【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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(比較的)和やかにつけ険悪につけ、デク&かっちゃんの会話シーンがいちばん書いててノレる

そんな作者です


EPISODE 12. 遺されたもの 1/4

 ヒーロー・爆心地こと爆豪勝己の閃きによりメ・バヂス・バの犯行現場を突き止め、戦いを挑んだ緑谷出久――クウガ。空へ逃げようとするバヂスを仕留めるべく、彼は射抜く戦士"ペガサスフォーム"へと変身、その超感覚を制御しようとしていた。

 しかし突然脳裏に飛び込んできた巨大な甲虫の幻が、彼を窮地へと追いつめる――

 

 

「シャアァァァァッ!!」

 

 苦悶するクウガ目がけて急降下、その首を獲ろうとするメ・バヂス・バ。彼が勝利を確信したとき――強烈な爆風が、その軌道を強引に変えた。

 

「シャッ!?」

 

 吹っ飛ばされながらもすぐさま態勢を立て直し、数メートル離れた地点に着地するバヂス。彼を阻んだのは言うまでもない、咄嗟に割って入った勝己だ。

 

「よォハチ野郎……コウモリ野郎のぶんまでテメェがサンドバッグになってくれや……!」

「………」

 

 ことばの意味はあまり理解できないバヂスだが、目の前の男がとにかく不機嫌の極みにいることはわかった。その鬱憤を爆破という形で自分にぶつけようとしていることも。

 バヂスのほうも、彼には借りがある。命の次に大事な腕輪を吹っ飛ばされたという借りが。それを晴らすため、ここにとどまって戦う――そういう選択肢も当然思い浮かんではいたのだが。

 

「……ザジャブ、バゲサバギド」

「ア゛?」

「ギボヂヂソギギダバ」

 

 何ごとかを言い放ったかと思うと、バヂスは再び翅を広げて上昇を開始した。仕掛けてくるものと確信していた勝己は一瞬面食らったが、

 

「逃げんなゴルアァァァァァッ!!」

 

 当然、激昂しながら上空目がけて爆発を起こす。その爆風はかろうじてバヂスの下半身に届き、表皮を焦がすことには成功した。だがそれは、彼の逃走を阻むには至らなかった。

 

「だぁあああああッ、クソが――ッ!!」

 

 青空へ溶けていく怪物を見上げながら、勝己は絶叫するしかない。そして敵が姿を消した以上、怒りの矛先もひとつしか――

 

「っ、ゲホッ、ゲホッ、うッ、うえ゛ぇぇぇぇ……っ」

 

 嘔吐くクウガはペガサスフォームの姿を保てず、白――グローイングフォームへと退化していた。身体がさらに収縮し、もとの緑谷青年の姿へと戻る。その横に転がる籠手が視界に入った次の瞬間、勝己は彼に掴みかかっていた。

 

「テメェクソナードっ、あんだけ大口叩いてこのザマか、ア゛ァ!?」

「……あ、う、ごめ」

「ごめんで済むならヒーローいらねえんだよ、テメェのせいで結局3号も14号も逃がしちまったんだぞ!!どう落とし前つけんだコラ!?」

 

 身体をぐいぐい揺さぶって怒鳴りつけているうちに、勝己の頭はほんの少しだけ冷えてきた。出久が力なく咳き込むばかりなのも、それに拍車をかける。

 

「……一度は制御できかけてたじゃねえか。何が起きた?」

「ッ、はぁ、はぁ、……ふう」呼吸を整えたあと、「急に、変なイメージ、が……」

「変なイメージだぁ?」

「う、ん。飛んでる甲虫、みたいな……」

「………」

 

 わけのわからないことを。そう思うと同時に、だからこそ信用できる部分もあった。ただの慢心による失敗なら、こんな拙い言い訳はすまい。

 

「……チッ、少し休んだら関東医大行くぞ。異常がないか調べる」

「うん……。ありがと、心配、してくれて……」

「ア゛ァ?寝ぼけたこと言ってんな、失敗の責任、テメェでとらせるために決まってんだろうが」

「う、ん……」

 

 か細い声でうなずいたのを最後に、出久の瞼が落ちた。くたりと身体から力が抜ける。体力の限界を迎え、眠りに落ちたらしい。

 

「……チッ」

 

 もうひとつ舌打ちをして、勝己は幼なじみを抱き起こした。肩を貸し、自身の乗ってきた覆面パトカーまで運んでやる。傍目に見れば献身的な姿だが、それにしてはあまりに表情が険しかった。

