【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

44 / 187
ひらパーのビルドショーの動画観ました
クウガ&アギトの再現度が・・・ヤベーイ!!
特にクウガは小説版も踏まえていたり、脚本のマニア度がヤバかったどす


EPISODE 11. 少女M 3/3

――大田区 a.m.11:37

 

――世田谷区 a.m.11:52

 

――中野区 p.m.00:07

 

――北区 p.m.00:22

 

 

 懸命な捜査をあざ笑うかのように、さらに四度の事件が上記の地点・時刻で発生していた。

 

「こんな次々離れた場所で……」

 

 北区の事件現場に向けてトライチェイサーを走らせながら、出久は唇を噛んだ。事件発生の間隔はきっかり十五分――その間目撃者はゼロ。勝己の言ったとおり、上空数千メートルを飛行しているのだとしたら発見できるはずもない。このままでは自分たちも、敵の移動に振り回されるばかりになる……。

 

『デク!』

「!」

 

 前を走る勝己からの通信。

 

「どうしたの?」

『目的地変えんぞ』

「えっ……敵の位置わかったの?」

『あぁ、事件現場は螺旋状に規則的に広がってんだ。地図見てて気づいた』

「!、そっか、じゃあ……」

 

 次の事件現場の予測がついた。バイクと車両は揃ってぐるりとUターン、全力疾走でそこへ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 城南大学を飛び出した夏目実加は、とある公園内に設置された公衆電話ボックスの中にいた。

 1,1,0を順に押し、コールする。一拍置いて、何ごとかを尋ねる警察官の声が響いてくる。少女は淡々と答えた。

 

「合同捜査本部の人に伝えてください。第0号の捜査を早く進めてくれないと……あたし、死ぬかも!」

 

 相手の返事を待たず、受話器を叩きつける。そのまま実加はどこへともなく走り出した。――彼女は、姿を消したのだ。

 

 

 

 

 

――葛飾区 p.m.00:37

 

 路上を歩いていた男性が、巨大な針に脳天を貫かれ、短い断末魔とともに地面に倒れ伏す。

 ハチ種怪人 メ・バヂス・バが地上に降り立ったときにはもう、その身に生あるものとしての意識はなかった。

 

「……ククッ」

 

 笑いを噛み殺しながら、スズメバチに似た怪人は腕輪の珠玉をひとつ動かす。そんな異形に対し、臆することなく声をかける者があった。

 

「ジュンチョ、グザバ……」

「!」

 

 いや、臆するわけがないのだ。声をかけた黒づくめの男は異形の同族、その蝙蝠傘が示すとおり、コウモリ種怪人 ズ・ゴオマ・グなのだから。

 彼は表向きバヂスを褒めながら、その実羨ましそうに腕輪に視線を注いでいる。権利さえ与えられれば、自分だって同じことができる――そう信じて疑わないのだろう。

 だからバヂスは、はっきりと言ってやった。

 

「フン……ゴラゲサドパヂバグ」

「!、……ッ」

 

 ゴオマの顔が憎々しげに歪む。その表情を横目で眺めながら、バヂスは最高の気分でいた。そして"ゲゲル"が成功すれば、自分はさらに強くなれる――

 

 そんな夢想とともに、腕輪が吹っ飛ばされた。

 

「!?」

 

 同時に、手首のあたりに灼けつくような感覚。攻撃を受けたことを瞬時に悟ったバヂスがその方向へ顔を向けると、そこには黒のコスチュームと白皙がコントラストを織りなす青年――ヒーロー・爆心地の姿。

 

「ビガラ……!」

 

 "成果"を台無しにされた憤怒と恥辱に、バヂスは彼に向かっていこうとする。だが生憎、彼は本丸ではなかった。

 

「――変身ッ!!」

「!?」

 

 勇ましく響く声に振り向いたバヂスが見たのは、エメラルドグリーンの双眸に戦意を漲らせた青年が駆け込んでくる姿だった。

 その瞳が、たちまち赤い巨大な複眼に覆い隠される。その異形と化した姿は、バヂスにとって忘れえぬもので。

 

「クウガ……!」

「お、りゃあッ!」

 

 赤のクウガはその姿を現して早々、跳躍とともに思いきり殴りつけてきた。顔面に拳がクリーンヒットし、バヂスの身体は後方に吹っ飛ぶ。

 だが、倒れるまでには至らない。クウガにとってそれはむしろ好都合だった。さらに距離を詰め、今度は回し蹴りを見舞う。十トンもの威力があるそれの直撃は、屈強な肉体をもつバヂスの体力をごっそりと削りとった。

 

(いける……!)

