【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我 作:たあたん
残酷描写は少ないですがグロ描写はとても多いお話です。う゛え゛~ッ、おぞましい!!(天野河リュウセイさん並感)
本エピソードを今週一杯でアップしたら来週一週間はお休みさせていただこうかと思います。理由はクウガ放送時もゴルフで一週空いたから……ってのもなくはないんですが、次回から新要素がグワッと出てくるのでしっかり構想を練りたいのと、そして活動報告に書いたとおりBLACK&BLACK RXとのクロスオーバー作品「超・世紀王デク」も執筆したいからです
そちらは原作沿いかつ頭空っぽで読める割と対照的な作風でいこうと思ってますのでよろしくお願いします!もちろんこちらの更新もというかこちらをメインに続けていきますよ~!!
黒塗りの四輪が、爽やかな朝の空気を薙いで走っていく。
「………」
穏やかな運転とは裏腹に、ハンドルを握る運転手の青年は至極仏頂面を浮かべている。せっかくの美形が台無し……と言われればそうなのだが、この表情が彼の対外的なデフォルトなのだからどうしようもない。烈しさの塊のような紅い瞳のおかげで、それはそれでサマになっているのが救いである。
その一方で、助手席に座る青年。幼くも平凡な顔立ちに対照的な翠の瞳。その表情をころころ変えながら、誰かと電話中である。
「――うん、うん……そうだね、じゃあお昼に。いやっ、ごめんね本当に!……うん、じゃあまた」
通話を切り、かの青年がふう、と安堵の溜息をつく。ようやくこれで静かになる――かと思いきや。
「あ、そうだかっちゃん、」
「……ンだコラ」
「僕のこと、母さんに連絡しちゃったりとか……した?」
彼――緑谷出久は、つい数時間前まで死んだと思われていた。未確認生命体第19号――メ・ギノガ・デの猛毒の胞子によって、確かにあらゆる生命反応が失われたのだ。それが不死鳥のごとき復活を遂げ、つい先ほどそのギノガにリベンジを果たしたばかりだった。
だからもし自分の死が母に伝わっていたらば、かなり厄介なことになる。母の憔悴・絶望を想像するだけで居たたまれないが、それ以上に「生き返りました」なんて報告しようものなら、彼女の小さな心臓はそれこそ耐えきれないかもしれない。そんなことで母を喪いたくはなかった。
戦々恐々とする出久だったが、それは杞憂に終わった。
「してねェわ、まだ」
「!、そ、そっか……」
露骨にほっとした様子の出久。「よかったぁ……」なんて小声でつぶやいているのを見て、勝己も少しだけ凪いだ気持ちになった。死にかけるどころか一度は死んだにもかかわらず、出久はそんなそぶりをまったく見せない。ただ時折漂ってくる病院の匂いが、彼が数時間前までそこにいたことを証明しているけれど。
だが、せっかく人が落ち着いているにもかかわらず、この幼なじみはそれをかき乱そうとするわけで。
「ねえ、かっちゃん」
「ア゛ァ!?」
しつこく話しかけられて、一度目は堪えた勝己も今度こそは思いきり凄んだ。
「それはどおォしてもしねぇとならない話か?ア゛!?」
「いっいえっ、そうでもないです……」
「だったら話しかけんなクソウゼェ」
そう吐き捨てると、出久はしゅんとした様子で口を噤んだ。病み上がりだからといって態度を変えてやるつもりはさらさらなかったし、実際にそうしていた――あくまで主観では。
そうして車内が静かになったので、勝己は運転に集中しようと試みたのであるが、それはかりそめの平和であって。
「やっぱり赤いクウガから他の色に変わるとき、何も言わないと締まらないんだよな、変身するタイミングもうまく掴めないし……でもなんて言ったらいいんだろう、ふつうに"変身"……いやでもクウガになるのと一緒じゃ芸がないし……とはいえ全然違う台詞にするのもなんか違うような……"変身"に何かくっつける?何をつけたらいいだろうか……あっ、"大変身"――なんかしっくりこないな、う~ん……"スーパー変身"……なんか安っぽい……スーパーじゃなくてハイパーのほうが……あっ、"ハイパー大変身"なんてどうだろう………」
ブツブツブツブツ。今度は溢れる思考がそのまま形になるというとんでもない悪癖が発動した。仮に運転手がごく一般的な懐の持ち主であろうと迷惑がるであろうそれは、勝己に対しては導火線を火炎放射器で燃やすに等しい凶行であって。
――BOOOOM!!
