【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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梅雨ちゃんの中の人(悠木碧さん)が出久のオーディションを受けていたことを最近知りました
確かに出久は風貌的に一昔前なら女性声優でも違和感はないですが…悠木デクも見て、というか聞いてみたかった…

あまり関係ないですが麗日さんの中の佐倉綾音さんは「新幹線変形ロボ シンカリオン」で主役になりましたね。あまり男の子をやるイメージがなかったのでキャスト確認してびっくりしました。少年ボイスだと折笠愛さんが好きです(唐突)I`s cafeが休業してしまったのが悲しい…




EPISODE 9. 血漑戦線 3/3

 出久は大教室で講義を受けていた。3年生ともなるとほとんどキャンパスに出てこない者もいたりするのだが、そこは真面目な緑谷出久、卒業要件からはずいぶん余裕をもって単位を取得し、きちんと講義にも参加している。

 隣に座る心操人使も、実のところ似たような性質の持ち主だった。外見や個性からダウナーな人間だと誤解されがちな心操青年だが、本性は至って真面目でまっすぐな優等生である。ただ個性で苦労した経験があるというだけで、出久と親しくなったのではない。

 

 その心操からしても、出久の講義の受け方はすこしやりすぎな感があった。ブツブツつぶやく癖が発動せぬよう左手で口を押さえながら、ペンを握る右手は絶えず動いている。教員の板書がそこまで多いわけではなく……講義内容を通じて自分で思いついたことなどをことごとく書き込んでいるのだった。白い頁はもうまっ黒けである。

 

(そういう意味ではめちゃくちゃ個性的なんだよな、緑谷って……)

 

 良い意味で。どんなときでも、何に対しても手を抜かない出久の生き方は器用だとは思えないけれども、だからこそ尊敬もしていた。

 自分もかくありたいと思いつつ、このままではオーバーヒートしてしまう心配もあったので、心操は友人の腕をちょんちょんとつついた。

 

「!、な、何かな……?」

「いや。おまえ今日四限までだろ?俺、これ終わったら図書館で待ってるからさ、予定ないならどこかいかないか?」

「あ、うん、僕は全然――」

 

 小声でのやりとり。出久が応諾しかけたそのとき、ポケットの中のスマートフォンがぶるると振動した。継続的なそれに渋々取り出し、液晶を確認した瞬間――その表情がにわかに険しくなる。

 

「あ……ごめん心操くん……僕、ちょっと」

「……急用か?」

「う、うん。ごめん、またあとで」

 

 言うが早いか、出久はリュックサックにノートや筆記用具を放り込み、それを抱えて教室を飛び出していった。途中退室――出席をとるような授業では禁忌だが、そうでなかったことが幸いした。

 それに、しても。

 

「………」

 

 なんとはなしに出久の手許を目で追ってしまったために、見えてしまった画面。――発信者の名は、"爆豪勝己"と書かれていて。

 

(爆豪って、あの爆豪、だよな……)

 

 そうそう同姓同名がいるとも思えない。何より数週間前、未確認生命体第6号の一件で、出久の友人である沢渡桜子と彼が知己であることが判明したばかりだ。それは彼女が九郎ヶ岳遺跡にまつわる古代文字を解読していること、未確認生命体がその古代文明に関係した存在であることを説明されて一応納得できた――桜子が第4号とも面識がある様子なのは未だ解せないが――。

 

 だが、考古学研究室とはなんの関係もない出久とも知り合いだというのか?それも、このように急な呼び出しが行われるほどの?

 

 考えてもわからない。――しかし桜子ばかりでなく出久も大きな秘密を抱えているように感じられて、心操はそのあとの授業がほとんど頭に入らなかった。

 

 

 一方、教室を飛び出して早々、出久は電話を承っていた。

 

「もしもし――」

『早よ出ろやカス!!』いきなりの怒声である。

「ッ、しょうがないだろ授業中だったんだから……!」反論しつつ、「奴ら、だよね!?」

『チッ……そうだ。荒川を下ってた遊覧船の客と船員が全員やられた。敵は川を逃げてやがる』

「川……じゃあ、とにかく流域に出たほうがいいよね?」

『ああ。いま水難ヒーローが行方を追ってる。行き先がわかり次第無線で連絡すっから、バイク降りんじゃねえぞ』

「わかった!」

 

 全力疾走していたおかげもあって、電話を切るころにはトライチェイサーのもとにたどり着いていた。すかさずメットを被り、エンジンをかける。

 

(荒川、荒川……!)

