【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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本エピソードでどうしてもやりたかったシーン
1/4での「ピースサイン」熱唱は自重されてしまったのですが、こちらはなんとかなりました


EPISODE 17. なんでもない日 3/4

 城南大学をそそくさ立ち去った幼なじみコンビは、再び覆面パトで移動中であった。出久が静かにしていれば、勝己も静かである……運転も含めて。

 ただ出久は、つい先ほど感じた寂寥めいたものを引きずっていたりもして。

 

 沈みかかる気持ちを自覚して、ぶんぶんと首を振る。

 

(駄目だ駄目だ、こんなんじゃ昔と何も変わらないじゃないか!かっちゃんだって、やむを得ずとはいえ僕をそばに置いてくれるくらい昔と変わってるんだ。僕だってもっと変わらなきゃ。そうですよねオールマイト!笑顔、笑顔、そしてプルス・ウルトラ!!)

 

 口には出さないよう気をつけつつ、出久は心のうちで自分を叱咤激励した。仕上げに両頬を軽く叩く。勝己がちらっとこちらを見たが、特にリアクションはなかった。

 と、車載ホルダーに固定された勝己のスマートフォンがブブブと振動した。同時に、接続されたカーナビに発信者の名前が表示される。――発目明。

 

 あることを思いついた出久は、受話しようとする勝己を慌てて制した。

 

「あっ、あのっ、僕出てもいいかな?」

「ア゛ァ?俺にかかってきた電話だろうが」

「いやほら、トライチェイサーのこともあるし。……あとハンズフリー通話って法令上グレーゾーンだよ。緊急時はしょうがないと思うけどさ………」

 

 イヤホンをしているわけでもないので違反を問われることはほぼないだろうが、ヒーローたるもの平時は法令遵守に厳格であるべきだと出久は思った。朝この運転手に爆破で脅迫されたことはひとまず忘却している。

 一応正論だと認識はしてくれたのか、勝己は舌打ちしつつもン、と顎をしゃくった。ナビに表示された受話マークを押すと、『もしも~し』というとぼけた発目の声が車内に響き渡る。

 それを受けた出久はンン、と軽く咳払いをして、

 

「――お、オォ爆豪だァ。なんの用だ発明女コラァ」

『へっ?』

「!?」

 

 勝己がぎょっとこちらを見るのがわかる。が、出久はもう後戻りできないのだった。

 

「な、なんの用だって訊いてんだよ発目さ……発明女ァ」

 

 顔真っ赤、冷や汗だらだらながら出久は必死に隣の男の物真似を続けた。彼はというとなぜか沈黙を保っている。恥ずかしさと怖さが絶妙なベストマッチ!である。

 と、

 

『!、あぁ、もしかして緑谷さんですか!?』

「ッ!?」

 

 あっさりバレてしまった――潮時ということだろう。

 

「そうです緑谷です……」

『やっぱそうですか!昨日は音沙汰ないからどーしたのかと……あ、TRCSはちゃんとお預かりしてますからご安心を!』

「う、うん、ありがとう」

『で、でっ、それより何より……早く来てください触りにっ!』

「へぁ!?」先ほどとは違う意味で顔が真っ赤になる。「さ、触りにって……何を、ですか……?」

 

 そんなわけはないのだが、どうしても破廉恥な想像をしてしまう。出久だって健全な男子である。

――やっぱりそんなわけはないのだけれども。

 

『何って、例の破片……え~と、ゴウラムですよゴウラム!分析によってこの子が金属を取り込んで身体を再生していたことがわかったので、いま試験中なんですけれども、いっこうに反応がないんです。でも一昨日のアレ見る限り、あなたが触れると色々変化があるようなので!』

「あっ……な、なるほどそういう……。いやもちろんなんだけど、お昼食べてからでいいかな?」

『お昼なら科警研にも食堂がありますよ!』

「う~ん、ごめん……もう店に到着するところなんだ」

 

 嘘は言っていない。駐車場に入るべく、減速した車両がゆっくり左折するところだった。

 

『そうですか、じゃあお待ちしてます!――あぁ緑谷さん、』

「な、なんでしょう?」

『さっきのって爆豪さんの物真似ですよね?もう二度とやらないほうがよろしいかと!それでは!!』

 

