【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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本当はサモーン決着まで入れたかったんですが尺が…。

タイムリー?なことにジオウはアギト回でしたね。ここの心操くんもオムロンみたいな感じで将来的にはG3部隊の隊長とかやってくれるといいなと思います。
ショートくんは……ヒーローを引退してそば屋「安木杜」を開店するENDで(大嘘)




EPISODE 46.5. 紅白頭はトラウトサーモンの夢を見るか? 2/3

 アギト――轟焦凍との遭遇戦からたった数分、街の大型スクリーンにあのベ・サモーン・ギの姿が映し出されていた。

 

『おいリントども、貴様らはなぜ大晦日に蕎麦を食うのだ!?いや大晦日に限った話ではない!クリスマスはチキンだし節分に至っては恵方巻などという何を巻いてるんだかよくわからんものを食っている!!サーモン巻きならわかるけど!!』

 

 スクリーン越しに熱弁を振るうサモーン。興奮した彼はさらにこんなことを言い出した。

 

『今年から大晦日は鮭を食え!年越し蕎麦改めて年越し鮭、刺身も可とする!!この命令に違反したとオレがみなしたリントには、問答無用で嫌がらせしまくってやるのでよく覚えておくように!!ゴホン、それでは皆さまよいお年を!除夜の鐘!ゴーン、ゴーン、カルロス――』

 

 映像が途切れるスクリーン。呆気にとられた様子の人々の口には、いつの間にか鮭が詰め込まれていた――

 

 

 

 

 

「あのシャケ野郎のばらまいたシャケの分析結果が出た。その辺に売ってる切り身と成分が100パー一致、まごうことなきシャケだとよ」

 

 なんやかんやあって、爆豪勝己がそう告げた。彼は当たり前のように言っているが……焦凍としては、戸惑うほかない。

 

「まごうことなきって……あいつの身体から分離したモンだぞ。毒素とかねえのか?」

「ない」即答。「実際、無理矢理食わされた連中にも満腹で動けない以上の実害は出てねえんだと」

「そんなわけ……」

 

 否定しかかった焦凍だったが、口をつぐんだ。否定するに足る証拠は何ひとつないのだ。何よりもはや超能力の域に達している自分の勘が、あの切り身やイクラに危険性がないことを告げていた。

 

「ま、人命に害がなかろうがはた迷惑なことには変わりねえ。さっきの放送で奴が言ってたことにしてもだ」

「!」

 

 サモーンのことばを思い出す。――大晦日には蕎麦でなく鮭を食え。これに違反したとみなした者には問答無用で嫌がらせをしてやる……。

 

「まさか……!」

 

 刹那、焦凍は走り出していた。

 

 

――彼の覚えた、嫌な予感は的中してしまった。

 すぐ近所にある、お気に入りの蕎麦屋。年中無休なばかりか出前もしてくれるので、あまり大手を振って出歩けない焦凍にとっては実にありがたい店だった。当然、味も保証できる。

 

 それが、ひどい有り様だった。

 

 自信のこもった筆遣いで書かれた"蕎麦"の看板の上に下手くそな字で"鮭"と書かれた半紙が貼りつけられ、ガラス越しに見える店内のテーブルひとつひとつ、その中央に鮭の切り身が突き刺さっている。何より惨いのが、外まで漂ってくる魚特有の生臭さだった。

 

「これは……こんな……」

 

 焦凍、そして追いついてきた勝己が唖然としていると、店内から千鳥足で人影が出てきた。白い割烹着……店主だ。そのままへたり込んでしまったのを見て、駆け寄るふたり。

 

「ご主人、何があったんですか!?」

「あぁ……実は……」

 

 半ばうわごとのように、店主は語りはじめた。――あれはたった十数分前のこと。

 

 大晦日ということで、"年越しキャンペーン"と銘打って特別態勢で営業していたこの蕎麦屋は、それが災いしてかサモーンに目をつけられてしまったらしい。

 いきなり来店したかの鮭怪人は、

 

「営業中のところいきなり押し入ってナンだが、大晦日に蕎麦を売るな、食べるな!!没収だ~!!」

 

 そんなことをのたまって客席の蕎麦をことごとく没収、それに飽き足らず厨房にまで侵入して調理前の蕎麦やそば粉に至るまで奪っていったのだという。

 その代わりに、

 