 

 クウガの変身者たる緑谷出久は、度重なる教練と実戦を経て自らの戦闘センスが飛躍的に磨かれていることを悟った。身体がまったく思い描いたとおりに動く。

 

 一方、その姿に複雑な感情渦巻く爆心地こと爆豪勝己は、別の標的に目をつけていた。ゴオマが密かに地に落ちた腕輪を回収しようと走っている。もっとも、密かにというのは当人がそのつもりというだけで、揺れる蝙蝠傘のせいでバレバレというほかないのだが。

 

「オラァッ、久しぶりだなコウモリ野郎がァ!!」

「!?、ギャアッ!」

 

 威嚇程度の爆破により傘を吹っ飛ばされ、ゴオマは悲鳴をあげて地面を転がった。爆破そのものというより、日光に晒されたことが原因。

 そのために、生命の危機を覚えた彼は本能的に怪人体を現した。だが反撃も逃亡も許すつもりはない。一気に畳みかけるべく、勝己は両腕を振り上げた。

 

榴弾砲(ハウザー)「かっちゃん!」ッ!?」

 

 いきなり切羽詰まった呼び声が響く。反射的に行動をキャンセルする羽目になった勝己が見たのは、翅を振動させて空へ昇っていくバヂスと、捕らえようと手を伸ばすも届かずにいるクウガの姿。

 

「籠手、お願い!」

「ッ、テメ……!」

 

 ゴオマは日陰に逃げ込み、いまにも飛び去ろうとしている。籠手を外して投げ渡している間に、ほぼ間違いなく逃げられてしまう。

 だが、現行で殺人を行っているのはバヂスのほう。どちらを優先して倒さねばならないのか――勝己は瞬時に、その答えを出すほかなかった。

 

「~~ッ、クソがっ!!」

 

 左の籠手を取り外すと、勝己は力いっぱいクウガに向かって投げつけた。それでも彼は難なくキャッチしてみせる――本来の出久とは比較にならない能力が腹立たしかった。失敗されたらされたで爆ギレしていただろうが。

 

「チッ、絶対(ぜってぇ)逃がすなよ!両玉失いたくなかったらなァ!!」

「ふ、増えてる!?っていうか、やっぱりヒーローの言うことじゃないって!」

 

 それが実行されるかどうかは別にしても、絶対に逃がすわけにはいかないのは同じこと。クウガは敵の逃げた空を見上げ、一度大きく胸を上下させた。

 

("射抜く戦士"……変われ、僕……!)

 

 籠手を握りしめ、強く念じる。と、アークルの根を張る腹部がどくどくと疼いてくるのがわかる。彼の視界には映っていないが、いまベルトの中心・モーフィンクリスタルは赤と緑に点滅を繰り返していた。

 やがてその点滅が激しくなり、疾風吹きすさぶに似た音が響きはじめる。それに合わせて赤い装甲が消失し、緑色のそれに変わる。複眼の色も、同じグリーンに。

 

 そうしてクウガは、いまの変身者と同じ緑の戦士――"ペガサスフォーム"へとさらなる変身を遂げたのだ。

 

「――!、う、……ッ」

 

 途端に、全身の感覚が鋭敏になる。遥か彼方の景色や音――ふつうなら感じるはずのないものが、すべて彼の脳に流れこんできたのだ。

 

「くっ、あ……ぁ……!」

 

 そのことばでは言い尽くせない未体験の感覚に、クウガは戸惑いながら片膝をついた。脳味噌が膨れ上がる錯覚。このままでは破裂してしまうと思った。

 だけれども、

 

(負けて、たまるか……ッ)

 

 予想はできていたこと。それゆえ出久は、完全に倒れることなく踏みとどまった。勝己にさらに自分を殺させてまで使おうとしている力――使いこなせないなんて許されない。勝己もそうだろうが、何より出久自身が。

