【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

43 / 187
ほぼ原作第7話(傷心)が元になってる本エピソード

シーン再現のために何度も細かく細かく観返していると「アレ?」って部分がところどころ出てきたりしますね
一番気になったのはp.m.00:22事件発生→五代&一条科警研で連絡を受ける→p.m.00:37事件発生、その場に駆けつけて戦闘開始、と15分で千葉県柏市から葛飾区まで移動してたことです
…いや、そもそも事件発生から通報→一条さんに伝わるまでどんなに迅速でも数分はかかるでしょうから、10分弱で移動したことになるのか。クウガとトライチェイサーの最高速度ならギリギリ可能かもしれませんが、パトカーの一条さんが同行していた&五代が駆けつけた時点でまだ変身前だった、などを考えるとちょっと無理がある気がします

細かいところまで行き届いてる作品なだけあって、こういうことがあるとかえって目についてしまうわけですが……18年間そんなことには気づかないくらいオモシロイ!とフォローしてみるテスト(死語)


EPISODE 11. 少女M 2/3

 品川区東大井のとあるビルの裏手。そこが事件現場だった。

 飯田天哉が森塚らとともに到着したときには、既に遺体にブルーシートがかけられていた。その横には倒れた自転車。被害者は自転車に乗った状態で急襲されたのだろうか――瞬時にそんな推測が浮かんだ。

 彼とともに手を合わせてから、しゃがみこむ。と、そばにいた鑑識員が「ここを見てください」と促してきた。

 

「頭頂から入った何かが心臓を一瞬のうちに通過した挙げ句、大腿部から抜けています。つまり、頭から脚に……ほぼ垂直に」

「垂直……しかし、一体何が抜けたと?」

「まだなんとも……。少なくとも弾丸のようなものは見つかっていません」

 

 つまり、飛行能力の個性をもったヴィランによる銃撃などではない――それゆえ未確認生命体事件の可能性ありと判断されているのだろう。目撃情報などもいっさいなく、いずれも確定とはいえないのが歯がゆいところだった。

 

「空飛ぶ未確認……だとしたら、ゲロ厄介だね。高度にもよるけど」

「……ええ」

 

 ふたりが難しい顔で空を見上げていると、別の鑑識員が何かを発見したようだった。意識を地上に戻して、駆け寄る。

 

「どうしました!?」

「いや、この穴なんですが……」

 

 遺体のすぐ横。固いアスファルトの地面に、指二本ほどの直径の穴が開いている。まったく不自然……とも、言いきれないものだが。

 

「森塚刑事、」

「うん。とりあえず、鷹野さんに見てもらおう」

 

 この穴の中に、被害者を殺した"何か"の手がかりがあるかもしれない――ほどなくして、鷹野警部補の"ホークアイ"によりその予感は現実のものとなった。

 

 

 

 

 

 そのころ、まだ事件発生の報に接していない出久は城南大学考古学研究室にてひと息ついていた。ほろ苦いインスタントコーヒーを流し込みつつ、道中買ってきたドーナツの甘みを楽しむ。朝から戦いに明け暮れ、疲れた身体にはこれ以上ない薬となりそうであった。

 と、横から桜子が尋ねてくる。

 

「私ももらっていいの、これ?」

「ん、もちろん。さすがにひとりじゃ食べきれないよ、こんなに」

「そう?いまの調子だと出久くん、全部食べ尽くしそうな勢いだけど」

「そ、そうかな……アハハ。最近すぐお腹すくんだよね……今日も朝ごはんしっかり食べてきたんだけど」

 

 とりあえずプレーンシュガーのドーナツを摘まみつつ……それはそうだろう、と桜子は思った。毎日未確認生命体が出現するわけでないにしても、彼はマーシャルアーツ・クラブの教練に科警研でのデータ採取と毎日戦っている状態である。他にも心操と一緒にランニングやウェイトトレーニングにも励んでいるようだし、エネルギーの消費量は尋常でないに決まっている。

 ただ、

 

「ある程度計算して食べないとだめだよ、出久くん。動いてるうちはいいけど、仕事始めて動く機会なくなると途端に太ってくる人多いみたい。消費カロリーが減ってるのに摂取カロリー据え置きじゃ、当然なんだけどね」

「うっ……」

 