「う゛お゛ッ!?」
眼前で小規模な爆破をかまされて、出久はようやく我に返ったらしい。シートに身体をぴったりくっつけ、肩を強張らせている。
「テメェは俺をイラつかせることにかけて だ け は天才だな、オォコラァ……」
「うぅ……ご、ごめん………」
「チッ……次しゃべったら喉潰す、完膚なきまでに潰す」
「ア、ハハハ………」
引きつった笑顔とともに、出久は今度こそ黙り込んだ。ようやく静穏が訪れる。何も話さない、なるべく考えもしない――そう自分を戒めていたのだが、
「――"超変身"」
「へっ?」
「……でいいだろ、めんどくせぇ」
独り言のようなつぶやきだったが、出久は聞き逃さなかった。
「超、変身………」
シンプルさでいえば"大変身"とあまり変わらないが、変身した姿からさらに変身するという意味ではより違和感がないように思われた。
「超変身……そうだね、じゃあそれでいくことにするよ!ありがと、かっちゃ――」
――BOOOOM!!
「えぇッ、ななな、なんでェ!?」
「次しゃべったら喉潰すっつったよなァ?」
(理不尽すぎる!!)
この男は一体僕をどうしたいのか。そんなことを訊けば本当に有言実行されかねないので、出久はひたすらにこの密室の時間が過ぎるのを待つほかないのだった。
――そうしておよそ三〇分後の午前九時過ぎ。ふたりは関東医大病院にいた。うっかり口を開いてしまったせいで出久が喉を潰され、治療の必要ができたわけではない。もとより目的地はここだったのだ。
検査衣に着替え、出久は検査を受けた。目覚めたあとはそんな時間がなかったというのもあるが、ある程度時間が経過し、身体の状態がどのように変化しているかをチェックする意味合いもある。
そして、その結果が出た。
「――もう完全にもとの状態に戻ってる。驚くべき回復力だ」
徹夜明けとは思えない爽やかな笑顔の椿医師にそう告げられ、出久はほっと胸をなで下ろした。体調は万全も万全だと感じているが、やはり明確な形でそれが示されると安心する。
一方、傍らで様子を窺っていた勝己は、もっともな問いを椿にぶつけた。
「結局、なんでこいつは生き返ったんすか?」
「あぁ……正確には緑谷を仮死状態にすることで、19号によってもたらされた毒の影響を排除したってとこだな」
「仮死……状態?――ひゃッ!?」
首を傾げる出久は、いきなり腹をぐわっと掴まれ、弾みで椅子ごと倒れかけた。
それに対するリアクションはいっさいなしで、医師は続けた。
「こン中の石ははじめ白血球を増やして毒に対抗しようとしたものの、その毒が人間の平熱の範囲内で一番繁殖することに気づいて……だったらッ、」今度はいきなり手を握られ、なぜか腕相撲の取り組み開始。「体温を下げてッ……一気に毒を死滅ッ!……させるッ!……判断をしたわけだ!」
「ハァ、ハァ……なるほど……」
「ハァ、フゥ……チッ、緑谷おまえ……昨夜も思ったが結構仕上がってきてるな……チクショウ……」
「何に対するチクショウなんですか……」
真剣勝負になってしまったがゆえに揃って顔真っ赤のふたりを冷たく睨めつつ、勝己はさらに訊く。
「この石はなんなんすか?沢渡さんは人工的なものじゃない可能性があるって言ってましたけど」
「う~む、そう言われてもな……。俺にわかるのは、この石が医学的にどういう意味をもつかってことだけだ」
「……そうすか。なら碑文の解読頼みだな……」
つぶやいたかと思うと、勝己はすっと椅子から立ち上がった。次の目的地が定まったのだろう。それがどこなのか考えるまでもなかったので、ほとんど反射的に出久も追随した。
「じゃあ僕らはそろそろ。先生、本当にありがとうございました」
「いや、大したことはしてないさ。――礼と言っちゃナンだが、ひとつだけ教えてほしいことがある」
「?、な、なんでしょうか?」
やけに怖い顔で椿が迫ってくるので、出久はごくりと唾を呑み込んだ。
「沢渡さんの、ことなんだが……」
「は、はい」
「彼女、――」
「――いま、フリーか?」
「へぁッ?」
表情と問いの落差があまりにも大きすぎて、出久は目を点にしてしまった。それにも構わず、この男は執拗に言い募る。
「どうなんだ、なぁ?」
「えっ、えっと……たぶん、そうだと思いますけど……」
「そうかぁ!」
途端にこの男は嬉しそうな笑みを浮かべる。何を考えているか丸わかりだ。勝己が蔑むような視線を向けている。
「アンタ……」
「なッ、なんだその目は!?言っとくけどなぁ、俺ァおまえらのせいでフラれたんだぞ!?」
「ぼ、僕らのせい??」
笑顔から一転、今度は憤慨する椿。――フラれたのはそれだけが原因ではないのだが、そもそも恋人の存在自体初耳だった出久たちには知る由もないことであった。