 プツッ。通話が切れる。

 

「………」

「……デク、テメェ」

「ひゃ、は、ひゃいっ」

 

 低い声で呼ばれて、対照的に声が上擦る。早くも後悔がよぎる。一体自分は何をプルス・ウルトラしてしまったのか。それこそあの世に強制プルス・ウルトラさせられてもおかしくない。そう思ったのだが、

 

「もっぺん関東医大行くか?精密検査してもらえや、頭の」

「うぐッ!?」

 

 勝己の声には哀れみが滲んでいた。キレられ、罵倒されるのはもう慣れっこだが、こういうのは耐性がないだけに胸にグサリと突き刺さる。スベってもくじけないおやっさんが羨ましい……と、目前の"喫茶ポレポレ"の看板を見ながら出久は思った。

 

 

――と、いうわけで。

 

「いやぁ、お久しぶりですねぇ!」

 

 カレーを煮込みつつ朗らかに笑いかけてくる"おやっさん"ことポレポレのマスターに、勝己は「……っス」と小さく会釈をした。

 ふたりはここポレポレで昼食をとることとしていた。色々な理由から出久がここを提案し、勝己が了承した形だ。城南大学からもほど近いのが決め手となった。

 

 爆ギレヒーローとあだ名される勝己に対しても相変わらず恐れなく、おやっさんは嬉しそうに声をかけ続ける。

 

「先月初めて来てくれてねぇ、お忙しい人だしそう滅多にはと思ってたのに。今日はまたどうして出久と?」

「こいつの大学に用があったんです。あと、こいつにここのカレー百食奢らせる契約してるんで」

「ひゃ、百食!?」

 

 素っ頓狂な声をあげて、次いで怒りを露わにしたのは麗日お茶子だった。

 

「あかんよ爆豪くんッ、そんなの――!」

「ア゛ァ?」

「あっ、ち、違うんだよ麗日さん。僕、かっちゃんに色々と借りがあるんだ。それを返すには願ったり叶ったりな方法っていうか……」

 

 それは紛うことなき本音だった。実際、こうして食事をともにできているわけで。……何より、男として大切なものを爆破されるよりは圧倒的にマシである。

 が、取りなしたつもりの出久にまで、お茶子は鋭い視線を向けてきて。

 

「……ってかデクくんもデクくんだよ。私には朝まで連絡ナシで、爆豪くんとは仲良くランチだなんて……」

「へぁ!?」

「仲良くなんてしてねーわコラ」

 

 出久はとにかく慌てた。なるべく早く直接謝りたいというのもここを選んだ理由のひとつだったのだ。それが勝己と一緒に現れたとなれば、なんとなく不誠実な印象を与えてしまってもおかしくはない。

 もっとも、お茶子は頬を膨らませるという演技かかった方法で怒りを表現しており、本気の度合いはさほどでもなかった。

 

「まあ別に仲良くしてるのはええんやけど……もうっ、なんかあったんかってちょっと心配したんだからね!?新宿のほうじゃ未確認も出てたし……」

「あ、あぁうん……ごめんね、本当に……」

「仲良くなんかしてねーっつってんだろ無視してんじゃねえぞクソ丸顔が」

 

 実際、その未確認生命体のせいで何かありまくったから連絡どころでなかったわけだが。お茶子には未だ正体を秘密にしているから、それを正直に話すわけにもいかないのだった。

 

「あっそっそうだ、映画行く日どうしようか!?確かもうすぐ謹慎明けるんだったよね……いつからだっけ?」

「今週の木曜だよ」

「そっか……じゃあ明日でどうかな?平日だけど授業入れてないから、丸一日大丈夫だし……あ、急用が入らなければだけど………」

「オッケー!じゃあ急用入らないように神頼みしとくね!」

「アハハ……。僕も近所の神社にでもお参りしておこうかな……」

 

 お茶子がヒーロー業務に復帰すれば、長時間遊べる日なんてそうは作れなくなる。ここを逃して約束を果たせなくなることだけは避けたかった。

 もちろん相手が女性だからではない。心操や他の同性の友人との約束であっても出久にとっては同じことなのだが、

 