「大晦日にはシャケを売れ、そして食え!!」

 

 そうのたまって、鮭をばらまいて帰った――

 

「だからもう……鮭を売るしかないんですぅ……」

 

 店主の話を聞き終えたふたりは、揃ってあんぐり口を開けるほかなかった。よくよく見れば、レジの横にはパック詰めにされた切り身が破格の値段で並べられている。これに関しては、元々丁寧にパッキングされていたらしい。サモーンの妙な律儀さを垣間見た気がした――

 

 

 

 

 

 被害に遭ったのはその蕎麦屋だけではなかった。都内全域で蕎麦を扱う店――料理店に限らずスーパーマーケットなどに至るまで――において、次々に同様の被害が発生したのだ。

 

 やはり近所の業務用スーパーで、年越し蕎麦コーナーが年越し"鮭"に無理矢理書き換えられているのを目の当たりにして、焦凍はそれを思い知った。

 

「もはや怨念だな、こりゃ」

 

 呆れたようにつぶやく勝己。一方で焦凍の抱えた憤懣は、既に沸点を越えようとしていた。

 

「あの鮭野郎……、絶対許さねえ……!」

 

 握り拳を壁に叩きつけんばかりに震わせて、飛び出していこうとする焦凍。そんな彼の背に、「おい」と声がかかった。

 

「どうする気だ?」

「……おまえにンなこと訊かれるとは思わなかったよ」

 

 まどろっこしいのは嫌いなはずなのだ、この男は。余程相手を追い詰めたいという意志が働いているならともかく。

 

「あいつを倒して……大晦日に蕎麦を取り戻すに決まってる!」

「……ふぅん」つまらなさそうに鼻を鳴らし、「あいつをぶちのめしゃ、それでいいんか?」

「……何が言いてえ?」

 

 普段の彼らしからぬ妙に落ち着いた物腰で、勝己は応えた。

 

「あのグロンギは曲がりなりにも鮭を愛してンだ、だから蕎麦を駆逐してでも俺らに食わせたがってる。はた迷惑にも程があるとはいえな」

「だから……なんだってんだ」

「それを無理矢理力で押さえつけて、テメェは納得できんのか?あのシャケの亡霊野郎にテメェの大好きな蕎麦を認めさせてやりてえとは思わねえんか?」

「そんな、こと」

 

 そんなことどうでもいいとは出任せでも口にできないような想いが、確かに焦凍の胸のうちにあった。力で勝つだけじゃ、何かが足りない――自分ですら完全には自覚していないその気持ち、勝己にはお見通しということか。

 

「……けど、どうすりゃいいんだ。蕎麦の素晴らしさを認めさせるなんっつったって――」

「轟。――テメェは、蕎麦の"4つのたて"を知ってっか?」

 

 またしても唐突な問いかけだが……もはや戸惑うこともなく、焦凍は即答した。

 

「ああ……美味い蕎麦の極意だ」

 

 獲れたて。挽きたて。打ちたて。そして……茹でたて。

 

「その4つを兼ね備えた最高の蕎麦を、奴に食わせる。――轟焦凍、おまえの手で打つんだ」

「俺、が……」

 

 もとより今日は、自ら蕎麦を打つつもりでいた。しかし"最高の蕎麦"だなどと――

 

 果たして自分にできるだろうか。背負った使命の重さに、自ずと両手が震える。

 

「轟」

 

 落ち着いた声が、再び名を呼んだ。

 

「おまえ、蕎麦を愛してんだろ。だったら大丈夫だ」

 

「おまえは、最高の蕎麦を打てる」

「!」

 

 確信のこもったそのことばは……焦凍の身体に、電撃が奔るような衝撃を与えた。他ならぬ爆豪勝己が、自分にそう言ってくれている。その事実が、どんなにか頼もしい。

 ただひとつだけ、問題があった。サモーンがあちこちでやりたい放題やっているせいで、蕎麦粉が手に入らないのだ。こればかりは焦凍の気持ちひとつでどうにかなるものではなくて。

 

――この瞬間を待ち構えていたかのように、"彼"はやってきた。

 

「"獲れたて"ならば、ここにあるぞ」

「!!」

 

 唐突に姿を現したのは、焦凍の左半身と同じ赤髪と碧眼をもつ、筋骨隆々とした壮年の男。似ていないようで、焦凍との深い血縁を感じさせる容姿をしている――

 