 自分の成長とともに母も横に育ってしまったことを思い出し、出久は渋面をつくった。何個か目のドーナツへ伸ばした手が自ずから止まる。

 

「……あとはこれ、研究室の皆さんで分けて」

「じゃ、ありがたく♪ところで、そろそろ本題入る?」

「う、うん、そうだね。解読のほう、何か出たの?」

 

 研究室に呼ぶということは、そういうことなのだと思った。実際、桜子はこくんとうなずき、

 

「出ましたよー、ゴールデンウィーク返上でやってる甲斐があったってもんよ」

「それはどうも……いつも助かってマス」

「どーいたしまして。オホン、えー、解読完了したのはとりあえず一個かな。出久くん待望のクウガの新しい形態について」

「!、ほんと!?」

 

 彼女の使用しているデスクトップに誘われる。最後のひと口をもっしゃもっしゃと咀嚼しながら、出久は液晶を覗きこんだ。

 

「どんなの?」

「ちょっと待ってね……あった、これこれ」

 

――邪悪なるものあらば、その姿を彼方より知りて、疾風のごとく邪悪を射抜く戦士あり。

 

「射抜く、戦士……」

「前に出久くんが言ってたとおり、飛び道具を武器にした形態じゃないかな。弓矢とか」

「……なるほど、」出久はさらに考える。「ひと口に飛び道具っていっても武器の性質によって戦い方は変わってくるよな、ガンガン連射できるのか一発必中タイプなのか……前者なら多少力任せでもいいけど後者だとすると難しいぞ、そもそも彼方より知りてってことは感覚がより強化されてそうだ、それだけ神経使うってなるとここぞってときじゃないと使いにくそうだけど……待てよ、飛び道具ってなると何変形させりゃいいんだ銃とかか、かっちゃんや警察の人から借りられれば……でもそう簡単に貸してくれるとは思えないし特にかっちゃん、とんでもない交換条件突きつけられそうな……水鉄砲でも持ち歩くしかないか、見栄え悪すぎな感もあるけどそんなこと気にするのもどうかと思うし……ブツブツブツブツ」

 

 また始まった、と桜子は思ったが、今回は止めなかった。碑文の少ないヒントから自分なりに戦い方を見極めているのだ、いつまた実戦となるかわからない以上、自由にさせてやるほかあるまい――

 

 が、ほどなくしてそれは別の要因によって阻害されることとなった。扉がドンドンと強めにノックされたために、出久は我に返らざるをえなくなった。

 扉が開き現れたのは、

 

「あれ……かっちゃん?」

 

 ノーネクタイの背広姿という、刑事――それもマル暴を思わせるいでたちの爆豪勝己。彼は幼なじみの姿を認めた途端、露骨に眉を顰めてチッと舌打ちをした。出久は苦笑しつつ、それが勝己語の「おはよう」なのだと解釈することにした。

 しかし、客人は彼だけではなかった。

 

「……失礼します」

「………」

「!、あ、夏目先生の……」

 

 桜子には見覚えのある母娘。彼女たちもまた、夫(父)の通夜に参列してくれた桜子のことは記憶しているようだった。

 

「その節はどうも」

「い、いえっ、どうぞ……あっ、すみません散らかってて!」

 

 やや慌てぎみに、桜子は資料のレジュメや書籍で散らかった丸テーブルを片付け出した。出久も積極的に手伝う。まったくその気がなかった勝己は、すぐそばに立っていたことが災いして本を押しつけられてしまった。桜子相手にはどうも強く出られず、勝己は渋々出久と共同作業をする羽目になった。

 ほどなく片付け作業が終わり、夏目母娘は椅子に腰掛けた。――陰鬱な雰囲気が、場を包み込む。彼女たちは大切な家族を失って間もなく、そんな人たちに出久も桜子もかけることばをもたない。

 ただ、出久は、

 

(この娘……)

 

 あの通夜のときのことを、忘れるはずがなかった。外で待っていた出久。そこに飛び出してきた少女。――彼女が見せた、涙。

 それを目の当たりにして、もう誰かの涙を見たくない――みんなの笑顔を守るんだと、そう誓ったのだ。

 

 出久がその一部始終を回想していると、不意に少女が顔を上げた。視線が交錯する。出久はぎくりとしたが、目を逸らすのも年長者としてどうかと思い慌てて「こっ、こんにちは」と声をかける。が、返ってきたのは小さな会釈だけだった。