「ケッ」

 

 露骨に馬鹿にしたような声を、隣に座る男があげた。

 

「色気づきやがって、クソデクの分際で」

「いや、そういうわけじゃ……」

「丸顔、テメェも大概シュミ悪ぃな。こんなののどこがいいんだか」

「ムッ……売れっ子ヒーローのくせに学生に奢らせるようなみみっちい誰かさんよりよっぽどいいと思うけどぉ?実際、私の知る限りじゃ一度も恋人できたことないもんねぇ??」

「~~ッ、テメェ俺がこんなクソナードよりモテねぇと思ってンのか脳味噌まで餅でできてやがんのか!?こちとら群がるモブ女どもに迷惑しとるレベルだわブァーーーカ!!」

「フーンだ、そーいう人たちってミーハーなだけだしぃ~。大人の女にはねぇ、デクくんの良さがわかるのよ……」

「ハッ、テメェのどこに大人要素があるんだか」

「少なくともどこぞの爆ギレヒーローよりは大人ですぅ~」

 

 バチバチと火花を散らすかつての同級生同士。間に挟まれて「あわわわわ……」と恐慌状態に陥っている出久。ふたりぶんのカレーを盛りつけつつ、おやっさんはカウンター席の大半を占拠する謎のサングラスの一団に訊いた。

 

「……美味しい?」

 

 コクッ。まったく同じタイミングでうなずき、黙々とカレーを食べ続ける。端では相変わらず剣呑な三角芝居が続き、半径数メートルにシュール極まりない空間が形成されていたのだった。

 

 

 

 

 

 出久たちがそんな平和(?)な昼食どきを過ごしている間にも、水面に浮かぶギノガの腕は膨れあがり続けていた。既に成人ひとりがすっぽり納まってしまうほどの容積。そして現実に、内部で何かが絶えず胎動し続けている。

 

――誕生のときは突然、なんの前触れもなく訪れた。

 

 膨れあがった皮膚を突き破るようにして、ギノガのものとは別の腕が外界に出現する。それが自ら母胎を裂いてゆき、

 

「ア……アァ……グアァァァ……ッ!」

 

 不気味な唸り声とともに、暗い緑色の頭部が飛び出す。それは生前のギノガとまったく同じ形状をしていた。

 異なるのは、その所作にまったく知性を感じさせないこと。そして、腹部にバックルが存在しないこと。これまでのグロンギとも明らかに異なる不気味な化け物が今、新たなる災厄をもたらそうとしていた――

 




キャラクター紹介・グロンギ編 ゲギド

ヤドカリ種怪人 メ・ギャリド・ギ/未確認生命体第18号※

「ゴセパガブランゲババゾロヅゴドボ、メ・ギャリド・ギザ~!!(オレは悪魔の背中を持つ男、メ・ギャリド・ギだ~!!)」

登場話:
EPISODE 13. 来襲~EPISODE 14. TRY&GO-ROUND!

身長:202cm
体重:196kg
能力:大型トラックの運転技術
活動記録:
大型トラックを操り、バックで轢殺を繰り返した未確認生命体。ヤドカリらしく身体を何かで隠していないと気が休まらない性格であり、人間体は常に分厚いコートで身を覆っている。
行動開始後は三鷹市内や千葉県内で人々を襲い、駆けつけた第4号(&トライゴウラム)をも轢き殺そうとするが失敗。生身での戦闘能力はさっぱりで、4号はおろか爆心地の猛攻に対してもなすすべなく逃走しようとした。その際、青の4号のロッドの一撃で吹き飛ばされて爆炎の中に消える。
しかし実際には下水道に逃げ延びており、新たなトラックを奪って行動を再開。しかし鷹野&森塚両刑事によって走行不能に陥ったところに再び4号が現れ、命乞いをするも聞き入れられずトライゴウラムの牙でトラックもろとも潰されるという因果応報の最期を迎えた。

作者所感:
みんな大好きバックします。
そのエグさに比べて肉弾戦での弱さよ……仮にザギバス・ゲゲルに進んだらどうすんですかね?ダグバ相手にトラックで突撃するのだろうか??

※原作では第24号。
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