 

 ひと口に荒川といっても、その実は埼玉・山梨・長野の三県に跨がる甲武信ヶ岳から東京湾までを繋ぐ長大な流れである。いま流域に向かう以外に出久にできるのは、その水難ヒーローができるだけ早く未確認生命体の行方を掴んでくれるよう祈ることだけだった。

 

 

 

 

 

――さいたま市浦和区内 荒川

 

 川の流れを小舟が漂っていた。船上では釣り人らしき男たちが三人、流れに向けて釣り糸を垂らしている。

 

「釣れないねぇ……」

「釣れませんねぇ……」

 

 どこかのんびりとしたぼやき。別にノルマがあるわけではない。これはただの趣味であり、こうして気心の知れた男だけで釣りに興じていること自体が彼らの息抜きになっているのである。

 

――いくら物騒な世の中とはいえ……まさか数メートルの目と鼻の先で、水中から自分たちの命を狙う者がいようなどと気づけるわけもない。しかしながらメ・ビラン・ギの牙は、間違いなくすぐそばに迫っていて。

 

「――うおっ、かかった!?」

 

 突然、男のひとりが声をあげる。糸はきつく張り詰め、彼自身の身体も川に引きずり込まれそうになる。仲間が慌てて背中を支えた。

 

「おっ、こりゃ大物かな?」

「たぶん、な……ッ!」

 

 彼らは知らなかった。かかったのは確かに大物だったが、求めるものとはほど遠い――むしろ、招かれざる客であったことを。

 三人がかりで全力で引っ張り続け、やがて現れたのは青緑色に光る頭部。男たちが一瞬呆けるのも無理はなかった。それは魚でありながら、人のかたちを――否、人でありながら魚の形をしていた。

 

「シャアァァァァッ!!」

「!?」

 

 疑似餌を容易く噛みつぶし、牙を剥くそれ――ビランに男たちは恐慌をきたした。小さなボートはあっさり転覆し、彼らは川に投げ出される。ビランが迫る。もはや三つの命は、風前の灯火――

 

「――!」

 

 そのとき、突然ビランの様子が変わった。目の前の男たちのことなど忘れてしまったかのように彼方へ視線を向けると、再びずぶずぶと水中へ沈んでゆく。

 

「……?」

 

 一体、いまのはなんだったのか。呆然とする男たちの前に、ビランが現れることは二度となかった。

 

 

 ちょうどそのとき、付近の河川敷で架橋工事が行われていた。その作業員のひとりが、ミスをしてしまい軽い怪我を負う。腕から血が流れ、数滴、ぽたぽたと川に落ちる。

 

「痛ててて……くそっ……」

 

 毒づきながら、彼が応急処置のため下がろうとしたとき、背後からざばあと音が響く。反射的に振り返った彼の目の前に、ピラニア怪人の牙が迫った――

 

 

 

 

 

「近づいてきましたワン!!」

 

 品川区内を疾走する駿速(レーザーターボ)。その騎上で柴崎が叫ぶ。

 

「森塚刑事、この先は確か……」

『うん。もしかするともしかするね、これは!』

 

 道路が狭くなってくる。既に人通りはほとんどないが、エンジン音を標的に聞きつけられる危険なども考慮し、森塚はゆっくりと自身を減速させる。

 

――そして、

 

「!、ここッ、ここだワン!!」

「!」

 

 停止するマシン。飯田と柴崎は揃ってそれから降り、目の前の倉庫をねめつけた。

 

「この中に、奴らが……」

「濃いニオイがプンプン漂ってきてます、間違いないワン!」

『よーし、じゃあ柴ちゃんのお鼻を信じて……とうっ!』

 

 マシンが光に包まれ、一瞬にしてもとの森塚の姿に戻る。すかさず彼はインカムをオンにし、

 

「こちら森塚、ターゲットを特定。場所は品川区八潮――」

 

 

 

 

 

 メ・ビラン・ギによる虐殺が続いていた。

 既に所轄の警察官や地区担当のヒーローが現着し、生き残った作業員を避難させたうえで応戦している。戦うすべをもたないに等しい作業員らを蹂躙されるよりは、犠牲を少なく抑えることができている。

 

――逆に言えば、ヒーローや警察の共同戦線をもってしてもビランとまともにやりあうことはできず。確実に死を賜っているということだった。

 

「ッ、この野郎、許さんぞ!!」

 

 十数人目の警官の首を噛みちぎったビランに向かって、巨躯のヒーローが躍りかかっていく。かつての平和の象徴"オールマイト"をリスペクトしているらしい肉体派のヒーローだ。その巨大な拳は、あらゆる敵を戦闘不能へと追い込んできた――

 

 が、捉える前に、怪人の姿はそこからかき消えていた。

 

「ゴゴギバ」

「な、に……?」

 

 ビランは既に彼の背後にいた。不意打ちを警戒し即座に振り向こうとするがもう遅い。次の瞬間、その全身から血しぶきが噴出した。

 

「え……?」

 