 

 

 

 

 

 撤退に成功した――してしまった――バヂスとゴオマは、ともにアジトとなっている植物園に帰還していた。勝己の爆破による火傷をバヂスがものともしていない一方で、身体を直接害されていないはずのゴオマはなぜか顔の半分に火傷を負っている。太陽光を浴びたダメージは爆破のそれより大きいのだった。

 

「あっ、おかえりバヂス。休憩にでも来たの?ずいぶんな余裕ッスねー」

 

 冷やかすガルメを無視し、バヂスは指輪の爪を磨いているバラのタトゥの女のもとへ歩み寄る。腕輪の消え失せた左腕を彼女に見せた。

 

「グゼパグバブバダダ。ゾググセダギギ?」

「……バビグガダダ?」

「ガギヅ、ビジャラガセダ」

「!?」

 

 責任転嫁をされたゴオマは反論しようとするが、それより早く怪人体に変化したガルメの舌に張り飛ばされた。二度目である。

 一方、バラのタトゥの女は小さく溜息をつき、

 

「ザンベンザ、グジャシバ、ゴギザ」

「………」

 

 最悪よりはまし、という返答に、バヂスはサングラスのブリッジ越しに眉を顰める。が、彼はこの女の裁定に従うほかない立場だった。差し出された新しい腕輪を受け取り、早急にゲゲルを再開するほかない。

 と、そのとき、不意に彼は遅れを取り戻すための奇策を閃いた。

 

「ゴセ、ボソグゾクウガ。ゴセゾバギンググシギビグス。ゾグザ?」

「……ジャデデリソ」

 

 許可を得たことに気をよくしたバヂスは、ニヤリと笑みを浮かべて去っていった。「いってらっしゃーい」とにこやかに見送ったガルメ――人間体に戻っている――は……その姿が温室内から消えるや、フンと鼻を鳴らした。

 

「クウガを27って……サービスしすぎじゃね?いくらコイツの落ち度だっつってもさー」

「ダギバビ……いまのクウガにそこまでの価値があるとは思えんな」ショートカットの女が同調する。

 

 バラのタトゥの女は何も答えない。――だがその美しい唇は、ひそかに歪められていた。

 

 

 

 

 

 関東医大病院の診察室のうちのひとつで、男ふたりがぴったり身を寄せあっていた。

 

「相変わらずそそるヤツだな……おまえ」

「そ、そそりますか……」

 

 会話だけを抜き出すと、極めて妖しい雰囲気。何か子供には見せられない行為が始まりそうにも見えるが、ぎりぎりそうではなかった。――ふたりが見つめていたのはお互いではなく、貼りつけられたレントゲン写真だったのだから。

 

「緑になったら、色々とすごく感じたって言ってたな?」

 

 医師の椿秀一が耳許で尋ねてくる。出久は背筋がぞわぞわするのを堪えつつ、

 

「はい、確かにすごい色々見えて聞こえて。一応、制御はできかけたんですけど……」

「そのぶんエネルギーを大量消費するんだろうな。おまえ自身も相当消耗したんだろうが、腹ン中の石はもっとだ。器質変化を起こして、輝きを失ったようになってる」

 

 それはレントゲン写真からもわかる。出久の腹部には、霊石のかたちがはっきり映し出されているのだ。

 

「しかし、気になるな。突然飛び込んできたっていう甲虫の幻。――身体、もっと詳しく調べてみるか?」

「いっ、いやぁ……そういう性質のものじゃない気がするので。それより、もう使いものにならない……ってわけじゃ、ないですよね?」

 

 出久としては当然、そこが一番気にかかるところだった。二度と変身できない……そんなことになれば、もうグロンギと戦うことなどできなくなる。それだけではない、奴らと戦うために古代から呼び覚まされた力を、自分が潰してしまったことになるのだから。

 幸い、それは杞憂だった。

 

「いや、石の状態は回復傾向にある。二時間もあればもとに戻るだろう、まあそれまで変身はお預けだがな」

「うぅ、微妙に長い……」安堵と落胆の混じった溜息をつきつつ、「緑にも制限時間があるってことだよな……」

「おう、それは見極めといたほうがいいな。どれくらいで白に戻ったんだ?」

「えっと、確か……」

 

「――五〇秒、きっかりだ」

「!」

 

 隣室での電話を終えた勝己が、戻ってくるなり仏頂面でそう言った。ちゃんと数えてくれてたのか、という驚きもありつつ、

 

「あ、電話、なんだったの?」

「………」

 