 

 彼は再び深呼吸を繰り返し、乱れた精神を鎮め目的を果たすことだけに精神を集中させた。すると徐々に余計な音や景色がシャットアウトされ、クリアで空っぽな意識だけが残る。消えていく音の中で、ただひとつ――

 

――羽音。

 

「!」

 

 緑のクウガはその優れた聴覚で、それを捉えることに成功した。反射的に顔を上げれば、ぐんぐん上昇していくバヂスの姿がまるで目の前にいるかのようにくっきりと見える。

 

「よし……!」

 

 いける、これなら。クウガは籠手を構え、それを遠隔武器として扱うイメージを思い描く。自分、というより、どうしても勝己がそうしている姿が浮かんでしまうが。

 しかし使用者のイメージが別人であっても、モーフィングパワーは問題なく作動した。籠手がぐにゃりと歪み、丸みを帯びたボディがシャープに尖っていく。持ち手とトリガー、そして銃口が形成されていく――

 

 そのとき、バチッと音をたて、脳裏に火花が散った。

 

「え……?」

 

 一瞬、何が起きたのかよくわからなかった。しかし次の瞬間、その火花は奇妙な映像を鮮明に生み出した。

 奇怪な、甲虫のような形をした飛行物体。巨大な牙と翅をもつそれが迫りくる光景が、まるで過去のフラッシュバックのようにクウガの頭を支配する。

 

「うぐっ、あ……!?」

 

 感覚を不随意に甲虫に覆い尽くされたクウガは、堪らず武器になりかけた物体を取り落とした。モーフィングパワーの供給が途切れたために、それはたちまちもとの籠手に戻ってしまう。

 

「あ、がぁ、あああああ……ッ!」

 

 ついに耐えきれなくなり、彼は頭を抱えながら地面に倒れた。鋭敏になりすぎた感覚にパンク寸前だった脳は、突如襲い来た甲虫の幻に限界を迎えたのだ。

 

「デク、どうした!?デクっ!!」

 

 当然、勝己には何らかの異常が起きたという以上の認識はできない。ゆえに大声で問いただすが、クウガはのたうちまわり、苦しむばかり。

 その光景を見ているのは、勝己ばかりではなかった。

 

「チョグギグパスゴグザバ……」

 

 上空に逃げていたメ・バヂス・バ。そのまま逃走を図るつもりだった彼は、しかしクウガの自爆を目の当たりにしてその方針を変えた。右腕をちら、と見、まだ毒針が生成途中であることを確認する。

 

「バサダ……――シャアァァァァッ!!」

 

 鋭く尖る爪を振りかざしながら、急降下を開始する。狙うは憎き戦士クウガの首、ただひとつ。

 

 

 緑谷出久の命は、風前の灯火と化そうとしていた――

 

 

つづく

 

 

 




デク「じっじっじっじっじっ次回予告!」
かっちゃん「どもんなウゼェ」
デク「しょ、しょうがないじゃないか初担当だよ!?みんながうまく回してくれたのに主人公の僕が失敗したら最悪だしなんか気の利いたことしゃべらないとって思うんだけど僕の口はそんななめらかに回らないと思うし僕もうどうしたらいいのか」ブツブツブツ
かっちゃん「捲したてんなウゼェ。つーかテメェ、あれだけ言ったのに何失敗してやがんだコラ」
デク「あっ、そ、それは……飛んでる虫みたいなのが、頭の中にパッと……」
かっちゃん「……チッ、そいつの正体がわかんのはまだ先か」
デク「それよりかっちゃん、僕としては大学を飛び出した夏目実加さんの行方が気にかかるよ!……彼女の気持ち、僕、少しわかるような気がするんだ。誰も何もしてくれない、わかってくれないって、そういう怒りとかつらさとか……だから、寄り添ってあげたいんだ!」
かっちゃん「……そうかよ」

EPISODE 12. 遺されたもの

デク「さらに!」
かっちゃん「向こうへ!」

デク&かっちゃん「「プルス・ウルトラァァァァ!!」」

かっちゃん「なんで息ピッタリなんだ殺すぞクソカス!!」
デク「理不尽!!」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。