 ビランの手首に生えたカッターは見事に頸動脈などをかき切っていた。ヒーローは痛みを感じることすらないまま、棒のようにその場に倒れ伏した。

 

「ボセゼバギング、ゲヅン、ゲギド」腕輪の珠玉を動かしつつ、つぶやく。

 

「あ、あ……」

「!」

 

 まだだ。まだ獲物はいた。先ほどから情けなく立ちすくんでいる、まだ少年の面影を色濃く残した新米ヒーロー。先に立ち向かっていったベテランたちがことごとく返り討ちに遭うのを目の当たりにして、彼は戦意を喪失してしまっていた。

 

「バギング、ゲギドビンザバ……」

「ひ……」

 

 己を次の標的と見定めたらしい怪物が、ゆっくりと迫ってくる。逃げ出そうとして、足がもつれてその場に尻もちをついてしまった。

 

「お、おかあ、さ――」

「――ギベッ!!」

 

 嬲るようにゆっくりと迫っていたビランが、遂に跳躍した。もはや彼にできるのは、目をぎゅっと瞑って身を縮めることだけ。涙が押し出され、こぼれ落ちる――

 

 そのときだった。鋼の馬のいななきが響き、何かを跳ね飛ばす音が耳に飛び込んできたのは。

 

「……?」

 

 反射的に顔を上げたヒーローが見たのは、黄金と赤に彩られたトライアルマシン、そして鮮烈な赤い異形の戦士――

 

「4、号……?」

 

 異形――未確認生命体第4号は、颯爽とマシンから降り立った。彼を庇うように前面に出、川に落ちた怪物と対峙している。

 

(ヒー……ロー……)

 

 自分もそう呼ばれる職業に就いていることすら一瞬忘れてしまうほどに、そう思った。

 4号――クウガはちらりと大きな赤い複眼で一瞥すると、

 

「かっ……爆心地、彼を!」

 

 そう声をあげた。えっ、と思う間もなく、腕を掴まれて立ち上がらされる。

 

「オラ立て、離れるぞ」

「あっ……爆、心地……」

 

 ヒーロー・爆心地。若手ながら並み居るヒーローの中でも実力派で、過激派――そんな彼が、未確認生命体と連携しているなんて。

 4号は、そんな彼ですら仲間として認めるほどの存在だというのか?

 

 考えているうちに半ば強引に引きずられ、戦場から遠ざけられる。その過程でようやく我に返った青年は、震える声で問いかけた。

 

「あ、あの人……は……?」

「………」

 

 その問いの意味を理解しつつも、

 

「……ただの、馬鹿だ」

 

 吐き捨てるように、勝己はそう言った。ヒーローとしての爆心地しか知らないかの青年に、その心情が読みとれるばずがなかった。

 

 

―― 一方で、

 

「ウガアァァァッ!!」

「!」

 

 勝己たちが離れたことにクウガがひと息つく間もなく、激昂して襲いかかるメ・ビラン・ギ。その手首のカッターによる一撃をいなし、牽制のジャブを腹部に放つ。

 

「ウグッ」

 

 その一撃で怯み、数歩後退するビラン。さほど頑丈な相手ではない――そう判断したクウガは、さらに力をこめた蹴りを放つ。マイティフォームのキックは、封印の力を抜きとしても決定打となりうるだけの威力がある。

 が、古代にもクウガとの対戦経験があるビランはそのことを知っていた。それゆえになんとしても喰らうまいと、すんでのところで地面を蹴ったのだ。

 

「ッ!?」

 

 いや、ビランはただ逃げるために跳んだのではない。そのまま川に飛び込んだかと思えば、目にも止まらぬ速さで飛び出し、クウガにすれ違いざまの攻撃を仕掛ける。

 

「ぐあっ!?」

 

 カッターの一撃によろめきながらも、反撃を繰り出そうとするクウガ。しかし拳を突き出したときにはもう、ビランの姿はどこにもない。かと思えば、再び衝撃。

 

(ッ、速い……!)

 

 魚人とでもいうべき外見に反し、地上においてもそのスピードはマイティフォームを遥かに上回っている。――スピードに対抗するなら、ドラゴンフォーム。しかし彼は二の足を踏んでいた。

 

「……ッ」

 

 ここまでの攻撃で、既に胴を守る装甲があちこち切り裂かれている。防御力に欠ける青で、万一この一撃を喰らったら――ズ・ザイン・ダとの初対決での失敗を繰り返したくはなかった。

 ならば、紫――タイタンフォームか。いやまだ早い。もう少し赤で様子を見よう。方針を決めたところで、再び殺気が迫る。

 

 狙っても、当たらない。そう思ったときにはもう、身体が大ぶりに動いていた。予感した方向に向かって、思いきり回し蹴りを放つ。

 