 

「あっ、その貝、きれいだ……ね?」

「……ありがとう、ございます」

 

 大切そうに身につけた桜色の貝をちりばめたミサンガを褒めると、ようやく少しだけ表情がほぐれる。出久はほっと胸を撫でおろした。

 

 と、その横で桜子が母のほうに問いかける。

 

「あの……今日はどうされたんですか?というか、どうして爆心地と?」

「こちらへ伺う前に警視庁の捜査本部のほうへお願いをしに参りまして。第0号の捜査のことで」

「あぁ……」

「それで、爆心地さんにはお忙しいなか送っていただいて。沢渡さんとはお知り合いだとか?」

「えっ、ええ……まあ、一応」

 

 今度は桜子と勝己の間に微妙な空気が漂う。後者はともかく、前者のわだかまりはまだ完全に解消しきれたわけではないのだった。

 

「実は、主人の遺品を整理していたら、出土品らしきものが出てきまして……――実加、」

 

 実加と呼ばれた少女が、抱えていた小箱をテーブルに置き、開いた。現れたものに、出久は思わず目を見開く。

 

「これ、って……」

 

 それは金属器らしき五角形の塊だった。しかし、その中心には鮮やかなエメラルドグリーンの宝石のようなものが埋め込まれている。目の当たりにした瞬間、出久は下腹部の奥がどくんと疼き、熱をもつような錯覚に襲われた。

 一方、桜子もまたそのオブジェクトに既視感があるようだった。

 

「あ……これ、九郎ヶ岳の!」

「はい。もし皆さんの研究に必要なものでしたらいけないと思って……お役に立ちますでしょうか?」

 

 なぜか出久のほうに視線を移して訊いてくる。まさか「ここの人間じゃないのでわかりません」とも言えず、出久はぶんぶんうなずくほかなかった。

 その光景を傍観していた勝己が、ようやく声をあげた。

 

「……捜査本部としては、これまでの出土品と合わせて早急に調査を願いたい、そうです」

「あぁ、はい……。えっと、じゃあ担当者を呼んできま――」

 

 桜子がこの部屋を出る必要はなかった。その"担当者"が、タイミングよく入室してきた。

 

「オハヨウゴザイマス」

「ジャン先生!えっと、こちらが現在発掘調査を担当してるジャン・ミッシェル・ソレル先生です!」

 

 現れた背の高い白人男性をそう紹介する桜子。ジャン本人は状況が把握できておらずきょとん顔である。

 そこに、さらに実加が駆け寄る。

 

「あの、これ!」

「What?――!」ジャンの目の色が変わる。「コレ、ひょっとして九郎ヶ岳ノ!?」

「は、はい、父の遺品から……」

「オウ、夏目教授の娘サンだネ!発掘終わってワンパーツだけ出てこなくテ困ってたヨ!コレ出てきたらモー最高、スバラシーネ!アレ、無事完成するネェ!」

 

 思わぬ"発掘"がよほど嬉しかったのか、声のトーンが一段上がっている。文字どおり最後のワンピースが揃わず苦労していたジャンだから、それを知っている桜子には理解できる反応ではあったのだが、

 

「ちょっと、ジャン先生……」

 

 彼の歓喜は、さすがに場違いな反応と言わざるをえない。小声で窘められても、少年の性質を色濃く残すこのフランス人学者は止まらない。

 

「コレホントニ大発掘ヨ!学会デ発表したらボク世界じゅうで有名人、ソレくらいスゴイものヨ、コレ――」

 

 興奮しながら小箱へ手を伸ばすジャン。そのとき、

 

「触らないでっ!」

 

 激しい拒絶のことばとともに、実加が後ろに退いた。自分に対して向けられたわけでもないのに、出久は冷えた空気にぶるりと身を震わせる。

 

「どうして?どうしてそんな、何もなかったみたいな言い方するの?未確認生命体の何か手がかりになるかもって思ったのに……みんなそんなのどうでもいいみたいに!」

「そんなことないよ!」

 

 桜子が宥めようとするが、一度爆発してしまった激情はもう収まらない。

 

「捜査本部だってっ、0号のこと全然調べてくれないじゃない!」

 