 即答は、なかった。やや視線が俯きがちになる。話すのを躊躇っている――グロンギの犯行に関する情報であればすぐに話すだろう。それができない……出久に話したくないことだとすると、思い浮かぶのはひとつ。

 

「もしかして……夏目実加さんのこと?」

「――!」

 

 一瞬目を見開いたあと、みるみるうちに表情を険しくしていく勝己。デクに思考を読まれたことが口惜しい――つまり、図星ということだろう。

 

「誰だ、夏目実加って?あっ、もしかしてアレか、爆豪のコレか?」

「………」

 

 椿の空気を読めない茶化しは、さすがの出久も黙殺した。事情をいっさい知らない以上、勘違いするのも是非なくはあるのだが。

 是非もない、といえば。勝己もそういう気持ちになったのか、徐に口を開いた。

 

「……警視庁に電話があったらしい。0号の捜査進めなけりゃ、死ぬかもしれない……って」

「……!」

「!、もしかしてその娘……0号被害者の夏目教授の娘さん、か?」

「……はい」さすがにこれにはうなずく。

 

――お父さんは、死んだのにっ!

 

 茶化している場合ではないと察した椿が黙り込むと同時に、出久はあのとき覚えた怒りが再燃するのを感じていた。勝己の放った、冷たい正論。それが自殺を仄めかさせるほどにまで実加を追いつめたのだと思った。

 

「……かっちゃん、僕らで彼女を捜そう」

「あ゛?」

「沢渡さんも言ってたけど……あの場であんなこと、言うべきじゃなかったよ。責任もって捜し出して、きちんと謝るべきだと……僕は思う」

 

 まっすぐ目を見上げて、臆することなく出久はそう主張した。"捜そう"を除けば、あのあとすぐからずっと考えていたことだった。それどころではなかったし、籠手を借りる負い目もあったから言い出せなかっただけで。

 

 それに対する勝己の反応も、予想どおりの範疇ではあった。――血のいろをした双眼がかっと見開かれ、その周囲にビキビキと血管が浮かびあがっていく。

 そして、

 

「……テメェは、なんだ」

「え……?」

 

 その静かなつぶやきだけは、出久の予想にはなく。

 それゆえ次の瞬間、出久はまた胸ぐらを掴みあげられ、そのまま押しやられて壁に叩きつけられていた。

 

「痛……ッ」

「なんなんだテメェは、ア゛ァ!?」声を震わせて怒鳴る。「ンな偉そうに意見できる立場か!?人に戦闘中断させてまで籠手差し出させた挙げ句、みすみす14号も逃がしたようなクソ無能が!!」

「ッ、だからそれはごめん……っ、だけど、それとこれとは話が違うだろ!?」

「別じゃねェんだよ……どんなに取り繕おうがそうやって犠牲は増えてくんだ、優先順位つけなきゃ救えるモンも救えねえ。当事者ンなったくせに、テメェはンなこともわかんねえのか!?」

「わかってるよ!!だからって、あんな言い方する必要なかったって言ってんだよ!あんなヴィランまがいの言い方して、あの娘傷つけて……そんなのヒーローのやることじゃないだろ!?」

「ごちゃごちゃごちゃごちゃうるせえんだよ!!わかってねえだろうが、テメェのどこがわかってんだ!?本当にわかってたらなァ、何度も何度も何度も敵取り逃がしてヘラヘラなんかしてられねぇんだよ!!」

「僕がいつヘラヘラなんてしたんだよ!?」

 

 あぁ、まずい。出久のまだ冷静な部分がそう警笛を鳴らしたが、もう止まれないことを自覚するだけだった。

 

「だいたいっ、きみは昔っからそうだ!!平気で他人(ひと)のこと傷つけて……!ヒーローになるための努力は人一倍できるくせにっ、なんで他人の気持ちはわかろうともしないんだよ!?」

 

「そんなのっ、未確認生命体(あいつら)と何も変わらないじゃないかっ!!」

「――!」

 

 ぐいぐい揺さぶる手が、そう怒鳴った瞬間ぴたりと止まった。憤懣に満ちた表情が、一瞬無機質な、いっさいの感情の抜け落ちたものに変わり……やがて、唇だけが三日月型に裂けていく。

 

「……そういや、4号はまだ排除対象に入ってたなァ」

「は?何、言――」

 

「表、出ろや」

「!?」

 

(マジかこいつ……!?)