「親父……どうしてここに」

「フン……どうでもよかろう、そんなことは」

 

 つれない態度は相変わらずだったが、焦凍の父・エンデヴァーこと轟炎司は妙にそわそわした様子。その手におさまった紙袋に、自ずと視線が注がれる。

 

「産地直送、獲れたての蕎麦粉だ。おまえが手打ち蕎麦に挑戦すると聞いたので取り寄せてみた」

「!、な、なんで……」

 

 よりによってこの男がそんなことを……いやしかし、いまとなっては脈絡のない行動とも言いきれないのだ。戦場に散って英雄となることよりも、その誇りを捨ててでも生きていてほしいと……ごくふつうの親と変わらぬ想いをもってしまった、いまのこの男ならば。

 

 そのことについて、当然思うところはある。何を今さらという反発心は言うに及ばず、相手のスタンスがここまで極端に変わるとどう接すればいいかわからなくなるのだ。母につらく当たるのは論外だが、自分に対しては少しつっけんどんなくらいでいてくれたほうが気が楽だったのに。

 懊悩する焦凍。ふと勝己の顔を見ると、それはもう愉しくて仕方なさそうなにやけ面を晒していた。つい今しがた「おまえなら大丈夫だ」と激励してくれた男と同一人とは思えない……が、これはこれで彼の――おそらく幼少期からの――地の性分なのだから是非もない。

 

 ひとつ溜息をついた焦凍は、その紙袋に手を伸ばすことを選んだ。

 

「……背に腹は変えられねえ。これは有り難くもらっとく……けど、俺らがここにいるってどうしてわかったんだ?」

「そういうことを訊くものではない、馬に蹴られるぞ」

 

 なんだそりゃ、と思ったが……確かにそんな些末なことを、いま気にしている場合ではない。"獲れたて"というある意味一番の難条件を父が達成してくれた以上……あとの3つをどうすべきかは、言うまでもない。

 

「爆豪、親父。今日に限っては、俺はヒーロー・ショートでもなければ、仮面ライダーアギトでもねえ」

 

「今日の俺は……蕎麦打ち職人、轟焦凍だ!!」

 

 涼やかな焦凍の双眸に、灼熱の炎が燃えさかる。「それでこそ俺の息子だ」と満足げにうなずいて、エンデヴァーは颯爽と去っていった――

 

 

 

 

 

 ベ・サモーン・ギによるやりたい放題は続いていた。店という店から蕎麦は消え、代わりに鮭で埋め尽くされる。過剰に供給された鮭は値崩れを起こし、水産分野の企業の株価にまで打撃を与えていた。

 

 実体経済にまで影響を及ぼしながら、サモーンは大晦日の街を練り歩く。

 

「シャーッケッケッケッケ!年越しジャケは確実に浸透しつつある……あとは全国の蕎麦栽培農家をシャケ漁に出せば、オレのゲゲルは成功だァ~――ムゥ!!?」

 

 途端、いずこからか漂ってくる蕎麦の香り……それも強烈な。サモーンの心は怒りに燃えあがり、その香りのもとを断とうと身体が勝手に動き出す。まるで遡上する鮭のように、リバーサイドを疾走する――

 

――やがて彼は、視線の先にひとつ屋台を捉えた。あれから芳しい蕎麦の香りが漂っている!サモーンはたまらず「コラ~!!」と叫んだ。

 

「大晦日に蕎麦を作るなとあれほど言ったダロ~!!?この屋台をサーモン専門にぎり寿司を出す屋台に改装してや「ウルセェ!!」シャケッ!?」

 

 いきなり横からぶっ飛ばされ、サモーンは「ゴロゴロゴロ~!」と(口で言いながら)地面を転がった。天を仰ぐその視界に、悪鬼羅刹のような顔面が飛び込んでくる。

 

「きッ、キサマはあのときのォ!?」

「おーおー、いきなり営業妨害たぁふてェ野郎だな」

 

 口を三日月型に裂いて笑う爆ギレヒーロー・爆心地こと爆豪勝己。さらに、

 

「やっぱり来たな、待ってたぞ」

「!」

 

 屋台からひょこりと顔を出した割烹着の男。その恰好に不似合いな左目の周囲の火傷痕は、サモーンの記憶に刻み込まれていた。

 