 その矛先は、今度は勝己に向けられた。切れ長の紅い瞳を睨みすえる。

 目を逸らす、気まずげに。ふつうの大人なら、どうしてもそういう反応になるところだろう。だが勝己はそうではない。まっすぐ睨み返し、ふつうの大人なら思ったとて絶対口にはしないことを躊躇なく言い放つ。

 

「当たり前だろうが、ンなもん」

「――」

 

 空気が、凍りつく。実加本人もまた、信じられないという表情で絶句していた。

 それでも構わず、勝己は続ける。

 

「未確認はいま二日に一匹のペースで現れてる。そのたび何十人も死んでんだぞ。あれきり行方もわからねえ0号の捜査に人員つぎ込む余裕なんかねえんだよ」

「そんな……!」

「ンなご不満なら"ヒーローの皆さん、どうか0号を倒してください"って涙ながらに訴える動画でもネットにあげたらどうだ?乗ってくるヒーローもいるだろうよ、なんせ名を売りてえ奴らは腐るほどいる。ま、その程度の連中がしゃしゃり出てきたところで成果が上がるとは到底思えねえけどな」

 

 冷酷なことばを演説のようにすらすらと言いきると、勝己はぴたりと黙りこくった。反論があるなら受けつけてやる、とばかりに。警察官も、ヒーローにも犠牲が出ている――未確認生命体のニュースに敏感になっている実加が、そのことを知らないはずはない。ゆえに、理のある反論などできようはずもない……。

 でも、理屈ではなくとも、父を理不尽に亡くした少女の感情がそう簡単に納得できるわけがないのだ。

 

「お父さんは……」

 

 

「お父さんは、死んだのにっ!」

 

 涙ながらにそう叫ぶと、実加は扉を押し開けて走り去っていく。我に返った母――倫子があとを追おうとするが、そのときにはもう少女の姿は廊下にはなかった。

 

「……ッ」

 

 また、実加の涙を目の当たりにしてしまった。しかもそれを直接的にもたらしたのは、ヒーローであるはずの幼なじみ。呆然としていた出久の心が、ふつふつと煮えたぎってくる――

 

「っ、かっちゃん……!」

 

 出久が抗議をしようと詰め寄る。しかしそれより先に、ぱしんと乾いた音が響く。

 

「え……?」

「……!?」

 

 勝己の真正面に、桜子が立っている。そのきれいな右手の形そのままに、勝己の白い頬が赤く色づいていた。

 

「なんでああいうこと平気で言えちゃうわけ!?信じらんない!!」

 

 桜子の怒声が室内に響き渡る。叩かれた張本人である勝己はもちろん、出久もジャンも夏目倫子も、唖然とその姿を見つめていることしかできない。

 奇妙な静寂に包まれた室内に、不意に携帯の電子音が鳴り響く。それは勝己の背広のポケットを音源としていた。彼は呆然としたままそれを取り出し、

 

「……俺だ」

「………」

 

 電話越しの声から察するに、相手はどうやら彼の同級生ヒーロー――インゲニウムこと飯田天哉のようだった。「あぁ」「おぉ」「そうか」――しばらくそんな相槌を続けたあと、勝己は「わかった」とだけ告げて電話を切った。

 

「ふうー……」海より深い溜息をつくと、「……デク、来い」

「!、う、うん」

 

 自分だけ外に連れ出される。その理由はひとつしかない。

 

「奴ら?どこ?」

「事件現場は複数だ、距離も相当離れてる。やった奴の目撃情報は一切ねえ……空を飛ぶ未確認らしいからな」

「空を飛ぶ……」

 

 出久がその部分を復唱していると、勝己の携帯が再び鳴った。今度はメールだ。

 

「……見ろ」

「!」

 

 画面を見せつけてくる。そこにはメールが添付された画像が映し出されていた。巨大な針のような物体。隣には比較用なのか腕時計が置かれているが、長さ太さともにそれより巨大な代物だった。

 

「被害者のすぐそば……アスファルトの下から出てきたらしい。これが凶器だ」

「こんなものが……」

「頭から入った針が脳を傷つけると同時に、猛毒成分を浸透させて完全に機能を停止させる、数ミリ秒の間にそれを為したのち、大腿部から抜けたと思われる……」勝己がメールを読み上げる。「だとよ」

 

