたちの意見を受けて――塚内が、再び口を開いた。

 

「未確認生命体が組織化され、また殺人行為についても特定の個体を除いて行ってはならないというルールがある……確かにその可能性はあるだろうね。それが現状、我々の付け入る隙になっていることも確かだ」

 

 「だが」と、塚内は一段声を低くする。

 

「7号事件までで、犠牲者は既に139名にも及んでいる。このまま黙って被害者を増やすわけにはいかない。――そこでだ、以前エンデヴァーから提案のあった敵アジトの捜索について、本格的に執り行うこととなった」

「!」

 

 本格的に――これまでのように、所轄署による都内各地の警邏にはとどまらないオペレーションを行うということ。捜索と銘打ってはいるが、最終目標はアジトに集う未確認生命体の殲滅だ。捜査員・ヒーローたちの間に緊張が走る。

 

「その作戦を実行するにあたって、面構本部長がアジト探索に有効な個性をもつ捜査員を臨時で引っ張ってきてくれるそうなんだが……」

 

 後半部分を微妙に濁しつつ、ちら、と腕時計を確認する塚内。はっきりと明言はしないが、予定より遅れているのだろう。

 と、ちょうどそのタイミングで会議室の扉が開かれた。隙間から特徴的な犬のマズルが覗く。

 

「すまない、遅くなった」

「お、噂をすればの本部長……あれ?」

 

 「分裂してる!」――森塚の叫びは内容だけだとまったく理解不能だが、目の前の光景を共有する捜査員・ヒーローたちは正直なところまったく同じ感想を抱いていた。犬頭の面構本部長の後ろから、同じく犬頭の男が現れたからだ。飯田などは一瞬目の錯覚を疑いでもしたのか、眼鏡を外して盛んに目をこすっていたが……よくよく見れば耳の形も顔立ちもまったく異なるので、彼がまぎれもない別人?なのだとわかる。

 

「分裂も繁殖もしてない。――紹介しよう、"猟犬(ハウンド)部隊"の柴崎巡査だワン」

「柴崎です!ワオ~~ン!!」

 

 遠吠えが部屋中に反響する。半ば呆然と彼を凝視する者、訝しげに視線を交わしあう者――反応は様々だが、総じてポジティブなものとは言い難い。

 そこで、塚内が助け船を出した。

 

「彼らが従来の警察犬を凌ぐ成果を挙げていることは、今さら確認するまでもないことだろう」

 

 猟犬部隊――柴崎のような"犬"系の異形型個性をもつ警察官によって構成された、面構の主導で設立したチームである。犬頭の人間たちは程度の差はあれ皆鋭い嗅覚をもつ。それでいて知能は常人にまったく劣らないのだから、警察犬以上の活躍ができるのは当然の帰結であろう。もっとも、元々多くない異形型の、そのまた犬系に隊員が限定される以上、完全に取って代わるにはまだまだ長い年月を要するであろうが。

 閑話休題。

 

「本作戦においては、彼らの協力を仰ぐことにした。そこで柴崎くんを派遣してもらったんだ」

「つまり、奴らの匂いを嗅ぎ分けて追跡すると?」

「その通りです!」柴崎の元気のいい声が響く。「オレ……自分はこの作戦のための訓練を一週間前から行い、奴らの放つ特殊なフェロモンを嗅ぎ分けることができるようになりましたワン!!」

「ほう……それならさほど時間をかけずにアジトまでたどり着けそうだな」エンデヴァーがうなずく。

 

 皆が納得したところで、再び塚内が口を開く。

 

「森塚くん……それとインゲニウム、彼とともに捜索を任せたい。先んじて奴らが事件を起こす可能性も考慮すると、全員で出払うわけにもいかないからね」

「りょーかい!」

「はい!――ただ、ある程度範囲は絞るべきかと思うのですが……」

「勿論だ。ここ数日目撃例が増えている品川、太田、目黒区を中心に頼む」

「わかりました!」

「うん。で、拠点が発見された場合の対処方法だが……いくらこれだけヒーローがいるとはいえ、敵も複数いる可能性が高い。正面衝突は危険だ。そこで、科警研にも協力してもらっている」

 

 科警研――科学警察研究所。その名を聞いた途端、飯田が微妙に表情を強張らせたのを勝己は見逃さなかった。

 

「第6号が工場の排煙に拒否反応を示したこと、第7号がトラックの排ガスを嫌悪している様子だったことなどから、それらの成分を濃縮した特殊ガス弾を開発してもらった。残念ながら実物はまだ届いていない……が、二時間後にはここに届く予定だ。それまでに各自、資料を確認しておいてほしい。――何か質問は?」

 

 挙手は、ない。それを確認したのち、面構本部長が口を開いた。

 

「言うまでもないことだが、捜査には地道な積み重ねが必要だ。総員、未確認生命体の発見と鎮圧に向けて力を尽くしてほしい――私からは以上だワン」

 

 そのひと言で、会議は散会となった。

 

 




キャラクター紹介・クウガ編 グシギ

タイタンフォーム
身長:約2m
体重:111kg
パンチ力:7t
キック力:10t
ジャンプ力:ひと跳び10m
走力:100mを7.2秒
武器:タイタンソード
必殺技:カラミティタイタン
能力詳細:
腕力がモノスゴく強化されたクウガの特殊形態。よりマッシブで筋肉質になったボディの上から銀地に紫ラインの分厚い鎧を纏っている。基本色がどちらなのかわかりづらいが複眼とモーフィンクリスタルの色を見よう!紫だ!!
とにかくパワーが大幅に強化され、そのおかげで大剣であるタイタンソードを軽々と扱うことができるぞ!反面瞬発力はまったくと言っていいほどないが、まっすぐ走るだけならインゲニウムよりちょい遅くらい!どういう戦法をとるかはキミ……じゃなくて変身者次第だ。出久は敵の攻撃を避けずに突き進む紙一重の戦法を選んだぞ!デッドオアマッスル!!

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