「あ、アギト……!罠だったのかァ!?」

 

 そう結論付けるのも当然か、と焦凍は思った。実際、この鮭怪人の一本釣りには成功した――ここから勝己と組んで袋叩きにすれば、倒すことなど容易いとさえ信じられる。

 だが、それだけでは……力で勝つだけでは足りないのだと、勝己が教えてくれた。だから、俺は――

 

「誘き出したのは事実だ。でも、おまえをぶちのめすつもりはねえ」

「バンザドゥ!?」

「俺の目的はただひとつ、」ここで思いきり空気を吸い込み、「おまえに……蕎麦をご馳走することだ!!」

「……ハ、ハイィィィ~!!?」

 

 一瞬硬直したあと、飛び上がって驚愕を露にするサモーン。色々と狂った言動の主であるが、そんな怪人ですらびっくらこくような発言ということだろう、まあ自分でもそう思うが。

 

「サモーン……だったな。おまえはやたらシャケを推すが、蕎麦を食ったことはあるか?」

「あるシャケ……ワケあるかそんなモン、オレはシャケ一筋ウン万年!浮気はダメダメ文[ピー]砲が怖いもの!!」

「そうか、シャケしか食ったことねえんだな。道理で説得力の欠片も感じねえわけだ」

「アアン!!?」

 

 恫喝的な態度を示すサモーンだが、そういう振る舞いにかけては人類最強クラスの爆ギレヒーローに睨まれ口をつぐんだ。

 フッと柔らかな笑みを浮かべて、焦凍は続ける。

 

「俺はこのうえなく蕎麦が好きだし、一番美味いと思ってるが……ご飯やパンも食うし、なんならシャケだって好きだ。蕎麦とは違う良さがあるからな」

 

 逆もまた然り。鮭とは違う良さが蕎麦にはある。サモーンに、それを認めさせる――

 

「サモーン、俺の打った蕎麦を食べてくれ。そして美味いと思えたら、おとなしくお縄につけ」

「シャケケケッ……見かけどおりおめでたい頭だなァ!!もしオレが、美味いって言わなかったら?」

「そのときは……煮るなり焼くなり、おまえの好きにしろ」

 

 断言する焦凍。それを聞いて、サモーンはほくそ笑んだ。鮭以外のものを美味いだなどと、自分は絶対に思わない。

 

「シャーッケッケッケッケ!!いざ――」

「――勝負ッ!!」

 

 

 遂に、轟焦凍とベ・サモーン・ギの決戦が幕を開けた。

 父より受け取った蕎麦粉をボウルに入れ、繊細な手つきで捏ねる焦凍。椅子にふんぞり返って座るサモーン。最初は嘲笑混じりに焦凍を眺めていたが、蕎麦粉が塊となり、それを麺棒で引き伸ばしはじめたあたりで様子が変わった。

 

「ム……?」

「………」

 

 笑うのをやめたサモーンを横目で見つつ、勝己は逆に唇をゆがめた。いまの焦凍が醸し出す職人の気迫が、この怪人にも伝わっている――

 

 蕎麦粉の塊を程よく引き伸ばしたところで、専用の包丁を使って刻んでいく。乱れのないリズムが耳に心地よい。音ばかりでなく、形となった麺の一本一本もその太さ、長さに乱れがない。

 刻んだ麺を沸騰させた湯に差し、粉を落とすと同時にさっと茹でる。ちょうどいいところで引き揚げると、今度は冷水に入れてよく冷ます。

 そして冷やした麺を、ざるに盛りつける――

 

「む、ムダな動きがない……!?」

「それが職人っつーもんだ」

「職人……」

 

 サモーンがその名詞を復唱していると――すべての用意を整えた焦凍が、す、と完成品を差し出してきた。

 

「お待ちどおさま。――さあ、食べてくれ」

「シャケ!……じゃない、応!」

 

 蕎麦に蕎麦つゆ、そして刻んだねぎにわさび。まったく奇をてらっていない、シンプルなざるそばである。

 くんくんと鼻を――どこが鼻なのかはともかく――動かしたサモーンは、再び「ム……!?」と声をあげた。

 

「これは、海の香り……!?」

 

 そばつゆから漂うその香りに、思わず懐かしい思いに駆られるサモーン。狙いどおりだとばかりに、焦凍は笑みを浮かべた。

 