「ガハァッ!?」

 

 運がよかったというべきか、その一撃が見事命中した。ビランの身体が砂埃にまみれて地面に転がる。しめたと思ったクウガは、その胴体に向かって踵落としを見舞った。が、それは受け止められ、態勢を崩されてしまう。

 立ち上がったビランはさらなる攻撃に出た。すかさずクウガの懐に潜り込み、胴体に噛みついたのだ。

 

「うっ、ぐ、あぁ……!?」

 

 生体鎧であるそれは神経が通っている。致命傷からは守ってくれるが、牙に砕かれる度に脳に想像を絶するような痛みが走る。反射的に顎を殴りつけたおかげでビランは後退したが、クウガは片膝をつかざるをえないほどのダメージを受けてしまっていた。

 

「ッ、ぐ……」

 

――だめだ、やはり姿を変えるしかない。スピードに対応できずとも、敵の攻撃をものともしない形態に。

 決心したクウガは、再び変身の構えをとった。霊石の色が赤から紫に変わり、地響きのような音が響きはじめる。

 

「ドゾレザァッ!!」

 

 再び迫るビランが、カッターを振り下ろす――それが肩に到達するときにはもう、その姿は大きく変容していた。

 

「バビッ!?」

「………」

 

 マイティよりひとまわり分厚い筋肉と、鋼鉄の鎧。大地の戦士――タイタンフォームだ。

 ビランの腕を振り払ったクウガは、その拳を思いきり突き出した。7トンにも及ぶ威力のパンチをまともに受け、ビランは吹っ飛ばされ、浅瀬へ転がっていく。

 その隙に周囲を見回すが、手近に剣に変えられそうなものはない。トライチェイサーは遠く、アクセラーを取りに戻っている隙に逃げられてしまうかもしれなかった。

 

――ならば。クウガは素手のまま突き進んだ。紫のパワーでビランをノックアウトし、すかさず赤に戻って必殺キックを叩き込む。それが変身者である出久の計画だ。

 

 たじろいだ様子のビランは、ダメージも大きかったのか、先ほどまでより緩慢な動きで後退していく。クウガは水飛沫をあげて浅瀬に飛び込むと、さらに拳を叩き込んだ。ビランがさらにうめき声をあげる。

 

(動きにくいけど……いける!)

 

 敵を防戦一方に追い込み、彼は気をよくしていた。後退していく敵を追い、ずんずんと深みに入っていく。それが罠だとも知らずに。

 ちょうどそのとき、避難にひと段落つけた勝己が戻ってきた。戦闘の様子を認めた次の瞬間、彼はその紅い瞳をいっぱいに見開いていて。

 

「――デクっ、テメェ何やってる!?」

「!?」

 

 反射的に振り返るクウガに向かって、なおも叫ぶ。

 

「そっから上がれ!!そいつは――」

 

 

 もう、遅かった。ビランの姿が水中に消えた。反応の鈍くなったクウガの脚に噛みつき、バランスを崩させると、そのまま水中に引きずり込んだ。――出久は当然知らなかったが、このあたりは急激に水深が大きくなっていた。そうした地形を利用して、ビランは敵を己のフィールドに引きずり込むつもりだったのだ。

 

「デクッ、クソが!!」

 

 咄嗟に駆け込み、水中に向かって爆破を仕掛ける勝己。しかし反応はない。ふたつの異形の気配はもう、その場からかき消えていた。

 

「ッ、デク――――!!」

 

 

 幼なじみを呼ばう慟哭のような叫びが、荒川の凪ぎに反響しつづけていた。

 

 

つづく

 




飯田「なんということだ、緑谷くんがまたしてもピンチに……はっ、失礼しました!早くも二度目の次回予告を担当させていただきます飯田天哉です!!」
???「ウフフフfFFF、どうやら私のドッ可愛いベイビーちゃんの出番のようですね」
飯田「きっ、きみは発目くん!?まさかきみにも出番があるというのか!?」
発目「ウフフフfFFFF、これからドンドン皆さんをサポートしていきますよ~」
飯田「まさかのレギュラー!?くッ、だが確かにサポートは必須……次回はどうサポートしてくれるんだ?」
発目「それはヒミツです!ヒントは水中戦!蛙吹さんも大活躍ですよ~」
飯田「そうか!緑谷くんに爆豪くん、蛙吹くんにきみと、異なる立場の面々がスクラムを組んでの戦いとなりそうだな!俺は別行動になってしまうのがつくづく惜しい……!」

EPISODE 10. ディープ・アライアンス!

飯田「せーのっ……さらに向こうへ、プルスウ発目「私のドッ可愛いベイビーちゃんをよろしく!」やっぱり協調性ゼロだな!!?」
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