 ヴィランの個性としては、あまりに凶悪すぎる。蜂の能力をもった未確認生命体――と、出久は考えた。

 

「針の放たれた高度は千から二千メートルの間だ。デク、青でそこまで跳べるか?」

「えっ!?……い、いや、さすがにそこまでは」

 

 そこまでいくと、"跳ぶ"というより"飛ぶ"になってくる。できる範囲でドラゴンフォームの能力を試行してみたこともあるが、十階建てビルの屋上くらいまでがせいぜいだった。

 勝己も駄目もとで訊いただけらしく、鼻を鳴らしながら「そうかよ」とだけ返す。

 

「ただ……」

「あ?」

「さっき沢渡さんに聞いたんだ。クウガのもうひとつの形態、やっぱり飛び道具を使うみたいだって。それで、その、お願いがあるんだけど……」

「……言ってみろ」

 

 一応、聞くだけ聞いてやるという態度の勝己。先ほどの一件で不機嫌なこともあり、表情はいつにも増して険しいが。

 それでももう後戻りはできないと、出久は思いきって両手を合わせた。

 

「籠手を片方、貸してほしいんだ。遠距離からの爆破に使ってるわけだし、銃とか弓矢とかに変形させるイメージがしやすいと思うんだ、だから……」

 

 お願いします、と出久が頭を下げようとした瞬間――上着の襟をぐい、と引っ張られた。見開かれた血のいろの眼が、間近に迫る。

 

「……言ってる意味わかってんのか、テメェ」

「……ッ」

 

 わかっている。――出久の頼みは、仮に聞き入れられれば勝己の戦力を大きく削ぐものにほかならない。無論、籠手がなくとも爆破自体はできるし、そもそも片方だけだ。戦えなくなるわけではない。

 

 だが、出久が戦士となったように、勝己もまた戦士――ヒーローだ。戦うための力を自ら奉呈しろと言われて、はいそうですかと受容できるはずがない。ただでさえ彼はいま、エベレストより高いプライドを抑えて、色々なことを堪えて生きているのだから。

 

「わかってる……でも、わからないことだらけなんだ、まだ……。だから少しでも、未確認を倒せる確率を上げたいんだ……!頼む、かっちゃん……!」

「………」

「も、もちろんタダでとは言わないから……ッ」

 

 駄目押しに放ったひと言だったが、意外にもそれで出久は解放された。かなり乱暴に押しやられ、床に尻餅をつく結果にはなってしまったが。

 

「い、痛つつ……」

「……調子に乗りやがって、クソナードの分際で」

 

 こめかみを引きつらせながらそう吐き捨てると、かの爆ギレヒーローは出久に背中を向けた。――了承してくれた……と捉えていいのだろうか。

 

「おいデク、"タダでとは言わない"……っつったよな?」

「へぁ!?あ、は、ハイ……言いました……」

 

 そこを認めなければ話が振り出しに戻ってしまうので、出久はうなずくほかなかった。

 

「な、何かしてほしいこととか……あり、ますか……?僕にできることならなんでも……」

「……少し考えさせろ」

「あ、うん、わかっ――」

「テメェのキン○マ片方消し飛ばす以外に思いつかねえからな……いまは」

「」

 

 聞き間違いだろうか。そう思いたかったけれども、出久の脳はあいにくはっきりそのつぶやきを認識していて。それが冗談ではないことも。

 色々と思うところ、言いたいことはあったが、ただひとつ。

 

(こんなヒーロー、見たことない!)

 

 

 無論、悪い意味で。

 




第8号(ピラニア種怪人 メ・ビラン・ギ)と第14号(ハチ種怪人 メ・バヂス・バ)の間に倒されたグロンギ達↓

第9号(アンコウ種怪人 メ・アゴン・ギ)
→マイティフォームに倒される
第10号(ムカデ種怪人 メ・ムガド・バ)
→爆心地らと交戦中、突如爆発(自爆?)
第11号(ゴキブリ種怪人 メ・ゴリギ・バ)
→ドラゴンフォームに倒される
第12号(アリクイ種怪人 メ・アグリ・ダ)
→マイティフォームに倒される
第13号(エビ種怪人 メ・ゾエビ・ギ)
→タイタンフォームに倒される

原作の未登場ズ組は全員生存してるので、どっかで出番がある…かも(グジルは登場済みですが)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。