「出汁に鰹節と昆布を使ってみた。シャケじゃなくて悪ィな」

「……ま、まあいい。どうせシャケ料理じゃないなら同じこと!」

 

 「いただきます!」と威勢よく叫んで、サモーンは箸で麺を掬いあげた。鰹節の香るつゆにゆっくりと浸し、

 

 巨大にも程がある口に、放り込んだ。

 

「………」

 

 サモーンの口が咀嚼のために動くのを認めて……焦凍は、ごくりと喉を鳴らした。自分なりの最高の蕎麦、その味はいかに――

 

「……ム、」

 

「ムムム……?」

 

「ムムム――!!?」

 

 気がつけばサモーンは、日本海のど真ん中にダイブしていた。沈む身体を波が揺すり、泳ぐ大小の魚が群がり、戯れてくる。

 

(あぁ……愛しの日本海……!)

 

 

「ゴロゴロゴロ~!」

 

 再びサモーンは地面を転がっていた。蕎麦に浸っている隙に攻撃を受けたわけではない。純然たる、蕎麦への衝撃でこうなってしまった――

 

「な、なんだこれは……。シャケとは違う……違うけどぉ……!」

「美味ェだろ?」

「うん!――あっ」

 

 うっかりうなずいてしまったサモーン。しかし無理もないことなのだ、だって……美味い。美味すぎる。

 

「4つのたてが揃った蕎麦は、まさに究極……」

 

 しみじみとつぶやく勝己。明らかに口調がおかしいことなど、もう焦凍は気にしなかった。

 

「サモーン、負けを認めるな?」

「う……うぅ……」

「もう、みんなに無理矢理シャケを食わせたりしねぇな?」

「うぅぅぅぅぅ――!!」

 

 地面にうずくまったまま、唸り続けるサモーン。美味かった、確かに。きっとこれ以外にも世の中に美味いものはたくさんあって、リントはそれらを日々楽しんでいる。

 だけど、だけどオレは――

 

「――やっぱり、認めぇえええんッ!!」

 

 地面に思いきり拳を叩きつけて、サモーンは憤然と立ち上がった。

 

「365日のうち364日はシャケじゃなくてもいいッ!けれども今日だけは、この大晦日だけは、やっぱりシャケの日にしてほしいんだよォオオオオ――ッ!!」

「な……おまえ……!?」

 

 「シャケを食え~!!」と従来の主張を繰り返しながら、飛びかかってくるサモーン。身構える焦凍、爆破の姿勢をとる勝己。――しかし彼らが手出しすることはなかった。

 

 鮮やかに跳躍する青と銀のマシンが、サモーンに激突したからだ。

 

「マリネッ!?」

 

 「ズザザザザ~!!」と(やっぱり叫びながら)地面を滑走するサモーン。途中で文字どおり尻に火がついてしまい、ようやく静止してからも喚き悶えている。

 そして同時に、かのマシンも着地した。操るライダーはというと……渋いデザインのマシンを台無しにしかねないような、ショッキングピンクの法被を着ていて。

 

「かっちゃん、轟くん!」

「!、緑谷……」

 

 戦友、緑谷出久。さらに、

 

「俺もいるぞ」

 

 次いでオートバイで駆けつけてきたのは、心操人使……なのだが、こちらも同じ法被を着ている。

 

「遅くなってごめん!」

「……それはいいが、お前らその恰好は?」

「アイドルヒーロー軍団アッカンベー48の大晦日生ライブ用ヒーローコスチューム風応援衣装さ!」

「俺たちのようなヒーローオタクにとって最高の舞台なんだ」

「そ、そうか」

 

 そんなグループがいたのも出久たちにそんな趣味があったのも初耳だったし、どこからどう見てもその恰好はヒーローコスチューム風ではないと思ったが……いちいちツッコんでいるとキリがないのでいったん流すことにした焦凍。いま専心すべきは、サモーンのこと。

 

「轟くん、どうすればいい?」

 

 出久がまっすぐ見上げてくる。色々な意味で直視に堪えがたいと思ったが……焦凍は、逸らすことなく見つめ返した。

 

「あいつを……倒す。力を貸してくれ、ふたりとも」

「「――おうッ!!」」

 

 ライブのテンションを引きずっているふたりだった。

 

 

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