 

 まさか、やり合おうというのか。口と対照的にその目はまったく笑っておらず、冗談でないことは明らかだった。

 さすがに出久は少し焦ったが……それでも、己を止めるには至れず。

 

「そうやってすぐ暴力に訴える……!いいよ、そっちがその気なら僕だって――!」

 

 そのときだった。ふたりの顔と顔の隙間に、いきなり先の尖った物体が差し入れられた。先端からぽたりと液体がこぼれ落ちる――注射器だ。

 

「……いい加減にしとかんと、鎮静剤打つぞ」

「………」

「ここは病院だ。敷地内で騒がれるのは困るが、怪我人出されるのはもっと困る。……わかるよな、ハタチ越えた大人だもんな?」

 

 アラサー医師の凄みに圧され、21歳と20歳の幼なじみふたりは先ほどまでの勢いが嘘のように黙り込むしかなかった。彼らを交互に見て、椿はふう、と溜息をつく。

 

「だいたい緑谷、さっき二時間変身できないって言っただろ?いまのおまえはただの学生同然、ヒーロー相手にケンカなんて無茶もいいとこだぞ」

「……そうでした」

 

 変身できない状態での力関係は、中学のころまでのそれと変わらない。――いや、勝己が雄英の三年間を乗り越えてきている以上、差はもっと広がっているだろう。

 

(変身できなきゃ、何もできない無個性のデクのまま……か)

 

 わかっていた、つもりだったけれど。改めて実感すると、無個性を宣告されたあのときから胸の奥に渦を巻いている、どろりと滞留したものの存在を自覚せざるをえなくなる。出久はそっと唇を噛みしめながら、シャツの襟を整え直した。三度も掴まれ引っ張られて、少しよれてしまったような気がする。

 

「……僕だけでも捜しに行ってくる。どうせしばらく変身できないんだし」

「勝手にしろや」

 

 冷たく突き放す声は、実加に対して向けられたそれと何も変わっていない。自分のことばなんて、この男には届かない。それも、わかっていたけれど。

 

(かっちゃんの、馬鹿野郎……!)

 

 去り際、心のうちでの罵倒は、当然幼なじみには届かない。出久は椿にだけ会釈をして、そのまま立ち去った。足音が遠ざかっていく。

 それが聞こえなくなったところで、勝己も立ち上がる。すかさず椿が訊いた。

 

「おまえはどうすんだ?」

「14号を捜します。ひとつアテがあるんで」

「そうか。ま、がんばれよ」

「……ども」

 

 無愛想ではあるがきちんと頭は下げて、勝己もまた去っていく。

 その背中を見送りながら、椿はフッと二度目の溜息をついた。

 

「……ま、毒をもって毒を制すってこともあるしな」

 

 




キャラクター紹介・リント編 ゲギド

鷹野 藍/Ai Takano
個性:ホークアイ
年齢:28歳
誕生日:2月17日
身長:165cm
血液型:O型
好きなもの:ビール・バイオ○ザード
個性詳細:
視力を上昇させ、文字どおり鷹の目のごとくターゲットを捜し出すことができる個性だ。さらに一点に絞れば遠くにあるもののディテールを観察したり、動きをスローモーションで捉えたりすることもできるぞ!その目は何ものも見逃さない、ただし副作用として使用後に頭痛が襲ってくる。発動時間が長ければ長いほどそれは激しくなるので要注意だ!大好きなビールを飲みすぎた次の日なんかはゲロインと化すこともあったり……そんなヤツばっかかこの世界!?

備考:
警視庁未確認生命体関連事件合同捜査本部所属の警部補。捜査本部発足前は警備部に所属していた。若くして警部補にまで昇進しているだけあって優秀な能力の持ち主だが、生真面目でキツい性格なのが難点!セクハラなぞしようものならどんな目に遭わされるかわかったもんじゃないぞ!
未確認生命体第4号(クウガ)のことも当初は他の未確認生命体と同様、脅威として認識していたが……。

作者所感:
いつだったかまえがきで書きましたが、DCDクウガの世界の八代の姐さんがモデルになったキャラです。階級が高いだけあって会議で説明役を務めたり現場で指揮をしたり……実はこの世界における一条さんは彼女なのかも?
個性が発目さんと被ったのは……正直に白状すると発目さんの個性を忘れてたせいです。でも、切島&鉄哲のように個性が被ることはこの世界ではざらにあるでしょうし、似た個性でも職業によって活用方法が大きく変わってくるというのを示せたかな~、と。
若いエリートということで、もっと推していきたいキャラだったりします(実質オリキャラなのでほどほどに……)。
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