「く、ぅううううう……ッ、れいッ、麗子ちゃあん……!」
「あ、あの……」
「……ほっとけ、行くぞデク」
「うん……」
デスクに突っ伏してさめざめ泣くアラサー監察医を放置して、幼なじみコンビは関東医大病院をあとにしたのだった。
*
――板橋区内 荒川流域
"荒川"という名に反して凪いだ水面に、三人の釣り人が糸を垂らしている。
「釣れないねぇ……」
「釣れませんねぇ……」
どこかで聞いたようなぼやき。実は彼ら、ちょうど三週間前にもこの荒川で釣りに興じていた。その際に未確認生命体第8号――メ・ビラン・ギに襲われかけ危うく命を落とすところだったのだが、特にトラウマなどにはなっていない様子である。
暫しそうして釣り糸を垂らし続けていた男たちであるが、やがてそのうちのひとりが「うわっ!?」と声をあげてのけぞった。
「何?かかった!?」
「あぁー……いや違う、すまん、手かと思った」
「手ぇ?」
「ほら、あれ」
彼が指差した先――対岸とのちょうど中間地点のあたりに、木に引っ掛かったオブジェクトが漂っている。確かに手の形のようには見えるが――
「手袋ぉ?」
「うわぁ、不気味ですねぇ」
「手袋だけどさぁ、なんかヤだよねああいうの。場所、移動しない?」
「そうしましょうか」
「どうせここじゃ釣れないしねぇ……」
いそいそと撤収の準備を開始する一同。――その何気ない判断が、結果的にまたしても彼らを命拾いさせることとなる。
いずれにせよ……そこに浮かんでいたものは手袋などではなく。白布がかかっていたためにそのように見えただけの、正真正銘の腐りかけた手の残骸であった。クウガによって倒された未確認生命体第19号――メ・ギノガ・デの……。
*
沢渡桜子はそわそわしていた。
ところは城南大学・考古学研究室。先ほど連絡があり、これから客人を迎える予定になっているのである。そろそろ彼らが到着する頃合い……なのだが、まだ現れる様子はない。
腕時計をちらちら確認しつつ、部屋の中を歩き回ること数分――ようやく扉がノックされた。
「!、はーい!」
ぱあっと表情を輝かせ、桜子は研究室の戸を引いた。そこには
「……ども」
「どうも……あの、出久くんは?」
半分、というのは、つまり出久の姿が見当たらなかったからだ。彼が無事に蘇生したことは椿医師、ひいては本人からも連絡を受けているから、疑いようはないわけであるが――
と、開けていない側の扉の陰から、勝己よりひと回り小さな人型が飛び出してきて。
「扉の陰から~ッ、僕が来たッ!!」
しーん。空気が冷え込む。
「……何しとんだ、テメェは」勝己が冷たくツッコむ。
「い、いやその、たまにはこういうのもアリかな~と……」
「出久くん……お酒呑んでる?」
「いやそんなまさか……」
「だってそんなテンションの出久くん、相当酔ってるときしか見られないもん」
桜子のことばに、出久は「アハハ」と苦笑を浮かべた。
「目が覚めてから、なんかすごく気分が良いんだ。お腹の中の石が、毒のついでに悪いもの全部除去してくれたのかも」
「何よそれ……」桜子がむくれる。「こっちはまた徹夜で悪いもの溜め込んでるってのに!」
「あわわわっ、ごめん!ほんとごめんっ、僕のために色々調べてくれたんだよねッ!?」
「そうよ、まったくもう!」
ごめんなさいごめんなさいと、出久は赤べこのごとく頭の上下をひたすらに繰り返している。それでいて、エメラルドグリーンの瞳が時折おずおずと顔を見上げてくるのだ。そんな表情を見せられるだけで、怒る気もまったく失せてしまう。
「ハァ……まあ、元気そうで何よりだわ」
「!、う、うん……」
顔を上げた出久に向かって、桜子は温かな微笑みを投げかけて。
「おかえり、出久くん」
「!」
目を丸くしていた出久もまた、やがてその双眸を三日月型に細めて。
「――――ただいま!」
キャラクター紹介・クウガ編 ズガギ
グローイングフォーム
身長:190cm
体重:90kg
パンチ力:1t
キック力:10t
ジャンプ力:ひと跳び10m
走力:100mを7.2秒
必殺技:グローイングキック
能力詳細:
エネルギーや闘志が不足している場合に変身してしまうクウガの不完全形態。マイティフォームに似た姿をしているがボディの装甲は白く、頭部の角も未発達なのだ。そのため脳の組成変化がうまく行えず、力を使いこなすことができないぞ!
常人よりは遥かに強力なので一応グロンギ怪人と戦えないこともないが、低スペックなので苦戦は避けられない!必殺技のグローイングキックも封印の古代文字が不完全なのでうまく決まらないが、メ・ギノガ・デ戦においては逆にエネルギーが回復していったため最終的にマイティキックを放つことができた。まさしくグローイング!がんばれがんばれって感じのデク!!